繰延資産とは?主な分類や仕訳方法、償却方法について解説
更新日: 2022.12.9
公開日: 2022.7.20
目黒颯己
賃借対照表の資産の部に表示する資産のうち、固定資産にも流動資産にも該当しないものを「繰延資産」と呼びます。たとえば、会社設立時にかかった登記費用や定款の作成費用が繰延資産の一例です。繰延資産は固定資産のように複数年度に渡って費用を償却することが可能です。この記事では、繰延資産
の定義や会計上・税法上の分類、仕訳方法や償却方法について解説します。
1. 繰延資産とは?
繰延資産とは、費用として計上したもののうち、「支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの」を表します。[注1]つまり、費用が発生した会計年度だけでなく、複数年度に渡って費用を償却できるものが繰延資産に該当します。たとえば、会社設立時にかかった創立費や、営業開始までに支出した開業費が繰延資産の一例です。
1‐1. 賃借対照表の繰延資産の表示
繰延資産は賃借対照表の資産の部に表示します。ただし、下記の表の通り、固定資産や流動資産とは別に区分する必要があります。
1‐2. 固定資産との違い
繰延資産と固定資産は、複数年度に渡って費用を償却できるという点でよく似ています。たとえば、固定資産は耐用年数に応じて取得価額を配分し、減価償却を行うことができます。しかし、繰延資産と固定資産は異なる資産の区分です。繰延資産は「擬制資産(ぎせいしさん)」に分類されます。擬制資産とは、資産として分類されるものの、具体的な財産価値を持たない資産を指す会計学の言葉です。建物・車両・機械設備などの例のように、固定資産は具体的な財産価値を持っています。一方、繰延資産は売却したり、譲渡したりして財産価値を生み出すことができません。たとえば、開業の際に借りた土地の賃借料(開業費)は、開業から5年間に渡って償却することができますが、開業費自体には財産価値はありません。このように繰延資産と固定資産は区別して考える必要があります。
2. 繰延資産の分類
会計上、繰延資産は「創立費」「開業費」「開発費」「株式交付費」「社債等発行費」の5つに分類されます。会計上の分類とは別に税法上の分類もあります。企業会計で登場する頻度はあまり多くありませんが、税法上の5つの繰延資産についても知っておきましょう。繰延資産の分類を企業会計・税法の観点から解説します。
2‐1. 会計上の繰延資産
会計上の繰延資産は5種類あります。なお、2007年4月1日の法人税法の改正により、「試験研究費」「社債発行差金」の2つが繰延資産から除外されています。会計上の繰延資産の分類と償却期間は以下の通りです。
2‐2. 税法上の繰延資産
会計上の5つの繰延資産のほかにも、所得税法では5種類の繰延資産が定義されています。国税庁のホームページより、税法上の繰延資産の種類や具体例を引用します。[注2][注3]
3. 繰延資産の仕訳方法・償却方法
繰延資産は複数年度に渡って費用を償却することが可能です。一般的に、繰延資産は償却期間で均等償却しますが、創立費や開業費などの繰延資産は一時償却(任意償却)することが認められています。繰延資産の会計処理に使う勘定科目や、具体的な仕訳例を紹介します。
3-1. 繰延資産の会計処理に使う勘定科目
繰延資産の会計処理を行う場合の勘定科目は以下の通りです。貸借対照表と損益計算書で使用する勘定科目が異なる点に注意しましょう。また、税法上の繰延資産は「繰延資産」「繰延資産償却」の勘定科目ではなく、会計実務上は「長期前払費用」「長期前払費用償却」の勘定科目を使うことが一般です。
3-2. 繰延資産の償却方法の違い
繰延資産の償却方法は、償却期間で均等に費用を配分する「均等償却」と、即時償却する「任意償却(一時償却)」の2種類があります。創立費・開業費・開発費・株式交付費・社債等発行費の5つの繰延資産は、発生時点で任意償却することも可能です。
3-3. 創立費を均等償却する場合
それでは、実際に創立費の仕訳処理を行ってみましょう。会社の設立にかかった費用として、100万円を均等償却するケースを想定します。創立費の会計上の償却期間は、会社設立から5年間です。繰延資産の償却は月割で行うため、毎年の償却額は次の計算式で求められます。
・100万円÷(12ヶ月×5年)×5年=20万円
帳簿には以下の通り記帳しましょう。
3-4. 開業費を一時償却する場合
開業費は費用が発生した時点で任意償却(一時償却)することができます。営業開始までにかかった費用として、現金100万円を任意償却するケースを想定します。開業費の仕訳処理は以下の通りです。
4. 繰延資産は複数年度の償却が可能!仕訳方法や償却方法を理解しよう
繰延資産は、費用として計上したもののうち、支出の効果が複数年度に及ぶものを指します。繰延資産には会計上の分類と税法上の分類があります。たとえば、会計上の分類として、創立費・開業費・開発費・株式交付費・社債等発行費の5種類があります。繰延資産は複数年度に渡って費用を償却することが可能です。繰延資産の仕訳に使う勘定科目や、均等償却・均等償却の2つの償却方法を確認しましょう。
[注1] 国税庁:繰延資産の範囲について
[注2] 国税庁:繰延資産の意義及び範囲等
[注3] 国税庁:繰延資産の償却期間
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