福利厚生費とは?福利厚生の種類や計上する際の要件も解説
更新日: 2024.7.2
公開日: 2022.5.10
jinjer Blog編集部
福利厚生とは、その企業に勤務することによって、従業員が得られる給料以外の保証やサービスのことです。
福利厚生には、法律で定められたものと定められていないものがあり、企業が独自に導入している保証やサービスにかかる費用を福利厚生費といいます。独自に導入している福利厚生費は、基本的に税務会計上経費として認められますが、条件が合わない場合は経費算入できないので注意が必要です。
ここでは、福利厚生費について何が対象になるのか、法定福利費とどう違うのか、また課税対象になるものと対象にならないものの考え方の違いなどを解説します。
目次
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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「会計の基礎知識である勘定科目や仕訳がそもそもわからない」
「毎回ネットや本で調べていると時間がかかって困る」
などなど会計の理解を深める際に前提の基礎知識となる勘定科目や仕訳がよくわからない方もいらっしゃるでしょう。
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1. 福利厚生費とは?
福利厚生費とは、企業が従業員に対し、給与や賞与とは別に支給する保障やサービスにかかる費用のことです。内容は企業によって異なりますが、直接業務に関係しない費用です。具体的には、忘年会や社員旅行費、健康診断費用などが福利厚生費に該当します。
福利厚生の多くは、従業員の健康管理や私生活の充実、従業員同士のコミュニケーションのために使われるので、従業員のモチベーションアップや離職防止の効果も期待できます。
また、条件を満たしていれば、すべての費用が損金算入できるので節税対策につながるというのもメリットです。
ただし、個人事業主や個人事業主の家族のために使った費用は、基本的に福利厚生費と認められないので注意しましょう。
1-1. 法定福利費と法定外福利費との違い
福利厚生には2つの種類があります。法律で定められているのが法定福利で、定められていないのが法定外福利です。
法定福利は、健康保険や労災保険、雇用保険など企業が必ず負担しなければならないもので、割合なども決められています。そのため、どの企業に勤めていても受けられる福利厚生となっています。
一方、法定外福利は企業が独自に設定できるものです。同じ名目でも企業によって金額や条件が変わったり、名称は違っても同じような内容だったりします。
法定外福利は、必ず設定しなければならないものではありません。ですが、この法定外福利を充実させることで従業員のモチベーションが上がる、優秀な人材を集めやすくなるなどのメリットがあります。
2. 福利厚生で経費計上できるもの
福利厚生にかかる費用は、法定福利費でも法定外福利費でも損金として計上できるため非課税となっています。
ただし、何でもかんでも福利厚生として計上できるわけではありません。ここでは、法定福利費と基本的に非課税となる法定外福利費を紹介するので、担当者の方は確認しておきましょう。
2-1. 法律で定められた各種保険料
法律で定められている法定福利の保険と拠出金は下記の6つです。
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 労災保険料
- 子ども、子育て拠出金
この6種類は、法定福利費に該当するので経費として計上することが可能です。
事業者負担分の計算方法
法定福利費は必ず企業が負担しなければなりませんが、従業員も一部負担します。
そのため、それぞれの保険料で定められた率を従業員の給料から算出しなければなりません。
各種保険料の従業員負担分の計算は、以下の計算式で行います。
・健康保険料:標準報酬月額×健康保険料÷2[注1]
・厚生年金保険料:標準報酬月額×厚生年金保険料率(18.3%)÷2
・介護保険料:標準報酬月額×介護保険料率 [注1]
・雇用保険料:賃金総額×雇用保険料×負担割合 [注2]
・労災保険料:賃金総額×労災保険料率[注3]
・子ども・子育て拠出金:標準報酬月額×子ども・子育て拠出金率
[注1]都道府県別の保険料率|全日本健康保険協会
[注2]雇用保険料について|厚生労働省
[注3]労災保険料率表|厚生労働省
関連記事:福利厚生費の計算方法を種類別や計上の可不可を含めて詳しくご紹介
2-2. 慶弔見舞
慶弔見舞金とは、従業員の慶事や弔事があった際に一定の見舞金を支給するというものです。慶弔見舞金の支給は法律で規定されていないため、法定外福利となります。
法定福利以外の福利厚生は企業が独自に設定しても良いいため、すべての企業に同じ福利厚生があるわけではありません。ですがその中でも慶弔見舞金を設定している企業は多いです。
慶弔見舞金という名称でない場合もあり、その内容も香典や結婚祝いだけでなく出産祝いや式場の準備金などを支給している場合もあります。
2-3. 健康診断費
企業には従業員に対し1年に1度(一部業務の従事者は2回以上)健康診断を受けさせる義務があります。法律で定められた健康診断の項目に対する受診料は法定福利として計上します。
法定外の項目の健康診断や、人間ドッグ等を福利厚生として付与している場合には、法定福利費ではなく、福利厚生費として計上しましょう。
また、人間ドッグなどを福利厚生費として計上するには全ての従業員に受診機会を与え、検診費を全て企業が負担する必要があります。
関連記事:健康診断にかかった費用を福利厚生費で計上するための条件を解説
2-4. 社員旅行にかかる費用
社員旅行や研修、合宿などで発生した費用も福利厚生費として処理します。
この場合、旅行の期間が4泊5日以内でなければならず、全従業員の半数以上が参加していることが条件です。
ただし、全従業員の半数以上が参加しているとしても、役員だけでの旅行や取引先も一緒の旅行などは福利厚生費には含まれません。こ
の場合は、接待交通費などとして処理しなければならず、経費として計上できないので間違えないようにしましょう。
2-5. 歓送迎会などの費用
歓送迎会や新年会、忘年会などの飲食代も福利厚生費に含められます。
この場合は一部の従業員だけが参加するのではなく基本的に全員参加であること、全員分の飲食代を企業が負担すること、そして飲食代が常識の範囲内であることが条件です。
歓送迎会などの費用は基本的に非課税ですが、飲食代として従業員に現金を支給すると課税の対象となるので注意してください。
2-6. 外部施設などを利用する費用
企業独自の福利厚生として、スポーツジムや映画館などの施設を利用できるというものもあります。
自社でそれらの福利厚生を支給するのが難しい場合、スポーツジムの使用料など、外部の施設の利用料を企業が負担します。また、最近はeーランニングの受講など、学びの環境を整える福利厚生を取り入れる企業も増えています。この場合も、アプリの利用料金を企業が負担するというシステムになっています。
ただし、利用チケットのような換金性のあるものを支給すると、福利厚生費とは認められなくなってしまうので注意してください。
3. 飲食の費用は交際費と消耗品費どちらの勘定科目になる?
企業が独自に設定する福利厚生は、勘定科目の「福利厚生費」に仕訳の基準が曖昧になってしまうため、担当者によって異なる処理をしてしまうことがあります。
その中でもとくに福利厚生費と混合してしまいやすいのが交際費、消耗品費です。
実際には交際費なのに福利厚生費に仕訳てしまうと、税務調査で指導対象となる場合があるため注意が必要です。担当者の認識を統一するためにも、ここでは「交際費」「消耗品費」と福利厚生費との違いを確認しておきましょう。
3-1. 交際費は外部への接待費用
交際費は、企業が取引先や仕入先のために使う費用です。つまり、「飲食代」であっても自社の従業員のために使うものではありません。また、特定の人にしか使わない費用ということになります。
そのため、外部の人との食事、外部の人への贈呈品などの勘定科目は、福利厚生費ではなく交際費となるため課税対象です。
ちなみに、要件を満たしていれば、社内の人との食事や社内の人への贈呈品の費用を会議費や福利厚生費など、勘定科目で処理できます。
3-2. 消耗品費は業務上必要な物品の購入費用
消耗品費は、業務をおこなう上で必要なものを購入する場合の勘定科目です。消耗品というのは、例え従業員にとって必要でも仕事で使うものであり、従業員のために使うものではないため課税対象となります。
また、消耗品費として計上するものは、一つの単価が10万円未満、使用期間が1年程度の有形物でなければならないという条件もあります。この基準を上回る物品は、固定資産として計上し減価償却が発生します。
4. 福利厚生費の要件
法定外福利は必ず設定しなければならないものではありませんが、設定する場合は一定の要件を満たす必要があります。
福利厚生費として計上するための設定要件は以下の通りです。
- 全ての従業員を対象に支給されるもの
- 内訳や金額が社会通念上妥当であるもの
ただし、個人事業主は法人とは要件が異なりますし、課税対象になる、非課税対象になる条件もそれぞれ違うので、設定する際はよく確認してください。ここでは、それぞれの要件について解説していきます。
4-1. 従業員全員が平等に利用できる
福利厚生は、原則として「従業員が平等に利用できること」が要件となっています。一部の従業員しか利用できない、雇用形態によって利用出来ないものがあるという場合は、福利厚生として認められません。
従業員の歓送迎会の飲食代や社員旅行の費用、スポーツジムなどの施設の利用料など、どんな福利厚生であっても、すべての従業員を対象に含めてください。
当然ですが、役員だけの飲み会、従業員の半数以下の旅行などの場合は福利厚生とは認められず、課税対象になってしまうので注意しましょう。
4-2. 常識の範囲内である金額
健康診断費や飲食代、施設利用料などの費用は、福利厚生費として常識の範囲内の金額であることというのも要件となります。この判断は非常に曖昧ですが、一般的にかかる費用から逸脱していなければOKです。
あまりにも高額な場合は不正を疑われてしまう恐れがあるため、どうしてもそれだけの金額がかかった場合はそれを証明するための領収書などを保管しておかなければなりません。
ただし、領収書があっても認められない可能性もあるので注意しましょう。
4-3. 個人事業主が福利厚生を利用できる要件
個人事業主が福利厚生を利用できる要件は、「家族以外に従業員がいること」です。この要件は、会社法人を設立してもしなくても同じです。つまり、役員に家族を据えて法人化をしても、家族以外の従業員がいないのであれば福利厚生を利用できないということになります。
これは国税庁の指針で決まっているので、例外はありません。
ただし、事業主や家族以外の従業員がいて、すべてに均等に福利厚生が受けられる場合は、事業主も家族も福利厚生費として計上できます。
5. 各種福利厚生の所得税の課税有無
消費税がつく福利厚生の場合、課税対象となるものと非課税となるものがあります。また、非課税区分だとしても国税庁によって上限が定められているものもあります。そのため、担当者が上限を把握していないと、上限を上回ってしまい課税となってしまうため注意が必要です。
ここでは、特に注意したい福利厚生費の課税の有無について解説します。
5-1. 一定の要件を満たさない旅行費用は課税対象
4泊5日以上の社員旅行、従業員の半数以下しか参加していない社員旅行、参加しない従業員に対して現金の支給があった場合は、その費用は課税対象となります。
福利厚生は、あくまでも従業員全員がサービスを受けることを前提としています。また、旅行に参加しなかった従業員に対する現金の支給も認められていません。
そのため、上記のような旅行をおこなったり現金を支給したりした場合は、賞与として扱うのが一般的です。
5-2. 現金や現物を支給した場合は課税対象
福利厚生では、現金を支給することはできません。ちなみに、お年玉のような一時金や見舞い金なども福利厚生には含まれないので注意してください。また、利用チケットやスーツなどの現物を支給する場合も、福利厚生とは認めらません。
例えば、社員旅行に行けなかった従業員に対し、旅行券を支給するという場合でも課税対象となります。
基本的に、業務に必要なものの購入費用として現金を支給する、飲食代として現金を支給するといった場合も福利厚生費としては認められません。
5-3. 家賃補助は割合によって変動する
従業員が生活する寮や社宅の家賃補助は、金額によって課税、非課税が変動します。
企業が家賃の50%以上を負担する場合は福利厚生ではなく給与として分類され、こちらは課税対象になります。
一方で、企業負担が50%以下の場合はその分を非課税対象にすることが可能です。
家賃補助や社宅を完備すると、従業員の離職防止効果が期待できるので、導入を検討している企業もあるかもしれません。しかし、このように、家賃補助は割合によって課税か非課税かが決まるため、しっかり確認しておきましょう。
関連記事:課税対象になることもある福利厚生費について7つの具体例
6. 福利厚生費の基本を確認しよう
企業が独自に設定できる福利厚生にかかる金額、福利厚生費について解説しました。
法定外の福利厚生には、慶弔見舞いや社員旅行、歓送迎会の飲食代などがあります。これらの福利厚生を充実させれば、従業員の働くモチベーションを維持できるだけでなく、魅力的な企業として外部や求職者にアピールできるので費用対効果は十分に望めるでしょう。
ただし、法定外の福利厚生費には法的な義務がないといっても、非課税とするためには一定の条件を満たす必要があります。条件を満たせていないと課税されます。
非課税であれば、より手厚い福利厚生を設定できるので、担当者は課税対象にならないようしっかり要件を確認しましょう。
関連記事:人件費の1種である福利厚生費について労務管理の視点から詳しく解説
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
「経理担当になってまだ日が浅く、会計知識をしっかりつけたい!」
「会計の基礎知識である勘定科目や仕訳がそもそもわからない」
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などなど会計の理解を深める際に前提の基礎知識となる勘定科目や仕訳がよくわからない方もいらっしゃるでしょう。
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