勘定科目「地代家賃」に仕訳するときのポイントや注意点を解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.9.9
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地代家賃とは、事業で使用するために借りている土地・建物にかかる賃料のことです。勘定科目のひとつで、企業が借りている貸しビル・貸し事務所の賃料はもちろん、自宅で仕事をしている個人事業主が賃貸物件の賃料を地代家賃として計上することもできます。
今回は、地代家賃を計上するタイミングや、自宅の家賃を経費計上するときのポイント、地代家賃を仕訳するときの注意点について解説します。
1. 地代家賃を計上するタイミング
アパートやビルなどの賃貸物件を借りるときに交わす賃貸借契約書には、おおむね「当月末までに来月分の家賃を支払う」旨が明記されています。
つまり家賃を前払いするわけですが、地代家賃として経費計上するタイミングは大きく分けて2つあります。
1-1. 前払費用として計上し、地代家賃に振り替える方法
1つ目は、賃料を支払ったタイミングで一旦「前払費用」として計上し、翌月に「地代家賃」へ振り替える方法です。
たとえば毎月25日に来月分の家賃が徴収される賃貸物件において、8月25日に9月分の家賃20万円を口座引き落としで支払ったとします。
このとき、帳簿には8月25日付で以下のように経費を計上します。
そして翌月になったら、以下のように前払費用を地代家賃に振り替えます。
1-2. 短期前払費用の特例を利用する方法
当月分を前払いする場合は、1つ目の方法で費用計上するのが一般的ですが、当該地代家賃が短期前払費用に該当するとみなされた場合は、支払時点で損金算入することが認められています。[注1]
短期前払費用とは、一定の契約に基づいて継続的な役務を受けるために支払った費用のうち、事業年度内に役務の提供を受けていない部分に相当する費用です。
具体的には、以下の要件を満たす場合、前払費用を今期の費用に計上することができます。
前払費用の額で、支払日から1年以内に提供を受ける役務に係るもの
支払った額に相当する金額を継続して、支払日の属する事業年度の損金に参入すること
短期前払費用の特例を適用した場合の地代家賃の計上方法は以下のようになります。
1つ目の方法に比べると1回の計上で済むので、実務の負担を減らせるのが利点です。
なお、短期前払費用の特例は法人を対象とした制度なので、個人事業主は利用できないことに注意が必要です。
2. 自宅の家賃を経費計上するポイント
経費計上できる家賃というと、貸しビルや貸しオフィスをイメージしがちですが、重要なのは物件ではなく、そこで事業が行われているか否かです。
個人事業主の多くは自宅を職場にしていますが、そこで事業を営んでいる実態があれば、自宅の家賃も経費として計上することが可能です。
具体的には、以下のようなケースが当てはまります。
・自宅を事務所として利用している
・事務所は別にあるが、自宅でも仕事を行う
・自宅の一部を倉庫として活用している
ただ、上記の要件に当てはまるとしても、自宅がプライベートの場であることに変わりはありません。
地代家賃として計上できるのはあくまで事業に利用した部分だけなので、自宅の家賃を経費計上する場合は、事業で使用している割合とプライベートで使用している割合を決定する必要があります。これを家事按分といいます。
事業で使用している割合の決め方は複数ありますが、最も一般的な方法は、自宅の面積に対し、業務で使用しているスペースがどのくらいの割合を占めているかを求めるやり方です。
たとえば家賃12万円の自宅のうち、3割に当たる一室を仕事場として利用している場合、12万円×30%=36,000円を地代家賃として計上することができます。
事業にも利用しているけれど、プライベートでも使っているなど、スペースで区分するのが難しい場合は、作業時間を基準に割合を求めるという方法もあります。
たとえば平日のみ7時間自宅で作業をしているという場合、1週間では7時間×5日間=35時間仕事をしていることになります。1週間は24時間×7日間=168時間なので、35時間÷168時間×100=約20%が事業分の割合となります。
仮に自宅の家賃が20万円だった場合、20万円×20%=4万円を地代家賃として計上することが可能です。
3. 地代家賃に仕訳するときの注意点
地代家賃に仕訳する際、特に注意したいポイントを4つご紹介します。
3-1. 敷金・保証金は経費にできない
賃貸物件を契約する場合、はじめに敷金や保証金を支払いますが、これらは契約した時点では、いずれ返ってくるお金とみなされます。そのため、敷金や保証金については支払時に地代家賃として経費計上することはできないのであらかじめ注意しましょう。
なお、敷金のうち物件の原状回復に使われた分に関しては、地代家賃ではなく修繕費として計上することになります。
3-2. 礼金は金額によって仕訳の仕方が異なる
賃貸物件を契約する際、不動産会社に支払う礼金を地代家賃に含めるか否かは、金額によって異なります。
支払った礼金が20万円未満の場合は地代家賃として計上できますが、20万円以上の場合は賃貸契約の期間に応じて、繰延資産として計上する必要があります。
繰延資産とは会社または個人事業主が支出する費用のうち、その効果が1年以上に及ぶ資産のことです。
繰延資産の償却期間はケースによって異なりますが、賃貸物件の礼金の場合は5年かけて償却することになります。[注2]
なお、契約した賃借期間が5年未満の場合は、契約期間中に償却します。
3-3. 持ち家の元金は経費にならない
地代家賃はあくまで賃貸物件の家賃に係る勘定科目なので、自宅が持ち家の場合、住宅ローンの元金を経費として計上することはできません。
利息部分は経費として計上することが可能ですが、その場合は利子割引料という勘定科目を使用するため、地代家賃として計上することはない点に注意しましょう。
3-4. 一時的な利用料金は地代家賃として計上しない
業務で利用する車両を駐車するために月極駐車場を利用している場合、その利用料金は地代家賃として計上できます。
一方、一時的な駐車のためにコインパーキングなどを利用した場合、その費用は旅費交通費という勘定科目で計上します。
目的が同じ「駐車」であっても、継続的な契約か、一時的な契約かによって勘定科目が異なることを覚えておきましょう。
関連記事:地代家賃とは?該当する経費や仕訳例を紹介
4. 地代家賃を計上するときは仕訳の方法やルールを理解しておこう
業務に利用している賃貸物件を経費として計上する際は、地代家賃を仕訳する方法やルールをあらかじめ押さえておく必要があります。
特に仕訳のルールについては、地代家賃か否か判断するのが難しい項目もいくつかありますので、何が地代家賃で、何がそれ以外の勘定科目に分類されるのか、よく理解しておきましょう。
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