コンピテンシー評価とは?評価基準や導入手順について解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2023.3.10
OHSUGI
従来の職能資格等級制度に代わり、コンピテンシー(competency)に焦点を当てた人事評価を導入する企業が増えています。コンピテンシー評価は、優れた業績を残したトップパフォーマーの行動特性を分析し、人事評価に生かす制度です。
本記事では、コンピテンシー評価のメリット・デメリット、評価基準の決め方、導入までの流れを解説します。
目次
1. コンピテンシー評価とは?
企業の人事評価や人材育成の新たな枠組みとして、今「コンピテンシー評価」が注目を集めています。
コンピテンシー評価は「能力」が評価基準となった職能資格等級制度や、「結果」が評価基準となった業績評価制度と違い、従業員の「行動」に焦点を当てた人事評価制度です。
ここでは、コンピテンシーの定義や従来の人事評価制度との違い、コンピテンシー評価に注目が集まる理由を簡単に見ていきます。
1-1. コンピテンシーの定義
野村総合研究所によると、コンピテンシーは「高業績者の行動特性」を意味する言葉です。優れた業績を残したハイパフォーマーや、ほかの従業員にはないノウハウを持った熟練者の行動特性(competency)を分析し、人事評価に反映させた制度をコンピテンシー評価と呼びます。
1-2. コンピテンシー評価と従来の人事評価制度の違い
これまで、企業は職能資格等級制度や業績評価制度などの枠組みを用いて人事評価を行ってきました。コンピテンシー評価は、従来の人事評価制度とどのように違うのか疑問に思う人もいるでしょう。
職能資格等級制度は人物の「能力」、業績評価制度は人物が残した「結果」に着目した人事評価制度です。一方、コンピテンシー評価は人物(とくに高業績者)の「行動」に着目し、従来の人事評価制度の限界を乗り越えることを目指しています。
コンピテンシーとは、保有する「能力」をもとにして、「結果」を残すために実施した「行動」を指すものである。ただし、その考え方を人事評価や人材育成に活用するために、特に高業績者の行動特性を規定したものをコンピテンシーと呼んでいる。
1-3. コンピテンシー評価に注目が集まる理由
コンピテンシー評価に注目が集まる理由は、雇用の流動化により、優秀な人材の確保が難しくなったためです。高い能力を持つ人材や、優れた結果を残す人材の流出を防ぐには、公正で納得感のある人事評価制度の構築が求められます。
自由競争社会の色が濃くなっていくなか、今後、労働力は流動性を高めていくと考えられる。このような環境下において、企業は優秀な人材を内部に留保し、かつそれら人材に最大限の力を発揮してもらうために、人事評価について従来以上に公正性、納得性を高めようとしている。
従来の職能資格等級制度や業績評価制度には大きな欠点があります。たとえば、職能資格等級制度は人物の持つ資格やスキルに応じて、等級別に賃金を設定する人事評価制度です。
しかし、職能資格等級制度は職務の達成に必要な能力(職能要件)を評価基準としているため、勤務態度、熱意、コミュニケーション能力など、目に見えない項目を評価しづらいという課題があります。
また、業務の結果のみを評価基準にした業績評価制度の場合「優れた行動をとりノウハウを蓄積できた従業員を評価してあげたいが、結果は出なかったため評価できない」というミスマッチが発生します。
逆に、本人はほとんど努力していないにもかかわらず、運よく結果を残せたケースも、業績評価制度では高く評価されることになります。
コンピテンシー評価は、こうした不公平感の解消が期待されている人事評価制度です。コンピテンシー評価を正しく運用するためには、コンピテンシー・ディクショナリーに基づいた評価基準の設定が必要です。
2. コンピテンシー評価における評価基準
コンピテンシー評価の評価基準は、その企業において必要な行動特性を洗い出し、優先順位付けを行ったうえで決定します。コンピテンシー評価の評価基準を記述したものを「コンピテンシー・ディクショナリー」と呼びます。
たとえば、アメリカのビジネス界では、コンピテンシーを21の項目に分類することが一般的です。[注1]
分類 | コンピテンシー項目 |
個人の効果性 | セルフ・コントロール、自己確信、柔軟性、組織へのコミットメント |
支援と人材サービス | 対人関係理解、顧客サービス重視 |
インパクトと影響力 | インパクトと影響力、組織の理解、関係の構築 |
マネジメント・コンピテンシー | 他者開発、指揮命令、チームワークと協調、チームリーダーシップ |
認知コンピテンシー | 分析的思考、概念的思考、技術的・専門的・マネジメント的専門能力 |
達成とアクション | 達成重視(動因価値)、秩序・クオリティー・正確性への関心、イニシアティブ、情報探究 |
また、文部科学省などが関わる霞が関ナレッジスクエアは、よりシンプルにコンピテンシーを9つの項目に分類しています。[注1]
分類 | コンピテンシー項目 |
Feel(人間関係力) | 自己認識力、感情マネジメント力、共感力、コミュニケーション力 |
Think(問題解決力) | 状況把握力、原因究明力、選択決定力、リスク分析力 |
Act(行動力) | 実行力 |
こうしたコンピテンシー・ディクショナリーを参考にしながら、自社の事業に合わせたコンピテンシー評価のモデルを構築しましょう。
[注1]「KK2コンピテンシー」とは|霞が関ナレッジスクエア
3. コンピテンシー評価のメリット・デメリット
コンピテンシー評価にはメリットだけでなく、デメリットもあります。たとえば、慣れ親しんだ人事評価制度をいきなり廃止すると、現場の混乱を招く可能性があります。
コンピテンシー評価のメリットとデメリットを比較し、自社に合った形でコンピテンシーを活用することが大切です。
3-1. コンピテンシー評価を導入するメリット
コンピテンシー評価を導入するメリットは2つあります。
- 公平で納得感のある人事評価制度を実現できる
- 成功法則(ベストプラクティス)を水平展開し、組織の生産性を高める
コンピテンシー評価の要素を取り入れれば、ハイパフォーマーの行動特性を物差しにして、職能資格等級制度や業績評価制度では評価しづらい項目も見える化することができます。より公平で納得感のある人事評価制度を構築可能です。
また、コンピテンシー評価には、組織の生産性を高める効果も期待できます。ハイパフォーマーの行動特性を評価項目に取り入れることで、チームや個人の行動指針が生まれ、成功法則(ベストプラクティス)を水平展開できます。
3-2. コンピテンシー評価を導入するデメリット
コンピテンシー評価を導入するデメリットは、コンピテンシー・ディクショナリーの作成に時間がかかる点です。コンピテンシー評価における評価基準は、自社の事業形態に合ったものを独自に作成する必要があります。
また、コンピテンシー・ディクショナリーは作成したら終わりではなく、事業環境の変化に合わせて見直しが必要です。ほかの人事評価制度と比較して、工数がかかりやすいのがコンピテンシー評価のデメリットです。
4. コンピテンシー評価を導入する手順
コンピテンシー評価を導入する手順は、大きく5つに分けられます。
- 自社のハイパフォーマーのヒアリングを行い、行動特性を分析する
- コンピテンシー項目の優先順位付けを行い、全従業員に共有したいものを抽出する
- コンピテンシー・ディクショナリーを作成し、評価項目を設定する
- コンピテンシー評価の項目を評価シートにまとめ、ほかの従業員と共有する
- 従業員からのフィードバックに基づいて、評価項目を改善する
コンピテンシー評価を取り入れる場合、人事評価システムを導入する方法もあります。コンピテンシー評価に対応したツールなら、コンピテンシー評価の導入にかかる工数を大幅に削減することが可能です。
5. コンピテンシー評価のメリットやデメリットを知ろう
コンピテンシー評価は、優秀な従業員の行動特性に焦点を当て、人事評価を行う仕組みです。従来の職能資格等級制度や業績評価制度と比較して、公正性や納得性が高いというメリットがあります。
コンピテンシー評価を適切に運用するため、評価基準の設定方法や制度設計の流れを確認しましょう。
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