契約のまき直しとは?実施のタイミングや注意点を解説
更新日: 2023.1.11
公開日: 2022.12.14
jinjer Blog 編集部
企業の契約実務でよく使われるのが、「契約のまき直し」という言葉です。特に不動産業界では、契約内容の事後的な変更が必要になった場合や、仮契約を締結してから具体的な契約条項を定める場合に、契約のまき直しをおこなうことがあります。この記事では、契約のまき直しという言葉の意味や、契約のまき直しをおこなうべきタイミング、注意したいポイントをわかりやすく解説します。
「どのタイミングで契約は締結されたことになる?」
「契約書に署名しても無効になることはある?」
「契約書はいつまで保管すればいいの?」
契約書にはそれぞれ目的があり、締結はその目的が果たされる前におこなわなければなりません。
ですが中には「過去の取引内容を契約書に残したい」や「先日取り交わした契約書の内容で認識の相違があった」など、法務担当者が頭を抱えたくなる事案が発生することもあるでしょう。
これらの事象は、取引を担当している従業員自身が締結期限や契約の重要性について理解していないため発生します。
そこで今回、契約や契約締結の意味や契約の有効要件、主な契約書の使用目的などをまとめた資料を用意しました。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員周知用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
1. 契約のまき直しとは?
契約のまき直しとは、すでに取り交わした契約書を見直し、新しく契約を締結することを意味します。契約のまき直しという言葉は、主に不動産業界で使われています。例えば、土地の不動産売買契約を締結してから、改めて建物の不動産売買契約を締結するケースです。ここでは、契約のまき直しという言葉の語源や、契約のまき直しに必要な「変更契約書」について解説します。
1-1. 「まき直し(蒔き直し)」という言葉の由来
契約のまき直しは、「蒔き直し」という言葉が由来だとされています。慣用的には蒔き直しではなく「巻き直し」と記載される場合もあります。デジタル大辞泉によると、蒔き直しという言葉には2つの意味があります。[注1]
- 種をもう一度まくこと。
- 物事を初めからやり直すこと。「新規―」
ビジネスシーンで見かけるまき直し(蒔き直し)は、後者の「物事を初めからやり直すこと」という意味で使われることが一般的です。契約のまき直しの場合は、「契約書を改めて取り交わすこと」「契約内容を新しく変更すること」といった意味になります。
1-2. 契約のまき直しに必要な変更契約書
契約のまき直しに使われるのが、変更契約書と呼ばれる文書です。変更契約書は、文字通り「覚書」や「念書」などの表題を用いて、原契約書(すでに取り交わした契約書)の内容を変更する文書を意味します。[注2]民法上、ほとんどの契約は契約書がなくても成立しますが、口約束で契約をまき直す場合は2つのリスクがあります。
- 契約内容を変更したことを客観的に証明できず、「いった」「いわない」の水掛け論になる可能性がある
- 相手方との紛争やトラブルに発展した場合、変更契約書がないと不利になる可能性がある
そのため、契約のまき直しをおこなう場合は、覚書や念書などの変更契約書を作成しておくと安心です。
このとき、「誰とどのような契約を結んでいるのか」を把握できなければ、まき直しの話し合いもできません。そのためにも、契約書類は日頃から適切に管理して、すぐに確認できる状態にしておく必要があるでしょう。
ですが中には、「従業員が社内規定通りの運用をしていない」といった企業もあるかと思います。適切な管理を徹底するためには、従業員一人ひとりが「契約書が適切に管理されないこと」や「契約を法務部門が認識していないこと」で起こり得る問題を理解することが重要です。
当サイトで無料配布している「【従業員周知用】ビジネスにおける契約マニュアル」では、契約の定義や契約書類の保管義務、ビジネスで使用する主な契約書について解説しています。また契約締結の流れについてもまとめているので、従業員が正しくスムーズ契約するためのマニュアルとしても活用できます。気になる方はこちらからダウンロードしてご覧ください。
2. 契約のまき直しを実施するタイミング
契約のまき直しを実施するタイミングは、大きく分けて2つあります。
- 契約内容の変更が必要になったとき
- 仮契約を締結してから具体的な契約条項を定めるとき
すでに取り交わした契約書の内容を事後的に変更する場合、契約のまき直しを実施する必要があります。例えば、契約条件の見直しが必要になったり、後で契約金額や報酬額を変更したりするケースが該当します。不動産業界では、「仮契約を締結してから具体的な契約条項を定めるとき」に契約のまき直しを実施することが多くなります。例えば新規住宅を購入する際に、まず土地の不動産売買契約を締結し、建物の間取りなどの仕様や報酬額をじっくり決めていくケースです。ただし、仮契約の締結後の打ち合わせがうまくいかず、顧客とのトラブルに発生するリスクがあります。
そのため、契約のまき直しを実施する場合は、変更箇所がわかった段階で迅速に覚書や念書を作成し、双方の合意を明文化することが大切です。
「契約のまき直しを実施する手順」
- 原契約書の内容を見直し、変更箇所を確認する
- 売主と買主で協議をおこない、変更箇所について合意する
- 覚書や念書を作成し、契約のまき直しを文書化する
3. 契約のまき直しを実施するときの注意点
契約のまき直しを実施するときに注意したいポイントは2つあります。
- 新たな契約書を作成する場合は原契約書を失効させる
- 契約書の変更点によっては収入印紙を貼る必要がある
契約のまき直しの際に覚書や念書を作成するのではなく、新たに契約書を取り交わすケースがあります。その場合、原契約書を必ず失効させましょう。また、原契約書の「重要な事項」をまき直す場合、変更契約書に所定の金額の収入印紙を貼る必要があります。
3-1. 新たな契約書を作成する場合は原契約書を失効させる
契約のまき直しをおこなう場合、覚書や念書などの変更契約書を作成する方法のほか、新たに契約書を取り交わす方法があります。契約書を新しく作成する場合は、必ず原契約書を失効させる必要があります。もし原契約書を失効させなかった場合、新旧の契約書が同時に存在するため、どちらがまき直し後の契約書かわからなくなる可能性があります。原契約書を執行させる場合は、新しい契約書の前文に「●●日付で、▲▲に関する契約書は失効する」と記載しましょう。また、契約書の失効に関する合意解約書を取り交わす方法もあります。
3-2. 契約書の変更点によっては収入印紙を貼る必要がある
契約のまき直しをおこなう場合、契約書に収入印紙を貼らなければならないケースがあります。印紙税の課税対象となるのが、契約書の「重要な事項」をまき直すケースです。契約書の「重要な事項」とは、印紙税法基本通達別表第2「重要な事項の一覧表」で例示された契約条項のことです。例えば、不動産業界に関する文書の場合、以下の契約条項が「重要な事項」に該当します。[注3]
号 | 具体例 | 重要な事項 |
第1号の1文書(不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書) | 不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書 |
|
第1号の2文書のうち、地上権又は土地の賃借権の譲渡に関する契約書 | 土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書 | |
第1号の2文書のうち、地上権又は土地の賃借権の設定に関する契約書 | 土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書 |
|
もし契約書に収入印紙を貼らなかった場合、印紙税額の2倍の過怠税が科される可能性があるため、国税庁ホームページの「印紙税額の一覧表」を確認してください。
4. 契約のまき直しの意味を知り、実施のタイミングや注意点を確認しよう
不動産業界をはじめとして、企業の契約実務で使われる言葉が「契約のまき直し」です。契約のまき直しは、「蒔き直し」という言葉が由来とされ、すでに取り交わした契約書を改めて見直すことを意味します。顧客との紛争やトラブルを避けるため、契約のまき直しをおこなうときは覚書や念書などの変更契約書を作成し、契約書の変更点を明確化することが大切です。また、契約書の「重要な事項」をまき直す場合は、所定の金額の収入印紙を貼る必要があります。ビジネス慣習上使われる「契約のまき直し」という言葉の意味を知り、実施のタイミングや注意点を確認しましょう。
「どのタイミングで契約は締結されたことになる?」
「契約書に署名しても無効になることはある?」
「契約書はいつまで保管すればいいの?」
契約書にはそれぞれ目的があり、締結はその目的が果たされる前におこなわなければなりません。
ですが中には「過去の取引内容を契約書に残したい」や「先日取り交わした契約書の内容で認識の相違があった」など、法務担当者が頭を抱えたくなる事案が発生することもあるでしょう。
これらの事象は、取引を担当している従業員自身が締結期限や契約の重要性について理解していないため発生します。
そこで今回、契約や契約締結の意味や契約の有効要件、主な契約書の使用目的などをまとめた資料を用意しました。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員周知用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
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