グループ通算制度とは?適用法人や利用上の注意点を紹介
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.12.19
jinjer Blog 編集部
グループ通算制度とは、グループ内法人が別々に法人税の申告と納税ができる制度です。従来の連結納税制度が廃止され、2022年4月より新制度としてスタートしました。
本記事では、グループ通算制度とは何か、適用法人の条件と、適用時の注意点を解説します。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
「経理担当になってまだ日が浅く、会計知識をしっかりつけたい!」
「会計の基礎知識である勘定科目や仕訳がそもそもわからない」
「毎回ネットや本で調べていると時間がかかって困る」
などなど会計の理解を深める際に前提の基礎知識となる勘定科目や仕訳がよくわからない方もいらっしゃるでしょう。
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1. グループ通算制度とは?個別に法人税の申告と納税ができる制度!
節税効果があるだけでなく、親会社の事務処理負担を削減できる、修正が必要になったときも各法人で対応できるなどのメリットがあります。
1-1. グループ通算制度と連結納税制度の違い
従来の節税方法である、連結納税制度は2022年3月に廃止され、2022年4月からグループ通算制度がスタートしました。
なお、連結納税制度とは2002年に導入された制度で、企業グループを1つの法人(納税主体)とみなして納税する仕組みです。
どちらも節税効果が期待できる制度ではあるものの、以下の違いがあります
【納税する企業の単位】
グループ通算制度:
グループ企業内の各法人がそれぞれ申告と納税を行います。
連結納税制度:
親会社が行います。子会社ごとに計算が必要な項目とグループ全体で計算が必要な項目があるため、それぞれ対応し納税が必要です。
【修正時の対応先】
グループ通算制度:修正が必要な子会社が行います。
連結納税制度:グループ全体として修正しなければいけません。
以上のように連結納税制度では親会社の負担が大きく、子会社の1つで間違いがあったとしても、グループ全体で修正が必要になります。
また、税務調査後の負担が増えるなど事務負担の増加がデメリットとして挙げられており、税制上のメリットがあっても連結納税制度を選択していない企業も多くありました。
以上の理由から制度の見直しがされ、新たに導入されたのがグループ通算制度です。グループ通算制度では、各法人が個別に税額の算出や申告、申告後の修正が可能です。
このような税制改革が行なわれた理由は、企業の組織再編を促し、企業グループの効率的な経営の後押しが目的です。また、納税や事務手続きの負担軽減により、国際競争力の強化を図ることも狙いのひとつです。
2. グループ通算制度の適用法人
グループ通算制度はすべての法人に適用されるわけではありません。
国税庁の概要説明には「内国法人及びその内国法人との間にその内国法人による完全支配関係がある他の内国法人」とあり、さらに「そのすべてが国税庁長官の承認を受けなければならない」とされています。[注1]
なお、内国法人とは、本店や主たる事業所が日本にある法人のことです。
また、完全支配関係とは、一の者(一般的には親会社)が法人の発行済み株式を直接・間接を問わず100%保有する関係にあるとき、もしくは、完全支配の関係がある法人相互の関係を指します。
以上から、親法人(親会社)と、親法人による完全支配関係のある法人(子法人・子会社)がグループ通算制度の対象となります。
ただし、親法人と子法人に該当するためには、次に紹介する除外条件に当てはまらないことも必要です。
2-1. 親法人の条件
親法人となれる企業は、普通法人または協同組合などに限ります。さらに、以下の条件のいずれにも該当しないことも条件です。[注1]
1. 清算中の法人
清算とは会社が解散する際の各種手続きのことです。
2. 普通法人(外国法人を除く。)または協同組合等との間にその普通法人又は協同組合等による完全支配関係がある法人
親法人が他の会社の子法人でないことを指します。
3. 通算承認の取りやめの承認を受けた法人で、その承認日の属する事業年度終了後5年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
通算承認の取りやめから5年以内の法人が該当します。
4. 青色申告の承認の取消通知を受けた法人でその通知後5年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
青色申告の取消通知を受けてから5年以内の法人が該当します。
5. 青色申告の取りやめの届出書を提出した法人でその提出後1年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
青色申告の取りやめ届を提出してから1年以内の法人が該当します。
6. 投資法人、特定目的会社
投資法人とは、特定の資産への投資や運用を目的に設立された会社で、「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づき運用されます。不動産投資信託(REIT)などが有名です。
特定目的会社とは、有価証券の発行のためだけに設立された会社で、「資産の流動化に関する法律」に基づき運用されます。一種のペーパーカンパニーです。
7. その他一定の法人
普通法人以外の法人、破産手続開始の決定を受けた法人などです。
2-2. 子法人の条件
先述した親法人の除外条件のうち、3~7までに該当する法人は子法人にはなれません。
3. グループ通算制度を利用するときの注意点
3-1. 適用する際は事前申告が必要
グループ通算制度の条件に該当しているか確認し、問題がなければ事前申告をして、適用を開始します。申請方法の概要は以下のとおりです。
親法人・子法人のすべての連名で親法人の所管の税務署へ提出する
国税庁長官により承認またはみなし承認を受ける
グループ通算制度へ加入する
なお、通算予定法人のいずれかが申請をしていないときや、通算予定法人以外が含まれているときなどは、申請が却下されます。
3-2. 各法人で新たな事務手続きが発生する
子法人では今まで対応していなかった、法人税の申告と納税処理が必要になります。また、損益通算などの処理はグループ全体で行なわないといけないため、日程を合わせて進めなければいけません。場合によっては会計システムの改修も必要でしょう。
3-3. 親・子法人問わず電子申告が義務化される
連結納税制度は書面による申告も選択できたものの、グループ通算制度では親法人・子法人問わず電子申告が義務化されます。
なお、通算法人となったときは事業年度開始の日から1ヵ月以内に所管の税務署へ「e-Taxによる申告の特例に係る届出」の提出が必要です。
さらに、電子申請をせず書面で申告した場合、無申告加算税の賦課対象となるため注意しましょう。
3-4. 連帯納付責任が発生する
個別申告とは異なり、グループ通算制度ではグループ内で滞納した法人があれば、他の法人の滞納分を納税しなければいけません。なお、滞納分の限度額は設けられていないため全額納付が必要です。
さらに、通算法人を管轄する税務署だけでなく、滞納した法人を管轄する税務署からも処分を受ける可能性があります。
3-5. グループ通算制度の節税メリットは企業により異なる
グループ通算制度を適用したからといって、すべての企業で節税メリットが得られるとは限りません。
また、グループ通算制度を選択しない場合、受取配当などの益金不算入などの税制改正が行なわれているため注意が必要です。導入を検討する際は、制度の内容をよく理解する必要があります。
6. グループ通算制度はグループ企業の事務処理負担軽減にも役立つ!
グループ通算制度とは、グループ内の各法人で、法人税の申告と納付ができる制度です。また、申告後の修正もそれぞれの法人で対応すればよいため、グループ全体、とくに、親法人の事務処理負担軽減に役立ちます。
しかし、適用には条件があり、また、事務処理の流れやシステムの見直しが必要になるケースもあるため、制度をよく理解して導入する必要があります。
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