資本連結とは?連結修正仕訳や支配獲得日の意味も詳しく解説
更新日: 2024.5.8
公開日: 2022.11.30
jinjer Blog 編集部
たとえば、B社の株式を50%以上所有しているA社がある場合、A社はB社の支配権を獲得しているといいます。支配している側が親会社、支配されている側が子会社です。決算の際、親会社と子会社を合わせて1つの大きなグループとして、連結決算を行う必要があります。
本記事では資本連結について、連結修正仕訳や支配獲得日の意味を詳しく解説いたします。
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1. 資本連結とは?
株式の50%以上を所有するなどしてほかの会社を実質的に支配するようになると、それぞれ親会社と子会社という関係になり、グループ企業となります。グループ企業は、その財政状態を表示するために連結財務諸表を作成しなければいけません。そのために行う必要があるのが、資本連結です。
親会社と子会社について合算することで、1つの大きなグループ企業として財務諸表を作成します。しかし、これはシンプルに足し算をすれば良いという話ではありません。
親会社の視点で見てみると、所有している子会社の株式が増えたことになります。一方で子会社の視点で見てみると、株式を発行した都合で資本金などが増えたことになります。これらは別々の会社として見る分には何も問題はありませんが、1つの会社として見てみると、現金の在りかが移動しただけです。
以上の理由から、親会社と子会社間で行われた資本取り引きは二重計上となってしまうため、相殺消去を行う必要があります。これが資本連結です。
2. 支配獲得日とは?
異なるA社とB社があるとして、A社がB社の株式を50%以上所有するようになるなどして支配権を獲得し、親会社と子会社の関係になった日のことを支配獲得日といいます。支配獲得日には、投資および資本の相殺消去について仕訳を行うのがポイントです。
支配権を獲得すると、親会社は子会社の資産と負債も獲得することになります。
3. 連結修正仕訳の方法
連結修正仕訳は、開始仕訳と修正仕訳の2段階に分けて行われます。開始仕訳では、これまでに行ってきたすべての修正仕訳をもう一度まとめて記載します。その後、今期の分の修正仕訳を行うのです。
連結修正仕訳は4つの項目に分けて考えるとわかりやすくなります。それぞれで開始仕訳と修正仕訳もありますので、詳しく見ていきましょう。
3-1. 支配獲得日の連結(投資と資本の相殺消去)
まず「投資と資本の相殺消去」を行います。親会社が投資した分と子会社の資本を相殺消去します。支配獲得日に行う連結修正仕訳は「投資と資本の相殺消去」のみです。前年度に修正仕訳は行っていませんので、開始仕訳は行いません。
支配獲得日の連結仕訳は、子会社の株式をどれくらい所有しているのかによって異なってきます。それぞれのパターンについて順番に見ていきましょう。
①子会社の株式をすべて所有している場合
まずは、子会社の株式を親会社のみですべて所有している場合について見ていきましょう。
例として、A社がB社の株式のすべてを1,200万円で買収したケースを想定してみます。すると、A社とB社はそれぞれ親会社と子会社になり、B社の資産や負債をすべて受け継ぎます。このとき、行う仕訳は以下のとおりです。
なお、支配獲得日のB社は資本金800万円、資本剰余金100万円、利益剰余金150万円だったとします。
借方 | 貸方 | ||
資本金 | 8,000,000 | 子会社株式 | 12,000,000 |
資本剰余金 | 1,000,000 | ||
利益剰余金 | 1,500,000 | ||
のれん | 1,500,000 |
今回のケースだと、資本金と資本剰余金、利益剰余金を受け継いだので上記のような仕訳となります。
上記のように、子会社株式の金額と差ができてしまうことがあります。このときに用いる勘定科目が「のれん」あるいは「負ののれん発生益」です。
「のれん」とは会社の売却や買収によって発生した差額のことで、ブランド価値を指します。借方に差額ができた場合は「のれん」、貸方に差額ができた場合は「負ののれん発生益」となります。
「のれん」は無形固定資産なので、毎年減価償却を行うのがポイントです。
翌年度以降は、以下のように開始仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
資本金(期首) | 8,000,000 | 子会社株式 | 12,000,000 |
資本剰余金(期首) | 1,000,000 | ||
利益剰余金(期首) | 1,500,000 | ||
のれん | 1,500,000 |
②子会社の株式のすべてを所有していない場合
続いて、子会社の株式の50%以上を親会社が所有しているケースについて見てみましょう。
資本金800万円、資本剰余金100万円、利益剰余金150万円のB社の株式について、A社が全体の60%を750万円で買収したと想定してみます。
A社はB社の支配権を獲得して、それぞれ親会社と子会社の関係になります。このときに行う仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
資本金 | 8,000,000 | 子会社株式 | 7,500,000 |
資本剰余金 | 1,000,000 | 被支配株主持分 | 4,200,000 |
利益剰余金 | 1,500,000 | ||
のれん | 1,200,000 |
さきほどとは異なる点として「被支配株主持分」という勘定科目を使用します。今回のように子会社の株式のすべてを所有していない場合、その分の金額をこの勘定科目を用いて計算します。
今回の場合、子会社の資本は資本金と資本剰余金、利益剰余金を足して1,050万円でした。このうちの60%を親会社が所有しているということは、40%が「被支配株主持分」となります。よって420万円が「被支配株主持分」と計算できます。
この場合でも、差額ができれば「のれん」あるいは「負ののれん発生益」を用いて仕訳を行います。
翌年度以降は、以下のように開始仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
資本金(期首) | 8,000,000 | 子会社株式 | 7,500,000 |
資本剰余金(期首) | 1,000,000 | 被支配株主持分(期首) | 4,200,000 |
利益剰余金(期首) | 1,500,000 | ||
のれん | 1,200,000 |
3-2. のれんの償却
続いて、支配獲得日に発生したのれんの減価償却を行います。
支配獲得日に150万円ののれんが発生しており、翌年度から10年かけて減価償却するとしましょう。すると、仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
のれん償却 | 150,000 | のれん | 150,000 |
「負ののれん発生益」の場合は、借方と貸方が逆になります。なお、のれんは無形固定資産なので直接法で減価償却します。
前年度に修正仕訳を行っていた場合、翌年度は開始仕訳も先に行う必要があります。のれん償却に限らず、連結修正仕訳の開始仕訳では利益に関わる勘定科目を「利益剰余金(期首)」に書き換えるのがポイントです。
借方 | 貸方 | ||
利益剰余金(期首) | 150,000 | のれん | 150,000 |
3-3. 子会社の当期純利益の振り替え
親会社が子会社のすべての株式を所有していない場合、子会社の利益のなかには親会社に帰属する分と被支配株主に帰属する分が存在します。被支配株主に帰属する分について「被支配株主持分」を増やす振り替えを行います。
親会社が子会社の60%の株式を所有しており、子会社の当期純利益が100万円だったとしましょう。その場合、仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
被支配株主に帰属する当期純利益 | 400,000 | 被支配株主持分 | 400,000 |
開始仕訳も同様に行います。
借方 | 貸方 | ||
利益剰余金(期首) | 400,000 | 被支配株主持分(期首) | 400,000 |
3-4. 子会社の配当金の修正
親会社と子会社間の取り引きは相殺消去しなければいけません。子会社が配当金を出すと、その分子会社の財産が減ります。その分を利益剰余金で調整します。
親会社が子会社の60%の株式を所有しており、子会社が配当金として50万円出していたとしましょう。その場合、仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
受取配当金 | 300,000 | 利益剰余金 | 500,000 |
被支配株主持分 | 200,000 |
開始仕訳も同様に行います。
借方 | 貸方 | ||
利益剰余金(期首) | 300,000 | 利益剰余金(期首) | 500,000 |
被支配株主持分(期首) | 200,000 |
5. 連結修正仕訳は開始仕訳と修正仕訳に分けて考えることがポイント
連結財務諸表を作成するには、連結修正仕訳が必要です。仕訳の内容が多いうえに毎年改めて行う必要があるため、慣れていないと複雑に感じられるかもしれません。
ポイントはそれぞれの仕訳項目について開始仕訳と修正仕訳に分けて行うことが大切です。前年度までの分の開始仕訳をまとめて行い、その後に今期の修正仕訳を行うとわかりやすいでしょう。
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