キャッシュフローとは?黒字倒産リスクを軽減する重要指標を解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.7.7
MEGURO
キャッシュフローは会社に出入りするお金の流れを指す言葉です。
会計で「利益は意見、キャッシュは事実」という言葉が使われるように、キャッシュフローを可視化することで、損益計算書や賃借対照表ではわからない情報が得られます。
キャッシュフロー計算書を作成し、会社の現状の財務状況を分析しましょう。
この記事では、キャッシュフローの定義や種類、キャッシュフロー計算書の読み方や作成時のポイントを解説します。
目次
1. キャッシュフローとは

キャッシュフローとは、会社に出入りする現金(キャッシュ)の流れ(フロー)を表します。会社に入ってくる現金を「キャッシュイン」、会社から出ていく現金を「キャッシュアウト」とよびます。
つまり、キャッシュフローはキャッシュインからキャッシュアウトを差し引いて、手元にどれだけの現金が残っているかを可視化するための指標です。
キャッシュフローの計算式は以下の通りです。
「キャッシュフロー=キャッシュイン-キャッシュアウト」
また、会計期間のキャッシュフローを示す会計書類を「キャッシュフロー計算書」とよびます。キャッシュフロー計算書は、損益計算書や賃借対照表と並び、財務三表と呼ばれる重要な会計書類です。なぜキャッシュフロー計算書を作成する必要があるのでしょうか。
例えば、損益計算書を作成すると、会計期間の売上から費用を差し引いた「利益」がわかります。
しかし、掛取引などの信用取引をおこなう場合、帳簿上は利益が出ていても入金が後回しになります。入金が遅れた場合、借入金の返済のための手元資金が不足し、黒字倒産に陥るリスクも考えられるでしょう。
非上場企業の場合は、キャッシュフロー計算書の作成は義務ではありません。ただし、キャッシュフロー計算書を作成することで、会社のお金の流れが可視化され、黒字倒産のリスクを減らすことができます。上場企業でなくとも、キャッシュフロー計算書は作成しておくとよいでしょう。
1-1. キャッシュフロー経営とは
キャッシュフロー経営とは、損益計算書上の利益だけでなく、手持ちの現金の確保を優先し、運転資金をどう増やすかに注目した経営手法です。
手元の運転資金が潤沢であれば、あらゆる支出への安定性が担保されます。また、資金に余裕があることで、経営判断をおこなう際に取れる選択肢が多くなることがメリットとして挙げられます。資金ショートが起こり倒産するリスクも回避できるので、金融機関や投資家からの信用の獲得にも繋がります。
2. キャッシュフローの種類

キャッシュフロー計算書には、「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3種類のキャッシュフローを記載することが一般的です。
また、企業が自由に使える現金を表す「フリーキャッシュフロー」もキャッシュフローに含まれます。
4種類のキャッシュフローの特徴や違いを解説します。
2‐1. 営業活動によるキャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフローとは、会社の本業から得られたお金の流れのことです。
営業活動によるキャッシュフローの例は以下の通りです。
キャッシュイン(+)
・現金での取引で得られた収入
・取引先から売掛金を現金で回収した場合の収入
キャッシュアウト(-)
・仕入れ取引で生じた現金支出
・買掛金を取引先に現金で支払う際の支出
・従業員への給与の支払い
・経費を現金で支払った場合
関連記事:営業キャッシュ・フローとは?マージンの計算方法やチェックポイントを紹介
2‐2. 投資活動によるキャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフローは、本業以外の資産運用や設備投資によって生じたお金の流れを指します。
投資活動によるキャッシュフローとして、例えば以下のようなものがあります。
キャッシュイン(+)
・有価証券の売却で獲得した現金収入
・不動際の売却で獲得した現金収入
・貸付金を現金で回収した際の収入
キャッシュアウト(-)
・有価証券を現金で購入する際の支払い
・不動産を取得する際の現金でのでの支払い
・貸付をおこなった際の現金支出
2‐3. 財務活動によるキャッシュフロー
財務活動によるキャッシュフローは、事業継続のために必要な融資や資金調達に関するお金の流れを指します。
財務活動によるキャッシュフローには以下のようなものがあります。
キャッシュイン(+)
・融資でえられた現金の収入
・社債の発行で得られた現金収入
・株式発行で獲得した現金収入
キャッシュアウト(-)
・借入金を現金で返済した場合の支出
・社債の償還による現金支出
・株主への配当金を現金で支払った支出
関連記事:財務キャッシュ・フローとは?営業CFや投資CFとの違いやチェックポイントを解説
2‐4. フリーキャッシュフロー
一方、営業活動や投資活動には直接関わらないものの、会社が自由に使えるお金のことをフリーキャッシュフローと呼びます。
フリーキャッシュフローの計算方法は以下の通りです。
フリーキャッシュフロー=営業活動によるキャッシュフロー-投資活動によるキャッシュフロー |
フリーキャッシュフローの金額は、企業の財務状況の余力を示します。
フリーキャッシュフローがプラスの場合、資産運用や設備投資により多くの資本を投入することが可能です。
関連記事:フリーキャッシュフローとは?計算方法や分析方法を紹介
3. キャッシュフロー計算書の見方(評価基準)

キャッシュフロー計算書を読む場合は、3種類のキャッシュフローのプラスマイナスをチェックしましょう。
例えば、事業がうまくいっており、さらなる成長の余地が残されている場合、以下のようなキャッシュフローになることが一般的です。
営業活動CF(+) / 投資活動CF(-) / 財務活動CF(-) |
この場合本業である事業が好調で、本業で獲得した資金を元に更なる投資活動をおこなっていると読むことができます。また、財務活動によるキャッシュフローの「-」からは、収入を借入金の返済に充てて資金繰りに問題はない状況が読み取れ、企業にとって理想的なキャッシュフローであると言えます。
一方、キャッシュフローが以下の状態の場合には、企業の財務状況に改善の余地があります。
営業活動CF(-) / 投資活動CF(+) / 財務活動CF(+) |
この場合、本業である事業が赤字の状態で、投資資産の売却や借入金の増額で赤字を補っている可能性があると判断することができます。
3-1. キャッシュフローと貸借対照表・損益計算書の関係
キャッシュフロー計算書と他の決算書類を見比べることで、詳細な経営状況を把握することが可能になります。
貸借対照表は、期末時点での企業の資金状況を示す決算書類です。キャッシュフロー計算書の期首残高は、前期の貸借対照表上の現金及び同等物の期首残高と、キャッシュフロー計算書の期末残高は、当期の貸借対照表の現金及び預金と結びつきがあります。
損益計算書は期中にどれだけの費用を用いて、どれだけの利益を生んだかを示す決算書類です。損益計算書の営業利益はキャッシュフロー計算書の営業活動におけるキャッシュフローと類似したものです。ただし、損益計算書は発生主義、キャッシュフロー計算書は現金主義で作成しているという違いがあります。
営業利益は増加しているのに、営業活動によるキャッシュフローが減少している場合には、売上債権の回収サイクルに問題があることが分かります。このように、二つを比較することで企業の経営状況を詳細に分析することが可能になります。
3-2. キャッシュフローがマイナスの場合のリスク
各種キャッシュフローはマイナスである状況に問題があるものとないものがあります。それぞれキャッシュフローのプラス・マイナスが指し示す意味を把握しておきましょう。
営業活動によるキャッシュフロー
(+):本業の事業活動で収益を獲得できている
(-):本業の事業活動の業績が悪い
投資活動によるキャッシュフロー
(+):投資をおこなっていない
(-):投資を積極的におこなっている
財務活動によるキャッシュフロー
(+):資金調達をおこなっている
(-):資金調達をおこなってないか、負債を返済している
営業活動によるキャッシュフローがマイナスである場合は業績の悪化が懸念されるため、すぐに実態を把握する必要があります。
また、営業活動によるキャッシュフローがマイナスで、かつ、財務活動によるキャッシュフローもマイナスである場合は、金融機関からの融資を受けられず、資金繰りが困窮している危険な状態であるためキャッシュが不足するリスクがあります。この場合、迅速に不足分の資金繰りをおこなう必要があると言えます。
4. キャッシュフロー計算書の作り方には間接法と直接法がある
キャッシュフロー計算書の作成方法は、大きく分けて「直接法」「間接法」の2種類です。
直接法は取引ごとの現金の流れがわかるため、キャッシュフローを詳しく把握することができます。
一方、間接法は直接法よりも簡易的なアプローチでキャッシュフロー計算書を作成できるのが強みです。直接法と間接法のそれぞれのメリットデメリットは以下の通りです。
4-1. キャッシュフロー計算書を間接法で作成する場合
キャッシュフローを間接法で作成する場合、損益計算書の税引前当期純利益を参照して営業活動によるキャッシュフローを求めます。間接法でキャッシュフロー計算書を作成するメリットは減価償却の仕訳の際などに、用いる勘定科目は増えるものの、直接法よりも作成が簡単におこなえることです。
一方で、個々の取引のキャッシュフローを細かく分析できないため、詳細な経営状況の把握がおこなえない点がデメリットとして挙げられます。
4-2. キャッシュフロー計算書を直接法で作成する場合
キャッシュフロー計算書を直接法で作成する場合、各取引の現金の流れを計算してキャッシュフローの総額を求めるため、取引毎のキャッシュフローが細かく分析できる点がメリットとして挙げられます。また、国際会計基準でも直接法が推奨されているため、採用している会計基準によっては、海外の投資家からの投資を受けやすくなる可能性もあります。
一方で、各取引ごとのデータが必要になるため、キャッシュフロー計算書の作成に時間と手間がかかることがデメリットとして挙げられます。
5. キャッシュフロー計算書作成時の注意点

キャッシュフロー計算書を作成するときは、2期分の貸借対照表を用意しましょう。
2期分の貸借対照表を比較し、現金・預金の勘定科目の増減を求めることで、各科目のキャッシュフローがわかります。
キャッシュフローを1つずつ営業活動、投資活動、財務活動の3種類に分類すれば、簡単にキャッシュフロー計算書を作成することが可能です。
キャッシュフロー計算書をより手軽に作成したい場合は、会計ソフトの導入も検討しましょう。
クラウド上で利用できる会計ソフトなら、テレワークやリモートワークを導入している企業でも在宅でキャッシュフロー計算書を作成できます。
6. キャッシュフローの種類や重要性を知って計算書を作成しよう

キャッシュフローは会社を出入りするお金の流れを指す言葉です。
キャッシュフロー計算書を作成し、「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つのお金の流れを整理することで、会社の現在の財務状況を可視化できます。
損益計算書や賃借対照表だけでは、帳簿上の利益しかわからないため、黒字倒産のリスクがあります。
キャッシュフローの種類や重要性を知り、キャッシュフロー計算書を作成しましょう。
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