雑損失に該当する費用や仕訳するときの注意点を紹介
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.10.13
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雑損失とは、本業と関わりのない「営業外費用」のなかでも、既存の勘定科目に分類できない損失のことです。例えば、交通事故の見舞金や自然災害の被害、原因不明の現金過不足など、一時的な出費や金額的に重要でない出費が雑損失に当てはまります。雑損失勘定を多用すると、会計処理が不透明になりやすくなります。損失額が無視できない場合や、事業活動に与える影響が大きい場合、雑損失ではなく独立した勘定科目を立てることが大切です。この記事では、雑損失の定義や該当する費用、仕訳処理をおこなうときの注意点について詳しく解説します。
1. 雑損失とは?
雑損失は「営業外費用」に含まれる勘定科目です。営業外費用のなかでも、交通事故の損害賠償金や建物の解体費用、盗難や自然災害による被害など、既存の勘定科目では分類できない支出が雑損失に当てはまります。ここでは、雑損失の定義や金額の目安、雑損失とよく似た「雑損控除」について解説します。
1-1. 雑損失は「営業外費用」のうち分類できないもの
雑損失は「営業外費用」の区分表示のうち、既存の勘定科目には当てはまらない損失を指します。例えば、支払利息や社債利息、貸倒損失や貸倒引当金繰入額などの営業外費用は、雑損失として計上することができません。また、損失のなかでも「金額が軽微なもの」「滅多に発生しないもの」など、少額で重要性が低いものを雑損失と呼びます。具体的には、雑損失の金額の目安は営業外費用の10分の1以下までとされています。[注1]損失額が営業外費用の10分の1を上回ったり、事業継続に与える影響が大きかったりする場合、独立した勘定科目で計上する必要があります。
・財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(営業外費用の表示方法)
第93条 営業外費用に属する費用は、支払利息、社債利息、社債発行費償却、創立費償却、開業費償却、貸倒引当金繰入額又は貸倒損失(第八十七条の規定により販売費として記載されるものを除く。)、有価証券売却損その他の項目の区分に従い、当該費用を示す名称を付した科目をもって掲記しなければならない。ただし、各費用のうちその金額が営業外費用の総額の百分の十以下のもので一括して表示することが適当であると認められるものについては、当該費用を一括して示す名称を付した科目をもって掲記することができる。
1-2. 雑損失と雑損控除の違い
雑損失とよく似た言葉として「雑損控除」があります。雑損控除とは、盗難や自然災害などの被害に遭い、生計に関わる資産が損害を受けた場合に利用できる所得控除です。[注2]
災害または盗難もしくは横領によって、下記の「雑損控除の対象になる資産の要件」にあてはまる資産について損害を受けた場合等には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを雑損控除といいます。
雑損控除を利用したものの、控除しきれなかった損失額のことを「雑損失の金額」と呼びます。[注3]
雑損失の金額とは、災害、盗難、横領によって資産に受けた損失額のうち、災害等が生じた年分の雑損控除として控除しきれない金額をいいます。
雑損失の金額は、その事業年度の翌年から3年間繰り越すことが可能です。例えば、地震によって家財が重篤な被害を受けたとき、雑損失の金額が大きい場合は翌年以降も雑損控除を繰り越すことができます。
2. 雑損失に該当する費用
雑損失の例として、帳簿上の現金過不足や、交通事故の見舞金、建物の解体費用などが挙げられます。雑損失に該当する費用を4つ紹介します。
・現金と帳簿が一致しない場合の現金過不足
「レジ内の現金と帳簿が一致しない」「現金出納帳の残高と実際の残高が合わない」など、現金過不足も雑損失として計上できます。ただし、会計実務上は現金残高の足りない(多い)分を「現金過不足」の勘定科目で計上しておき、期末処理の際に過不足があれば「雑損失」として計上します。
・交通事故の見舞金や示談金、慰謝料
交通事故の見舞金や示談金、慰謝料などの損害賠償金も、雑損失として計上できます。ただし、交通事故を起こした本人に重大な過失がある場合は、経費として計上することはできません。
・建物の解体費用のうち比較的少額なもの
オフィスや事務所、倉庫などの解体費用は、原則的に特別損失として計上し、固定資産除却損に算入します。ただし、建物の解体費用のうち比較的少額なものは、特別損失の代わりに雑損失として計上することも可能です。
・ファクタリングの手数料のうち少額なもの
ファクタリングは売掛債権を満期日以前に譲渡し、対価として現金を得るサービスです。ファクタリングの手数料は「売上債権売却損」の勘定科目で処理します。ただし、ファクタリングの手数料が少額な場合や、事業活動に与える影響が少ない場合、雑損失として計上しても問題ありません。
3. 雑損失に仕訳するときの注意点
ここまで、雑損失の定義や、雑損失として計上可能な費用について説明しました。
最後に雑損失の仕訳方法を具体例を挙げて解説します。また、雑損失に仕訳するときの注意点も紹介します。
3-1. 雑損失の仕訳方法
雑損失の仕訳をおこなう場合、借方に「雑損失」、貸方に「現金」や「普通預金」などの勘定科目を記入します。ここでは雑損失の仕訳例として、「現金と帳簿が一致せず、現金過不足を補填したケース」「駐車違反の切符を切られ、罰金を支払ったケース」「取引先の物品を壊し、修繕費を支払ったケース」をそれぞれ解説します。
3-2. 雑損失勘定はなるべく使わずに仕訳する
雑損失は対象範囲が広いため、さまざまな営業外費用を雑損失として計上できます。例えば、通常は特別損失として計上する建物の解体費用や、売上債権売却損として処理するファクタリングの手数料も、帳簿上は雑損失として計上することが可能です。しかし、便利だからといって雑損失勘定を多用すると、どの取引が雑損失に対応するのかがわからず、企業会計の透明性が失われます。雑損失勘定はなるべく使わずに仕訳処理をおこなうことが大切です。
4. 雑損失は「営業外費用」に属する勘定科目!該当する費用や仕訳方法を確認しよう
雑損失は本業以外の「営業外費用」のなかでも、既存の勘定科目に分類できない損失です。例えば、現金過不足や交通事故の見舞金のほか、建物の解体費用やファクタリングの手数料も雑損失として計上することができます。ただし、雑損失勘定を多用すると、企業会計の透明性が失われます。営業外費用の10分の1を超える費用や、事業活動に与える影響が大きい費用は、雑損失ではなく独立した勘定科目で処理することが大切です。雑損失に該当する費用や、間違われやすい雑損控除との違いを知り、正しく会計処理をおこないましょう。
[注1] 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 | e-Gov法令検索
[注2] No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁
[注3] 雑損失の金額とは|国税庁
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