役員退職金とは?支払いを行うメリットやデメリットのほか、計算方法を解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.7.20
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役員が退職するとき、通常の退職金規程にはない「役員退職金(役員退職慰労金)」を支給することができます。役員退職金は全額を損金に算入し、法人税などを節税できるため、役員側だけでなく企業側にもメリットがあります。しかし、高額な役員退職金は資金繰りを悪化させたり、税務調査で否認されたりするリスクがあります。功績倍率法や1年当たり平均法などの計算方法を活用し、適正な金額の役員退職金を支給しましょう。この記事では、役員退職金の概要やメリット・デメリット、計算方法や損金算入の時期について解説します。
目次
1. 役員退職金とは?
役員退職金(役員退職慰労金)は、取締役・監査役・執行役・会計参与などの会社法上の役員が退職した際に支給する退職金です。役員退職金を支給するには、定款の規定か、株主総会の決議が必要です。役員退職金と一般的な退職金との違いや、役員退職金の支給要件を解説します。
1‐1. 一般的な退職金との違い
一般的な退職金の場合、就業規則の退職金規程に基づいて支給します。退職金規程の作成は法律上の義務ではありませんが、従業員とのトラブル防止のため、退職金規程を設ける企業が一般的です。一方、役員退職金は就業規則の退職金規程にかかわらず支給できます。ただし、役員退職金を支給するには、定款の規定か、株主総会の決議が必要です。もし株主総会の決議がスムーズに進まなかった場合、役員退職金を支給することはできません。
1‐2. 役員退職金の支給には「退職の事実」が必要
2011年の税制改正により、役員退職金の取り扱いが見直されました。役員退職金を支給するには、形式的な退職ではなく、明確な「退職の事実」が必要です。たとえば、以下のような事情が認められる場合、役員退職金を支給することができます。
・役員が常勤の役員ではなく、非常勤の役員になった場合
・役員が取締役から監査役になった場合
・役員の分掌変更(地位や職務内容の変更)により、役員報酬が減少した場合
ただし、役員報酬が減少しただけでは役員退職金を支給できません。役員の勤務状況などから、役員が退職した事実を明確に確認できる必要があります。
2. 役員退職金を支払うメリットとデメリット
役員退職金を支払うメリットは、役員側だけでなく企業側にもあります。役員退職金は全額を損金に算入できるため、法人税などの節税対策として役員退職金を設ける企業も存在します。しかし、高額な役員退職金は資金繰りを悪化させたり、税務調査で否認されたりするリスクもあります。役員退職金を支払うメリット・デメリットを解説します。
2‐1. 企業側のメリット
役員退職金は一般的な退職金と違い、その全額を損金に算入することができます。そのため、役員退職金を計上することで所得を圧縮し、法人税などを節税することができます。また、役員退職金は社会保険料の算定基礎である標準報酬月額には含まれません。そのため、役員退職金を支払う際、企業側は社会保険料を納付する必要がないのもメリットです。
2‐2. 役員側のメリット
役員退職金は税務上「退職所得」に該当します。そのため、役員退職金を受け取った役員は所得税が課せられます。しかし、退職所得は退職所得控除があるなど税務上優遇されており、税負担が軽いのが特徴です。国税庁によると、役員退職金にかかる所得税は、以下の計算式で求められます。[注1]
・退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
※役員としての勤続年数が5年以下の場合は2分の1にならない
・所得税=退職所得の金額×所得税率-所得控除額
以下の表の通り、退職所得控除額は勤続年数が長いほど大きくなります。[注1]また、役員としての勤続年数が5年を超える場合、退職所得の金額は退職所得控除額を差し引いた後で2分の1になります。役員退職金は税負担が軽いため、役員側にもメリットがあります。
2‐3. 役員退職金のデメリット
一方、役員退職金のデメリットは2つあります。
・資金繰りの悪化につながるリスク
・税務調査で否認されるリスク
役員退職金の支給額は企業が自由に決められます。しかし、役員退職金として多額の資金を拠出した場合、企業の資金繰りの悪化につながるリスクがあります。また、所轄の税務署によって役員退職金の金額が不当に高額であると判断されるた場合、税務調査で否認され、損金に算入できない可能性もあります。
3. 役員退職金の計算方法
役員退職金は一般的な退職金と違い、退職金規程を作成する必要がありません。しかし、役員とのトラブル防止のため、あらかじめ役員退職金規程を作成し、役員退職金の計算方法や支払い方法を示す企業も存在します。役員退職金の計算方法として、「功績倍率法」「1年当たり平均法」の2つを紹介します。
3-1. 功績倍率法
功績倍率法は、役員が退職した時点の報酬月額(最終報酬月額)を基準に役員退職金を計算する方法です。一般的には、役員退職金は功績倍率法で算定します。功績倍率法の計算式は以下の通りです。
・役員退職金額=最終報酬月額×勤続年数×功績倍率
功績倍率とは、役員の役職に基づいた倍率のことです。たとえば、代表取締役の功績倍率は、取締役の功績倍率よりも高くなります。また、特に大きな功績を残した役職に対しては、役員退職金額の30%程度の「功労加算金」を追加で支給することもできます。
・功労加算金=役員退職金額×30%
3-2. 1年当たり平均法
1年当たり平均法は、主に企業会計よりも紛争処理において用いられるけいさんほです。1年当たり平均法では、規模や業種が類似した同業他社の退職金の金額を基準として役員退職金を計算します。1年当たり平均法での計算式は以下の通りです。
- 役員退職金額=1年当たり退職金×勤続年数
4. 役員退職金の損金算入を行うタイミング
役員退職金はその全額を損金に算入することができます。役員退職金の損金算入が可能な時期は、役員の退職についての株主総会の決議を行った事業年度です。たとえば、役員が退職した事業年度の翌年に株主総会の決議を行い、役員退職金の支給額を決定した場合、原則として株主総会の決議を行った日に損金算入を行います。税務調査で否認されないため、役員退職金の損金算入時期を確認しておきましょう。
5. 役員退職金は損金算入が可能!役員退職金のメリットや計算方法を確認しよう
役員退職金とは、役員が退職した際に支給する退職慰労金です。一般的な退職金と違い、退職金規程を作成する必要はありません。ただし、役員退職金の支給には、定款の規定か、株主総会の決議が必要です。役員退職金は全額を損金に参入できるため、企業側にも節税対策としてのメリットがあります。ただし、役員退職金の金額が合理的でない場合、税務調査で否認されるリスクもあります。役員退職金の損金算入が可能な時期は、株主総会の決議を行った事業年度です。税務調査で否認されないため、役員退職金の計算方法や損金算入時期を確認しておきましょう。
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