流動比率の適正目安はいくつ?定義や計算式とあわせて解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.10.20
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流動比率とは企業の安全性分析に活用できる指標です。流動資産と流動負債の割合を表す流動比率には、企業の短期的な支払い能力を把握するという目的があります。
本記事では流動比率の意味や、当座比率との違いについて詳しくご説明いたします。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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1. 流動比率とは企業の安全性を判断する指標の1つ
企業の会計で作成する貸借対照表には、流動資産や流動負債といった項目が表示されます。流動比率とは、この流動資産を流動負債で割ることによって求められる数値です。流動資産と流動負債の比率によって、企業の安全性を総合的に判断することが可能となります。
流動資産は、1年以内に現金化が見込まれる短期的な資産のことです。現在所有している現金の他、売掛金や受取手形、未収金、有価証券などが流動資産に含まれます。また、商品や製品、原材料なども流動資産に該当します。
流動負債とは1年以内に支払わなければならない負債のことを指します。買掛金や支払手形、未払金の他、預り金や前受金も流動負債として考えます。
1年以内に現金化できる資産が、1年以内に返済すべき負債をどれだけ上回っているかというのが、流動比率の考え方です。流動比率を計算すれば、1年という短いスパンでの企業の支払い能力や安全性をチェックできます。
流動比率の数値が大きいほど、急な資金繰りが必要になったときの対応力が高いと判断されます。逆に流動比率の数値が小さいときには、短期的な資金繰りに苦慮するおそれがあります。
流動比率が低い状態が続いた場合、思わぬ出費が必要になった際に資金繰りの悪化や倒産といった大きな問題が起きる可能性があります。企業の安全性を高めるためにもまずは流動比率を正しく算出し、状況に応じた対処をしていきたいものです。
2. 流動比率の計算方法や分析方法とは
前述のとおり、流動比率で会社の資金繰りに関する安全性が図れます。では、そんな流動比率はどのように計算できるのでしょうか。本章では流動比率の計算式や目安について解説します。
2-1. 流動比率の公式
流動比率(%)は、流動資産÷流動負債×100という計算式で求めることができます。
流動比率を求める際には、貸借対照表に表示された流動資産と流動負債の金額をそのまま使います。
例えば流動資産が1,000万円、流動負債が800万円という場合で考えてみます。この場合であれば、1,000万÷800万×100という計算式で、125%という数値が出されます。
2-2. 流動比率の平均と適正な目安
一般的に、流動比率が120%以上であれば資金繰りに困ることはないといわれています。ですが、流動比率の数値は業種によって異なるため注意が必要です。例えば卸売業や小売業では流動比率が低くなるのが一般的です。逆に、通信関連事業やソフトウェア開発などの分野では、流動比率が200%を超えることもあります。
一般的な目安は120%ですが、業界によって異なるため自社の過去の数値や同業他社の数値と比較して判断するようにしましょう。
また、流動比率は高ければ高いほどいいと一概にいえるわけではありません。
流動比率が高ければ一定の安全性が確保されます。しかしこの場合には、資産の効率的な活用ができていない可能性が考えられるのです。
2-3. 流動比率が100%以下の場合
流動資産はあくまで資産、流動負債は返済が必要な負債ということになるため、企業の安定のためには流動資産の額が流動負債の額を上回っていたほうが良いということになります。つまり、流動比率が100%以下の場合には、企業の支払い能力に問題が生じる可能性があります。
流動比率が100%を下回った状態が続くと、資金繰りの悪化によって倒産に至るかもしれません。この場合には、できるだけ早く企業の財務を改善する必要があります。
3. 流動比率と当座比率の違いについて
企業の財務分析では流動比率とともに当座比率を算出しておきましょう。
当座比率とは、貸借対照表において流動負債に対する当座資産の割合を示す指標です。
この場合の当座資産とは、現金や預金、売掛金や受取手形、有価証券といった資産のことを指します。流動資産の中でも、素早く現金化できるもののみが当座資産に分類されます。つまり、すぐに使えるお金が必要となった際に手元に用意できる資産のことを当座資産と呼んでいるのです。
流動比率の目安は1年以内といった短期的なスパンでの支払い能力です。当座比率はこれよりも短い数ヶ月という期間での支払い能力を把握するための指標です。
当座比率を計算する際には、棚卸資産が当座資産に含まれないという点に注意したいものです。
棚卸資産が当座資産に含まれないのは、棚卸資産の現金化がいつになるか分からず、場合によっては現金化されない可能性が考えられることを考慮しているためです。
流動資産とは、1年以内に現金化される見込みのある資産のことです。ただし、計上した流動資産のすべてが1年以内に現金化されるとは限りません。現金化できず滞留在庫となったり、不良廃棄として廃棄に至ったりする可能性も考えられるのです。
当座比率を計算する際には、現金化されないリスクを含む棚卸資産を除外します。これらを除外したときに当座資産と流動負債のバランスに問題が生じるか否かをチェックする指標が当座比率なのです。
棚卸資産を除外して計算した当座資産が流動負債を上回っていれば、財務上の問題は少ないといえます。
3-1. 当座比率の求め方と目安
当座比率は、当座資産÷流動負債×100という計算式で求めることができます。流動比率の場合は120%を超えていれば安心とされていますが、当座比率はこれよりもやや低くなります。
一般的には、当座比率は90%を超えていれば安心できるといわれます。当座比率の目標値は100%と考えられますが、80%を下回るくらいの数値になっていてもそれほど大きな問題はありません。
4. 流動比率とともに考えておきたい固定比率や自己資本比率について
企業の安全性分析を行う際には、流動比率や当座比率に加えて固定比率も算出しておきたいものです。
固定比率とは流動比率や当座比率に比べ、長期的な視点で安全性を判断する指標といえます。固定比率は、固定資産を自己資本で割ることによって算出できます。
固定資産は土地や建物、機械設備といった資産のことで、即座に現金化することはできません。流動比率が1年以内に現金化できる流動資産をもとに算出しましたが、固定比率の計算は基本的に短期的な現金化が難しいものや現金化の予定がないものを扱います。
固定比率の目安は100%となっています。これより高くなってしまった場合、借入金の依存度が高いと判断されます。借入金の割合が多い場合には今後の返済負担がかさんでしまうおそれがあるため、改善のための対処が求められます。
また、企業が自己資本比率を求めて安全性をチェックする例もあります。自己資本比率は自己資本÷総資本×100という数式で求められます。この数値が40%以上であれば企業の資本に問題はありません。しかし、20%を切っている場合には安全性が低いと判断されるため、抜本的な対処が必要となります。
5. さまざまな分析を活用して企業の安全性を確認
企業の流動比率を算出すれば、短期的な資金繰りの安全性をチェックできます。流動比率は基本的には、120%を超えていれば安全とされます。
企業の財務分析には他に、当座比率や固定比率、自己資本比率といったものがあります。さまざまな分析を活用し、短期的または長期的な企業の安全性を詳しく確認しておきましょう。
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