決算整理仕訳とは?具体的な方法や仕訳時の手順、注意点を解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.7.20
MEGURO
決算業務のなかでも、特に重要なのが期中仕訳を修正する「決算整理仕訳」です。期中に作成した仕訳帳の勘定科目には、決算時点でズレが生じる項目があります。たとえば、仕入勘定や繰越商品勘定などです。決算整理仕訳を行い、決算時点での情報に合わせて勘定残高を修正することで、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を正確に作成できます。この記事では、決算整理仕訳の方法や注意点について具体例を挙げながら解説します。
目次
1. 決算整理仕訳の概要
決算整理仕訳とは、決算時点の情報に合わせて仕訳帳の勘定科目を修正し、最終的な勘定残高を確定させることを意味します。たとえば、会計年度の頭の時点での在庫価格(期首商品棚卸高)と、決算時点の在庫価格(期末商品棚卸高)は違います。決算整理仕訳を行い、期末商品棚卸高に合わせて計算し直すことで、正しい仕入勘定の残高を把握できます。
1‐1. 決算整理前残高試算表を作成しよう
決算整理仕訳を正確に行うために必要なのが、全ての勘定科目の数字を一覧化した「決算整理前残高試算表」です。決算整理前残高試算表は、期中取引を仕訳帳にまとめ、総勘定元帳に転記した後のタイミングで作成します。決算整理前残高試算表を作成し、勘定科目ごとに借方・貸方の数字がそれぞれ一致していれば、「仕訳帳の処理が正しく行われているか」「総勘定元帳への転記ミスがないか」を確認することができます。決算整理仕訳が終わった後に試算表を作成する場合もあります。その試算表を「決算整理後残高試算表」と呼びます。
2. 精算表で会計処理のミスを防ごう
決算整理仕訳が終わった後で、会計処理のミスをチェックするために作成するのが精算表です。精算表を作成するのは、決算整理前残高試算表に基づいて決算整理仕訳を行い、損益計算書と賃借対照表を作成した後のタイミングです。精算表には、勘定科目ごとに決算整理前残高試算表、修正記入(決算整理仕訳)、損益計算書、賃借対照表の数字を並べて記載します。精算表の借方・貸方の数字に矛盾がなければ、会計処理にミスがなかったことを確認できます。
3. 決算整理仕訳の方法
このように決算整理仕訳には、簿記や税務会計の知識が求められます。もし仕訳帳の作成、総勘定元帳への転記、決算整理仕訳などの作業で計算ミスや入力ミスがあれば手戻りが発生します。そのため、決算整理仕訳は会計ソフトを利用して行うことが一般的です。会計ソフトがあれば、計算作業の自動化や入力ミスの自動チェックにより、決算業務の手戻りを減らすことが可能です。インターネットで利用できるクラウド型の会計ソフトなら、テレワークやリモートワークにも対応できます。
4. 決算整理仕訳の手順
仕訳帳をの勘定科目を総勘定元帳に転記し、決算整理前残高試算表を作成したら、勘定科目ごとに決算整理仕訳を行います。決算業務をスムーズに行うため、決算整理仕訳のフローを確認しておきましょう。
・現金・預金の残高を現物で確認し、帳簿との過不足がないか確認する
・売掛金や買掛金の金額を決算日に合わせて修正する
・次期以降の収入を前払金として受け取った場合、次期以降の分を控除(繰延)する
※前受金を支払った場合も同様に行う
・決算時点の棚卸資産を計上し、売上原価を計算する
・固定資産の減価償却を行い、減価償却費として費用計上する
・決算時点の時価に基づいて有価証券の評価を調整する
・貸し倒れが見込まれる場合、貸倒引当金を計上する
・追加仕訳を仕訳帳に反映させ、総勘定元帳に転記する
5. 決算整理仕訳の具体例
それでは、実際に決算整理仕訳を行ってみましょう。「売上原価の計算」「貸倒引当金の計算」「減価償却費の計算」の3点について、具体例を挙げながら解説します。
5-1. 売上原価を計算するとき
決算では、販売した全ての商品・サービスの売上に対する売上原価を求める必要があります。そのため、棚卸資産を計上し、仕入にかかった費用(仕入高)を計算します。しかし、会計年度の頭の棚卸金額(期首棚卸金額)と決算時点の棚卸金額(期末棚卸金額)は異なるため、期末棚卸金額を用いて正しい金額に修正します。売上原価の計算式は次の通りです。
・売上原価=期首商品棚卸高+仕入高-期末商品棚卸高
たとえば、商品の仕入高が100万円、期首商品棚卸高が10万円、期末商品棚卸高が20万円の場合、売上原価は90万円です。追加仕訳は以下の通り行います。
5-2. 貸倒引当金を計算するとき
取引先の倒産などにより、売掛金を回収できなくなることを貸倒れといいます。もし貸倒れが発生する可能性がある場合、あらかじめ売掛金の一部を損金に参入し、貸倒引当金の勘定科目で計上することができます。たとえば、売掛金100万円のうち5%(5万円)を貸倒引当金として計上する場合、以下の通り仕訳を行います。
5-3. 減価償却費を計算するとき
機械設備などの固定資産を取得したとき、取得費用を法定耐用年数に合わせて分割し、費用計上する必要があります。この会計処理を「減価償却」といいます。減価償却費の計上も決算整理仕訳の1つです。減価償却費の計算式は次の通りです。
・減価償却費=(取得原価-残存価額)÷耐用年数
取得原価は固定資産を取得したときの費用、残存価額は固定資産を処分するときの処分価格の見積りを指します。たとえば、取得原価が200万円、残存価額が10%、耐用年数が10年間の機械設備を取得した場合、減価償却費は18万円です。
・減価償却費=(200万円-20万円)÷10年=18万円
6. 決算整理仕訳で注意すべきポイント
決算整理仕訳の注意点は2つあります。もし決算整理仕訳後の勘定残高にミスがある場合、損益計算書や貸借対照表に誤った数字が反映されます。追加仕訳を行ったら、数字にミスがないか必ずダブルチェックを行いましょう。また、勘定科目の仕訳漏れがないか確認するため、前期の決算整理仕訳と比較する方法も効果的です。
6-1. 勘定残高のダブルチェックを行う
決算整理仕訳では、総勘定元帳に記載する勘定残高を確定させます。もし決算整理仕訳にミスがあった場合、総勘定元帳を元にして作成する損益計算書や貸借対照表の内容にもミスが生じます。決算整理前残高試算表や精算表を活用し、必ず勘定残高のダブルチェックを行いましょう。
6-2. 決算整理仕訳の前期比較を行う
決算整理仕訳では、売上原価や貸倒引当金、減価償却費などさまざまな勘定科目の仕訳を行います。決算整理仕訳の漏れを防ぐには、前期に行った決算整理仕訳と比較する方法が効果的です。決算整理仕訳の結果に疑問がある場合も、前期比較を行って手順のミスがないか確認しましょう。
7. 決算整理仕訳の手順や注意点を知り、損益計算書や貸借対照表をミスなく作成しよう
決算整理仕訳は、損益計算書や貸借対照表を正確に作成するために欠かせない会計処理です。決算整理仕訳では、決算時点の情報に基づいて仕訳帳の勘定科目を修正し、総勘定元帳に最終的な勘定残高を反映させます。もし決算整理仕訳にミスがあれば、損益計算書や貸借対照表にも誤った数字が反映されてしまいます。決算整理前残高試算表や精算表を活用し、勘定残高のダブルチェックを行いましょう。また、決算整理仕訳の前期比較を行うことで、仕訳漏れがないか確認することができます。決算整理仕訳の効率化のため、会計ソフトの導入も効果的です。
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