賞与引当金の仕訳例や税務上の注意点をわかりやすく紹介
更新日: 2025.1.31
公開日: 2022.10.13
jinjer Blog 編集部
決算処理をおこなう業務というのは、期をまたぐ科目の処理に気を遣いますが、中でも「賞与」の査定には特に気を使うのではないでしょうか。
賞与は期をまたいで査定をおこなうため、決算処理では「賞与引当金」と呼ばれる勘定科目を用いるのが一般的です。
また、引当金は損金算入できるケースが多いですが、賞与引当金はその点が少々異なることも、税務上注意しておかなければなりません。
本記事では、賞与引当金とは何か、賞与引当金の仕訳例や賞与引当金の税務上の注意点などについて解説します。
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1. 賞与引当金とは?
賞与引当金とは、企業が従業員に対して支払う賞与(ボーナス)を前期に準備して計算するために用いられる勘定科目です。
引当金とは、将来発生する可能性が高いと考えられる費用や損失のことを指しますが、適正な期間損益計算の観点から、当期に属すると考えられる合理的な金額を繰り入れます。
例えば、以下のような条件のA社を例として考えてみましょう。
・決算は3月末
・賞与は年に2回(6月,12月)支払われる
・6月の賞与は「12月〜5月」までの期間、12月の賞与は「6月〜11月」までの期間の勤務に対して支払われる
この場合、A社が決算を行う3月末の時点において、3ヵ月後の6月に支給される賞与のうち、12月〜3月分は先に見積り計上しなければなりません。そのために用いられるのが、「賞与引当金」という勘定科目です。
1-1. 賞与引当金と賞与引当金繰入の違い
就業規則や労働協約書などで賞与の支給が定められている場合には、当期の負担金額を賞与引当金として計上します。この「賞与引当金」と似た言葉に「賞与引当金繰入額」というものがあります。
賞与引当金繰入額とは賞与引当金の繰入額のことで、仕訳の際に借方に賞与引当金、貸方に賞与引当金繰入額を計上して相殺するという使い方をします。実際に賞与を支払う際には、残りの金額を「賞与」という借方の勘定科目で計上するのが一般的です。
ただし、実際の支給額が予定よりも大幅にアップした場合は、賞与ではなく未払い金の勘定科目を使うこともあります。
1-2. 賞与引当金は流動負債と固定負債のどちらに該当する?
結論からいうと、賞与引当金は流動負債でも固定負債でもありません。
流動負債というのは名前の通り流動性の高い負債です。賞与引当金は「将来的に発生する損失」という位置づけなので、一見流動負債に該当すると思いがちですが、実は固定負債でも流動性負債でもなく、「流動資産」に該当するというのが正解です。
賞与引当金は、翌年に従業員に対して支払うものですが、従業員がいなければ業務は正常におこなわれません。その従業員に払う賞与も必要なものなので、例え支払ってなくなるものであっても「資産」に振り分けられるのです。
2. 賞与引当金の仕訳例
賞与引当金はどのような形で仕訳をおこなうのか、具体的な数値を用いながら説明していきます。
先ほど例に挙げたような3月末決算の会社において、翌期の6月に支給する賞与の見積り額が900万円だったとしましょう。
翌期に支払われる賞与のうち、当期分である12月~3月の4ヵ月分の費用は、賞与引当金として決算において計上されなければなりません。
この場合、当期分として見込まれる金額は「900万円×(4ヵ月/6ヵ月)=600万円」となります。
そのため、決算における賞与引当金の仕訳は以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
賞与引当金繰入額 | 6,000,000円 | 賞与引当金 | 6,000,000円 |
そして実際に6月になった際に、賞与として合計900万円を支払った際の仕訳は、以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
賞与 | 3,000,000円 | 普通預金 | 9,000,000円 |
賞与引当金 | 6,000,000円 |
実際に賞与として支払われている金額は900万円ですが、この金額すべてを賞与として処理するわけではありません。
なぜなら900万円のうち600万円は、すでに前期の決算において費用として計上されているからです。そのため、差額の300万円のみを賞与として計上することになります。
この仕訳によって、前期に立てていた賞与引当金がきれいに相殺されます。
なお、事前に想定していた賞与の金額と実際に支払われた賞与の金額が、異なる場合もあります。
例えば今回のケースで、事前に900万円と想定していたものの、実際は1,100万円になったというような場合です。
この場合の仕訳は、以下のようにおこなわれます。
借方 | 貸方 | ||
賞与 | 5,000,000円 | 普通預金 | 11,000,000円 |
賞与引当金 | 6,000,000円 |
結局のところ、実際に支払った金額で賞与引当金を打ち消すような処理をすれば良いので、賞与の金額が変わった場合でも、特別難しい処理にはなりません。
2-1. 賞与引当金以外の勘定科目を用いるケース
賞与を計上する際は賞与引当金を利用するのが一般的ですが、場合によっては「未払金」または「未払費用」を用いて計上しなければならないケースもあります。
「未払金」を用いて処理すべきなのは、「賞与支給金額がすでに確定済みで、金額が支給対象期間以外の基準に基づき算出されているケース」です。具体的には、ノルマの達成や資格の取得などによって従業員に報酬・手当を支払う場合などが挙げられます。
「未払費用」を用いて処理すべきなのは、「賞与支給金額がすでに確定済みで、金額が支給対象期間の基準に基づき算出されているケース」です。
金額を決める基準が支給対象期間内かどうか、賞与支給金額が確定しているかどうかによって仕訳の方法が変わる点には、注意しておきましょう。
3. 賞与引当金の税務上の注意点
会計上で費用と収益にあたるものは、税務上は損金と益金にあたります。ただし、「費用と損金」「収益と益金」の意味はおおむね同じものですが、異なる部分があるので注意しましょう。
なぜ異なるのかというと、費用であるものの損金にならないもの、損金であるものの費用にならないもの、収益であるものの益金にならないもの、益金であるものの収益にならないものがあるためです。
費用であるものの損金にならないものの代表例が、今回説明している「賞与引当金繰入額」です。
税務上は、将来の見積りではなく賞与の支給をベースに考えるため、会計上は適切であっても、税務上で不確定要素のあるものを損金とすると、課税標準額を不当に下げてしまう恐れがあります。
そのため、税務上は賞与引当金繰入額は未払計上の社会保険料を含め損金としないので、申告加算する必要があります。なお、翌期に賞与の支給があった時点で損金となり、翌期には全額が認容されることになります。
過去には、税務上でも賞与引当金を損金にできていた時期がありましたが、平成10年を境に段階的に廃止されているため、会計上と税務上では、賞与引当金の扱いに違いがある点に注意しましょう。
4. 賞与引当金の仕訳方法を把握しておこう
賞与引当金は、企業が従業員に対して支払う賞与を、前期に準備して計算するために用いられる勘定科目です。
決算を迎えた時点で、当期に属すると考えられる合理的な金額を賞与引当金として繰り入れ、実際に賞与が支払われるタイミングで、賞与引当金を打ち消すような会計処理をおこないます。
なお、貸倒引当金は損金として認められますが、同じ引当金でも賞与引当金は損金として認められないという点は、税務上注意しておきましょう。
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