リース契約の仕組みやメリット・デメリットを徹底解説
公開日: 2023.2.21 jinjer Blog 編集部
事業に必要な機器・設備は、購入する代わりにリースを申し込むこともできます。代表的な例が、コピー機や複合機などのOA機器のリース契約です。リース契約を利用すると、設備投資の負担を軽くしたり、固定資産などの会計処理を簡略化したりすることができます。この記事では、リース契約の仕組みやレンタル契約との違い、リース契約を利用するメリットやデメリットを詳しく解説します。
1. リース契約とは?
リース契約とは、リース会社にリース料を支払い、希望する物件を長期的に借りられる契約形態です。リース事業協会が2020年に実施した「リース需要動向調査」によると、企業全体の87.6%がリース契約を利用していることがわかっています。[注1]
リース契約といっても、さまざまな種類があります。ここでは、リース契約の種類や仕組み、契約締結までの流れや契約書の主な条項を解説します。
[注1] リース需要動向調査結果(概要)|公益社団法人リース事業協会
1-1. リース契約の種類
リース契約は、リース料の設定方法により、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの2つに分類できます。日本で広く利用されているのは、前者のファイナンス・リースです。ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いを簡単に説明します。
① ファイナンス・リース
ファイナンス・リースは、リース期間の中途で契約を解除できず、リース料の支払い方法がフルペイアウトの契約形態を指します。[注2]
フルペイアウト | ユーザー(賃借人)は、リース期間中に、リース会社(賃貸人)がリース契約に要した資金(設備等の取得価額、資金コスト、固定資産税、保険料など)のほぼ全額をリース料として支払う |
ファイナンス・リースでは、物件の取得にかかった費用だけでなく、固定資産税や保険料の支払いもユーザーが負担します。また、原則として中途解約ができません。やむを得ない事情により中途解約する場合は、残リース料に相当する金額の違約金を支払う取り決めになっていることが一般的です。
② オペレーティング・リース
オペレーティング・リースは、ファイナンス・リース以外の契約形態を指します。オペレーティング・リースでは、リース期間が終了した後の資産価値を見積り、リース料を設定します。そのため、医療機器や産業機械など、中古品でも市場価値が残存しやすい物件がオペレーティング・リースの対象となります。
1-2. リース契約の流れ
リース契約は、リース会社がユーザーの希望する物件を購入し、長期間賃貸する仕組みになっています。リース契約(ファイナンス・リース)の流れは次のとおりです。[注3]
- 設備等(リース物件)の選定
- リースの申込み
- リース契約の締結
- リース物件の売買契約の締結
- リース物件の搬入
- 物件借受証の発行(リースの開始・リース料支払い)
- 物件代金の支払い
- リース物件の保守契約の締結
リース契約では、借り受けたい機器や設備をユーザーが選定します。まずはユーザーが希望する物件を選び、リースの申し込みや契約締結を行うのが一般的なリース契約の流れです。リース会社は物件の販売会社と売買契約を締結し、ユーザーが希望する物件を購入します。リース料の支払い後にリース会社が物件借受証を発行し、物件のリースがスタートします。
1-3. リース契約書の主な条項
ファイナンス・リースは、リース会社とユーザーが取り交わすリース契約と、リース会社と物件の販売会社が取り交わす売買契約の2つの契約で成り立っています。主な契約条項として、次のようなものがあります。[注4]
- 契約の目的・中途解約の禁止
- 物件の搬入・引渡し
- リース開始日・期間
- 物件の所有権
- 物件の保守・修繕
- 物件の保険
- 物件の品質等の不適合
- 物件の滅失・損傷
- 契約違反
- 契約の更新(再リース)
- 物件の返還・清算
2. リース契約とレンタル契約の違い
リース契約とレンタル契約(賃貸借契約)の違いは、以下の表のとおりです。[注3]
ファイナンス・リース | 賃貸借・レンタル | |
対象物件 | ユーザー指定の物件で、ユーザー指定のサプライヤーからリース会社が新たに取得したもの | 賃貸人保有の不動産、動産が対象 |
契約期間 | 比較的長期 | 土地の場合はかなり長期(オフィスや住居の賃貸は2年契約が一般的) |
賃借料 | ユーザー指定で新たに取得した物件を対象とするため、リース料は、そのユーザーとのリース契約期間中に、物件代金その他の費用が全額回収できるように設定される | 一つの物件について、不特定多数の人を対象に複数回賃貸することを予定し、それによってその物件に投下した資金と諸費用が回収できるよう、賃借料(レンタル料)が設定される |
物件の引渡し | サプライヤーが物件を直接搬入し、ユーザーは物件を検査した後、「物件借受証」をリース会社に発行、リース会社がこれを受け取ったときに引渡しが完了する | 賃貸人が物件を引渡す |
解約 | リース期間中の解約(中途解約)はできない | 一般的に、賃借人は解約権を有する |
物件の修繕等 | ユーザーが物件の修繕義務を負い、サプライヤーとの間で保守契約を締結する | 賃貸人が物件の修繕義務を負う |
物件の品質等の不適合 | リース会社は物件の品質等に不適合があった場合の責任を負わない | 賃貸人は物件の品質等に不適合があった場合の責任を負う |
物件の滅失・損傷 | 物件が滅失・損傷した場合、ユーザーは損害賠償等を請求できない | 賃借人に帰責事由がなく物件が滅失・損傷した場合の損害は、賃貸人が負担する |
契約の更新 | リース期間終了後、リース契約を更新(再リース)することができる | 賃貸借(レンタル)期間終了後、同一条件または新たな条件で契約を更新することができる |
リース契約とレンタル契約の違いは、大きく3つに整理できます。
- リース契約ではユーザーが販売会社を指定し、借りたい物件を選定できる
- リース契約は中途解約できず、違反した場合は残期間のリース料に相当する違約金の支払いが必要になる
- リースした物件の修繕義務はユーザーが負い、販売会社と保守契約を締結する
レンタル契約では賃貸人が保有する物件しか借りられませんが、リース契約ではユーザーが販売会社を指定し、機器や設備を自由に選定できます。その代わり、賃借人が解約権を有するレンタル契約と違い、リース契約は中途解約ができません。また、リースした物件の修繕義務はユーザー側が負う必要があります。
3. リース契約のメリット
リース事業協会の「リース需要動向調査」によると、企業がリース契約に感じているメリットは以下のとおりです。[注1]
設備導入時に多額の資金が不要である | 75.1% |
コストを容易に把握できる | 54.4% |
事務管理の省力化が図れる | 52.5% |
設備の使用予定期間にあわせてリース期間を設定できる | 24.4% |
環境関連法制に適正に対応できる | 20.0% |
借入購入と比較して有利である | 17.2% |
資産のアウトソーシング効果が得られる | 15.5% |
リース契約を結ぶ場合、高額な設備投資が発生せず、支払いは月々のリース料のみとなります。リース料は定額のため、機器や設備にかかるコストを正確に把握することが可能です。また、固定資産税はリース会社が計算するため、会計処理などのバックオフィス業務の省力化にもつながります。
[注1] リース需要動向調査結果(概要)|公益社団法人リース事業協会
4. リース契約のデメリット
一方、リース契約のデメリットは3つあります。
- レンタル契約よりも総支払額が高くなりやすい
- 物件が不要になっても中途解約ができない
- 物件の所有権がなく、気に入っても自社のものにならない
リース契約では、物件の取得価額に加えて固定資産税や保険料の支払いが上乗せされるため、総支払額が高くなりやすいのがデメリットです。また、リース期間の途中で物件が不要になっても、原則として中途解約はできません。物件の所有権がユーザーに帰属しないため、物件を使いつづけたい場合は再リース契約を締結する必要があります。
5. リース契約のメリットとデメリットを知り、自社に合った設備投資を
リース契約は、物件を購入する代わりにリース会社から提供を受ける契約形態です。リース契約を締結した企業は、リース会社に定額のリース料を支払います。設備投資のコストを抑えながら、機器や設備にかかるコストを正確に把握できるのがリース契約のメリットです。リース契約のメリットとデメリットを知り、自社に合った方法で機器や設備を導入しましょう。
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