国民健康保険料の年末調整とは?対象者や必要な証明書・注意点を解説
更新日: 2025.2.25
公開日: 2025.2.25
OHSUGI
「国民健康保険料にも年末調整は必要なの?」
「国民健康保険料の年末調整の対象となるのはだれ?」
「そのほか年末調整全般で気を付けるべき点は?」
国民健康保険料の年末調整について、上記の疑問をもつ人事労務の担当者もいるのではないでしょうか。
企業に勤める従業員は、会社や組合の健康保険に加入するため、通常は国民健康保険料を納めていません。しかし、一定の要件を満たす従業員については、年末調整時に国民健康保険料の控除を加味しなければならないため注意が必要です。
本記事では、国民健康保険料の年末調整が必要なケースや対象者について解説します。年末調整する際の証明書の扱いや注意点もあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
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- システム上で年末調整の書類提出ができ、提出漏れや確認にかかる工数を削減できる
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1. 国民健康保険料の年末調整とは
企業における年末調整の際には、国民健康保険料についても対処が必要なケースがあります。
年末調整は、あらかじめ見込みで給与天引きしていた税金の総額と、実際に支払うべき税額との過不足を割り出し、精算する手続きです。
国民健康保険は、企業で加入する健康保険とは異なり、各自治体が運営する健康保険制度になっています。一般的な会社員は、企業や企業が属する組合の健康保険に加入し、国民健康保険には加入しません。
企業の健康保険に加入している場合、保険料はそのほかの社会保険料とともに給与から天引きのうえ企業が納めています。年間の支払総額は企業側も把握しているため、年末調整時に従業員からの申請は不要です。
一方の国民健康保険料に関しては、企業側は基本的にノータッチのため、支払総額は把握していません。国民健康保険料も社会保険料の一部であることから、この額を加味したうえで年末調整をおこなう必要があります。
2. 国民健康保険料の年末調整の対象者
国民健康保険料について年末調整が必要となる対象者は、以下のような従業員です。
- 年の途中から入社し、入社までの期間は国民健康保険に加入のうえ保険料を支払っていた
- 家族が国民健康保険の加入者で、従業員がその保険料を負担している
中途入社の従業員のうち、入社前まで国民健康保険料を支払っていたと推察されるのは以下のような人です。
- フリーランス
- 自営業
- 農業従事者
- 年金受給者
- 無職
企業や組合が運営する健康保険には扶養制度があり、配偶者や生計を一にする親族も含めて加入が可能です。一方の国民健康保険には扶養枠がなく、家族がそれぞれ保険料を納める必要があります。
従業員は、家族の国民健康保険料を含めて負担しているケースもあるため、漏れなく年末調整できるよう従業員をサポートしなければなりません。
3. 国民健康保険料の年末調整に必要な証明書類
国民健康保険料の年末調整の際、原則的に証明書の添付は不要です。従業員側で正しく計算のうえ記載してもらうよう促しましょう。
年末調整の際に証明書の添付が不要な社会保険料はそのほかにも、介護保険料や後期高齢者医療保険料があります。
なかには従業員の申請内容に疑問があったり、なんらかの理由で内容を確認したかったりすることもあるものです。その際には、従業員に対し、国民健康保険料の納付額がわかる納税通知書や領収書、振込履歴の提出を求めても問題ありません。
従業員が領収書を保管していないケースでも、管轄の自治体に申請すれば、世帯単位での納付証明書を発行してもらえます。必要な場合には従業員に依頼しましょう。
なお、国民年金保険料・国民年金基金の掛金については、年末調整の際に控除証明書の添付が必要です。混同せず、従業員には必要な証明書の提出を促してください。
4. 国民健康保険料を年末調整する際の申告方法
国民健康保険料を年末調整する際には、「給与所得者の保険料控除申告書」上の「社会保険料控除」の欄に記載してもらいます。国民健康保険料の控除をおこなう際には、以下のように記載しましょう。
項目 | 記載内容 |
社会保険の種類 | 「国民健康保険」と記載 |
保険料支払い先の名称 | 国民健康保険料を納めていた自治体の名称を記載する |
保険料を負担する人 | 社会保険の被保険者を記載する
通常は従業員本人の氏名だが、家族の国民健康保険料を負担している場合には家族の氏名と続柄を記載する |
本年中に支払った保険料の金額 | 実際に年内に支払った国民健康保険料の額を記載する |
合計(控除額) | 社会保険料の合計額を記載する |
なお、社会保険料控除の欄は2行しかなく、人によっては書ききれない場合もあります。その際には、以下のように対応してもらいましょう。
- 小さな文字を使い、1行に複数の情報を記入して提出する
- 内訳書として別紙に記載し、給与所得者の保険料控除申告書にホチキス止めしてまとめて提出する
- 給与所得者の保険料控除申告書を必要数コピーして記載し、ホチキス止めして提出する
別紙を使用する場合には決まったフォーマットはなく、原本に設けられた項目を網羅していれば問題ありません。
申請額は、実際に年内に納付した額が対象となります。万が一納付忘れがあって納めていない国民健康保険料があった際には、その額は対象外です。反対に、過去の未納分をまとめて支払ったようなケースでは、その額も申請額に含めます。
社会保険料控除には上限額が設定されていないため、年内に納めた額は過不足なく申請してもらいましょう。
5. その他年末調整の対象となる社会保険料
年末調整の際には、国民健康保険以外にも、社会保険料に該当するものはほぼすべて精算する必要があります。具体的には、以下のような保険料を精算しなければなりません。
- 厚生年金保険料
- 国民年金保険料
- 健康保険料
- 介護保険料
- 後期高齢者医療保険料
漏れがないようしっかり確認しましょう。
6. 年末調整の4つの注意点
年末調整する際には、以下の4つの点に注意が必要です。
- 家族の社会保険料を負担している従業員には控除申請を促す
- 社会保険料の実際の支払者を確認する
- 証明書を紛失した場合には従業員に再発行を促す
- 年末調整で精算できなかったら個別に確定申告してもらう
具体的に解説していきます。
6-1. 家族の社会保険料を負担している従業員には控除申請を促す
家族の社会保険料を負担している従業員がいる場合には、年末調整の際に申請するよう促しましょう。
社会保険料控除は、納税通知の宛名にかかわらず、実際に支払っている人が申請できます。家族の社会保険料を負担している従業員のなかには、この仕組みを理解せず、申請が漏れている可能性も否定できません。
年末調整前に、従業員にアナウンスしておくことが大切です。
6-2. 社会保険料の実際の支払者を確認する
社会保険料の控除の際には、実際の支払者がだれであるかしっかり確認しましょう。
社会保険料控除は、納税通知の宛名の人物ではなく、あくまで実際に支払っている人が申請できます。先述のとおり従業員が家族のぶんまでまとめて支払っているケースもありますが、反対に従業員の税金を家族が負担しているケースもあるでしょう。
従業員が家族の社会保険料をまとめて控除申請しているときには、口座の引き落とし状況を確認し、実際の支払い者をチェックする必要があります。
6-3. 証明書を紛失した場合には従業員に再発行を促す
従業員が社会保険料の控除証明書を紛失した際には、従業員に再発行を促しましょう。
国民健康保険料の控除の際には、証明書は不要です。しかし、国民年金保険料・国民年金基金の掛金については、控除証明書を添付しなければなりません。
万が一証明書を紛失した場合、発行元に依頼すれば紙面での再発行や、電子データの再交付が可能です。従業員に再発行を依頼するよう伝えましょう。
証明書は、生命保険料控除や地震保険料控除などをおこなう際にも必要であるため、忘れず確認してください。
6-4. 年末調整で精算できなかったら個別に確定申告してもらう
年末調整で精算できなかった控除申請は、個別に確定申告してもらいましょう。
従業員によっては、認識不足や申請忘れなどにより、控除申請漏れが起こる可能性があります。このようなケースでは、後から確定申告をすれば追加で控除申請が可能です。
確定申告は、原則として翌年の2月16日から3月15日(土日祝日に該当する場合は次の平日)におこないます。しかし、納めすぎた所得税を取り戻す還付申告の場合には、この期間に限らず、翌年1月1日から5年間は申請が可能です。
7. 国民健康保険料の年末調整で従業員をサポートしよう
中途採用した従業員や、従業員が家族の保険料を支払っている場合、国民健康保険料についても年末調整が必要です。
従業員は年末調整について理解していない可能性があります。適切なアナウンスをおこない、従業員をサポートしましょう。
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