手形とは?小切手との違いや取引の流れ、種類など手形の基礎知識を解説
更新日: 2025.7.16 公開日: 2022.7.6 jinjer Blog 編集部

企業間取引では、現在でも現金ではなく手形が利用される場合があります。
とくに手形が利用されるケースが多いのが、信用取引の一種である掛取引です。
この記事では、手形の種類や書き方、手形を利用した取引の流れ、手形利用時に守らなければならないルールを解説します。
目次
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1. 手形とは?


手形とは、記載された金額を一定期間後に支払うことを約束した有価証券を指します。
全国銀行協会の調べによると、全国の手形交換所では1日あたり約14万枚の手形が交換され、約4,852億円の金額の取引がおこなわれています。
企業間取引では、商品代金を後払いにする掛取引がおこなわれることがあります。
その際の支払い方法の一つとして、銀行振込やクレジットカード払い、小切手と並んで利用されるのが手形です。
参考:全国手形交換高・不渡手形実数・取引停止処分数調査(2021年度中)|全国銀行協会
1-1. 手形と小切手の違い
手形と小切手は、現金化できる時期に大きな違いがあります。
小切手は多額の現金を持ち運ぶ不便さや、盗難のリスクの回避のために現金の代わりとして振り出すものです。受け取った人が直ぐに現金化できます。
一方で手形は、特定の期日までに支払うことを約束して振り出すものです。小切手は振り出す時点で預金口座に残高がないと発行できませんが、手形は取引時点では手元に資金がないといった場合でも発行することが可能です。
手形に記載された支払期日にならないと現金化できないため、手形を振り出した側の企業は余裕を持った資金のやりくりができます。
2. 手形の種類

手形には、「支払手形」「約束手形」「為替手形」の3種類があります。
為替手形は現在ではほとんど使われていないため、手形取引で目にする機会が多いのは支払手形と約束手形です。
混同されやすい支払手形・約束手形・為替手形の違いについて、わかりやすく解説します。
2-1. 支払手形
支払手形とは、商品やサービスの支払いに振り出した手形全般のことを指します。
支払手形には、後述で解説する「約束手形」と「為替手形」の2種類があり、これらの手形を総称して支払手形と呼んでいます。
なお、振出人が振り出す手形のことを支払手形と呼ぶのに対し、受取人が受け取る手形のことを受取手形と呼ぶことも合わせて覚えておきましょう。
2-2. 約束手形
約束手形は、振出人が受取人に所定の金額の支払いを約束する有価証券です。
振出人が約束手形に支払期日や金額を記載した時点で、受取人への支払い義務が生じます。
約束手形を振り出す場合、会計処理上は「支払手形」の勘定科目を、受取人は「受取手形」の勘定科目で会計処理をおこないます。
2-3. 為替手形
為替手形は振出人の指定した期日に、第三者の支払人が所定の金額を受取人に支払う有価証券です。
約束手形と違い、振出人・支払人・受取人の三者間でお金のやりとりがおこなわれるのが特徴です。
ただし、為替手形には振出人が自身を支払人・受取人に指定する「自己宛為替手形」「自己受為替手形」という形式もあります。
手続きが煩雑なことから、為替手形は企業間取引ではほとんど利用されていません。
3. 手形の書き方


手形には8つの記入項目があります。
相手方とのトラブルを避けるため、手形の書き方はきちんと守りましょう。
①管理番号
手形を特定する為の番号、手形の振出人が任意の番号を記入可能
②手形番号
手形の用紙に印字された番号
③支払期日
振出人の当座預金口座から引き落としがおこなわれる日付
④支払場所
振出人の当座預金口座がある取扱金融機関
⑤金額
受取人に払う金額、チェックライターで印字するか手書きの場合は漢数字で記入
⑥振出日
手形を振り出した日付、支払期日よりも前の日付を記入
⑦振出人
手形の振出人の会社名、住所等を記載
振出人の氏名の横に銀おこな印を押印する
⑧収入印紙
支払い金額に応じた金額の収入印紙を貼付する
4. 手形を利用した取引の流れ


手形を利用した場合の取引の流れを確認しましょう。ここでは、約束手形と為替手形の取引の流れを紹介します。それぞれ、取引の流れに違いがあるので、合わせてしっかり押さえておきましょう。
4-1. 約束手形の取引の流れ
手形取引を始めるためには、まず取扱金融機関で当座預金口座を開設し、手形帳を受け取る必要があります。約束手形の振り出しから支払は、下記の流れでおこなわれます。
①自社(振出人)が手形に必要事項を記入し、相手方(受取人)にわたす
②受取人が支払期日以降に取引のある金融機関に取立を依頼する
③依頼を受けた金融機関が手形交換所に手形を持ち込む
④振出人の金融機関が当座預金口座より代金を引き落とす
⑤振出人の金融機関が受取人の金融機関へ手形の代金を送金する
⑥受取人の金融機関が代金を支払う
手形を振り出してから支払いまでの期間を「手形サイト」といいます。手形サイトは「月末締め、翌月末払い」に設定されることが一般的です。
振出人は手形サイトが長いほど支払う期日に猶予が生まれますが、受け取り側にとっては支払サイトが短い方が望ましい状況といえるでしょう。
なお、手形取引は小切手と違い、手形を受取人に渡した時点で支払い金額を当座預金口座に入金する必要はありません。
4-2. 為替手形の取引の流れ
日本の商取引では目にする機会が少なくなった為替手形ですが、約束手形と取り引きの流れが異なるので違いについて押さえておきましょう。
①自社(振出人)が手形の支払い者(引受人)に引き受けを依頼する
②振出人が手形に必要事項を記入し、相手方(受取人)にわたす
③引受人は取引銀行へ手形代金の入金をおこなう
④受取人は支払期日以降に引受人に手形を渡して取り立てをおこなう
⑤引受人の金融機関から受取人に手形代金が支払われる
約束手形との大きな違いは、第三者が加わる点です。振出人側の手続きは煩雑ではありませんが、受取人側は引受人に手形を渡すという手間が生じています。
5. 手形取引に関する重要用語


手形取引においては、手形割引や裏書、不渡りといった専門的な用語も多数使われます。ここでは、特に手形取引で目にすることの多い重要用語をご紹介します。それぞれどのような手形取引を指すのかを覚えておきましょう。
5-1.手形割引
手形割引とは、支払期日前に手形を現金化することです。手形取引では、支払期日まで振出人からの支払を受けることはできません。しかし、手形を割り引くことで、支払期日よりも前に銀行等の金融機関に譲渡し、手形に記載された支払金額から満了期日までの利息や手数料を差し引いた残額を現金で受け取ることができます。
手形を割引すると、満了時の受取額より受取金額が少なくなるので、記帳の際は銀行に支払った利息や手数料などの割引料を「手形売却損」として記帳します。
5-2. 手形の裏書
受け取った手形を他の企業に譲渡し、購入商品等の支払いに充てることもできます。これを「手形の裏書」といいます。
手形を裏書すると、手形の支払期日よりも前に手形を資金化することができます。通常手形を支払期日よりも前に資金化するには手形割引で手数料を支払う必要がありますが、手形を裏書した場合はこの手数料が不要であるというメリットがあります。
一方デメリットとして、もし譲渡した手形が不渡りになった場合には、当初の振出人ではなく、譲渡した企業が代わりに該当金額を支払わなければならない点が挙げられます。
5-3. 手形の不渡り
手形の不渡りとは、支払期日までに決済ができず、代金を受け取れない状態のことです。手形の不渡りには3つの種類があります。
①0号(ゼロゴウ)不渡り
手形の形式に不備がある場合の不渡りです。手形には受取人が銀行に対し現金化を請求できる期間が定められています。この期間を「呈示期間」といい、手形の場合は、支払期日とそれに続く2日間と決められています。この呈示期間を過ぎた場合など振出人の信用に関わらない不渡りが0号不渡りです。
②1号不渡り
当座預金に引き落としがおこなえるだけの残高がない場合など、一般的な不渡りが1号不渡りです。1号不渡りは振出人の信用に関わります。1号不渡りが1度目であれば振出人は不渡り処分を受け、加盟銀行に不渡報告が通知されます。信用が大きく低下するため銀行からの融資を受けるのが困難になるなど、経営が困難になるリスクもあります。
また、不渡りが発生し、不渡り届が銀行から提出されると手形交換所の不渡報告書に掲載されます。不渡報告書の掲載から半年以内に再び不渡りで手形交換所に不渡り届が提出されると、該当の振出人は取引停止処分を受け、手形交換所に参加している銀行との取引が2年間できなくなります。
③2号不渡り
0号、1号のいずれにも該当しない場合は2号不渡りになります。例えば、偽造された手形や盗まれた手形が現金化の請求を受けて不渡りとなった場合などがこれにあたります。
5-4. 手形の貸付
手形貸付とは、約束手形の振り出しによって融資を受けることです。手形は期日までに額面金額を支払うことを約束する有価証券であるので、通常の融資に比べて短い審査期間ですぐに資金調達をおこなうことができます。また、借用書よりも印紙税が安いこともメリットです。
一方、手形の貸付は1年以内の短期貸付であり高額で長期的な資金調達には向かないというデメリットがあります。
6. 手形を利用するメリット、デメリット


手形取引には、現金や小切手での取引にはないメリットがあります。
一方、手形のジャンプや不渡りのリスクがある点が手形を利用するデメリットです。
手形取引のメリットとデメリットを比較し、自社に合った支払い方法を選択しましょう。
6-1. 手形取引の3つのメリット
主に振出人に対して、手形を利用するメリットは3つあります。
・金利を発生させずに支払い期日を遅らせられる
・手元に資金が無くても支払いができる
・社会的な信用を得ることができる
それぞれどういうことか、詳しく見ていきましょう。
6-1-1. 【振出人】金利を発生させずに支払い期日を遅らせられる
ローンを利用して商品やサービスを購入する際、支払いを後日に引き延ばせるものの、対価のほかに金利も支払わなくてはいけません。
しかし、手形取引の場合は、金利を発生させずに支払い期日を遅らせることが可能です。そのため、支払いに手形を利用することで、資金繰りやキャッシュフローの改善が図れます。
6-1-2. 【振出人】手元に資金が無くても支払いができる
手形は小切手と違い、当座預金に残高が無くても振り出すことができるのも特徴です。
そのため、商品やサービスの購入時点で手元に現金がなくても、銀行に借り入れせずに手形を振り出すことで支払いを済ませることができます。
6-1-3.【振出人】社会的な信用を得ることができる
手形は、すべての企業で振り出せるものではありません。手形取引を利用するには、銀行の厳しい審査基準をクリアする必要があります。
手形取引ができるということは、銀行からの信用を得ている会社として社会的な認知を得ることができます。
6-2. 手形取引の3つのデメリット
一方、手形取引にはデメリットも3つあります。
・手形のジャンプのリスクがある
・手形の不渡りのリスクがある
・印紙税や手形帳代がかかる
振出人と受取人双方に関わることなので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
6-2-1.【振出人・受取人】手形のジャンプのリスクがある
手形取引のリスクとして、手形のジャンプがまず挙げられます。
手形のジャンプとは、所定の期日までに支払いができなくなり、新しい手形を振り出して支払いに充てることです。
手形のジャンプをおこなった場合、受取人からの信用低下や、取引条件の悪化につながる可能性があります。
6-2-2.【振出人・受取人】手形の不渡りのリスクがある
手形のジャンプよりも深刻なリスクが、支払期日に引き落としができない「手形の不渡り」です。
1回目の不渡りから6か月以内に再度不渡りを出すと、銀行との取引が停止されます。そのため、現金での取引しかできなくなり、キャッシュフローの悪化により振出人は倒産リスクが高まる可能性が生じます。
6-2-3.【振出人】印紙税や手形帳代がかかる
手形取引を始める際は、手形帳を当座口座を開設している金融機関から、購入する必要があります。また、手形を振り出す際も、額面金額に応じた収入印紙を購入しなくてはいけません。
いずれも大きなコストがかかるものではありませんが、取引回数が多くなるにつれてこれらのコストも大きくなることを押さえておきましょう。
7. 手形利用時のルールや注意点


現金での取引と違い、手形を利用した取引にはさまざまなルールがあります。例えば、手形を振り出す場合、支払い金額に応じた金額の収入印紙を貼付しなければなりません。
ここでは、手形の取引に関するルールや注意点をご紹介します。
7-1. 所定の金額の収入印紙を貼付する
手形は印紙税法上の課税文書に当たるため、所定の金額の収入印紙を貼付する必要があります。
約束手形または為替手形は印紙税額一覧表の第3号文書に該当し、手形金額に応じて印紙税が課税されます。
引用:約束手形又は為替手形|国税庁
国税庁のホームページによると、収入印紙の金額は次の通りです。
| 記載された金額 | 税額 |
| 10万円未満のもの | 非課税 |
| 10万円以上100万円以下のもの | 200円 |
| 100万円を超え200万円以下のもの | 400円 |
| 200万円を超え300万円以下のもの | 600円 |
| 300万円を超え500万円以下のもの | 1,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下のもの | 2,000円 |
7-2. 支払期日は取引から60日以内に設定する
下請代金の支払いに約束手形を利用する際、従来は支払期日を120日(繊維業は90日)まで設定することが認められていました。しかし、新たに約束手形の指導基準が新設されたことに伴い、支払期日は業種を問わず60日以内に設定するよう見直されています。
この新基準は令和6年11月1日以降より適用され、60日以上の支払期日を設定した場合は指導の対象となります。
手形に記載する支払期日は、遅くとも商品を受け取ってから60日以内に設定しましょう。
参照:手形が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準の変更について|公正取引委員会
7-3. 金額の記載ミスに注意する
手形を振り出す際に注意しなければならないのが金額の記載です。手形の記載内容が法律に反してない限り、有効なものとして扱われます(文言証券性)。そのため、誤りに気づかないまま第三者に譲渡されて請求を受けた場合は、記載内容の代金を最悪支払わなくてはいけません。
特に、誤って桁数を多く記載してしまった場合は大変な事態を招く恐れもあるため、手形を振り出す際は十分注意しましょう。
8. 約束手形は廃止が検討されている


約束手形は振出人の支払いに猶予ができる点がメリットですが、受取人の資金繰りには負担がかかります。資金が潤沢ではない中小企業では資金繰りが悪化する恐れもあり、手形割引を利用する企業も少なくありません。
そのため、経済産業省は2026年を目途に約束手形を廃止する方針を示しています。
今後の動きも踏まえて、電子的決済サービスの利用の検討も視野に入れた方が良いでしょう。
9. 手形を利用する前に書き方や取引の流れを確認しよう


企業間取引では、現在でも現金や小切手の代わりに手形が利用されています。
手形には約束手形と為替手形の2種類があり、企業間取引で主に使われるのは約束手形です。
取引相手とトラブルにならないよう、正しい書き方で手形を振り出しましょう。
また、「手形に収入印紙を貼り付ける」「支払期日は取引から60日以内に設定する」といったルールもあります。
手形を利用する前に用紙の書き方や取引の流れを確認しておきましょう。



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