電子帳簿保存法に猶予が設けられた理由は?改正内容や対応策を解説
更新日: 2022.12.9
公開日: 2022.4.10
目黒颯己
2022年1月から電子帳簿保存法が改正されたことにより、各企業の経理担当の方は、いろいろな対応に追われていることと思います。
ただ、電子帳簿保存法の改正は一部内容に猶予期間が設けられて延期されたため、今すぐに対応しなければならないことと、猶予期間中に対応すればよいことに分かれています。
それぞれの改正内容について、延期になったのかどうかを把握しておくことで、対応の順番を適切に判断することができます。
業務負荷の増大を最小限に抑えることができるメリットもあります。
この記事では、電子帳簿保存法の改正内容や、電子帳簿保存法に猶予が設けられた理由、電子帳簿保存法への対応策について説明します。
【調査レポート】2022年「改正電子帳簿保存法」に向けた各社の現状とは?
一部猶予が与えられた改正電子帳簿保存法ですが、各社の対応状況はいかがなのでしょうか。
そこで電子帳簿保存法に対応したシステムを提供するjinjer株式会社では「改正電子帳簿保存法対応に向けた課題」に関する実態調査を実施いたしました。
調査レポートには、
・各企業の電帳法対応への危機感
・電帳法に対応できていない理由
・電帳法の対応を予定している時期
・電帳法対応するための予算の有無について
などなど電子帳簿保存法対応に関する各社の現状が示されています。
「各社の電帳法の対応状況が知りたい」「いつから電帳法に対応しようか悩んでいる」というご担当者様はぜひご覧ください。
1. 電子帳簿保存法の改正内容
電子帳簿保存法について最初に簡単に説明しておくと、帳簿や決算書などの書類に関して、一定の条件を満たせば電子化しての保存を認める法律のことです。
2022年1月以降に改正される内容としては、大きく以下の3つが挙げられます。
・電子取引における電子データ保存の義務化(延期)
・国税関係帳簿・書類の要件緩和(改正)
・罰則規定の強化(改正)
これらの内容および改正されたのか延期されたのかについて、以下で説明します。
1-1. 電子取引における電子データ保存の義務化(延期)
請求書などの書類を電子データで受け取った場合、現行法では紙に出力しての保存が認められています。
しかし電子帳簿保存法の改正以降は、出力での保存が原則不可になります。
また、データを保存する際は、受け取った書類データにタイムスタンプを付与した状態で保管しなければなりません。
こちらの内容は、2022年1月1日から義務化予定でしたが、延期されて2023年12月31日までの2年間の猶予期間が設けられています。
1-2. 国税関係帳簿・書類の要件緩和(改正)
国税関係帳簿・書類の要件緩和の内容は、大きく以下の5つに分類することができます。
・事前承認制度の廃止
・システム要件緩和と有料保存認定制度の新設
・検索項目を「日付」「取引金額」「取引先」の3項目に限定
・適正事務処理要件の廃止
・スキャナ保存のタイムスタンプ要件緩和
緩和や廃止となっている内容が多いので、事務処理の観点からは業務負担が軽減されることも多いでしょう。
1-3. 罰則規定の強化(改正)
上述したように事前承認制度が廃止される代わりに、万が一、税務処理上の不備が見受けられた場合のペナルティは強化されます。
隠ぺいや偽装といった悪用が発覚した場合は、申告漏れに対して課される重加算税が10%加重されることになります。
電子取引においてもスキャナ保存と同じ罰則が設けられるため、注意が必要です。
2. 電子帳簿保存法に猶予が設けられた理由
上述したように、電子帳簿保存法の改正において2年間の猶予が設けられたのは、電子取引における電子データ保存の義務化に関してのみです。
その背景には、経費処理を紙で行っている企業は依然として多く、法改正に対応するためのシステム改修などが間に合わないという声が数多く挙がったということがあります。
また、改正電子帳簿保存法に対応するためには、ソフトウェアを導入したり手作業で対応したりする必要があります。
ただ、法改正に関する認知度が低く、どのように対応すべきかで混乱してしまう企業も少なくなかったようです。
そのため、2022年1月1日から2023年12月31日までの2年間は、以下の2つの条件を満たしていれば、紙出力での保存も許可するというような猶予期間が設けられました。
・所轄税務署長が、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができかなったことについて、やむを得ない事情があると認める
・当該保存義務者が、当該電磁的記録の出力書面の提示、又は提示の求めに応じることができるようにしている
なお、2022年3月22日の段階では、どのような事情が「やむを得ない事情」に該当するかについて、具体的な例は示されていません。
猶予期間が終わったあとは、いかなる理由があろうとも電子データで保存することが求められるので、対応が間に合っていない企業はこの間に対処するようにしましょう。
3. 電子帳簿保存法への対応策
改正電子帳簿保存法に対応するためには、データの電子保存に対して全社的にどのような姿勢で臨むかということを、まず決めておく必要があります。
改正電子帳簿保存法で定められているのは、「電子取引におけるデータを電子保存しておくこと」であって、電子取引以外の取引に関わるデータまで電子保存しておくことを求められているわけではありません。
ただ、取引の形態によって保存方法を変えるのはかえって面倒だという場合は、電子取引以外の取引に関しても、全面的に電子保存するように舵を切るとよいでしょう。
具体的には、「電磁的記録等保存」や「スキャナ保存」の保存要件を満たすシステムを選定して、運用することになります。
一方、電子取引に関わる部分のみの対応に留める場合でも、何かしらのシステムを導入するかどうかで、対応は変わります。
新たなシステムを導入して対応する場合は、電子取引保存の保存要件を満たすシステムを選定して、運用することになります。
システムやソフトを導入せずに対応する場合は、電子データを一定の規則のもとにファイリングして、あとから検索できる形にしたうえでフォルダ保存する形になるでしょう。
いずれの対応方法も十分考えられるので、まずはデータの保存に対する全社的な姿勢を明らかにすることから始めましょう。
4. 2年間の猶予期間にしっかりと対応しておくことが重要
最近ではオンラインで取引を行うケースも増えていることから、電子帳簿保存法の改正は、ほぼすべての企業に影響があると言っても過言ではありません。
ただ、法改正に関する認知度があまり高くなかったことも相まって、2022年1月1日までに改正電子帳簿保存法に対応できるだけの対策を行えていなかった企業も多いことでしょう。
設けられた2023年12月31日までの猶予期間の間に、きちんと対策を考えて社内で対応していくことが求められます。
電子取引もそれ以外の取引も含めて、どのような姿勢で臨むのかを最初に明らかにしておかなければ、その後の対応も曖昧になってしまうので、まずは全社的な方針を明らかにすることが重要です。
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「22年度の改正内容について知りたい」
「猶予期間内に具体的にどう電子帳簿保存法に対応すれば良いかわからない」
など電子帳簿保存法に関して不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは「5分で読み解く!電子帳簿保存法」という資料を無料配布しております。電子帳簿保存法の基礎知識から2022年の改正内容、またその対応方法まで網羅的に解説しております。義務化される猶予期間中に正確に電子帳簿保存法に対応したい方には大変参考になる内容となっておりますので、ぜひご覧ください。
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