退職給付引当金とは?仕訳と勘定科目、簡便法ついてわかりやすく解説
更新日: 2024.5.8
公開日: 2022.11.30
jinjer Blog 編集部
退職給付引当金を知っていますか。退職金制度を導入している会社であれば、必ず計上しなければいけない引当金のひとつです。しかし、計算方法やなぜ計上するのかなどわからないことも多いのではないでしょうか。
本記事では退職給付引当金について解説いたします。退職給付引当資金との違いも解説しているので、ぜひご確認ください。
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
「経理担当になってまだ日が浅く、会計知識をしっかりつけたい!」
「会計の基礎知識である勘定科目や仕訳がそもそもわからない」
「毎回ネットや本で調べていると時間がかかって困る」
などなど会計の理解を深める際に前提の基礎知識となる勘定科目や仕訳がよくわからない方もいらっしゃるでしょう。
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1. 退職給付引当金とは?
退職給付引当金とは、退職金の制度を導入している会社が計上しなければならない引当金の一種です。退職金については知っている方がほとんどだと思いますが、引当金はわからない方も多いでしょう。
引当金とは将来発生する特定の費用や損失に備えるために、当期の費用として繰入れて準備しておく見積もり金額のことです。具体的な例を用いて考えていきましょう。
たとえば1月〜6月までの労働に見合った賞与を6月に支給している会社があるとしましょう。一般的には6月と12月に賞与を支給しているケースが多いので、それほど珍しい例ではありません。
会社は4月〜3月までを一期としています。つまり、6月に発生する賞与のうち、前期の労働の結果、受け取れる部分があるということです。仮に1月〜3月に働いていなかったとしたら、もらえる賞与の金額は当然ですが減ります。前期に起こった事象が引き金となって、当期にお金の支払いが発生しているということです。
会社の会計は発生主義に基づいて会計処理をおこなうことになっています。発生主義とは実際に金額をやり取りした日ではなく、金額を支払うべき要因が発生した日で会計処理をおこなうということです。
しかし、実際には賞与の支払いはおこなわれてはいません。そこで登場するのが引当金です。引当金によって賞与の見積もりをおこない、当期の予算として繰入れておかなくてはいけないのです。
大切なのは「未来に発生するかもしれないお金を当期に繰入れて準備しておく」という考え方です。
退職金のケースに戻りましょう。従業員はいつ会社をやめるかわかりません。そのため、いつ退職金が発生するかわからないということです。
いつ発生するかわからないということは、当期に大量退職して多額の退職金を支払う可能性もあるということです。つまり、引当金として未来の退職金のために当期の予算に繰入れて計上しなければいけないのです。こうして計上する引当金のことを退職給付引当金といいます。
しかし、引当金として計上する必要が本当にあるのか疑問に思う方もいるでしょう。実際に退職が起こらなければ、引当金として計上する必要もありません。賞与などは支払うことが確定していますが、退職金はまだわからない状態です。それなのに引当金として計上する必要が本当にあるのかわからない方もいるかもしれません。
引当金には計上するべき要件が定められています。これらに該当していれば、必ず計上しなければいけません。その要件について解説していくので、ぜひご確認ください。
1-1. 引当金を計上する要件
引当金を計上するべきかどうかは次の要件を満たしているかで決まります。
- 将来の特定の費用または損失である
- その発生が当期以前の事象に起因する
- 発生の可能性が高い
- その金額を合理的に見積もることができる
退職金で考えてみましょう。まず退職金は「将来の特定の費用」に該当します。そして退職金は労働した結果、受け取れるものなので「当期以前の事象」に該当します。
そして退職金の制度を整えている会社は退職金が「発生する可能性が高い」です。もちろん、退職金の計算方法は会社によって定めているので「金額を合理的に見積もる」ことも可能となります。
退職金は引当金を計上する要件をすべて満たしているので、退職給付引当金として計上しなければいけないのです。
1-2. 勘定科目と仕訳方法
退職給付引当金は「退職給付引当金繰入額」または「退職給付費用」で仕訳をおこないます。退職給付引当金繰入額は退職金の引当金として当期内に計上した金額を処理する勘定科目です。
退職金は従業員が退職するときに債務が確定します。引当金自体は損金不算入となるため注意しましょう。
具体的な仕訳方法は、当サイトで無料配布している「勘定科目と仕訳のルールBOOK」で解説しています。この資料では、「退職給付引当金」以外の勘定科目と仕訳方法を解説しているので、「どの科目を使用すればよいのか、いつも迷ってしまう」という方にもおすすめです。特殊な費用が発生したときや、仕訳方法がわからなくなったときにすぐ確認できるので、ぜひこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
1-3. 簡便法と原則法
退職給付引当金の金額を計算する方法は簡便法と原則法の2種類あります。通常は原則法を用いる決まりがありますが、一定の条件を満たす企業は簡便法で算出することも認められます。
2. 退職給付引当金の計算方法
計算は以下の式によって行われます。
退職給付引当金=退職給与債務−年金資金±変更時差異
それぞれの意味について解説いたします。
2-1. 退職給与債務
退職給与債務とは将来支払う退職金のうち、当期まで発生した分のことです。この計算方法ですが、会社によって異なるのでそれぞれの会社の計算方法を当てはめてみてください。
当期に退職したとしたら退職金はいくらになるのかを考えると計算しやすいです。就業規則などに給与や退職金の計算方法については記載があるはずですので、それらをチェックしてください。
退職金は法律で定められているものではないので、就業規則に記載がない可能性も考えられます。その場合は、本当に退職金制度があるのか、どのように退職給与債務を計算すれば良いのかなどを上司に確認してみてください。
2-2. 年金資金
年金資金とは外部に積み立てをしている退職金の原資のことです。前期までの年金資産に対して、当期の掛金拠出分と前期までの年金資産に年金資産運用利回りをかけて算出した期待運用収益を加算すれば計算できます。
2-3. 変更時差異
変更時差異とは「退職給付会計基準による未積立退職給付債務」の金額と「従来の会計基準により計上された退職給与引当金等」の金額の差額のことです。
それぞれの値を求めて、差額を計算してください。
これらすべての費用を求めることができれば、退職給付引当金がわかります。計算は少し手間ですが、求め方は明確なので慣れればそれほど難しくはありません。計算ミスには注意をしてください。
3. 退職給付引当金と退職給付引当資産の違い
まず退職給付引当金はさきほど説明したとおりです。もちろんですが、見積もりとして計上しておく以上、本当に退職が起こった際に退職金が支払えるようにしておかなくてはいけません。
この退職給付引当金に相当する資産を確保しておく場合に計上するのが、退職給付引当資産なのです。退職給付引当金は必ず計上しなければいけないのですが、退職給付引当資産は必ずしも計上しなければいけないというわけではありません。
大きな違いは退職給付引当金は計上が義務であるのに対して、退職給付引当資産は計上が義務ではなく任意という点でしょう。名前が似ているので少しややこしいですが、性質は大きく異なるので混同しないように注意してください。
4. 退職金に関する業務に携わる人は退職給付引当金を正確に理解しておこう
また、退職金に関する社内規定も重要です。実際にどのように退職金を計算するのか記載された書類があれば、必ずチェックしておきましょう。
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