退職金にかかる税金は?計算方法や退職金控除についても解説
更新日: 2025.3.27
公開日: 2024.7.30
OHSUGI
「退職金に税金はかかるの?かからない方法はある?」
「退職金にかかる税金の計算方法は?」
上記のようにお悩みではありませんか。
退職金は、金額や働いた期間により税金がかかります。経理・労務担当者は、退職金にかかる税金を把握し、適切に対応することが大切です。
本記事では退職金にかかる税金の種類や課税方法、計算方法を紹介します。従業員の状況にあわせた対応への理解を深めたい方は、ぜひご一読ください。
目次 [非表示]
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1. 退職金にかかる税金の種類
退職金にかかる税金の種類は以下の3つです。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
3つの税金についてひとつひとつ詳しく解説します。
1-1. 所得税
所得税は企業から支払われる給与をはじめとした個人の収入に対してかかる税金です。年1月1日から12月31日の1年間の所得に既定の税率を適用して算出し、国に納めます。
所得税は累進課税制度を採用しているため、所得が多い人ほど税負担が増える仕組みです。
退職金に対しても所得税はかかります。
しかし、退職金による所得(退職所得)は分離課税になっており、ほかの所得とは切り離して個別に税額を計算することになります。
1-2. 住民税
退職金には住民税もかかります。
住民税は、毎年1月1日現在に住んでいる都道府県・市区町村に納める税金のことです。住民税には、都民税や道府県民税、市町村民税、特別区民税の種類があります。
一定の所得を超える人すべてが納める均等割と、前年の所得に応じた税率をかける所得割の合計が税額です。
1-3. 復興特別所得税
退職金にかかる税金として復興特別所得税があります。
復興特別所得税とは、東日本大震災の影響で創設された税金のことで、所得税の付加税に該当します。2037年までの課税と決まっており、2037年までの退職金には復興特別所得税がかかります。
基準所得税額に2.1%をかけた金額が復興特別所得税額になるため、所得税と同様に所得が多い人ほど納税額が高くなります。
2. 退職金の受け取り方で課税方法が変わる
退職金は受け取り方によって課税方法が異なります。どのような違いがあるのか、節税ができる可能性もあるためしっかりと知っておきましょう。
2-1. 退職金の受け取り方は2種類
退職金の受け取り方は「一時金」と「年金形式」の2種類です。受け取り方によって税金の計算方法が違い、それぞれにメリットとデメリットがあります。
一時金で受け取る
一時金とは、特定の条件下で一度だけ支払われる金銭を指します。退職金を一時金として受け取った場合、退職所得は分離課税になります。
メリットは一時金で受け取った場合は所得控除が適用される点です。退職金の課税金額を抑えられるため、税負担を軽減できます。
一方で一時金として一括で退職金を受け取った場合は、後述する年金方式で受け取るよりも運用期間が短くなり、受取総額が少なくなることがあるというデメリットもあります。
年金形式で受け取る
退職金を年金として分割して受け取ることも可能です。この場合は一時金とは異なり退職所得控除が適用されません。雑所得として計上するため、公的年金やアルバイトなどにより合計所得が増えると税金や社会保険料が高くなることがあります。
そのため、税負担は一時金と比べると大きくなりやすい点に注意が必要です。しかし、年金形式で長期で受け取る方法を選ぶと、受取総額が増える可能性があるというメリットもあります。
2-2. 税金対策がしやすいのはどっち?
ここまででお話をしてきた通り、退職金は一時金で受け取った場合にのみ退職所得控除が適用されます。退職所得控除は長期間勤務しているほど大きくなります。
そのため、長期勤務していた人が税金対策にのみ焦点を当てた場合は一時金として受け取った方がよいでしょう。
しかし、受取総額は年金形式の方が多くなりやすいため、どちらが得か?という点で考えると退職する年齢や年金以外の合計所得などを考えなければなりません。また、確定申告によって節税が可能になるケースもあります。
確定申告で節税ができるケースがある
退職金は受け取り方法を問わずに基本的には確定申告が必要ありません。しかし、確定申告をすることで税金が安くなることがあります。
一時金で受け取った場合は「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、源泉徴収されている所得税の一部が還付されることがあります。
年金形式で受け取る場合も、住宅ローン減税を受けている場合や、寄付金控除に該当する寄付(ふるさと納税など)をしている場合、医療費が一定額以上である場合などは、払いすぎている所得税が還付され、翌年の住民税も安くなることがあります。
3. 退職金控除額の計算方法
退職金にかかる税金を計算するには、先に退職所得控除額を計算する必要があります。退職金の受け取り方により控除額の計算方法が異なるため、受け取り方別に解説していきます。
3-1. 一時金として受け取る場合
一時金として退職金を受け取る際の控除額の計算方法は以下のとおりです。
勤続年数 | 退職所得控除の計算式 |
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円) |
20年以上 | 800万円+70万円×(勤続年数‐20年) |
勤続年数によって計算式が異なる点に注意して計算しましょう。
3-2. 年金として分割で受け取る場合
年金として分割で退職金を受け取る際の公的年金等控除額は以下のとおりです。
年齢 | 年金などの収入金額 | 公的年金等控除額 |
65歳未満 | 130万円未満 | 60万円 |
130万~410万円未満 | 収入金額×25%+275,000円 | |
410万~770万円未満 | 収入金額×15%+685,000円 | |
770万~1,000万円未満 | 収入金額×25%+1,455,000円 | |
1,000万円以上 | 1,955,000円 | |
65歳以上 | 330万円未満 | 110万円 |
330万~410万円未満 | 収入金額×25%+275,000円 | |
410万~770万円未満 | 収入金額×15%+685,000円 | |
770万~1,000万円未満 | 収入金額×25%+1,455,000円 | |
1,000万円以上 | 1,955,000円 |
上記の中から条件に当てはまる部分の計算式や金額を適用させます。
3-3. 一時金と年金を併用する場合
一時金と年金を併用する場合は、一時金で受け取る部分は退職所得控除、年金として受け取る部分は公的年金等控除額で計算します。
算出方法も同じであるため、一時金で受け取る金額と年金で受け取る金額を元に、それぞれ前述した計算方法で算出することができます。
後述する退職金にかかる税金に関しても、一時金と年金形式で分けた計算が必要です。
4. 退職金にかかる税金の計算方法
退職金にかかる税金の計算方法を一時金として受け取った場合と、年金形式で受け取った場合に分けて解説していきます。なお、一時金と年金形式を併用する場合は、それぞれ分けて計算します。
4-1. 一時金として受け取る場合
退職金を一時金として受け取る場合の所得税・復興特別所得税の計算方法は以下のとおりです。
課税退職所得額 | (退職金額(源泉徴収前の金額)‐退職所得控除額)×1/2 |
所得税額 | 課税退職所得額×所得税率-控除額 |
復興特別所得税額 | 所得税額×復興特別所得税の税率(2.1%) |
一時金として受け取る場合は分離課税に該当するため、ほかの所得とは分けて課税されます。さらに、退職所得控除の差し引きも可能です。
ほかにも確定給付企業年金や、企業型確定拠出年金に加入している方が一括で受け取る場合、退職金と合算して計算しなければいけません。
次に、退職金を一時金として受け取る場合の住民税額の計算方法です。
住民税額 | 課税退職所得額×住民税率 |
住民税率は従業員が居住する地域の公式サイトで確認しましょう。
参考:退職金と税|国税庁
4-2. 年金として分割で受け取る場合
退職金を年金として分割で受け取る際の所得税・復興特別所得税の計算方法は以下のとおりです。
公的年金等の雑所得額 | 退職金などの年金と公的年金などの収入金額‐公的年金等控除額 |
課税所得額 | 公的年金等の雑所得額+そのほかの所得額 |
所得税額 | 課税所得額×所得税率 |
復興特別所得税額 | 所得税額×復興特別所得税の税率(2.1%) |
年金として分割で受け取る場合は雑所得になるため、ほかにも雑所得に該当するものがあれば合算して計算しなければいけません。
雑所得を計算する際には受け取る年金額から公的年金等控除額を差し引けます。
次は、退職金を年金として分割で受け取る際の住民税の計算方法です。
住民税額 | 課税所得額×住民税率 |
こちらも住民税率は従業員が居住する地域の公式サイトで確認しましょう。
5. 退職金にかかる税金をシミュレーション
退職金にかかる税金を3つの例に分けて紹介します。
- 一時金600万・勤続年数15年
- 一時金850万・勤続年数12年
- 一時金2,500万・勤続年数30年
それぞれの計算方法をご覧ください。
5-1. 一時金600万・勤続年数15年
勤続年数15年の方が、退職金600万円を一時金として受け取る場合、所得税や住民税はかかりません。
勤続年数 | 退職所得控除の計算式 |
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円) |
20年以上 | 800万円+70万円×(勤続年数‐20年) |
上記の計算式に当てはめた場合
退職所得控除額が15年×40万円=600万円となり、退職金がすべて控除されて退職所得が0円になるためです。
そのため、勤続年数が15年で退職金が600万円の方は、そのまま手元に残ります。
5-2. 一時金850万・勤続年数12年
勤続年数12年の方が、退職金850万円を一時金として受け取る場合、所得税は9万4,442円、住民税は18万円かかります。
まずは所得税の計算から確認してみましょう。
所得税 | 計算方法 |
退職所得控除額 | 40万円×12年=480万円 |
課税退職所得額 | (850万‐480万)×1/2=185万円 |
所得税の控除額、税率 | 控除額0円、税率5%※ |
所得税額 | 課税退職所得額×税率‐控除額 185万円×5%‐0円=9万2,500円 |
復興特別所得税 | 所得税額×復興特別所得税の税率 9万2,500円×2.1%=1,942円 |
所得税額と復興特別所得税の合計 | 9万4,442円 |
続いては住民税の計算を見ていきます。
住民税 | 計算方法 |
住民税額 | 課税退職所得額×住民税率 185万円×10%=18万円 |
つまり、勤続年数が12年で一時金850万円の方の退職金の手取りは890万5,540円です。
参考:退職金と税|国税庁
5-3. 一時金2,600万・勤続年数31年
勤続年数31年の方が退職金2,600万円を一時金として受け取る場合、所得税は51万3,052円、住民税は46万5,000円かかります。
所得税の計算方法は以下のとおりです。
所得税 | 計算方法 |
退職所得控除額 | 800万+70万円×(31‐20)=1,570万円 |
課税退職所得額 | (2,500万‐1,570万)×1/2=465万円 |
所得税の税率、控除額 | 控除額:42万7,500円、税率20%※ |
所得税額 | 課税退職所得額×税率‐控除額 465万円×20%‐42万7,500円=50万2,500円 |
復興特別所得税 | 所得税額×復興特別所得税の税率 50万2,500円×2.1%=1万552円 |
所得税額と復興特別所得税の合計 | 51万3,052円 |
続いて住民税の計算方法を確認しましょう。
住民税 | 計算方法 |
住民税額 | 課税退職所得額×住民税率 465万円×10%=46万5,000円 |
つまり、勤続年数が31年で一時金2,600万円の方の退職金の手取りは2,502万1,948円です。
参考:退職金と税|国税庁
6. 退職金にかかる税金の納税方法
退職金にかかる所得税と住民税は、源泉徴収で納めるケースが多いです。通常の給料やボーナスなどと同様に、天引きで徴収されたあとの金額が振り込まれるため、基本的に確定申告も必要ありません。
退職金を支給後、従業員に「退職所得の受給に関する申告書」の提出を依頼します。提出が完了することで、所得税や復興特別所得税の課税関係が終了となる運びです。
申告書を提出しないと退職金に対して20.42%の所得税が課税されるため、忘れずに従業員に案内してください。
7. 退職金の控除や税金を正しく計算して処理しよう
退職金は、働いた期間と受け取る金額によって所得税と住民税が発生します。一時金として退職金を受け取るか、年金として受け取るかによっても税金の計算方法が異なります。
発生する税金を計算したうえで、どちらの方法で退職金を受け取るのか、従業員に確認してください。退職金の税金を適切に収めるためにも、事前の準備をしておきましょう。
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