税務会計とは?目的や財務会計との違い、注意点をくわしく解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.10.25
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税務会計とは、法人税を正しく納付するためにおこなわれる会計業務です。
「自社の経営情報を外部に開示する」という点では財務会計と同じですが、両者に適用されるルールは同じではありません。税法に準拠する税務会計と会計基準に準拠する財務会計では、内容に差異が生じることもあるでしょう。
本記事では、税務会計の概要や管理会計・財務会計との違い、さらには管理会計をおこなう上で注意すべきポイントを紹介します。
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1. 税務会計とは?
企業会計には「財務会計」「管理会計」があり、税務会計は財務会計の一つといわれています。具体的には会計業務を指すのか見ていきましょう。
1-1. 税額を算出するためにおこなわれる会計業務
税務会計とは、「納税」をおこなうための会計業務です。経理担当者は、法人税法に則って、収益や費用から適切な課税所得額を算出しなければなりません。帳簿や伝票の作成・分類は、全て「適切な申告書を作成するため」です。
ただし法人税の根拠となる所得の計算はあくまでも税金視点のものであり、必ずしも企業の収益の実態に即しているわけではありません。
所得の計算では、財務会計と同様な会計処理を認めている部分もあれば、認めていない部分もあります。企業がおこなう財務会計と税務会計は、完全なイコールとはなりません。
1-2. 税務会計の重要性
税務会計は、「課税の公平」を掲げる法人税法や所得税法に基づいて会計処理がおこなわれます。企業は事業年度の経営状況を正しく記録い、確定申告書に反映させなければなりません。
法人所得を得ている全ての企業は、国や地方公共団体に適切な所得額を申告して納税義務を果たす必要があります。税法に基づく適切な会計処理は、企業の信頼性を確保する上でも非常に重要です。
1-3. 主に中小企業によっておこなわれる
税務会計を重視するのは、非上場の中小企業です。
企業として経済活動を続けている法人は、外部・内部のステークホルダーに対し適切な経営状況を開示する義務が課せられています。株式を公開している大企業は特に株主に対する責任が重く、確定申告の心配ばかりをしているわけにはいきません。
会計処理では会社法に基づく「会社法会計」の比率が大きく、税務会計のみに偏った会計処理がおこなわれることは少ないでしょう。
一方、非上場の中小企業には、自社の情報を開示すべき株主が存在しません。気にしなければならないのは「税務署」のみとなるため、所得税対策に特化した会計処理に偏りがちになるのです。
1-4. 税務会計と企業会計の違い
前述のとおり、税務会計は財務会計の一つです。企業会計には、財務会計と管理会計があります。
企業会計は会社の財務状況を報告することを目的におこない、報告先により「財務会計」と「管理会計」に分かれるのです。銀行や投資家などの社外に報告することが目的の「財務会計」と、自社の役員や上層部などの社内に報告することが目的の「管理会計」になります。
関連記事:会計とは?業務の流れや経理・財務・簿記との違いを解説
2. 税務会計と財務会計・管理会計の違い
税務会計と混同されがちな言葉に、財務会計・管理会計があります。それぞれ企業会計の一部を示す言葉ではありますが。示す内容は異なるため要注意です。
3種類の会計について違いを紹介します。
2-1. 税務会計と財務会計の違い
財務会計とは、企業会計のうち「外部のステークホルダーに対し、経営状態を適切に開示するための会計」です。適切な経営成績・財政状態の報告のため、企業は「損益計算書」や「貸借対照表」といった財務諸表を作成しなければなりません。
税務会計と財務会計の大きな違いは、「目的」「会計処理の根拠」です。
税務会計が「課税所得額の適切な算出」を目的とするのに対し、財務会計は「企業の財産・利益を適切に開示できるようにすること」を目的とします。
税務会計が法人税法をベースにするのに対し、財務会計が「会計基準」に準拠する点にも、違いがあるといえるでしょう。
2-2. 税務会計と管理会計の違い
管理会計とは、「内部のステークホルダーに対し経営状態の情報を開示すること」です。開示された情報は、経営判断や企業戦略の立案に活用されます。
税務会計との大きな違いは、管理会計は法によって定められた義務ではないこと・会計期間・手法も独自の方法でおこなってよいことです。
税務会計の目的である確定申告は法律によって定められた義務であり、「申告しない」という選択肢はありません。
会計ルールについても法人税法・所得税法の決まりに従う必要があり、業種や目的にあわせて自由にルールを策定できる管理会計とは大きく異なるといえます。
関連記事:管理会計の目的は?制度会計や財務会計との違いとメリットを解説
3. 税務会計の注意点
税務会計は適切な納税をおこなうための会計であり、企業の経営状態を適切に反映しているとは言い切れません。また税法を根拠としているため、たびたびルールが変わる点にも要注意です。
税務会計をおこなう上で、覚えておきたい注意点を紹介します。
3-1. 税務会計で経営状態を判断するのは困難
税務会計で記録されるのは、税金の視点から見た企業経営情報です。財務会計なら計上される利益が適切に反映されていないケースは、多々あります。
特に中小企業庁はステークホルダーに対する情報開示の必要がなく、「課税所得の申告さえ何とかなればいい」と考える企業が少なくありません。
また税務署側も、課税所得額さえ適切に記載されていれば、勘定科目の間違いや仕訳ミスについて一つ一つ指摘することはまれです。税務会計はあくまでも「課税所得額を算出するためのもの」として、それのみで企業の経営状態を判断するのは控えましょう。
3-2. 税制改正をチェックする
税制改正とは、税金に関する法律の見直しをおこなうことです。改正の頻度は基本的に「年1回」とされており、税務会計に関連する改正がおこな
われることもあります。
正しい会計処理をおこなうためには、税法にどのような改正が加えられたのか・どのように会計処理すべきなのかについて、常にアンテナを張り巡らせておく必要があるでしょう。
税制改正の動きが始まるのは、毎年8~9月頃です。12月頃には「税制改正大綱発表」が発表され、翌年1月には法案が成立する運びとなります。
経理担当者は、国税庁のホームページを随時チェックするのがおすすめです。
3-3. 注意すべき税制改正
令和4年3月に、「令和4年度税制改正」が施行されました。このうち、法人税法に関係するものを見ていきましょう。
3-3-1. 積極的な賃上げ等を促すための措置
大企業(資本金10億円以上、かつ、常時使用従業員数1,000人以上~)の企業が継続雇用者の給与総額を一定割合以上増加させた場合、雇用者全体の給与総額の対前年度増加額の最大30%を税額控除できます。
企業が 賃上げや人材投資(教育訓練費)をおこなった場合、さらなる税額控除率が上乗せされる仕組みです。
一方中小企業の場合は、雇用者全体の給与総額の対前年度増加額の最大40%が税控除されます。適用期限は1年延長され、「令和6年3月31日まで」です。
3-3-2. オープンイノベーション促進税制の拡充
オープンイノベーション促進税とは、国内の企業がスタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得すると、株式取得価額の25%が所得控除されるという法律です。
本来は令和4年3月31日まででしたが、このたびの税制改正によって2年間の延長が決定しました。法律の期限は、令和6年3月31日までです。
所得控除の限度額は、1件当たり25億円以下・対象法人1社・1年度当たり125億円以下となっています。
また出資には、以下の要件も設けられています。
- 1件当たりの出資金額下限:大企業は1億円、中小企業は1千万円。(海外企業への出資は一律5億円)
- 資本金増加を伴う現金出資(発行済株式の取得は対象外)。純投資は対象外
- 取得株式の3年以上(令和4年3月31日までの出資については5年以上)の保有を予定していること
4. 税務会計を理解して適切な企業会計をおこなおう
税務会計は、適切な確定申告書の作成と課税所得額の算出を重視する会計スタイルです。「外務のステークホルダーに自社の経営状態を開示する」という点から、財務会計の一部と考えられます。
税務会計で注意したいのは、会計処理が「税視点」でおこなわれていることです。申告内容と経営の実態は必ずしも一致しないため、税務会計をもって企業の経営状態を判断するのは控えましょう。
税務会計を理解して、適切な企業会計に役立ててください。
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