工事原価とは?構成する4要素や建設業会計の特徴を徹底解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.12.13
jinjer Blog 編集部
建設業において、工事原価は非常に重要な勘定科目のひとつです。 会社がどの程度利益を出しているのか知るために必要な情報といえるでしょう。 当記事では、工事原価を構成する4つの要素と、建設業会計の特徴について詳しく解説します。
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1. 工事原価とは?
1-1. 完成工事原価
工事原価の中の完成工事原価とは、材料費、労務費、外注費、経費の4つの総称です。 一般会計でいうところの売上原価にあたります。 該当する年度に得た報酬に対してどれだけの支出があったかを示すものです。 完成工事原価は、該当する年度の損益計算書に計上されます。
1-2. 未成工事支出金
未成工事支出金は、その名称のとおり、まだ完成していない工事のために費やしたコストを指します。 コストに見合った報酬を得ていないので、確定申告の際には翌年度以降に繰り越して計上しなければなりません。 建設業は一度にすべての工事原価を経費として計上すると大幅な赤字になることが多いので、未成工事支出金として繰り越すことで収支のバランスをとっているのです。
2. 工事原価を構成する要素
2-1. 材料費
材料費は、工事に使用する材料を仕入れた際に発生する費用のことです。 具体的には木材や鉄筋、ガラス、セメント、砂利などが挙げられるでしょう。 特定の工事で使用した機械や道具も、材料費に含まれます。 一方、複数の現場で使用するために購入した機械類や材料は間接材料費といい、全額を工事原価に含めることはしません。 間接材料費は複数の現場で按分して、それぞれの工事の工事原価に算入します。 材料費は基本的に原価報告書にかかれている価格をそのまま転記すれば良いのですが、完成工事原価と未成工事支出金に分けなければならないときは注意が必要です。
2-2. 労務費
労務費は、工事の作業員に対して支払う給料や福利厚生費のことです。 工事に従事した作業員にかかった費用はすべて労務費として工事原価に算入されます。 正社員やアルバイト、日雇いなどの区別はないので、ひとつの現場にどのくらいの作業員がいたのかきちんと把握しておくことが重要です。 工事の現場に直接かかわらない事務員や管理職の給料や手当などは工事原価に含まれません。 現場の作業員以外の人件費は労務費ではなく、一般会計の販売費や一般管理費に計上すべきです。
2-3. 外注費
建設業では、建設業務そのものや部材の加工を外注することが多いので、外注費がかかります。 外注費も工事原価の一部です。 工事原価の中で外注費が占める割合は非常に大きいため、外注費を正確に把握することで工事原価全体を正確に申告できるでしょう。 外注費と労務費の境目はあいまいなことが多く、処理が難しいことも少なくありません。 たとえば、工事に関連する作業をほかの業者に依頼した場合は、費用を外注費として計上できます。 一方、材料費は自社で支払い工事だけを外注した場合には、外注費ではなく労務費の中の労務外注費として処理しなければなりません。 さらに、作業員をほかの会社に派遣してもらって工事を行う場合も、外注費ではなく労務外注費として処理するのが一般的です。
2-4. 経費
経費は、材料費、労務費、外注費のいずれにも該当しない費用の総称です。 工事に直接関係する支出で、ほかの3つの費用に分類できないものは経費として処理します。 たとえば、事務所や現場の水道光熱費、パソコンやタブレットの通信費、機械類のメンテナンス費用、高価な機材の減価償却費などが該当します。 また、工事現場に車で行く際の駐車場代、ガソリン代なども経費として計上可能です。 経費については、直接費ではなく間接費として計上すべきと判断されることも多いので、確定申告の際に注意しなければなりません。
3. 建設業会計の特徴
3-1. 建設業会計の特徴とは
建設業会計の特徴は、工事完成基準と工事進行基準という2つの考え方がある点です。 工事完成基準とは、未成工事支出金を計上しておき、最後に売上から差し引いて利益を確定する方法です。 最後まで利益がいくらになるのかわからないため、工事を受注した側に不利になることがあります。 一方、工事進行基準とは、工事を進めている間に、どの程度の売上と支出があるのか細かく計算していく方法です。 現在の主流は工事進行基準が採用されており、定期的に利益がどのくらいなのか把握できるようになっています。 一般会計では、毎年の売上と支出によって利益を確定しますが、建設業界では異なる手法が用いられているのです。
3-2. 建設業会計のメリット
建設業会計を採用することで、建設会社は安定して経営を行っていくことができます。 もし、工事の完成時にのみ売上を計上できるとすれば、最初の数年は大幅な赤字になってしまうかもしれません。 株式会社の場合、大幅な赤字は株主や金融機関から厳しい目で見られ、資本の引き上げにつながります。 資金不足で会社が倒産してしまうことにもなりかねません。 しかし、建設業会計の工事進行基準を採用することで、ある時期の収支がはっきりわかるので、株主も金融機関も安心して資金を投入できるのです。
3-3. 建設業会計のデメリット
建設業会計は建設業者にとってメリットが大きいように思えますが、デメリットもあります。 大きなデメリットとして挙げられるのが不正のしやすさです。 工事進行基準では、進捗状況の評価方法や収支報告を行う後期の設定により、会計状況を不正に申告することが可能です。 大幅な利益が出ているように見せかけたり、逆に事業所得が少ないと偽装したりできてしまいます。 不正を行っていたことがバレてしまえば、企業としての信頼を失い、大きなダメージを受けることでしょう。 建設業会計で失敗しないために、会社の会計監査機能をしっかり機能させることが非常に重要なのです。
4. 工事原価の要素と特徴を押さえて正確に申告しよう
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