通勤手当の対象となる通勤手段と計算方法について
更新日: 2023.3.17
公開日: 2022.3.7
YOSHIDA
通勤手当は、労働基準法で定めるはっきりとした規定がなく、企業側が自由に決めることが可能です。また、通勤手当の支給額によっては非課税対象となります。
そのため、担当者は通勤手当の支給基準や計算方法について、従業員にしっかり説明できる知識量が求められます。
今回は、通勤手当の対象となる通勤手段やその計算方法、手段ごとの非課税限度額について解説していきます。
1. 通勤手当の対象となる通勤手段
通勤手当の対象となる通勤手段は、各企業ごとに就業規則などで決められています。一般的な通勤手段としては、以下のようなものが挙げられます。
- 公共交通機関(電車、バスなど)での通勤
- 自家用車(車や自転車など)での通勤
- 徒歩での通勤
2. 通勤手段ごとの通勤手当の計算方法
通勤手当の計算方法は、交通手段によって異なります。ここではそれぞれの計算方法ついて順に解説していきます。
2-1. 自家用車で通勤する場合
自家用車で通勤する場合は、ガソリン単価を用いて通勤手当を計算する方法があります。
【ガソリン単価で1ヶ月の通勤手当を計算する場合】
1ヶ月の通勤手当=往復分の通勤距離×1ヶ月の勤務日数×ガソリン単価
正社員の場合は公共交通機関を利用する際の定期代と同様に、決められた月の支給額を固定することをおすすめします。なお、ガソリン単価については、企業側が決めるのが一般的です。以下のような計算式でおおよそのガソリン単価を調べることができます。
【おおよそのガソリン単価】
ガソリン単価(1km)=ガソリン1Lあたりの値段÷ガソリン1Lあたりの走行可能距離
ガソリン単価とは別に、距離単価を用いた計算方法もあります。
【距離単価を用いて通勤手当を算出する場合】
1ヶ月分の通勤手当=往復分の通勤距離×距離単価 × 1ヶ月の勤務日数
ガソリン単価と同様に、距離単価においても企業側が自由に決めることができ、ガソリン単価よりも1km当たりの単価が曖昧なことが多いです。そのため、距離単価と比較するとガソリン単価の方が比較的正確な通勤手当の算出方法といえるでしょう。
2-2. 公共交通機関(電車・バス)で通勤する場合
公共交通機関を利用する場合は、定められた月数分の通勤定期券に相当する金額を手当として支給されることが一般的です。企業によっては、就業規則に「通勤手当の額は公共交通機関を合理的に利用した場合の通勤定期券の額に準ずる」ことを定め、一律に支給するケースで対応しているところもあります。
また、回数券やICカードを利用する場合、計算方法は少し複雑です。
【回数券を利用する場合の計算式】
1ヶ月の通勤手当=(回数券1冊分の価格×1ヶ月当たりの所要枚数)÷当該回数券の枚数
【ICカードを利用する場合の計算式】
運賃等相当額=(支給月数に応じた通勤のために負担する運賃の額の合計÷支給月数)×支給月数
注意点として、ICカードの種類によっては、特典として電車の運賃が割引されるものもあります。これは場合によっては不正受給となる可能性があります。そのため、ICカードを通勤手当や交通費として利用する場合は、会社の規定に従ったICカードまたは、PASMOやSuicaなどに限定することをおすすめします。
2-3. 自転車や徒歩で通勤する場合
自転車や徒歩の場合は、金銭の負担が発生しないため、通勤手当をもらえるかどうかは、就業規則で企業側に決定権があります。一般的に徒歩の場合は支給されません。
自転車の場合は徒歩と比較すると通勤手当が支給されるケースが多いようです。理由としては、所得税法に「給与所得者が通勤する際に、その通勤に必要な交通機関の利用または交通用具の使用のために支出する費用に充てるもの」と定められていることが挙げられます。
自転車は交通用具として扱われることが多いため、自家用車と同様の計算方法で支給されるケースが一般的です。
3. 通勤手段ごとの通勤手当の課税
企業が、従業員に支払う基本給以外の諸手当は、給与所得の一部と考えられています。そのため、支給額に応じた所得税が発生しますが、通勤手当の場合は金額によっては非課税対象となります。
非課税の対象になる場合、通勤手当として支給された方が従業員にとって得になります。それぞれの交通手段によって限度額が異なるため、交通手段ごとに解説していきます。
3-1. 自家用車(自動車・自転車)を利用した場合
マイカー通勤している従業員の非課税となる1ヶ月当たりの限度額は、片道分の通勤経路に沿った通勤距離に応じて限度額が定められています。
非課税となる1ヶ月当たりの限度額は以下の通りです。
- 片道55Km以上:限度額31,600円
- 片道45Km以上55Km未満:限度額は28,000円
- 片道35Km以上45Km未満:限度額は24,400円
- 片道25Km以上35Km未満:限度額は18,700円
- 片道15Km以上25Km未満:限度額は12,900円
- 片道10Km以上15Km未満:限度額は7,100円
- 片道2Km以上10Km未満:限度額は4,200円
- 通勤距離が片道2Km未満:全額課税
国税庁の規定では「自動車や自転車などの交通用具を使用している人」がこの分類に該当するため、自転車通勤の場合も上記の非課税対象に当てはまります。
3-2. 公共交通機関を利用した場合
公共交通機関(電車やバスなど)を利用した場合、通勤手当の1ヶ月当たりの金額が15万円を超えた際に、15万円が非課税となります。
以前までは非課税の上限額は10万円でしたが、2016年の税制改正以降、通勤手当の非課税限度額の上限額が10万円から15万円に引き上げられました。
3-3. 徒歩の場合
所得税法では「給与所得者が通勤する際に、その通勤に必要な交通機関の利用または交通用具の使用のために支出する費用に充てるもの」として、通勤手当に一定の非課税限度額を定めています。
このことから、交通機関の利用や交通用具を使用しない徒歩通勤については非課税となるケースはほとんどありません。
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4. 担当者は従業員手当の対象や通勤手段、計算方法を把握しておこう
通勤手当は通勤にともなう福利厚生であり、新設や変更の決定権は企業の自由です。ただし、従業員の働きやすい環境づくりにも影響する重要な要素の一つとなっています。また、通勤手当は支給額によっては非課税対象となります。手当(福利厚生)は必要に応じて新設され、必要がなければ廃止されることが一般的です。
また、新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務の導入が広がっています。このような働き方の多様化にともない、通勤手当の見直しだけでなく在宅勤務手当の検討も行われています。今後、通勤手当の見直しがあった場合、それに相応する新しい手当が出てくる可能性もあるでしょう。
担当者は手当の対象や計算方法をしっかり確認しておき、いつでも従業員に説明できるようにしておかなければなりません。まずは従業員にとって身近な通勤手当について、しっかり知識を身に着けておくことが大切です。
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