勘定科目「通信費」を利用するときの注意点や摘要の書き方を紹介
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.9.14
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業務で利用している電話料金やインターネット料金は、勘定科目「通信費」に仕訳して経費計上することが可能です。ただ、通信費を仕訳するときはいくつかの注意点があります。他の勘定科目と混同しやすい部分もありますので、通信費を経費計上する際は基本をしっかり押さえておきましょう。
今回は、通信費に仕訳する際の注意点や、通信費の摘要欄に記載すべきこと、通信費と混同しやすい勘定科目について解説します。
1. 通信費に仕訳するときの注意点

通信費に仕訳する際、気をつけておきたいポイントを3つご紹介します。
1-1. 自宅兼事務所で仕事をしている場合は按分が必要
個人事業主の中には、独立した事務所を持たず、自宅を仕事場にしている方も少なくありません。その場合、わざわざ業務用の電話回線やインターネット回線を引かず、プライベートと兼用していることがほとんどです。
通信費として計上できるのは、あくまで業務に利用した分のみですので、プライベートと兼用している電話やインターネットの使用料は按分して計上する必要があります。按分の方法はいろいろありますが、通信費の場合は業務に利用している時間・日数で割合を求める方法が一般的です。
たとえば1日のうち平均6時間にわたって自宅のインターネットを利用して仕事をし、プライベートの時間に4時間インターネットを使ったとします。
計10時間のうち、業務に利用したのは6時間なので、全体の割合は60%になります。
仮にその月のインターネット使用料が2万円だった場合、2万円×60%=12,000円を経費として計上することができます。なお、残り8,000円に相当するプライベートの分は費用として計上できませんが、業務用の12,000円と同じ口座から引き落とされるので、帳簿に記帳しなければなりません。
事業用資金のうち、プライベートに使用した分は「事業主貸」という勘定科目で記帳し、事業経費と区別できるようにしておきましょう。
1-2. 個人用の携帯を業務に利用している場合は利用明細から業務利用分を割り出す必要がある
中小企業でよく見られるのが、従業員が保有する携帯電話を業務に利用するケースです。個人用の携帯電話料金は、従業員それぞれの口座から引き落とされるので、もし業務に利用した場合、従業員の負担が大きくなってしまいます。
そんなときは、従業員の携帯電話の利用明細をもとに、業務に利用した分だけを合計して通信費として計上することが可能です。利用明細を取り寄せられるのは本人だけなので、従業員自身に経費精算してもらう必要があります。
たとえば、従業員の個人携帯の業務利用分10,000円を経費精算した場合の仕訳は以下のようになります。
通信費 10,000 / 現金 10,000 / 摘要 携帯電話料金
経費精算の手間を省きたい場合は、「業務利用分として1ヵ月あたり5,000円を支給する」といったルールを設けることも可能です。
ただし、この場合の支給額は利用明細に基づいて金額ではないため、手当(給与)扱いとなる点に注意が必要です。
1-3. 通信費は原則として利用月に計上する
通信費は利用した月に費用計上するのが原則です。たとえば8月に利用したインターネット回線の使用料は、8月分の経費として計上することになります。
しかし、口座振替やクレジットカード払いの場合、利用した月の翌月に引き落とされるケースがほとんどです。
そのため、帳簿上では未払金として一旦計上し、翌月の支払日に未払金から普通預金に振り替える実務が必要になります。
ただ、電話代やインターネット回線使用料のように、一定期間継続して利用することがわかっている費用については、特例として支払日に計上しても良いこととされています。これを「短期前払費用」といいます。[注1]
なお、短期前払費用は法人を対象とした制度なので、個人事業主は未払金で計上する必要があります。
2. 通信費の摘要欄に記載すべきこと

摘要欄とは、取引の詳細を記載する欄のことです。
帳簿に通信費を計上する際、借方には「通信費」、貸方には「普通預金」「現金」などと記載しますが、通信費と一言にいっても、固定電話料金、インターネット回線使用料、郵便代など多岐にわたります。
借方と貸方だけでは、どんな通信費にいくらかかったのか判別できず、後から帳簿を見直したときに詳細を確認することができません。中小企業庁が公開している「中小企業の会計に関する基本要領」では、「記帳の重要性」として、記帳は適時に、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に作成しなければならない、としています。[注2]
税務調査が入った際、取引の根拠の説明を求められるケースも考えられますので、摘要欄には通信費の詳細を記しておくことが大切です。
通信費の場合、摘要欄には以下のような項目を記載します。
・支払項目
・支払先
・利用月
支払項目とは、通信費の内訳で、「固定電話料金」や「携帯電話料金」「インターネット使用料」などが挙げられます。
支払先には、通常、各種通信サービスを提供している会社の名前を記載します。
利用月には、その通信費を利用した月を記載します。電話料金やインターネット使用料は利用月の翌月以降の支払いになるケースが多いため、利用月をきちんと記載しておくことをおすすめします。
摘要欄に記載すべき内容に明確なルールはありませんが、後から見直したときに取引内容が一目でわかるような項目を記載することを心掛けましょう。
3. 通信費と混同しやすい勘定科目

勘定科目の中には、通信費と混同しやすいものがあります。
適切に仕訳できるよう、通信費と他の勘定科目との違いもチェックしておきましょう。
3-1. 荷造運賃
荷造運賃とは、荷造や運送などにかかる費用のことです。
通信費には郵便代も含まれるので、しばしば混同されがちですが、荷造運賃は取引先などへ商品や製品などを送った場合の費用を仕訳する際に用いるのが一般的です。
それ以外の郵送物、たとえば手紙やはがき、請求書や納品書などの書類、カタログなどを郵送した場合は通信費に仕訳します。
企業によっては、送る荷物の大きさや内容に応じて荷造運賃と通信費を使い分けているところもありますが、区分のルールが一環していれば問題ありません。
逆に、荷造運賃と通信費を仕訳するルールが曖昧だと、後から帳簿を見返したときに混乱したり、税務調査が入った時に指摘を受けたりするので要注意です。
3-2. 消耗品費
消耗品費とは、主に短期間で消耗するものを買ったときの費用を仕訳する際に用いる勘定科目です。
ボールペンやノート、コピー用紙といった消耗品のほか、取得価額が10万円未満のもの(低価格帯のパソコンなど)も消耗品費に該当します。
このうち、通信費と混同しやすいのは、書面を送る際に用いる封筒や便せんの類いです。
封筒に貼る切手の購入費は通信費に該当しますが、封筒や便せん自体は消耗品費に該当するため、きちんと区別して仕訳しなければなりません。
同様に、FAXの送信費は通信費に仕訳しますが、FAX用紙は消耗品費に該当するので注意しましょう。
4. 通信費を利用するときは按分や混同しやすい勘定科目に注意しよう

固定電話料金や携帯電話料金、インターネット使用料、郵便料金などは、通信費として経費計上することができます。
ただ、自宅兼事務所で働いていて、これらをプライベートと共有している場合は、家事按分して業務利用分のみを計上する必要があります。
また、通信費は多岐にわたりますが、荷造運賃や消耗品費と混同しやすい部分も多いので、仕訳するときは基本的なルールをしっかり覚えておきましょう。
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