研究開発費を資産計上するときのポイントを徹底解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.9.9
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企業の研究開発のために費やした支出は適切に会計処理したいものです。
一般的には企業の研究開発費は費用処理を行うことになりますが、一部の開発費は資産計上することが可能です。
本記事では研究開発費を計上するときのルールについて詳しく説明します。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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「会計の基礎知識である勘定科目や仕訳がそもそもわからない」
「毎回ネットや本で調べていると時間がかかって困る」
などなど会計の理解を深める際に前提の基礎知識となる勘定科目や仕訳がよくわからない方もいらっしゃるでしょう。
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1. 企業の研究開発費と開発費の会計処理方法は異なる
企業の研究開発のための支出は基本的に研究開発費として処理することになります。
この研究開発費を資産として計上したいと考える企業もあると思います。
平成10年3月に公表されて、その後平成20年12月に一部が改正された「研究開発費等に係る会計基準」では、研究開発費の会計処理について詳しい定義がされています。[注1]
この文書の中で「研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなければならない」と記載されています。
つまり、研究開発費は費用の扱いになるため、基本的には資産計上することができないのです。
この会計基準が発表される以前は、企業の研究開発費を任意で繰延資産として計上することが可能でした。
しかし、研究開発が企業に利益をもたらすとは限りません。
高額な費用を投じて研究開発を行ったものの、結果が出ず損失につながってしまう例も数多くあるものです。
こういった状況で研究開発費を繰延資産とすると、企業間の比較可能性が失われてしまうことになります。
そのため、研究開発費は資産計上ではなく費用処理を行うべきと判断され、「研究開発等に係る会計基準」においてその定義が明示されたのです。
企業が開発を行うにあたって発生する費用は、開発費または研究開発費の勘定科目で会計処理をすることになります。
開発費と研究開発費は似ているようで少し異なります。
研究開発費は企業が自ら研究開発を行った際にかかった費用のことを指します。
これに対し、開発費とは新技術開発や市場開拓などのための費用のことをいいます。
企業が新たに開発や開拓を行うときには新たな経営組織の編成や採用活動が必要となります。
また、生産計画の変更や大規模な配置換えを行うこともあります。
このときかかかる技術導入費や市場調査費、経営コンサルタント料金などは開発費として処理します。
開発費は会計処理上営業外費用や販売費、一般管理費などで処理をしますが、条件に合致していれば繰延資産としても計上できます。
しかし、研究開発費は会計基準に定められた通り、発生時に費用として処理しなければならないのです。
[注1]研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針|日本公認会計士協会
2. 研究開発費を資産計上できるケースとポイント
企業の研究開発のための支出はすべて資産として計上できるわけではありません。
研究開発費を資産として計上できるケースには細かいルールが定められています。
研究開発費や開発費を資産として計上できるケースや処理のポイントについて見ていきましょう。
2-1. 開発費のうち、作成したものに資産価値があると認められるケース
研究開発費は費用として計上しますが、開発費に関しては資産計上できるケースもあります。
税務上、開発費の効果が翌年以降に及ぶケースがあります。
このときには支出した費用を繰延資産として処理することが認められています。
ただし、開発費の資産計上は、計上的な費用とは別に特別に支出した費用である場合に限られます。
繰延資産とは、その支出の支払いが完了しているか支払義務が確定しており、その役務の提供を受けたのち、その効果が将来にわたって発現すると期待されるときに発生する費用のことを指します。
例えば、研究中に作成した試作品を広告として利用できるときには資産価値があると判断されるため、固定資産として計上できます。
また、研究開発において作られた模型にコレクション的な価値があるときにも、固定資産であると認められるケースが多いのです。
開発費を繰延資産として資産計上したときには、開発費の効果が及ぶ範囲にわたって償却を行います。
その範囲は支出から5年以内となっており、定額法またはそのほかの合理的な方法によって償却していきます。
なお、損益計算書に記載する際には当期製造費用または一般管理費として計上します。
研究開発費の多くは原価性がないとみなされるため、一般管理費として計上されることがほとんどです。
2-2. 試験研究費のうち工業化研究に該当するケース
一部の試験研究費を資産計上するケースもあります。
試験研究費とは、製品の製造や技術の改良、考案、発明などにかかわる試験研究に必要となる費用のことを指します。
研究開発費のうち、基礎研究や応用研究の費用は損金に、工業化研究の費用は製造原価に算入します。
試験研究費のうち工業化研究に該当することが明らかなものについては、固定資産や棚卸資産として資産計上できることがあります。
試験研究費を固定資産として計上し減価償却を行えば、税額控除の対象とすることが可能となります。
2-3. 企業結合によって研究開発費の対価を取得したケース
従来は、仕掛研究開発について企業結合の取得対価の一部は研究開発費に配分して費用処理していました。
しかし、企業結合が行われたときには資産計上が認められることがあります。
企業結合によって被取得企業から受け入れた資産は、原則的に費用処理するという研究開発費の会計基準の例外条件となり得るのです。
2-4. 研究開発を委託したケース
自社内で研究開発を行うのが困難なときには、研究開発や調査を外部委託することがあります。
この場合にも研究開発費を資産計上できることがあります。
委託に際してあらかじめ依頼先に費用を支払ったときには、その費用を前渡金として資産計上します。
ただし、研究開発の委託をした場合、その成果は委託者側に帰属すると考えられます。
そのため、委託研究に関わる費用は進捗に応じて費用処理することになります。
研究開発の委託費用は一旦資産計上しますが、検収などのタイミングで費用計上の処理を行うことがほとんどです。
3. 研究開発費や開発費を資産計上できないケースとは
研究開発費は原則として発生時に費用処理を行います。
しかし開発費の場合は条件を満たせば固定資産とみなされるため、資産計上することが可能となります。
しかし、開発費でも資産価値がないものに関しては資産計上することができないので注意したいものです。
例えば、研究中に作成した試作品や模型の多くは、それ自体に資産価値があるとはみなされません。
たとえ希少な材料を使っていて作成に高額な費用がかかった場合でも、その試作品や模型自体に価値が認められなければ固定資産として扱うことはできないのです。
関連記事:研究開発費とは?該当する経費や仕訳方法を詳しく紹介
4. 研究開発費は条件を満たせば資産計上できる
研究開発に関わる費用は研究開発費として費用計上するのが原則です。
ただし、企業の研究分野や開発分野で発生した費用は開発費や試験研究費に分類できることがあります。
開発費や試験研究費は、条件に合致していれば、資産として計上できることがあります。
研究開発の内容をどのような勘定科目で処理すべきか、費用と資産のどちらで計上できるかといった判断は難しいものです。
会計上の疑問点があるときには、税理士などの専門家に相談し判断を仰ぐことをおすすめします。
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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