社員旅行は経費処理できる?慰安旅行との違いや経費で落とす条件を解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.11.28
UMEHARA
従業員への慰労や社員同士の親睦を深めることを目的として、様々な社内イベントを企画している企業が多くありますが、近年は、社内イベントの一つとして社員旅行をおこなう企業が特に増えています。
ですが、社員旅行を経費で落とすには様々な条件があることをご存知でしょうか。本記事では、社員旅行の定義から経費で落とすための要件、仕訳の際の勘定科目を解説します。
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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1. 社員旅行とは
社員旅行とは、従業員へのねぎらいやコミュニケーションの活性化を目的とした旅行を指します。行き先などに明確な定義はありませんが、会社の経費とするためには国税庁の定める要件を満たす必要があるため、注意しましょう。
1-1. 慰安旅行や研修旅行との違い・メリットなど
社員旅行と似た言葉で、『慰安旅行』や『研修旅行』というものがあります。それぞれの違いは何でしょうか。
一般的には目的が異なるとされています。ですが、国税庁は社員旅行と慰安旅行で扱いを分けていないため、税務上は同義と捉えて問題ないでしょう。
各旅行の違い
一般名称 | 主な目的 | 国税庁の扱い |
社員旅行 | 従業員間のコミュニケーションの活性化 | 従業員レクリエーション旅行 |
慰安旅行 | 日々のねぎらい、モチベーションアップ | |
研修旅行 | 従業員のスキルアップ | 研修旅行 |
[参考]No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行|国税庁
2. 社員旅行を経費で落とすための条件
社員旅行は、その旅行費用が少額であれば課税しなくてもよいとされています。ただし、次の条件があるため注意してください。
- 旅行期間が4泊5日以内である
- 全従業員を対象にして、その半数以上が参加する
- 会社の負担金額が少額である
- 旅行不参加者に旅費の代わりとなるような金銭を支給しない
- 従業員以外の参加費用は会社が負担しない
それぞれ、詳しく解説します。
2-1. 旅行期間が4泊5日以内である
所得税基本通達にて旅行期間が定められています。旅行の全行程が4泊5日を超える場合、経費として認められないため、注意しましょう。ただし、海外に行く場合は外国での滞在日数が4泊5日以内となります。
2-2. 全従業員を対象にして、その半数以上が参加する
社員旅行が経費として認められるためには、参加人数や対象者にも注意する必要があります。役員のみが参加する旅行や、参加者が全従業員数の半数以下の場合は経費として認められません。あとで指摘されないよう、参加人数や対象者に問題ないかを確認しましょう。
2-3. 会社の負担金額が少額である
社員旅行が経費で落とせる背景には、『少額不追求』の適用があります。これは、本来は給与の一部として課税する必要があるが、少額のため経費で落としていても追求しない、というものです。
そのため、社員旅行の会社負担額が少額でなければなりません。ですが、国税庁から少額にあたる具体的な金額は提示されていないため、注意が必要です。
[参考]Ⅱ 給与所得の範囲|国税庁
2-4. 旅行不参加者に旅費の代わりとなるような金銭を支給しない
企業が支払う従業員への給与は金銭で支給されることが一般的です。ですが、食事の現物支給や商品の値引き販売のように、物品やその権利などの支給も給与に含まれる場合があります。このように金銭以外で給与を支給することを『現物給与』といいます。
もし、不参加の従業員に諸費の代わりとなるような金銭や物品を支給した場合、社員旅行も現物給与と捉えられるため、注意してください。
2-5. 従業員以外の参加費用は会社が負担しない
社員旅行は、従業員へのねぎらいや従業員間のコミュニケーションの活性化を目的としておこなわれます。ですが、家庭の環境や事情により『家族を一緒に連れていきたい』という要望が出ることもあります。法律上、同伴は認められますが同伴者の費用は経費として認められません。そのため、該当の従業員に同伴者分を負担してもらうなどの対応が必要です。
また、『実質的に私的旅行と認められる旅行』も経費として扱われないため、従業員とは別行動をしてもらうか、同伴者も含めて団体行動をする必要があります。
もし従業員以外の参加を認める場合は、同伴者分を会社が負担していないことと、私的な旅行になっていないことを証明する手段を用意しておきましょう。
2-6. 国税庁が提示する具体例
社員旅行を経費として落とせるかどうかは、『その旅行の条件を総合的に勘案して判定する』としています。社会通念上一般的な金額で、会社の負担額が少額の範囲内であれば問題ない、とされていますが、具体的な規模や金額は明記していません。
国税庁が3つの事例を上げているため、参考にしてください。
判定 | 経費で精算可能 | 経費で精算不可 | |
旅行期間 | 3泊4日 | 4泊5日 | 5泊6日 |
費用および負担状況 | 旅行費用15万円(内使用者負担7万円) | 旅行費用25万円(内使用者負担10万円) | 旅行費用30万円(内使用者負担15万円) |
参加割合 | 100% | 100% | 50% |
判断理由 | 旅行期間・参加割合の要件および少額不追求の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい | 旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないことから課税される |
参考:No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行|国税庁
3. 家族が同行する旅行は社員旅行になるのか
会社の社員旅行に従業員の家族が同行を希望することもあります。また、個人事業主や家族経営の企業で旅行をすることもあるでしょう。この場合には、会社の経費で社員旅行をおこなうことができるのでしょうか。詳しく解説します。
3-1. 従業員の家族が同行する場合
従業員の家族が社員旅行に同行する場合は、次の2つの条件を満たさなければなりません。
- 家族の参加費用は全額従業員が負担する
- 家族も社員旅行の全行程に参加する
原則として、社外の人の参加費用を会社が負担することはできません。そのため、家族の参加費用は、参加させる従業員が負担する必要があります。また、家族の参加費用を受け取った証明を残す必要もあるでしょう。振り込みにする、領収書を発行するなど、形に残すことが重要です。
あわせて、ほかの参加者と同様に社員旅行の行程に同行しなけれなりません。自由行動として定められた時間以外はすべて家族も同行する必要があるため、注意しましょう。
3-2. 個人事業主が家族を同行させる場合
個人事業主の家族が従業員であれば、家族分の費用を経費として計上できます。個人事業主本人の旅費に関しては、監督責任など、同行の必要性が認められる必要があるため注意しましょう。
3-3. 家族経営の会社で社員旅行をおこなう場合
家族経営の場合も、社員旅行の目的を満たせば経費として認められます。ただし、従業員と呼べるのかどうか、本当に必要な旅行だったのか、について一般の企業よりも厳しく見られることが予想されるため、目的や結果を客観的に提示できるようにする必要があるでしょう。「慰労目的で旅行をおこなった」とすると、サラリーマンの家族旅行と変わらないと判断されて認められない可能性があります。
4. 社員旅行の勘定科目と仕訳方法
社員旅行の費用はどのように会計処理すればよいのでしょうか。社員旅行は従業員の慰労やモチベーションの向上など、いわゆる『働きやすさ』を向上させる目的のため、福利厚生費で仕訳をしましょう。この章では福利厚生費の概要とその仕訳方法を解説します。
4-1. 福利厚生費とは
福利厚生費とは、従業員や役員の労働環境を整備するための費用を計上するための勘定科目です。労働環境の整備には、社宅や常備薬の用意、社会保険料の事業主負担分、結婚・出産祝い金など、多くの項目が含まれます。また、社員旅行のように、新忘年会や社内運動会などの社内行事も福利厚生費で計上することが可能です。
ただし、社外の人や特定の個人のみが対象となる費用は計上できないため、注意が必要です。あくまでも、自社の従業員や役員の全員を対象とした費用を計上する勘定科目となっています。
4-2. 社員旅行の仕訳方法
前述のとおり、社員旅行の費用は福利厚生費として仕訳できます。具体的な仕訳方法は以下のとおりです。
仕訳例)社員旅行の会社負担額100万円を現金で支払った場合
借方 | 貸方 | ||
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
福利厚生費 | 1,000,000円 | 現金 | 1,000,000円 |
5. 一定の条件を満たせば、社員旅行も経費になる
社員旅行は経費として計上することができます。ただし、経費と認められるためには一定の条件を満たす必要があるため、注意が必要です。もし経費として認められなければ、損金額が減るだけでなく、従業員の社会保険料の増加や納税の延滞金を支払う必要がでてくる可能性もあります。
あとで困らないためにも、必ず確認してから会計処理をおこないましょう。
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