エンゲージメントとは?重要性や向上させる方法を徹底解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.11.7
OHSUGI
契約や約束といった意味があるエンゲージメントという単語は、人事の場でも使われることがあります。
人事におけるエンゲージメントを正しく把握することで、企業の成長につながります。
今回は人事におけるエンゲージメントの重要性と向上させる方法について解説します。
目次
1. エンゲージメントとは?
エンゲージメントを翻訳すると、契約や約束といった意味になります。マーケティング領域においてはユーザーが企業や製品に対して持つ愛着を示す言葉です。様々な意味を持つエンゲージメントという単語は、人事の場でも使われることがあります。
人事におけるエンゲージメントとは、社員が会社に持つ愛社精神や思い入れを意味します。
社員が会社に対して愛社精神を持つことで、会社と一体となって同じ目標に向かって動いていけます。
1-1. エンゲージメントが注目されている背景
人事におけるエンゲージメントという概念は、アメリカの企業で生産性向上の意識が高まったことをきっかけに広まりました。
それまで多くの企業は後述する従業員満足度に重きを置いていましたが、生産性向上に直結しないことに気づき、エンゲージメントという概念が着目されるようになったのです。
アメリカは日本と比べて人材の流動性が高く、いかに生産性の高い優秀な人材を残し企業の業績を安定させるかといった観点でエンゲージメントの概念が定着しました。
2000年以降、日本でもエンゲージメントが注目されはじめました。
かつての日本では、終身雇用や年功序列といったシステムがあったため、一社に長く勤めることが望ましい価値観でした。その制度の限界や働き手の不足など、企業を取り巻く社会環境の変化を受けて価値観が変化し、自社にマッチする人材の確保や離職防止のために、エンゲージメントという概念に注目が集まっています。
1-2. エンゲージメントとロイヤルティの違い
ロイヤルティ(Loyalty)を翻訳すると「忠誠心」という意味です。人事におけるロイヤルティは「従業員の会社に対する忠誠心」といった意味合いになります。
一方で、人事におけるエンゲージメントは「会社と従業員が相互に歩み寄る」という意味合いが強いです。エンゲージメントは、企業から従業員への一方向ではなく双方向の関係にあるのが特徴です。
1-3. 従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、従業員と企業の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合い、共に必要な存在となっている関係を指します。従業員は会社の理念に共感しており、貢献する意欲を持っています。また会社は、従業員が期待しているものを提供します。双方が貢献し合っている状態であるため、会社の業績に影響をもたらします。
従業員エンゲージメントと類似した言葉に「従業員満足度」という単語があります。
「従業員満足度」は会社から与えられた待遇に対して、従業員がどれだけ満足しているかを示した度合いです。「従業員エンゲージメント」と比べ、会社から従業員へ一方向の関係性である点が違いです。特徴としては、業績に影響をもたらしにくいと言われています。
1-4. 顧客エンゲージメント
顧客エンゲージメントとは、企業や製品と顧客の関係を表す概念です。
長期間にわたって親密な関係を築き上げることで生まれる、信頼性や絆といった意味があります。
SNSを用いたWebマーケティングでは、いいね!の数やコメントの量を指標として、エンゲージメントを測ります。
2. 従業員のエンゲージメントを高める重要性とメリット
企業にとってエンゲージメントが重要な理由として、離職率の低下や生産性の向上などが挙げられます。
とくに離職率が高いと人材が定着しづらいうえに、新入社員も入りづらくなる可能性があります。企業にとって大切な資源である人材を確保するためにもエンゲージメント向上を目指しましょう。
2-1. 離職率の低下へ結びつく
厚生労働省が発表した「令和3年上半期雇用動向調査結果の概況」によれば、令和3年上半期に、個人的理由で離職した人は、調査対象となっている企業のうち5.7%でした。前年同期と比較すると0.5%低下しているものの、社員の離職は企業に痛手となるケースがあります。[注1]
このような離職を食い止める手立てとして挙げられるのが、エンゲージメントの向上です。
2-2. 社員の生産性が向上する
エンゲージメントを高めることで生産性の向上も期待できます。社員のエンゲージメントが高まることで企業の目標をしっかりと理解し、全体が掲げている目標に向かって能動的に行動可能です。
例えば、上司が指示しなくても任せられた業務に対しての工夫を凝らすなどして、効率的に作業を進めていく可能性があります。
社員の生産性が向上すれば、結果的に企業の利益につながるでしょう。
2-3. 採用効率が向上する可能性がある
社員の採用効率を高めるためには、企業としての目的やビジョン、社員に求めることなどを明確にしたうえで、社員に伝えます。
これらが明確になっていることは、既存の社員だけではなく、新入社員の採用にも効果的です。
採用面接において、自社がどういった目的としているか、どういった社員を求めているかを明確に伝えることで、自社に応じた新入社員の獲得が可能になります。
3. エンゲージメントの把握・測定方法
エンゲージメントは「働きやすさ」「働きがい」「ビジョンへの共感」の3つで構成されています。
3つの要素を把握する方法は、それぞれ異なります。
3-1. 「働きやすさ」は社員満足度をヒアリング
働きやすさを把握するには、社員へ満足度をヒアリングしましょう。その際の質問項目として以下が挙げられます。
- 1. 業務に必要な設備が整っているか
- 2. 業務過多がないか
- 3. 業務内容が合っているか
- 4. なにかあった際の相談先があるか、相談しやすい環境か
- 5. 給与を含めた評価に納得しているか
社員満足度はオフィスの環境や業務の負荷、給与など幅広い視点から把握します。
3-2. 「働きがい」は「Q12」で把握
アメリカのコンサルティング会社、ギャラップ社が提唱しているのが「Q12」です。「Q12」は次のような12の質問を5段階で回答する調査方法です。
- 1. 仕事上で、自分が何を期待されているかがわかる
- 2. 自分の仕事を正確に行なうために必要な設備や資源がある
- 3. 仕事上で、自分の最も得意とすることを行う機会が毎日ある
- 4. 直近一週間で、仕事について誰かから褒められたり、認められたりした
- 5. 上司または職場のスタッフが、自分を一人の人間として気遣ってくれている
- 6. 仕事上で、成長を励ましてくれる人がいる
- 7. 仕事上で、自分の意見が考慮されていると思う
- 8. 自分の会社の使命/目標は、自分の仕事を重要なものに感じさせてくれる
- 9. 同僚は、質の高い仕事をすることに専念している
- 10. 仕事上で、最高の友人と呼べる人がいる
- 11. 半年の間に、職場の誰かが自分の進歩について、自分に話してくれた
- 12. 一年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った
この点数が高いと、社員が前向きな姿勢で業務をこなしていて、自分が役立っていることを実感できている状態にあるといえます。
3-3. 「ビジョンへの共感」は人事評価で測る
会社が掲げているビジョンにどれだけ共感しているかは、人事評価として
測りましょう。その際は、ビジョンへの共感に加えて達成度も評価することが大切です。
4. エンゲージメントを向上させる方法
エンゲージメントを向上させるためには、定期的なミーティングや多様な働き方の導入を検討してみましょう。
4-1. 1on1のミーティングを実施し従業員の価値観を把握する
エンゲージメントを向上させるためのミーティングは、1on1で行ないましょう。ミーティングの際は、社員とコミュニケーションを取り溝を埋めることに加えて、モチベーターとして成長を促すことも大切です。
またリアルタイムで従業員の価値観を把握することで、良い点だけでなく課題も浮き上がり解決に向けての対策が早期に打ち出せます。
4-2. 企業の理念や方向性を共有する
「なぜこの業務を行うのか」「目指すべき場所はどこなのか」「今何をすべきなのか」が分からないと適切かつ効率的な業務は行えません。それを示したのがビジョンやミッションやバリューです。
もしこれらが無かったり従業員に浸透していなければ、人や部署によって判断基準がバラバラになり、何をよりどころに業務を進めればいいのか不安や不信感が蓄積するかもしれません。
従業員に企業の理念や方向性を理解・共感してもらうことで、個々人が目指すべき姿やそれにむけて何をすればいいのか自ら考え、行動できるようになります。
また、自ら考え行動した結果を会社が評価してくれることで業務への意欲が沸き、最終的には企業への愛着へと繋がるでしょう。
4-3. ワークライフバランスを充実させる
ワークライフバランスはエンゲージメントのひとつの要素である「働きやすさ」に関係します。社員のワークライフバランスを充実させるためには、テレワークやフレックスタイムといった多様な働き方の導入を検討してみましょう。
例えば、テレワークを導入することで社員の睡眠時間向上が期待できます。厚生労働省が発表した「令和4年版過労死等防止対策白書」によれば、テレワークを毎日実施している企業と未実施の企業では以下のとおり社員の睡眠時間が異なりました。[注2]
7時間以上8時間未満 |
8時間以上 |
|
テレワーク毎日実施 |
22.3% |
8.0% |
テレワーク未導入 |
15.9% |
4.0% |
睡眠は生産性と関係しているとされているため、社員が十分な睡眠を得られる職場は効率的な業務が期待できます。
4-4. 社員同士のつながりを強化する
役職者とメンバーの間に隔たりをなくすという取り組みも、社員が自社に対して帰属意識を持ちやすくするため、エンゲージメント向上が期待できます。
役職に関係なく同様のテーマについて、忌憚のない意見を交わし合うことで、共通の目標に向かっていけるでしょう。
4-5. 教育・研修を実施する
企業の理念やビジョン、目指している姿を従業員に理解してもらう場の提供として研修を実施するのも効果的です。
自分の仕事がどのように企業に還元されるのか理解してもらうことで、エンゲージメントの向上に繋がります。
また、従業員を評価する管理者層へマネジメントスキルの強化を狙いとしたキャリアアップに関する研修や教育プログラムの受講が出来る環境を用意するのもいいでしょう。
企業が従業員へ挑戦や成長できる機会を用意しておくことで従業員の主体性が高められ、エンゲージメントの向上に繋がります。
5. 社員のエンゲージメントを高めて働きやすく生産性の高い職場に
会社にとって、社員のエンゲージメントは重要です。離職率を低下させる、生産性を高めるためにも、多様な働き方の導入や従業員が闊達に意見交換できる場を設けるなどして、従業員が働きやすく生産性を高められる職場を目指しましょう。
従業員の離職を減らすためには、離職兆候をなるべく早くキャッチし、フォローすることが重要です。
パルスサーベイなら、従業員自身のコンディションについての簡単な質問に短いスパンで継続的に回答してもらうため、従業員の不満や不安をキャッチしやすく、離職につながる前にフォローが可能です。
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