貸借対照表の見方とは?基本的な見方や分析のポイントを初心者向けに解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.6.10
MEGURO
貸借対照表はある一定時点における企業の財務状況を示した書類です。損益計算書、キャッシュフロー計算書と共に財務三表に数えられる主要な会計書類であり、経営分析においても幅広く活用されています。
しかし、貸借対照表は一見すると単なる資産リストであり、表の見方を知らない初心者は重要な情報を読み解くのが難しいかもしれません。企業の経営活動におけるリスクを正しく把握するため、貸借対照表の基本的な分析方法や読み方について理解しておきましょう。
今回は貸借対照表の見方と、経営状況を分析するポイントを解説します。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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1.そもそも貸借対象表とは?
貸借対照表(バランスシート)とは、決算書類の一種です。
資産、負債、純資産についてまとめられ、決算日における企業の財政状況を表しています。貸借対照表を見ると、企業の財政状況を把握することができます。
関連記事:貸借対照表(バランスシート)とは?読み方・作り方をわかりやすく解説
2. 貸借対照表の見方(どこを見ると何がわかるのか)
貸借対照表の構成と表示される内容について解説します。貸借対照表の基本構造を押さえ、正しい見方を身に付けましょう。
貸借対照表のどこに何が書かれていて、どこをを見ると何がわかるのか解説していきます。
2‐1. 貸借対照表は企業の保有資産と資金の調達方法を示す
貸借対照表はある一定時点における企業の保有資産と、経営に用いる資金(資本)の調達方法を一覧で表示した表です。表の概要図は以下の通りです。
表の構成は大きく左右2つに分かれており、左側には企業の保有資産である「資産の部」が表示されます。右側はさらに上下2つに分かれており、上部が他人資本である「負債の部」、下部が自己資本である「純資産の部」です。
なお、貸借対照表では左側(資産)の合計額と右側(資本)の合計額は必ず一致します。これは貸借対照表が調達した資金をどのように運用したのかを明らかにした表であるためです。保有資産と総資本の均衡状態を示すことから、貸借対照表は「バランスシート(BS)」とも呼ばれます。
2‐2. 左側は企業の保有資産を示す「資産の部」
貸借対照表の左側に表示される勘定科目は企業の保有資産を示す「資産の部」です。資産の内訳から、企業が調達資金をどのような形態で所持・運用したのかが分かります。
なお、資産の部の勘定科目は、資産の種類によって「流動資産」「固定資産」「繰越資産」の3つに分類されます。
【流動資産】
流動資産は原則として1年以内に現金化可能な資産の項目です。具体的な勘定科目には「現金」「預金」「売掛金」「有価証券」などが挙げられます。
また、企業が販売のために所持する「商品」や「製品」といった棚卸資産も流動資産に該当します。
【固定資産】
固定資産は1年以上の長期にわたって所有する資産です。「建物」や「土地」「車両」などの勘定科目が該当します。
【繰越資産】
繰越資産はその効果が長期的に経営に影響する支出です。主に「開業費」や「研究開発費」などが該当します。これらの資金は一度にまとめて計上するのではなく、繰越資産として長期的に分割して計上されます。
2-3. 右側上部は他人資本を示す「負債の部」
貸借対照表の右側には経営活動に用いる資金(資本)とその調達方法の内訳が表示されます。
右側の上部は返済義務がある資本を示す「負債の部」です。企業の借金にあたる勘定科目であり、他人資本とも呼ばれます。勘定科目の区分は「流動負債」と「固定負債」の2つです。
【流動負債】
流動負債は主に1年未満で返済しなければならない負債です。「短期借入金」「買掛金」「未払金」などの勘定項目が挙げられます。
【固定負債】
固定負債は1年以上の長期に渡って返済義務がある負債です。「長期借入金」「社債」などが該当します。
2-4. 右側下部は自己資本を示す「純資産の部」
右側下部に表示される純資産は、株主からの出資金や前期からの繰越金など返済義務がない自己資本の項目です。純資産の主な勘定項目として「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」などが挙げられます。
関連記事:貸借対照表における自己資本や経営状況を分析する方法を解説
3. 貸借対照表を使った経営状況の比較分析方法
財務三表は企業の経営分析において特に重要とされる会計書類です。企業の財務状況を表す貸借対照表は、主に経営の安定性や支払い能力の分析に用いられます。
ここでは、貸借対照表を用いた基本的な分析方法を見ていきましょう。
3‐1. 経営の安定性を分析する「自己資本比率」
「自己資本比率」は総資本(負債+純資産)における純資産の比率です。純資産は株主からの出資金や経営活動で得られた利益の蓄積であり、返済の義務がありません。つまり、自己資本比率が高い企業は借金が少なく、急激に経営状況が悪化するリスクは低いと考えられます。
自己資本比率(%)=純資産÷(負債+純資産)×100
3-2. 企業の支払能力を分析する「流動比率」
「流動比率」は流動負債に対する流動資産の比率です。早期に返済しなければならない負債に対し、早期に現金化できる資産をどれくらい所持しているのかを示します。
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
3‐3. 支払い能力を厳しくチェックする「当座比率」
「当座比率」は流動比率よりもさらに厳しく支払い能力をチェックするための指標です。この場合は流動負債に対する「当座資産」の比率を算出します。
当座資産とは、流動資産のうち商品や製品などの棚卸資産を除いた資産です。棚卸資産は実際に販売できない限り現金化されず、負債の返済に当てるには信頼性に欠きます。当座比率ではより流動性の高い資産に限定して支払い能力をチェックするため、流動比率よりもシビアな判断が可能です。
当座比率(%)=(流動資産-棚卸資産)÷流動負債×100
3-4. 中長期的な安定性がわかる「固定比率」
「固定費率」は固定比率とは、自己資本(純資産)に対する固定資産の割合のことです。長期にわたって保有する固定資産は、自己資本で購入するのが望ましいとされています。
固定比率(%) = 固定資産÷自己資本 × 100
固定比率が、100%を下回れば、固定資産をすべて自己資本で賄えていることを意味します。そのため、財務状況は比較的健全で、長期的な安定が見込めるといえます。
関連記事:貸借対照表における純資産とは?経営状況を判断する方法も紹介
4. 貸借対照表で見るべき5つのポイント
貸借対照表を見たときにチェックすべきポイントを5つ紹介します。売上高や経常利益で好成績を残していても、倒産リスクがゼロであるとは限りません。貸借対照表を正しく分析し、財務状況のリスクを洗い出しましょう。
4-1. 十分な自己資本比率があるか
貸借対照表を見たときにまず自己資本比率を計算しましょう。十分な自己資本を有していれば、仮に経常利益が赤字であっても企業活動の継続が可能です。一方で、経常利益が黒字であっても自己資本が少ない状態では常に倒産のリスクを孕んでいます。
【自己資本比率の判断基準】
・40%以上…経営が安定している
・20%~40%…一般的な水準
・10%~20%…倒産のリスクあり
・10%以下…倒産リスクが非常に高い
4-2. 売上高に対して総資本が大きくなっていないか
売上高に対して総資本が大きい企業は経営効率が悪い可能性が考えられます。経営の基本は「少ない元手で大きな売上を得る」です。売上を得るために基準以上の資金を投入していては十分な利益が得られません。
経営分析では経営の効率性を判断する際に「総資本回転率」を算出します。これは損益計算書等で確認できる総売上を貸借対照表の総資産(負債+純資産)で割った数値であり、単位は「回」で示されます。
総資産回転率(回)=総売上÷総資産
総資産回転率の目安は業界によって異なりますが、1回〜1.6回が一つの目安です。同業他社の総資産回転率とも比較し、非効率な経営になっていないかチェックしましょう。
4-3. 現金化できない棚卸資産がないか
棚卸資産は貸借対照表の流動資産に分類されますが、他の勘定科目と比べると流動性が低い科目です。販売される見込みのない在庫が棚卸資産として計上されている場合もあるため、棚卸資産の中身にも注目する必要があります。
直近で販売・処分が困難な在庫が多いようであれば、棚卸資産を除いて算出される「当座比率」で支払い能力を確認しましょう。
4-4. 売上に対して売掛金が多額になっていないか
売上に対する売掛金が基準より多く計上されている場合、資産の現金化が間に合わず現金フローが破綻する恐れがあります。売掛金は1年以内に現金化される流動資産ではありますが、実際に貸借対照表に計上する金額としては売上1か月〜2ヶ月分が目安です。
売上4ヶ月分以上に相当する売掛金が貸借対照表に計上されている場合、負債の返済が滞る前に対策を講じましょう。回収が滞っている売掛金を回収することはもちろん、売掛金の支払期限の見直しも必要です。
4-5. 仮払金や仮受金などの勘定項目がないか
貸借対照表に仮払金や仮受金といった勘定科目が計上されている場合はその内容を明らかにしなければなりません。仮払金・仮受金は、その名の通り何かしらの理由で収支が発生した場合に仮に計上しておくものです。決算においては事実に基づいて正しい勘定科目に振り分けておきましょう。
5. 貸借対照表の見方を理解して経営状況を把握しよう
財務三表に数えられる貸借対照表は企業の経営状況を分析するうえでも特に重要な書類です。貸借対照表は企業の財務状況を明らかにした表であり、計上された数値から企業の安定性や支払能力を推し測れます。基本的な表の見方や分析方法を身に付け、経営状況の把握に役立てましょう。
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
「経理担当になってまだ日が浅く、会計知識をしっかりつけたい!」
「会計の基礎知識である勘定科目や仕訳がそもそもわからない」
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