インボイス制度が建設業に与える影響や注意点について解説
更新日: 2025.6.18 公開日: 2022.1.30 jinjer Blog 編集部

2023年から、インボイス制度が本格的に導入されます。インボイス制度とは、税区分を明確にする請求書の発行を義務付けることで、課税事業者が仕入れの際に発生した消費税の控除を申請を可能とする制度です。これまでは免税事業者だった場合、インボイス制度の導入による影響がとくに大きくなることが予想されます。
今回は、インボイス制度の導入によって建設業が受ける影響について、主に一人親方へ発注する側の建設事業者が覚えておきたいポイントを中心に解説します。
目次
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1.インボイス制度が建築業に与える影響とは


インボイス制度が導入されることで、課税事業者は仕入れた際にかかった消費税の控除を受けるために、仕入れ先から適格請求書等を発行してもらう必要があります。
たとえば、課税事業者が100万円で品物を仕入れた場合、10%の消費税がかかりますので全部で110万円を支払います。一方で、150万円で施工など必要な業務を行った場合、消費税を合わせて165万円の料金を受け取ります。
このうち、支払った金額を控除したうえで差額である5万円のみの納税とするためには、仕入れ先から税区分が明確に明記された適格請求書を受け取る必要があります。
これまで、年間の売上が1,000万円に満たない事業者は消費税の免税が認められていました。免税事業者が受け取った消費税は、利益として扱うことが可能だったのです。
2.建設業がインボイス制度で注意したいポイント


自分自身あるいは家族などによって事業を行っている一人親方の場合、ほとんどが免税事業者のケースが多いでしょう。一人親方に仕事を発注する場合、こちら側が課税事業者なのであれば、相手が適格請求書等を発行できるかどうかよく確認しなければいけません。
もし、相手が免税事業者のままで適格請求書等を発行できない一人親方の場合、課税事業者側は仕入税額控除が適用されないため、税負担が大きくなることになります。先ほどの例で100万円で一人親方に発注して、お客さまから150万円を受け取ったとすると、適格請求書等がなければ控除ができないため、差額に関係なく15万円の消費税を納める義務が発生します。
本来であれば受けられる控除が適用されないのは、取引する価格が大きくなるほどに課税事業者側の負担が膨らむことを意味しています。
3.インボイス制度にどのように対応するべきか


インボイス制度は、2023年10月1日を皮切りとして段階的に導入されていきます。最初のうちは免税事業者から仕入れる際の税負担が軽くなるようになっていますが、最終的に2029年にはこの控除はなくなってしまう予定です。一人親方に対して仕事を発注する側の課税事業者が検討するべき対応について見ていきましょう。
3-1.どれだけの影響が出るか把握する
インボイス制度の導入によって影響を受ける事業は数多くありますが、建設業はなかでも大きな変化を要されるとされています。これは、建設業ではBtoB事業が多く含まれており、加えて先述の一人親方が発注先として大きな比率を占めているためです。
とくに大きなお金が動くことになる建設業においては、発注先に免税事業者が含まれていることで出る影響はかなり多くなるかもしれません。
どのような企業に対しても当てはまるわけではありませんが、もし今の段階で一人親方に仕事をお願いしているのであれば、今後の発注先を慎重に検討するべきでしょう。
3-2.インボイス制度に対する理解を深めておく
必然的に免税事業者へ仕事を発注する機会が多くなりがちな建設業においては、とにかくインボイス制度に対する理解を誰よりも深めておくことが大切です。発注する側の自社がまだ免税事業者なのであれば、とくに詳しく知っておくべきでしょう。
仕入税額控除に必要な適格請求書等は、誰でも発行できるわけではありません。発行できるのは、必要な手続きを済ませた課税事業者のみです。免税事業者の場合は、課税事業者と同じ扱いにしてもらうように別の手続きを先に行う必要があります。
なお、一定の期間以内であれば、免税事業者でも課税事業者と同じ扱いにしてもらう手続きを行わずに、適格請求書等の発行を認めてもらう申請を行うことが可能です。
3-3.免税事業者には発注しない
仕事をお願いする側にある建設事業者からしてみれば、税負担が増えてしまう免税事業者にわざわざ依頼する必要がありません。とくに免税事業者である場合が多い一人親方に対して発注する際は、適格請求書等が作成できるかよく確認するようにしましょう。
加えて、シビアな世界ではありますが、適格請求書等の発行ができない事業者に対しては、仕事の発注を断念することを検討したほうがよいでしょう。
4.インボイス制度によって改善が予測される偽装請負問題


建設業には、偽装請負を行っている一人親方に関する深刻な問題があります。法人の場合、雇用している従業員に対して、社会保険料などが発生します。この額が大きすぎるあまり、負担となるのを回避するべく、社員から個人事業主である一人親方にして、これまで通りの業務をさせてしまいます。
結果として、業務を行うためにかかる負担は社員として雇用しているときと変わらないものの、個人事業主であるために雇い主から社会保険や残業代、福利厚生といった恩恵が受けられない問題が発生していました。
発注する側としては変わらない問題かもしれませんが、本来かけるべき費用を免れようとする許し難い行為です。
今後、インボイス制度の導入によって、企業に属さず一人親方となるリスクが出てきます。よって、この偽装請負問題は少なくなることが予測されています。
5.インボイス制度によって変わる税負担や控除について要チェック


インボイス制度が導入されれば、仕入税額控除を受けるために、課税事業者は適格請求書等を発行できる事業者を相手に仕事を発注する必要が出てきます。とくに建設業においては、免税事業者が多い一人親方への仕事の発注がしづらくなるかもしれません。
シビアな世界ではありますが、わざわざ税負担が大きくなる選択肢を取る必要はないため、免税事業者に対して仕事を発注するのは避けたほうがよいでしょう。一人親方のなかには、インボイス制度の影響を踏まえて、課税事業者になることを選択している場合も考えられます。一人親方に対する発注を一切やめるのではなく、仕事をお願いする前によく確認することを大切にしてください。



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