ベースアップとは?昇給との違いやメリットを徹底解説
更新日: 2024.12.22
公開日: 2024.12.22
OHSUGI
「ベースアップって何?」
「ベースアップをおこなうメリットには何があるの?」
上記のような悩みを抱えている企業担当者もいるのではないでしょうか。
ベースアップは、社員全員の給料を一律にあげることをいいます。社員の仕事へのモチベーションを向上させるためにも、ベースアップは重要な要素の一つです。
そこで本記事では、ベースアップの用語の説明や実施状況、メリットなどを詳しく解説します。
最後までご覧いただくことで、ベースアップを社内に導入すべきか判断しやすくなるでしょう。
1. ベースアップとは
ベースアップとは、社員全員の給料を一律にあげることです。略して「ベア」とよばれます。勤続年数や業務成績、役職など関係なくすべての社員に適用されるのがベースアップの特徴です。
ベースアップがおこなわれる背景には、物価上昇に伴い賃金の価値が相対的に下がったことが挙げられます。物価上昇による支出金額の増加分を軽減するためにも、ベースアップは重要な役割を担っているのです。
2. ベースアップと似ている用語との違い
ベースアップと似ている用語との違いを以下の流れで解説します。
- ベースアップと定期昇給
- ベースアップと賃上げ
2-1. ベースアップと定期昇給
ベースアップは、全社員に対して一律で給料が上がる仕組みです。それに対して定期昇給は、勤続年数や業務成績などにもとづき、社員ごとで定期的に昇給がおこなわれるものです。
またベースアップと定期昇給は、昇給の紐づく場所にも明確な違いがあります。
まず、ベースアップの根拠となるものは、業績や社会情勢など企業の業績です。それに対して、定期昇給は個人がどれだけ会社へ貢献したか(年齢や勤続年数、業務成績など)が昇給の根拠となります。
2-2. ベースアップと賃上げ
賃上げとは、企業が社員に支払う賃金をあげることです。そのため、ベースアップも定期昇給も賃上げの一種に含まれます。
3. ベースアップの種類および計算方法
ベースアップの種類は以下の2つです。
- 定額方式
- 定率方式
種類の詳細と計算方法を詳しく解説します。
3-1. 定額方式
定額方式は、毎月の給与に一定の金額を上乗せする方法です。定額方式は給与の低い人は昇給率が高くなり、高い人は昇給率が低くなります。
例えば、昇給額が20,000円の場合、昇給後の給料と昇給率は以下のとおりです。
- 月給220,000円の場合:220,000円+20,000円=240,000円(1.09%増加)
- 月給440,000円の場合:440,000円+20,000円=460,000円(1.05%増加)
3-2. 定率方式
定率方式は、毎月の給与にある一定の昇給率を上乗せする方法です。定率方式の特徴として、給与の高い人ほど昇給額が高くなりますが、低い人は昇給額が低くなります。
例えば、昇給率が4%の場合、昇給後の給料は以下のとおりです。
- 月給220,000円の場合:220,000円+220,000円×0.04=228,800(8,800円増加)
- 月給440,000円の場合:440,000円+440,000円×0.04=457,600(17,600円増加)
4. ベースアップの実施状況
厚生労働省が公表している「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」によると、令和5年(2023年)時点において、ベースアップをおこなったと回答した企業は以下のとおりです。
- 管理職:43.4%
- 一般職:49.5%
上記の数値からおよそ半分近くの会社がベースアップをおこなっています。
2020年の新型コロナウイルスの流行で一時、ベースアップの実施率は下がりましたが、2022年以降は上昇傾向にあります。
年 | 管理職 | 一般職 |
2019年 | 24.8% | 31.7% |
2020年 | 21.5% | 26.0% |
2021年 | 15.1% | 17.7% |
2022年 | 24.6% | 29.9% |
2023年 | 43.4% | 49.5% |
ベースアップをおこない、給料が上がっている企業という情報は、転職を考えている求職者に好印象を与える可能性があります。優秀な人材が給料が高い転職先として検討するためにも、ベースアップをおこなう企業は、今後ますます増え続けていくことでしょう。
参考:令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況|厚生労働省
5. ベースアップをおこなう2つのメリット
ベースアップをおこなうメリットは、以下の2つです。
- 社員のモチベーションがアップする
- 採用活動をおこなう際にプラスの印象を求職者に与えられる
それぞれ解説します。
5-1. 社員のモチベーションがアップする
ベースアップをおこなうことで社員のモチベーションがアップします。
給与が上がることで、社員は今以上に仕事を頑張る気になり、企業としての成長にも大きくつながることでしょう。
5-2. 採用活動をおこなう際にプラスの印象を求職者に与えられる
採用活動をおこなう際に、プラスの印象を求職者に与えられる点も、ベースアップをおこなう大きなメリットです。
ベースアップをおこなうことは、求職者にとって以下のような好印象につながります。
- 資本力が高い
- 持続力のある事業を展開している
- 利益をきちんと社員にも還元している
上記のような好印象を求職者に与えられれば、優秀な人材も集まりやすくなるでしょう。ベースアップは自社の社員のみならず、採用活動においても重要な役割を担っているのです。
6. ベースアップをおこなう2つのデメリット
ベースアップをおこなうデメリットは、以下の2つです。
- 人件費が増える
- 社員のモチベーションを逆にさげるおそれがある
それぞれ見ていきましょう。
6-1. 人件費が増える
ベースアップをおこなえば、その分人件費が増加します。
また、詳しくは次の章で解説しますが、ベースアップをおこなってからのベースダウンは簡単にできません。
そのため、ベースアップをおこなうのであれば、現在の資金力や今後の会社としての成長を見込めるかなど、あらゆる点の考慮が求められます。
6-2. 社員のモチベーションをさげるおそれもある
先ほどベースアップで社員のモチベーションは上がると説明しましたが、ベースアップをおこなうことで、社員のモチベーションをさげるおそれもあります。
ベースアップは先述のとおり、全社員を対象におこなわれるものです。
そのため、会社に長く勤めている人や大きな業績をあげている人からすると、自分が正当に評価されている感じがせず、快く思えるものではありません。
ベースアップをおこなうのであれば、ベテランの社員や大きな業績をあげている社員などさまざまな人に配慮する必要があります。
7. ベースアップを実施する際の注意点
ベースアップを実施する際の注意点は、以下の2つです。
- 就業規則や労働協約の変更が必要となる
- ベースダウンする際は社員全員の同意が必要となる
それぞれ見ていきます。
7-1. 就業規則や労働協約の変更が必要となる
ベースアップを実施する際は、労働規則や就業協約の変更が必要です。例えば「賃金表」の改定が求められます。
賃金表とは、条件ごと(職能や職務、勤続年数、年齢、学歴など)の賃金支給額を定義した一覧のことです。この賃金表に、会社で決定した昇給額もしくは昇給率を反映させ、ベースアップ後の基本給を記載する必要があります。
就業規則や労働協約を変更する際は、過半数労働組合または労働者の過半数代表者の同意を得て、所轄の労働基準監督へ届出をおこなわなくてはなりません。また、就業規則や労働協約を変更した際は、社員に周知する必要があるので忘れずにおこないましょう。
7-2. ベースダウンする際は社員全員の同意が必要となる
ベースダウンする際は、社員全員の同意が必要です。これは厚生労働省が公開している「労働契約法」の第九条にその旨が記載されています。
そのため、安易にベースアップすることは禁物です。万が一、資金面などの理由からベースダウンせざるを得なくなった際に、社員全員からの同意を得なくてはなりません。
参考:労働契約法|厚生労働省
8. ベースアップを活用してよりよい会社にしよう
ベースアップは、社員の仕事へのモチベーションを向上させてくれます。また、採用活動をおこなう際にも、求職者にプラスの印象を与えられるでしょう。
ただし、ベースアップをおこなってからのベースダウンは簡単にできるものではありません。現在の資金力や今後の見通しを踏まえたうえで、ベースアップを本当に導入するべきか慎重に判断する必要があります。
ベースアップを上手に活用できれば、今まで以上に社員にとって働きがいのあるよい会社となることでしょう。
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