証憑とは?種類や読み方、保存期間をくわしく解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.10.24
jinjer Blog 編集部
証憑の読み方は「しょうひょう」です。証憑書類(証憑類)とは取引の真実性・妥当性を証明するための証拠となる書類です。企業が営業活動をおこなう上で、取引内容や金額の曖昧さは許されません。何かトラブルがあった場合は、証憑書類を提示して正当性を主張します。
本記事では、証憑とはどのようなものなのかを詳細にまとめました。種類や保存期間についても解説しているため、併せて確認してください。
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1. 証憑とは?
証憑は、企業取引の証拠となる書類です。「証憑書類」と言われることもあり、適切に整理・管理することが企業としての信頼にもつながります。
証憑とはどのようなものなのか、具体的に見ていきましょう。
1-1. 取引の真実性を担保するもの
証憑は、企業取引の真実性・正当性を証明するための書類全般を指す言葉です。企業が契約を結んだときや代金を支払ったとき・取引によって定められた義務を履行したときなどに発行される書類は、全て証憑に該当します。
証憑は主に対外取引で発生した書類について使われますが、社内取引で発生することも少なくありません。
例えば「労働契約を結んだ」「労働への対価として賃金を支払った」などの場合に従業員に発行する書類も、証憑に含めるのが一般的です。
1-2. 証憑が重視される理由
証憑には「取引を履行する際のトラブルを抑制する」「税務処理の根拠となる」という役割があります。
民法上では、契約は口頭でも成立するとされています。
しかし取引の証拠を有しない場合、万が一トラブルが発生したときに正当性を主張できません。そのため税法や会社法では取引や契約内容に関する書類を「証憑書類」とし、適切な保存を求めているのです。
また取引内容の詳細が記された証憑が手元にあれば、適宜内容の確認をおこなえます。取引当事者同士の思い違い・勘違いによるトラブルが発生しにくく、円満な取引履行が可能です。
さらに企業会計に関する証憑は、企業が納税申告をおこなう際の根拠となります。税務調査がおこなわれた際、証憑を適切に提示できない場合は、修正申告を求められたりペナルティを課せられたりする恐れがあります。
どのようなものであれ、証憑となる書類は適切な整理・保管が必要です。
1-3. 証憑と証票の違い
証憑と間違えやすい言葉に証票があります。どちらも「しょうひょう」と読むため、混合してしまうこともありますが、意味は明確に異なります。
先述のとおり、証憑は社内外の取引を証明するための書類を指します。それに対して、証票は「あることを証明するための札や紙片、書き付け」のことで、看板や免許証などが含まれるのです。
会計に必要な領収書や納品書、契約書などは取引を証明する書類であるため、証憑に含まれます。
2. 証憑の種類
証憑の種類を大別すると、「売上」「仕入」「労働力」「その他企業経営に関するもの」の4種類に分けられます。どのような書類が証憑に該当するのか、具体的に見ていきましょう。
2-1. 売上に関係するもの
売上に関する証憑とは、書面にて金銭のやり取りの内容・額面が分かるものです。企業利益に直結する重要な書類といえるでしょう。
具体的には、以下のような書類です。
- 請求書
- 領収書
- 売買契約書など
売上に関する証憑によって、売買取引の妥当性や伝票・帳簿に間違いがないことを担保できます。受領後・作成後は額面や内容を適切に確認し、紛失などがないように管理することが必要です。
2-2. 商品の仕入に関係するもの
商品の仕入に関する書類も、企業経営では非常に重要です。以下の書類は仕入に関する証憑として、適切な扱いが求められます。
- 見積書
- 発注書
- 納品書
- 検収書など
商品の仕入は、単価や個数・仕様について取り決めた上で実施されるのが一般的です。
万が一契約内容と異なる商品が届いた場合は、証憑を根拠にして相手に返品・交換等を求められるでしょう。
また在庫を多く抱えて経営する企業の場合、発注書や納品書が在庫管理のベースとなることもあります。取引トラブル・在庫管理トラブルを防ぐ上で、仕入に関する証憑も非常に重要です。
2-3. 労働力に関係するもの
従業員を雇用するとき・給与を支払うときの書類も、証憑として厳重な管理が必要となります。従業員に関する証憑としては、以下のものがあります。
- 雇用契約書
- 給与支払証明書
- 賃金台帳
- 業務委託契約書など
雇用契約書には、従業員を雇う際の条件が記載されています。従業員が契約内容に違反した場合、契約書を根拠に処分可能です。
また給与支払証明書や賃金台帳は、従業員に適切な労働対価を支払っていることの証明となります。給与未払いを指摘された場合は、これらの書類・帳簿によって企業の正当性を主張できるでしょう。
この他、業務委託契約書は、一部業務に外部リソースを充てる場合に締結される契約書です。業務委託の条件・金額・期間等が記されており、適切な保管が必要です。
2-4. その他企業経営に関係するもの
この他、企業が事業を運営していく上で必要となるさまざまな書類・契約書も証憑として扱われます。
具体的には、以下のようなものがあるでしょう。
- 通帳:預貯金の受け払いを証明する書類
- 議事録:社内外の会合・会議の内容・決定事項が記録された書類
- 稟議書:案件について複数の社員・役付き社員によって合意が得られたことを証明する書類
- 賃貸借契約書:土地建物の賃貸借契約で取り交わされる書類
- 取引基本契約書:継続取引における基本事項を定めた契約書
- 秘密保持契約書:業務中に知り得た情報を外部に漏らさないことを義務付ける契約書
- 金銭貸借契約書:金融機関から借入れをおこなった際に発行される契約書 など
上記の書類・契約書は、監査が入ったときや税務調査が入ったときなどに必要となります。
また何らかの訴訟トラブルが発生した場合は、こうした書類が自社の正当性を主張する上での根拠となるでしょう。
企業のお金が動いたときや、企業として何らかの契約を結んだときは、必ず書類・記録を残しておかなければなりません。
3. 証憑の保存期間
企業経営において重要な役割を果たす証憑は、勝手に廃棄できません。法に則った保管・廃棄のサイクルを確立し、証憑を効率的に保管することが大切です。
ここからは、証憑の保存期間がどれくらいなのかを見ていきましょう。
3-1. 法人税法によって定められる保存期間
法人税法では、確定申告の根拠となった帳簿や書類について一定期間の保存を求めています。
保存が必要な書類・保存期間は以下を参考にしてください。
保存が必要なもの | 保存期間 | ||
帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など | 7年 | |
書類 | 決算関係書類 | 損益計算書、賃借対照表、棚卸表など | 7年 |
現金預金取引等 | 領収書、小切手控、預金通帳、借用証など | 7年 | |
その他の書類 | 取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) | 7年 |
(※)前々年分所得が300万円以下の場合は、5年
税務関係の書類は、おおむね「確定申告の提出期限翌日から7年間」の保存が必要です。紙ベースではなく電子データで資料を作成している場合でも、保存期間は変わりません。
ただし事業年度が以下に該当する場合は、保存期間が確定申告の提出期限翌日から10年間となります。
・青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度
・青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失欠損金額が生じた事業年度
3-2. 会社法によって定められる保存期間
国税に関係しない議事録などは、「会社法」の定めるところにより10年間の保存が必要です。起算日は、株主総会や取締役会議がおこなわれたその日となります。
注意点は、帳簿類の保存期間が法人税法とは異なる点です。会社法では、帳簿類の保存期間を「10年」としています。法人税法が定める保存期間が終わっても、廃棄するのは控えましょう。
なお会社法で保存義務があるのは帳簿類のみで、領収書・納品書等の保存についての決まりはありません。帳簿の根拠となる細々とした書類については、7年間保存すれば後廃棄できます。
4. 証憑は取引の証拠なので、適切に保存しよう
証憑は、企業取引や税申告の有効性を担保する大切な書類です。領収書・納品書1枚から保存する必要があるため、大切に扱いましょう。
証憑を紛失してしまうと訴訟トラブルで不利になる上、税務調査等が入ったときに不適切会計を指摘される恐れがあります。悪質と見なされた場合はペナルティもあり得るため、保存場所・保存方法を適切に設定しなければなりません。確定申告の根拠となった帳簿や書類は種類によって保管期間が異なるため、注意が必要です。一方、国税に関係しない議事録などは会社法の定めによって10年間の保存が義務づけられています。
近年は、税関係の証憑はデジタルデータでの保存が認められています。証憑の保存が負担になっている場合は、デジタルデータでの保存もおすすめです。
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