電子帳簿保存法の対象外となる書類について詳しく解説
公開日: 2023.3.22 jinjer Blog 編集部
電子帳簿保存法が改正されたことにより、多くの企業が対応を求められています。帳簿や書類を扱う方であれば、自身の会社が電子帳簿保存法の対象外なのかどうかを把握するのは不可欠です。本記事では、電子帳簿保存法の対象外となる企業や書類の具体的な情報だけでなく、対象となるケースや対応が必要な場合のポイントも解説します。
目次
1. 電子帳簿保存法の対象となる企業・対象外の企業
電子帳簿保存法の対象者は、電子取引を行っているすべての企業や個人事業主です。
一方で、電子システムを用いた取引を一切行わず、紙を用いて取引を行っている企業や個人事業主は、電子帳簿保存法の対象外です。
以前は、電子保存を行いたい企業だけが電子保存を行っていました。
しかし、電子帳簿保存法が2021年に改正されたことにより、2022年以降はすべての企業や個人事業主に電子取引のデータの保存が必要です。
とはいえ、急な対応が難しいケースもあり、現実問題として対応に準備が必要であるため2年間の猶予が与えられました。
電子取引を行っている企業や事業主は、2023年12月までに対応を完了されなければなりません。
電子帳簿保存法の改正前の段階では、原則として帳簿や書類を保存しようとする時期の3カ月前までに税務署に所定の書類を届け出る事前承認制度がありました。
改正によって税務署に対する事前承認制度が廃止され、以前よりも電子システムによる保存が取り組みやすくなりました。
2. 電子帳簿保存法の対象となる書類
電子帳簿保存法の対象となる書類について、1つずつ解説します。
2-1. 国税関係帳簿
国税関係帳簿とは、会社のお金の流れが記録されたものです。
具体的には以下の帳簿が含まれます。
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- 売上台帳
- 仕入台帳
- 現金出納帳
- 固定資産台帳
- 売掛金台帳
- 買掛金台帳
2-2. 国税関係書類
国税関係書類とは、会社の決算や取引で使用された決算関係書類と取引関係書類を指します。
それぞれの内容は、以下のとおりです。
① 決算関係書類
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 棚卸表
- その他の決算書類 など
② 取引関係書類
- 契約書
- 領収書
- 見積書
- 注文書
- 納品書
- 検収書
- 請求書 など
2-3. 電子取引による書類
メールやインターネットなどで行う電子取引による書類は、国税に関係しないものです。
具体的には、以下の書類が含まれます。
- EDI取引
- 電子契約
- メールデータ
- web請求書
- web受領書
- FAX など
3. 電子帳簿保存法の対象外となる書類
電子帳簿保存法の対象外の書類は、電子データが残っておらず手書きで作成したものです。
とはいえ、紙の書類自体はきちんと保管しておかなければなりません。
4. 電子帳簿保存法による書類の保存方法
電子帳簿保存法による書類の保存方法について説明します。
4-1. 電子帳簿等保存
電子帳簿等保存とは、パソコンや会計ソフトなどで作成した帳簿や書類をデータのまま保存する方法です。
国税関係帳簿、国税関係書類の決算関係の書類が、電子帳簿等保存の対象となります。
4-2. スキャナ保存
スキャナ保存とは、紙を用いた契約書や領収書などの書類を画像データとして保存する方法です。
国税関係書類の取引関係書類が、スキャナ保存の対象となります。
4-3. 電子取引データの保存
電子取引データの保存とは、メールやインターネットなど、電子的なやりとりを通した取引情報をデータで保存することです。
電子取引による書類が、電子取引データの保存の対象です。
電子取引によるデータ保存においては、以下の要件を満たす必要があります。
- システムの概要を記録した書類を備え付ける
- データを確認できる装置を備え付ける
- 検索機能を確保する(取引日や取引金額などを確認できるようにする)
- 真実性を確保する措置を行う
真実性を確保する措置としては、以下のいずれかを行うことが必要です。
- タイムスタンプが押されたものを受け取る
- データを受け取った後はすぐにタイムスタンプを押す
- データの訂正・削除の記録が残るシステムか、そもそも訂正・削除ができないシステムを利用する
- データの訂正・削除の不正を防止する事務処理ルールを備え付ける[注1]
[注1]適用要件|国税庁
5. 電子帳簿保存法によるシステムを導入しない場合は?
電子帳簿保存法によるシステムを導入しない場合の可能性を3つお伝えします。
5-1. 青色申告の承認を取り消される
電子帳簿保存法に基づいたデータの保存を行わなかった場合、青色申告の承認を取り消されてしまう可能性があります。
青色申告の承認を取り消されることによる主なデメリットは、以下の内容です。
- 最大65万円の特別控除が受けられなくなる
- 家族や親族の給料を経費としてみなせなくなる
- ある年に発生した赤字額を繰り越して、翌年以降の黒字額と相殺できなくなる
国税庁の資料では、電子帳簿保存法に違反してしまった場合において、取引内容が正しく記録されていて申告に反映され、保存すべき取引情報がきちんと確認できる場合、特段の理由もなく直ちに青色申告の承認が取り消されるわけではないと表記されていました。[注2]
[注2]お問い合わせの多いご質問|国税庁
5-2. 過少申告加算税が課せられる
国税庁の調査により申告内容に不備が見られた場合は、過少申告加算税が課せられます。
過少申告加算税とは、本来納めるべき税金額を納めていない場合に課せられるものです。
また、加算税とは申告義務が正しく行われていない場合に課せられます。
電子帳簿保存法に基づいたデータを取り扱っていないとみなされた場合、納めるべき税金が増えてしまう可能性があるため注意が必要です。
5-3. 会社法による過料が課せられる
電子帳簿保存法に抵触した場合、帳簿や書類が規則どおりに扱われていないとみなされ、会社法第976条に基づき100万円以下の過料を求められるケースがあります。[注3]
過料とは、行政上の処罰のことで前科がつくものではありません。
とはいえ、過料の対象となってしまうと余分な支払いが発生するため、防いでおきたいです。
6. 電子帳簿保存法に対応する際のポイント
電子帳簿保存法に対応する際のポイントを、3つお伝えします。
6-1. データの保存方法を決める
まずは、社内の帳簿や書類を整理し、データをどのように保存するのかを決めなければなりません。
帳簿や書類によって、保存方法が異なります。
とくに、電子データによる保存に関しては、保存するうえでの要件を満たした対応が求められます。
保存方法を決めるときは、ファイル名の決定や、ファイルの訂正、削除が勝手に行われないための対策が必要です。
6-2. データの保存場所を決める
保存方法だけでなく、保存場所も決めるべき事柄のひとつです。
パソコンやクラウドシステムなど、さまざまな保存できる場所がありますが、複数の場所に保存されていると、社内で混乱が起きてしまいます。
帳簿や書類を取り扱う方がきちんと理解できる体制の構築が必要です。
また、1度決めた保存場所を諸事情により変更する場合は、担当者にきちんと共有することも忘れてはいけません。
保存場所を変更する場合、いざというときに備えて、データをバックアップできる体制を整えることも大切です。
6-3. 必要に応じてデータの取り扱い方法を見直す
電子帳簿保存法への対応は、業務の効率性を見直すチャンスです。
見直すことで、これまでの作業にムダな点が発生していたことに気づけます。
今まで紙で書類を作成していた場合、システムを導入することで作成時間の短縮が可能です。
その結果、業務効率化につながります。
この機会に、社内で業務効率化につながるデータの取り扱い方法を検討してみてください。
7. 正しく理解して導入すれば業務効率化につなげられる
電子帳簿保存法による対応に関して、最初は面倒だと感じるかもしれません。
しかし、電子帳簿保存法に基づいたシステムを導入すると、業務の効率化だけでなく、ミスを防ぐことにもつながります。
また、保管場所のためのスペースが不要になり、紙代やインク代などのコスト削減も可能です。このように、さまざまなメリットがあります。あなたの会社に合わせたシステムを導入してみてください。
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