包括利益とは?計算方法や当期純利益との違いを詳しく解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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包括利益とは?計算方法や当期純利益との違いを詳しく解説

解説する女性

包括利益とは、当期純利益とその他包括利益を合算したものであり、貸借対照表の純資産の部の期首と期末の差(=当期の利益)ともいえます。

本記事では、包括利益とは何か、計算方法や当期純利益との違いを詳しく解説します。

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1. 包括利益とは、「当期純利益」と「その他の包括利益」を合算した数値

数値の確認
包括利益とは、貸借対照表の純資産の部の期首残高と期末残高の差(=当期の利益)であり、以下の式で計算できます。

包括利益=「当期純利益」+「その他の包括利益」

また、企業会計基準委員会は、「包括利益」を以下のように定義しています。

“「包括利益」とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。”

[引用]企業会計基準委員会|企業会計基準第 25 号包括利益の表示に関する会計基準

包括利益を理解する際は、まず「その他の包括利益」に該当するものを抑えると分かりやすくなります。

会社の純資産は、株式のように割合により所有者(持分所有者)が決まっているものと、株式評価額のように所有者が該当しないものに区分されます。

「その他の包括利益」とは、後述のように、持分所有者との直接的なやり取りによらず増減するもののことです。

1-1. 「その他の包括利益」の種類

その他の包括利益に含まれるものは以下が代表的です。

【その他有価証券評価差額金】
株式取得時の額と、現在の評価額の差額を計上します。固定資産の「投資有価証券」に分類されるものです。

【保有する土地の含み損益】 
土地を時価で評価し、増加(利益が発生する)場合計上します。

【繰延ヘッジ損益】
先物取引(デリバティブ)などの期末時点での評価差額を次期に繰り延べる際に計上します。

【退職給付に係る調整額】
退職金支給時に負債として計上されるものです。

【為替換算調整勘定】
海外にある子会社の保有する資産を円換算した際の差損益です。

以上のように企業の直接の取引によらず変動する株価、地価、金利、為替などの差額が「その他の包括利益」に該当します。

1-2. 「評価・換算差額等」との関係

なお、貸借対象表上で「その他の包括利益」が使われる以前は、「評価・換算差額等」という名目で含み損益の処理が行なわれていました。そのため、古い財務諸表では記載方法が異なります。

複式簿記には「貸借対照表の期首と期末の純資産の差額」と「損益計算書の利益(当期の利益)」が等しくなるという性質があります。

しかし、財務諸表上に計上する科目が多くなったことから、単純に計上するだけでは、上記の関係を維持できなくなりました。

そこで、以前は株式の含み損益などは「評価・換算差額等」に計上して貸借対照表上の「純資産」として処理し、損益計算書と関係しないようにしていました。これにより、「貸借対照表の期首と期末の純資産(株主資本)の差額」と「当期の利益」が等しくなるようにしていたのです。

しかし、包括利益が導入されたことで、純粋に「貸借対照表の期首と期末の純資産の差額=当期の利益」の関係が維持できるようになりました。

2. 包括利益と当期純利益の違い

違い
包括利益は、先述のとおり当期純利益とその他の包括利益を合わせた額のため、純資産の増減を表します。対して、当期純利益は、1会計期間の税引前当期純利益から税金などを差し引いた、会社の純粋な利益にあたる金額です。

2-1. 当期純利益とは会社の純粋な儲けのこと

当期純利益は、以下の式で求められます。

当期純利益=「税引前当期純利益」−「法人税、住民税および事業税」−「法人税等調整額」

なお、上記の計算の結果、損失となった場合は「当期純損失」として計上します。

損益計算書では、「売上高」から「売上原価」を引いて「売上総利益」(粗利益)を計算し、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を引いて「営業利益」を出し……と、費用や税金を引いて、最終的な利益を計算します。

全てを差し引いて最終的に残ったものが、当期純利益です。

そのため、当期純利益は会社が生み出した価値を計る指標ともいえます。

総資本当期純利益率(ROA)や自己資本当期純利益率(ROE)など、会社の成長性や資産の活用効率を計る指標のベースともなるため、事業を客観的に分析する上でも重要な数値です。

[参考]当期純利益と貸借対照表の関係とは?活用方法も解説

2-2. 包括利益は株主や取引によらない未確定の損益が含まれる

包括利益は先述のとおり以下の式で計算できます。

包括利益=「当期純利益」+「その他の包括利益」

「その他の包括利益」が含まれることで、以下の活動以外で発生した未確定の損益の内訳も明確になります。

● 株主からの支出による「資本金」
● 企業の活動により発生する「当期純利益」

これにより、会社の経営活動だけでなく、市場変化に対する財務の安定性を含め、事業の全体的な評価が可能となりました。

3. 包括利益の開示が必要な理由

理由 紙が破れている

包括利益の開示は、2010年6月30日に企業会計基準委員会(ASBJ)から公表され、2011年3月期から日本国内にも導入されました。目的は国際会計基準(IFRS)と足並みを揃えるためです。

日本の財務諸表作成時のルールである会計基準は「日本基準」と「IFRS」があり、利用する企業が混在している状態です。

「IFRS」は、経済のグローバル化を進めるため、世界共通の会計基準として整備されているもので、欧米やEUなど、多くの国と地域で採用されています。

日本でも、上場企業は「IFRS」での財務諸表作成が義務付けられているため、包括利益の開示が必要となります。なお、中小企業や非上場企業では「日本基準」を利用して問題ありません。

3-1. 包括利益を開示する利点

包括利益の開示により、財務内容を国際的企業と比較・理解することが容易となります。

また、為替のような市場変動の動向がどの程度当該企業に影響しているか確認できるため、株主など、財務諸表利用者が企業活動を把握しやかくなる点もメリットです。

4. 包括利益計算書の種類と計算方法

包括利益は当期純利益とその他の包括利益を合わせ計算するものの、表示方法は以下の2つに分類されます。

1計算書方式:「損益及び包括利益計算書」により表示
2計算書方式:「損益計算書」と「包括利益計算書」により表示

原則として、どちらか一方を選択し、以降、毎年継続して同様の方法で包括利益を表示しなければいけません。

4-1. 1計算書方式

1計算書方式とは、「損益及び包括利益計算書」に当期純利益と包括利益をまとめて表示する方法です。

書式が一枚のためシンプルで作成しやすい点がメリットです。しかし、損益計算書は別途作成が必要となり、2計算書方式と作業量に違いは生まれません。

4-2. 2計算書方式

2計算書方式とは、当期純利益は「損益計算書」、包括利益は「包括利益計算書」と、2つの書式に分けて表示する方法です。

2つの書式を作成しなくてはいけないものの、決算開示義務のある企業では、損益計算書は必ず作成しなくてはいけません。また、別々に作成することで当期純利益を確認しやすいメリットも生まれます。

以上の理由から、日本では多くの企業で2計算書方式が採用されています。

5. 包括利益を理解すれば企業活動の成果をより具体的に把握できる

ひらめき

現在、包括利益の開示は一部の企業に限られています。

しかし、包括利益の仕組みを理解するれば、外部環境が企業の財務状態にどのような影響を与えているか把握しやすくなります。

今後、IFRSが義務化されたとすれば、多くの企業で包括利益の理解が必要になります。経理部門では事前に確認するとよいでしょう。

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jinjer Blog 編集部

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