利益準備金とは?資本準備金・利益剰余金との違いや具体的な計算方法も解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.7.20
MEGURO
利益準備金は会社法で定められた「法定準備金」の1つです。剰余金を株主に配当する場合、配当原資の10分の1の金額を準備金として積み立てる必要があります。利益準備金を積み立てることで、会社の財産を保護し、債権者の権利を守ることができます。会計処理の際は利益準備金の金額を正確に計算することが大切です。この記事では、利益準備金の役割や会社法の規定、利益準備金とよく似た資本準備金・利益剰余金との違いを解説します。
目次
1. 利益準備金とは?
企業は会計上の剰余金を原資として、株主への配当を行うことができます。剰余金を配当する際に積み立てる必要があるのが、利益準備金を始めとした法定準備金です。法定準備金のなかでも、企業が事業活動で得た利益(内部留保)を源泉とし、積み立てる勘定科目が利益準備金です。利益準備金は賃借対照表の純資産の部に表示します。利益剰余金の項目の「その他利益剰余金」を原資として配当を行う場合、利益準備金の積み立てが必要です。
関連記事:剰余金と利益剰余金、資本剰余金の違いとは?剰余金の配当についても紹介
2. 利益準備金の計上が必要な理由
そもそも、なぜ利益準備金を計上しなければならないのでしょうか。利益準備金は、会社法第445条で定められた法定準備金です。そのため、剰余金の配当を行うときは所定の金額を積み立てることが義務づけられています。また、利益準備金の役割は、企業の財産の過度な流出を防ぎ、債権者の権利を守る点にあります。利益準備金の計上が必要な理由を解説します。
2‐1. 利益準備金は会社法で定められた法定準備金
会社法第445条第4項の規定により、株主への配当を行うときは配当原資の10分の1を準備金として計上する必要があります。ただし、会社計算規則第22条第1号の通り、配当前の準備金の総額が資本金の4分の1(基準資本金額)を超える場合、新たに準備金を積み立てる必要はありません。
・会社法第445条第4項
剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金として計上しなければならない。
・会社計算規則第22条第1号
株式会社が剰余金の配当をする場合には、剰余金の配当後の資本準備金の額は、当該剰余金の配当の直前の資本準備金の額に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額を加えて得た額とする。
一 当該剰余金の配当をする日における準備金の額が当該日における基準資本金額(資本金の額に四分の一を乗じて得た額をいう)以上である場合:零
2‐2. 利益準備金は債権者の権利を守るためにある
株主は会社法第454条により、株主総会の決議によって剰余金を配当することができます。しかし、配当によって剰余金が流出すれば、企業の財政基盤が揺らぎ、債権者の利益を損なう可能性があります。剰余金の配当の際に一定の金額の準備金を拠出することで、会社の財産を保護し、債権者を守ることができます。また、利益準備金は株主総会の決議や債権者保護手続を経ることで、剰余金の欠損填補や資本金への組み入れに活用することも可能です。
3. 利益準備金と資本準備金・利益剰余金との違い
利益準備金とよく似た勘定科目として、「資本準備金」や「利益剰余金」があります。資本準備金は利益準備金と同様に法定準備金の1つです。しかし、企業が事業活動から得た利益を源泉とする利益準備金に対し、資本準備金は株主の出資金を源泉としています。また、利益剰余金は利益準備金を含む勘定科目で、企業の内部留保を意味します。利益準備金と資本準備金・利益剰余金との違いを解説します。
3‐1. 資本準備金は株主の出資金のうち資本金でないもの
資本準備金は、会社設立や増資の際の株主の出資金のうち、資本金として計上しなかったものを指す勘定科目です。資本準備金も会社法第445条で定められた法定準備金です。その他資本剰余金を原資として株主への配当を行う場合、所定の金額を資本準備金として積み立てる必要があります。
3‐2. 利益剰余金は企業の内部留保のこと
利益剰余金は、企業が計上した利益のうち、株主への配当などを行わず、内部に留保したものを指します。「内部留保」と呼ばれる場合があります。会計上の区分では、利益準備金は「その他利益剰余金」の科目と合わせて利益剰余金の一部です。その他利益剰余金を原資として株主への配当を行うとき、利益準備金を積み立てる必要があります。
4. 利益準備金の計算方法
利益準備金の計算は、会社計算規則第22条に基づいて行う必要があります。利益準備金を積み立てるのは、配当前の準備金が資本金額の4分の1(基準資本金額)未満の場合です。配当原資の10分の1の金額か、配当前準備金との合計が資本金の4分の1になる金額のいずれか小さい方を積み立てます。それぞれの計算式は次の通りです。
・配当原資の10分の1を積み立てる場合の計算式
準備金=剰余金÷10
・配当前準備金との合計が資本金の4分の1になる場合の計算式
準備金=資本金÷4-配当前の準備金
5. 利益準備金の仕訳方法
それでは、実際に利益準備金の仕訳を行ってみましょう。利益準備金の仕訳パターンは、「配当原資の10分の1を積み立てる場合」「配当前準備金との合計が資本金の4分の1になる場合」の2つあります。
5‐1. 配当原資の10分の1を積み立てる場合
株主総会の決議により、その他利益剰余金を原資として100万円の配当を行う場合の利益準備金を計算します。なお、資本金は400万円、配当前の準備金は80万円とします。配当原資の10分の1を積み立てた場合、利益準備金の金額は10万円です。配当前の準備金との合計額が資本金の4分の1を超えないため、そのまま10万円を利益準備金として計上します。借方には「その他利益剰余金」、貸方には「未払配当金」「利益準備金」の科目を記入します。借方、貸方の合計額がそれぞれ一致しているかチェックしましょう。
5‐2. 配当前準備金との合計が資本金の4分の1になる場合
先ほどのケースで、今度は300万円の配当を行う場合を考えます。配当原資の10分の1を積み立てた場合、利益準備金の金額は30万円です。配当前の準備金との合計額は110万円となり、資本金の4分の1を超えています。そのため、基準資本金額から配当前の準備金を差し引いた20万円を利益準備金として計上します。
6. 利益準備金は会社法で定められた法定準備金!計算方法や仕訳を確認しよう
利益準備金は会社法で定められた法定準備金の1つです。利益剰余金のうち、「その他利益剰余金」を原資として株主へ配当を行う場合、利益準備金を積み立てる必要があります。利益準備金の金額は、会社計算規則第22条に基づいて行う必要があります。「配当原資の10分の1を積み立てる場合」「配当前準備金との合計が資本金の4分の1になる場合」それぞれの仕訳方法を確認しておきましょう。利益準備金は会社の財産を保護し、債務者の権利を守るための準備金です。利益準備金と資本準備金・利益剰余金との違いを知り、正しく計算しましょう。
[注1] e-Gov:会社法
[注2] e-Gov:会社計算規則
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