出張中の残業代は支給する?移動時間・休日の扱い方も徹底解説
更新日: 2025.3.27
公開日: 2024.12.27
OHSUGI
「出張中の残業代は支給する?」
「出張の移動時間や休日に手当は必要?」
「出張には残業代でない?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
出張中であっても、労働時間が把握できる場合は、残業代を支給しなければなりません。この記事では、出張中の残業代の扱いについて詳しく解説します。
帰宅時間や移動時間、休日の扱い方、さらには出張中の残業代の計算方法まで説明しますので、出張中の時間管理について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
1. 労働時間が把握できる場合は出張中でも残業代が必要
出張中であっても、労働時間が把握できる場合は、実労働時間に応じた残業代の支給が必要です。
以下のようなケースでは労働時間が把握できるため、実際に働いた時間に基づいて残業代の支払いが定められています。
- 上司など労働時間を管理する人と一緒に行動している場合
- 出張先の事業所で勤務している場合
- 事前に指示されたスケジュールに従い業務を遂行し、報告している場合
例えば、上司などの管理者と同行している場合、企業側が従業員の労働状況を直接把握できるため、労働時間が明確になります。
このように労働時間が確認できる状況であれば、出張中であっても実際に労働した時間に応じた残業代を支払う必要があります。
2. 事業場外みなし労働制を適用すると出張中の残業代は不要
「事業場外みなし労働時間制」を適用すると、設定されたみなし労働時間内で働いたとみなされるため、超過しても残業代の支払いは不要です。
「事業場外みなし労働時間制」とは、実際の労働時間に関係なく、事前に設定された労働時間で勤務したものとみなす制度を指します。
出張は労働時間を正確に把握するのが難しいため、「事業外みなし労働時間制」を採用する企業が一般的です。
例えば、みなし労働時間が8時間と設定されている場合、出張先で10時間働いたとしても労働時間は8時間とみなされ、残業代は発生しません。
反対に、実際の労働時間が6時間であっても、8時間勤務したとみなされるため、8時間分の賃金を支給する必要があります。
事業場外みなし労働時間制を適用する場合、みなし労働時間を超えても残業代の支給は不要です。事業場外みなし労働時間制を活用すれば、出張時の労働時間管理がシンプルになり、企業側の負担軽減にもつながります。
ただし、休日や深夜に労働が発生した場合には、通常通りの割増賃金が必要です。
3. 出張中の移動時間の扱い方
出張中の移動時間の扱い方を、以下の流れで解説します。
- 移動時間を自由に過ごせる場合
- 移動時間を自由に過ごせない場合
3-1. 移動時間に残業代が出ないケース
出張中の移動時間は基本的に労働時間に該当せず、残業代は必要ありません。
移動中はある程度の自由が認められていると考えられ、使用者の指揮命令下にはないと考えられるためです。
例えば、出張中の移動時間では次のようなことをして、自由に過ごすことができます。
- 携帯電話を使用し、SNSやゲームを楽しむ
- 本や電子書籍で読書をする
- 休息を取る
移動中の自由度が確保され、従業員がリラックスして過ごせる場合、労働時間とカウントしません。つまり、残業代の支給は不要です。
また、移動時間に上司から指示があった場合でも、対応が出張後でよいものであれば「使用者の指揮命令下にある」とはみなされません。そのため、このような状況も労働時間には該当せず、残業代を支払う必要はないでしょう。
出張における移動時間は、原則、労働時間として計上する必要はありません。
3-2. 移動時間に残業代が出るケース
出張中の移動時間を自由に過ごせない場合は「労働時間」に該当し、残業代を支給しなければなりません。
移動中に業務をおこなう、または迅速な対応が求められる状況は、「使用者の指揮命令下にある」と判断されるためです。
例えば、以下のような業務を移動時間におこなう場合は、移動時間であっても労働時間に該当します。
- 移動中にパソコンで業務をおこなう
- 会社の指示を受けながら携帯電話で仕事をする
- 打ち合わせをおこなう
- 物の運搬や管理をおこなう
- 会社のVIPの警備として同行する
上記のようなケースは移動であっても「業務の一環」とされるため、労働時間に該当します。そのため、所定労働時間を超える場合は、残業代の支払いが必要です。
また、具体的な指示がなくとも、移動中に指示が出され、すぐに対応しなければならない場合は「待機時間」とみなされ、労働時間に含まれます。
移動時間が業務にあてられているかどうかを適切に判断し、自由に過ごせない場合には残業代を支給してください。
4. 出張中の休日の扱い方
出張中の休日の扱い方を、以下の流れで説明します。
- 具体的な指示がない場合
- 具体的な指示がある場合
4-1. 具体的な指示がない場合
使用者からの具体的な指示・命令がない場合は、出張中であっても「休日」として扱われます。
通常の労働日とは違い、休日であれば従業員は出張先でも自由に過ごせるためです。そのため、出張中に休日があっても、休日出勤手当の支払いは必要ありません。
ただし、労働基準法に基づき、出張中であっても「少なくとも1週1回」、あるいは「4週間で4日以上」の休日を付与する必要があります。
したがって出張スケジュールを調整し、従業員が出張先で休日を取得できるよう配慮するようにしましょう。
なお、出張先への「移動」が休日におこなわれる場合でも、その移動時間は通常、労働時間に含まれません。
例えば、月曜日の業務のために前日の日曜日に出張先へ移動した場合でも、日曜日の移動時間は労働時間に含まれず、休日出勤手当の支給対象外です。
4-2. 具体的な指示がある場合
出勤中の休日において、使用者からの具体的な指示・命令がある場合は、休日労働に該当します。
休日であっても、指示を受けることにより、従業員は使用者の指揮命令下にあるとみなされるためです。そのため、業務をおこなった時間は労働時間として扱い、休日出勤手当の支給が必要となるでしょう。
例えば、以下のようなケースは「休日労働」とみなされます。
- 出張先で緊急の打ち合わせが発生し、従業員がその指示に従って対応する場合
- 取引先との会議に参加するような命令が出された場合
上記のような場合は、企業は労働時間に対する休日出勤手当を支払わなければなりません。
休日に指示を出す際には、従業員がその時間を労働時間として扱われることを理解してもらい、勤務終了後には適切な休日手当を支給するよう、労務管理を徹底することが重要です。
5. 出張中の残業代の計算方法
出張中の残業代の計算方法は次のとおりです。
残業代=該当社員1時間あたりの賃金額✕割増率✕残業時間
基本的に通常の残業代と同じ計算式を使用します。出張先での業務が所定労働時間を超えた場合、超過分について適切に残業代を支給しましょう。
割増率は、残業の種類に応じて以下のように異なります。
- 法定労働時間(1日8時間、週40時間)超過:25%以上の割増
- 休日出勤:35%以上の割増
- 深夜労働:25%以上の割増
例えば、出張先で10時間働いた場合、所定の8時間を超える2時間の残業代は、以下のとおりです。
残業代=「該当社員の1時間あたりの賃金額✕2時間✕1.25」
なお、「事業場外みなし労働時間制」を適用している場合、出張中の実労働時間にかかわらず、残業代を支給する必要はありません。
6. 従業員が出張を拒否できるケース
出張中であっても条件が合えば残業代が発生します。しかし、従業員によっては出張を拒否する可能性があるでしょう。従業員に出張を依頼するのであれば、事前にどのようなケースであれば拒否できるのかを把握しておきましょう。
6-1. 業務に必要のない出張
出張は、業務遂行上必要な場合に限られます。そのため、単なる上司の付き添いや、業務と直接関係のない出張を命じられた場合、従業員は拒否することが可能です。
例えば、次のようなケースが該当します。
- 会議にオンライン参加できるのに、対面参加を強制される
- 自身の業務内容とは無関係な研修への出張
- 他部署の業務を手伝うための一時的な出張
このような出張は、合理的な業務指示とは言えず、拒否できる可能性が高いでしょう。
6-2. 契約で出張しないことになっている
従業員の労働契約に「出張なし」と明記されている場合、会社は一方的に出張を命じることはできません。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 雇用契約書に「出張を伴わない業務」と記載されている
- 募集要項や面接時に「出張なし」と説明されていた
- 出張をしないことを前提に入社した
このような場合、会社が出張を命じるには、従業員の同意が必要です。
6-3. 育児中の出張
育児を理由に出張を拒否できる場合もあります。特に、小さな子どもを持つ親にとって、長期間の出張は家庭生活に大きな影響を与えます。育児に関する法律や社内制度を活用し、出張を回避できる可能性があるため、会社は従業員と相談しながら調整することが大切です。
7. 出張中の残業時間を適切に取り扱い残業代を支給しよう
労働時間が把握できる場合は、出張中であっても残業代を支給する必要があります。一方、「事業場外みなし労働時間制」を適用される場合には、残業代の支給は不要です。
移動時間を自由に過ごせる場合、労働時間に該当しません。しかし、業務対応が必要な場合は労働時間として計算され、残業代が発生します。
また、出張中の休日に指示がなければ「休日」として扱われますが、指示があれば「休日労働」として手当を支給しなければなりません。
この記事で紹介した内容を参考に、出張中の残業時間を適切に取り扱い、必要に応じて残業代を支給しましょう。
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