役員退職金とは?支払いをおこなうメリットやデメリットのほか、計算方法を解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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役員退職金とは?支払いをおこなうメリットやデメリットのほか、計算方法を解説

退職金

役員が退職するとき、通常の退職金規程にはない「役員退職金(役員退職慰労金)」を支給することができます。役員退職金は全額を損金に算入し、法人税などを節税できるため、役員側だけでなく企業側にもメリットがあります。しかし、高額な役員退職金は資金繰りを悪化させたり、税務調査で否認されたりするリスクがあります。功績倍率法や1年当たり平均法などの計算方法を活用し、適正な金額の役員退職金を支給しましょう。この記事では、役員退職金の概要やメリット・デメリット、計算方法や損金算入の時期について解説します。

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1. 役員退職金とは?

はてな

役員退職金(役員退職慰労金)は、取締役・監査役・執行役・会計参与などの会社法上の役員が退職した際に支給する退職金です。役員退職金の所得税は給与や賞与とは異なる計算で、税金の負担が軽減されるような仕組みになっています。

役員退職金を支給するには、定款の規定か、株主総会の決議が必要です。役員退職金と一般的な退職金との違いや、役員退職金の支給要件を解説します。

1-1. 一般的な退職金との違い

一般的な退職金の場合、就業規則の退職金規程に基づいて支給します。退職金規程の作成は法律上の義務ではありませんが、従業員とのトラブル防止のため、退職金規程を設ける企業が一般的です。一方、役員退職金は就業規則の退職金規程にかかわらず支給できます。ただし、役員退職金を支給するには、定款の規定か、株主総会の決議が必要です。もし株主総会の決議がスムーズに進まなかった場合、役員退職金を支給することはできません。

1-2. 役員退職金の支給には「退職の事実」が必要

2011年の税制改正により、役員退職金の取り扱いが見直されました。役員退職金を支給するには、形式的な退職ではなく、明確な「退職の事実」が必要です。例えば、以下のような事情が認められる場合、役員退職金を支給することができます。

  • 役員が常勤の役員ではなく、非常勤の役員になった場合
  • 役員が取締役から監査役になった場合
  • 役員の分掌変更(地位や職務内容の変更)により、役員報酬が減少した場合

ただし、役員報酬が減少しただけでは役員退職金を支給できません。役員の勤務状況などから、役員が退職した事実を明確に確認できる必要があります。

2. 役員退職金の準備の必要性

役員退職金は次の2つに分けられます。

  • 勇退退職金
  • 死亡退職金

役員の勇退退職金は高額になるのが一般的です。そのため、日ごろから計画的に準備しておくことが大切です。勇退退職金を金融機関からの借り入れで賄おうとすると、会社経営に影響を及ぼしかねません。

一方、死亡退職金は役員に万が一のことがあった際に役員の家族に支払われる退職金です。突然必要になる可能性が高い死亡退職金は勇退退職金のように計画的に準備することは難しいでしょう。しかし、万が一の際に備えて早めに準備しておくことが大切です。特に役員は労災のような公的な保障があります。そのため、役員の家族の生活費や子供の教育費などとして活用できる退職金を会社が保障すること重要です。

3. 役員退職金を支払うメリットとデメリット

メリット・デメリット

役員退職金を支払うメリットは、役員側だけでなく企業側にもあります。役員退職金は全額を損金に算入できるため、法人税などの節税対策として役員退職金を設ける企業も存在します。しかし、高額な役員退職金は資金繰りを悪化させたり、税務調査で否認されたりするリスクもあります。役員退職金を支払うメリット・デメリットを解説します。

3-1. 企業側のメリット

役員退職金は一般的な退職金と違い、その全額を損金に算入することができます。そのため、役員退職金を計上することで所得を圧縮し、法人税などを節税することができます。また、役員退職金は社会保険料の算定基礎である標準報酬月額には含まれません。そのため、役員退職金を支払う際、企業側は社会保険料を納付する必要がないのもメリットです。

3-2. 役員側のメリット

役員退職金は税務上「退職所得」に該当します。そのため、役員退職金を受け取った役員は所得税が課せられます。しかし、退職所得は退職所得控除があるなど税務上優遇されており、税負担が軽いのが特徴です。国税庁によると、役員退職金にかかる所得税は、以下の計算式で求められます。[注1]

退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2

※役員としての勤続年数が5年以下の場合は2分の1にならない

所得税=退職所得の金額×所得税率-所得控除額

以下の表の通り、退職所得控除額は勤続年数が長いほど大きくなります。[注1]また、役員としての勤続年数が5年を超える場合、退職所得の金額は退職所得控除額を差し引いた後で2分の1になります。役員退職金は税負担が軽いため、役員側にもメリットがあります。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には80万円)
20年超

800万円+70万円×(勤続年数-20年)

参考:国税庁 | 退職金を受け取ったとき(退職所得)

3-3. 役員退職金のデメリット

一方、役員退職金のデメリットは2つあります。

  • 資金繰りの悪化につながるリスク
  • 税務調査で否認されるリスク

役員退職金の支給額は企業が自由に決められます。しかし、役員退職金として多額の資金を拠出した場合、企業の資金繰りの悪化につながるリスクがあります。また、所轄の税務署によって役員退職金の金額が不当に高額であると判断されるた場合、税務調査で否認され、損金に算入できない可能性もあります。

4. 役員退職金の計算方法

電卓で計算する女性

役員退職金は一般的な退職金と違い、退職金規程を作成する必要がありません。しかし、役員とのトラブル防止のため、あらかじめ役員退職金規程を作成し、役員退職金の計算方法や支払い方法を示す企業も存在します。役員退職金の計算方法として、「功績倍率法」「1年当たり平均法」の2つを紹介します。2つの計算方法を把握して実際にシミュレーションしてみましょう。

4-1. 功績倍率法

功績倍率法は、役員が退職した時点の報酬月額(最終報酬月額)を基準に役員退職金を計算する方法です。一般的には、役員退職金は功績倍率法で算定します。功績倍率法の計算式は以下の通りです。

役員退職金額=最終報酬月額×勤続年数×功績倍率

功績倍率とは、役員の役職に基づいた倍率のことです。例えば、代表取締役の功績倍率は、取締役の功績倍率よりも高くなります。また、特に大きな功績を残した役職に対しては、役員退職金額の30%程度の「功労加算金」を追加で支給することもできます。

功労加算金=役員退職金額×30%

4-2. 1年当たり平均法

1年当たり平均法は、主に企業会計よりも紛争処理において用いられるけいさんほです。1年当たり平均法では、規模や業種が類似した同業他社の退職金の金額を基準として役員退職金を計算します。1年当たり平均法での計算式は以下の通りです。

役員退職金額=1年当たり退職金×勤続年数

5. 役員退職金の損金算入をおこなうタイミング

チェック

役員退職金はその全額を損金に算入することができます。役員退職金の損金算入が可能な時期は、役員の退職についての株主総会の決議をおこなった事業年度です。例えば、役員が退職した事業年度の翌年に株主総会の決議をおこない、役員退職金の支給額を決定した場合、原則として株主総会の決議をおこなった日に損金算入をおこないます。税務調査で否認されないため、役員退職金の損金算入時期を確認しておきましょう。損金算入のタイミングは次のとおりです。

  • 役員が退職した事業年度に株主総会の決議をおこなった場合:退職した事業年度
  • 役員が退職した事業年度に株主総会の決議をおこなった場合:退職した事業年度の翌年(例外的に退職日の損金算入が可能)

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6. 役員退職金を支払う一連の流れ

役員退職金を支払う際は会社の憲法ともいえる定款あるいは株主総会の決議を経る必要があります。しかし、企業によっては定款で役員退職金について定めていないケースがあります。このように定款で定められていない場合は株主総会の決議によって役員退職金の支払いが決定します。株主総会においては誰に役員報酬を支払うのかということが決議されます。株主総会で役員報酬の支払いについての決議が終われば、取締役会にて役員退職金の算定方法や支給額等を決定するのが一般的です。算定方法は功績倍率法や1年当たり平均法が用いられます。

株主総会で決議するのか定款に従って決めるのかは、自社の定款に役員退職金の定めがあるかを確認しましょう。

7. 役員退職金は損金算入が可能!役員退職金のメリットや計算方法を確認しよう

電卓 計算の仕方

役員退職金とは、役員が退職した際に支給する退職慰労金です。一般的な退職金と違い、退職金規程を作成する必要はありません。ただし、役員退職金の支給には、定款の規定か、株主総会の決議が必要です。役員退職金は全額を損金に参入できるため、企業側にも節税対策としてのメリットがあります。ただし、役員退職金の金額が合理的でない場合、税務調査で否認されるリスクもあります。役員退職金の損金算入が可能な時期は、株主総会の決議をおこなった事業年度です。税務調査で否認されないため、役員退職金の計算方法や損金算入時期を確認しておきましょう。

会計の基本は「勘定科目」と「仕訳」
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jinjer Blog 編集部

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