一括償却資産とは?仕訳方法や少額減価償却資産との違いを解説
更新日: 2024.5.8
公開日: 2023.1.16
jinjer Blog 編集部
取得価額が10万円以上の資産を購入した場合、その資産の使用可能期間にもとづいて、減価償却(げんかしょうきゃく)を行う必要があります。しかし「会計処理の負担が大きい」「早期に資産を償却できず、資金繰りが厳しい」など、通常の減価償却には問題点もあります。そこで役に立つのが、資産を3年間で償却できる「一括償却」という仕組みです。一括償却資産とは、どのような資産を指すのでしょうか。この記事では、一括償却資産のメリットや少額減価償却資産との違い、一括償却資産の仕訳例をわかりやすく解説します。
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1. 一括償却資産とは?
建物や機械、車両、器具のように、経年劣化とともに価値が目減りしていく資産を「減価償却資産」といい、国税庁では以下のように定義しています。
事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的にはときの経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。
引用:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁
減価償却資産の取得に要した費用は、原則として一括で経費計上することができません。財務省令の別表に記載された「法定耐用年数(資産の使用可能期間のこと)」にもとづいて、分割して経費計上する必要があります。しかし、一括償却資産と呼ばれる資産の場合、3年間で均等に償却することが可能です。
1-1. 一括償却資産は取得価額が10万円以上20万円未満の資産のこと
一括償却資産は取得価額が10万円以上20万円未満の資産を指します。一括償却資産を償却する場合、法定耐用年数にかかわらず、取得価額の3分の1の費用を3年間にわたって費用計上することができます。
たとえば、耐用年数が4年間のノートパソコンを15万円で購入した場合、毎年の減価償却費は15万円×1/3=50,000円です。通常の減価償却よりも、より多くの費用を計上することができます。なお、取得価額が10万円未満の資産は、消耗品費などの勘定科目で全額損金算入することが一般的です。
1-2. 一括償却資産のメリット
一括償却を行うメリットは3つあります。
- 取得価額を3年間で経費計上できるため、資金繰りの改善につながる
- 会計処理を簡略化し、業務効率化を実現できる
- 償却資産税の対象にならないため、節税対策になる
取得価額が20万円未満の資産には、法定耐用年数が3年を超えているものが数多くあります。通常の減価償却ではなく、一括償却を行うことにより、取得価額の全額を3年間で費用計上できます。
また、減価償却資産を年の途中で取得した場合、その年は1年分の償却ではなく、月割りで減価償却費を計算する必要があります。たとえば、会計期間の始まり(期首)が4月1日の企業の場合、10月に購入した資産は、期末の3月31日までの6カ月分しか償却できません。一方、一括償却資産として計上する場合は、資産を取得した時期にかかわらず1年分の償却が可能です。取得価額の3分の1の費用を計上するだけで良いため、会計処理を簡略化できます。
さらに一括償却資産には償却資産税が課税されません。そのため、節税対策にもなるのが一括償却を行うメリットです。
1-3. 一括償却資産の損金算入額は確定申告が必要
一括償却資産の損金算入を行う場合は、法人税法施行令第133条の2のルールに従い、確定申告の際に「一括償却資産の損金算入に関する明細書」を提出する必要があります。「一括償却資産の損金算入に関する明細書」に記載すべき項目は以下のとおりです。[注1]
欄 | 記載要領 |
事業の用に供した事業年度1 | 一括償却資産を事業の用に供した事業年度を、左の欄から早い順に記載します。 |
同上の事業年度において事業の用に供した一括償却資産の取得価額の合計額2 | 事業の用に供した一括償却資産の取得価額の合計額(以下「一括償却対象額」という)を記載します。 |
当期の月数3 | 当期の月数を記載します。 |
当期損金算入額5 | 一括償却対象額につき当期において損金経理をした金額を記載します。 |
前期からの繰越額8 | 前期のこの明細書の「翌期への繰越額10」の金額を記載します。 |
同上のうち当期損金認容額9 | 当期に損金算入不足額がある場合において、前期から繰り越された損金算入限度超過額があるときは、その損金算入不足額に達するまでは損金に認容されるため、その認容される金額を記載します。 |
[注1]別表十六(六) 「一括償却資産の損金算入に関する明細書」|国税庁
2. 一括償却資産と少額減価償却資産の違い
一括償却資産とよく似ているのが、少額減価償却資産と呼ばれる資産です。少額減価償却資産とは、取得価額が30万円未満の減価償却資産のことで、中小企業のみ全額を即時償却できます。国税庁では、少額減価償却資産について以下のように記しています。
中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を平成18年4月1日から令和6年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。
引用:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁
少額減価償却資産として全額損金算入できる資産の合計金額は300万円までです。なお、この特例の対象は、常時使用する従業員の数が500人以下の企業に限られます。一括償却資産と少額減価償却資産の違いを表でまとめると、以下のとおりです。
一括償却資産 | 少額減価償却資産 | |
対象 | すべての法人 | 中小企業者等 |
償却 | 10万円以上20万円未満 | 10万円以上30万円未満 |
取得価額 | 3年間にかけて償却 | 全額を即時償却 |
限度額 | なし | 300万円まで |
3. 一括償却資産の仕訳方法
ここでは、一括償却資産の仕訳方法を2つのパターンに分けて解説します。
3-1. 通常の一括償却を行うケース
まず、通常の一括償却を行うケースです。たとえば、15万円のノートパソコンを現金で購入し、一括償却資産として費用計上する場合、以下のように記帳します。15万円のノートパソコンを現金で購入した時点では、借方に一括償却資産、貸方に現金の勘定科目を記載します。決算の際に一括償却を行った時点で、借方に1年分の減価償却費(15万円×1/3=50,000円)、貸方に一括償却資産を記載します。
- 15万円のノートパソコンを現金で購入した時点
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
一括償却資産 | 150,000 | 現金 | 150,000 |
- 決算の際に一括償却を行った時点
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費 | 50,000 | 一括償却資産 | 50,000 |
3-2. 一括償却資産を除却したケース
それでは、3年間の償却期間が終わる前に、購入したノートパソコンを除却(固定資産などを売却・廃棄すること)した場合はどうなるのでしょうか。一括償却資産を年の途中で除却しても、残存簿価(残りの資産価値のこと)を計上し、減価償却を取りやめることはできません。取得した資産を売却・廃棄しても、これまでどおり3年間の一括償却を継続する必要があります。[注2]
4. 一括償却資産の仕訳方法を知り、会計処理を簡略化しよう
一括償却資産は、取得価額が10万円以上20万円未満の資産のことです。一括償却資産として計上すると、通常の減価償却よりも会計処理を簡略化ができます。資金繰りが楽になる点や、償却資産税が課税されない点もメリットです。一括償却資産とよく似ているのが、中小企業者のみ計上できる少額減価償却資産です。一括償却資産の仕訳方法や少額減価償却資産との違いを知り、適切な会計処理を行いましょう。
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