忌引き休暇とは?給料の支給や付与日数を解説
公開日: 2024.12.24 OHSUGI
「そもそも忌引き休暇ってなに?」
「忌引き休暇の付与日数や付与範囲は?」
「忌引き休暇中は給料の支給は必要?」
忌引き休暇について、上記の疑問をもつ人事労務の担当者もいるのではないでしょうか。
忌引き休暇は福利厚生の一環として、家族に不幸があった従業員に与えられる特別休暇の一種です。故人をいたみ送り出す猶予期間を与えることで、従業員へのケアや、ひいては離職防止にも役立ちます。
本記事では、忌引き休暇の概要や、適用範囲、続柄ごとの取得可能日数などを解説します。忌引き休暇が有給となるかどうかや、注意点についてもあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。
1. 忌引き休暇とは|親族が亡くなった際に取得する休暇
忌引き休暇とは、親族が亡くなった場合に取得する休暇です。
身内が亡くなると、単に悲しみやつらさを感じるだけでなく、通夜や葬儀の準備、役所への手続きなど、さまざまな作業に忙殺されます。忌引き休暇は、そのような従業員をねぎらいケアする目的で付与するものです。
忌引き休暇は年次有給休暇のように法律で決められた制度ではなく、規程は企業によって異なります。呼び名についても明確な決まりはなく、服喪休暇と呼ぶケースや、慶事とひとまとめにして慶弔休暇と呼ぶ企業もあります。
また、あくまで企業ごとの福利厚生の扱いであることから、そもそも忌引き休暇の制度を設けていない企業もあるでしょう。忌引き休暇のない企業の場合、従業員は必要に応じ、通常の有給休暇を消化するか欠勤のうえ、故人の葬儀や身辺整理をおこなうのが一般的です。
なお公務員については、人事院規則によって忌引き休暇が定められており、取得可能な続柄や日数に明確な決まりがあります。
2. 忌引き休暇は有給扱い?給料の支給について解説
忌引き休暇の制度を設けている場合、忌引き休暇が有給扱いとなるかどうかは、各企業で異なります。忌引き休暇は法令上定められた休暇制度ではなく、特別休暇(法定外休暇)であるため、給料の支給有無についても企業側が自由に設定可能です。
忌引き休暇中の給料の支給可否については、主に以下の3通りの扱いが考えられます。
- 忌引き休暇中は出勤しているものと扱い、給料も支給する
- 忌引き休暇中も出勤扱いではあるものの、給料は支給しない
- 忌引き休暇中は欠勤扱いとなり、給料も支給しない
忌引き休暇が有給扱いとならない企業の場合、年次有給休暇を消化のうえ休暇を取るケースもあります。
なお忌引き休暇の設定がある場合には、労働基準法で定められた年次有給休暇とは独立して取得が可能です。忌引き休暇を使った場合でも、年次有給休暇の残日数は減りません。
3. 忌引き休暇の適用対象となる親族の範囲
忌引き休暇は、2親等もしくは3親等までの親族が亡くなった従業員に対して適用するのが一般的です。何親等までを忌引き休暇の対象とするかは、企業ごとに異なります。
忌引き休暇の対象となりうる具体的な続柄は、以下のとおりです。
親等 | 続柄 |
親等なし(0親等) | 配偶者 |
1親等 | 父、母、子 |
2親等 | 祖父、祖母、孫、兄弟姉妹 |
3親等 | 曾祖父、曾祖母、ひ孫、おじ、おば、甥、姪 |
忌引き休暇は、従業員本人の血族のみならず、義理の父母など婚姻関係による姻族にも適用されるのが一般的です。企業にもよりますが、姻族の場合には適用可能な親等の範囲が血族より狭まる傾向が見られます。
なお、配偶者は本人と同列なため親等はありませんが、基本的にはほとんどのケースで忌引き休暇の対象です。
4. 忌引き休暇の付与日数は何日|続柄ごとに異なる
忌引き休暇の付与日数は、従業員と亡くなった方との続柄によって異なります。
続柄ごとの具体的な付与日数の目安は、以下の表のとおりです。
続柄 | 忌引き休暇の日数 |
配偶者 | 7~10日 |
父、母 | 7日 |
子 | 5日 ※7~10日付与されることもある |
祖父、祖母、兄弟姉妹 | 3日 |
孫 | 1日 |
曾祖父、曾祖母、おじ、おば、甥、姪、ひ孫 | 0~1日 |
義理の父母 | 3日 |
義理の祖父母、義理の兄弟姉妹 | 1日 |
上記以外の3親等内の親族 | 0~1日 |
一般的には、故人との関係性が深いほど忌引き休暇の付与日数が多くなります。必要な準備と手続きが多いことや、精神的なダメージが大きいことを勘案したうえでの措置です。
同様の理由から、義理の親族は、血族より忌引き休暇の付与日数が少ない傾向が見られます。例えば祖父母の場合、血族では3日が一般的であるのに対し、義理の祖父母は1日の忌引き休暇の付与が一つの目安です。
5. 忌引き休暇はいつから取得可能か
忌引き休暇は、故人が亡くなった当日、もしくは翌日から取得できるのが一般的です。ただし、通夜まで日数があく場合には、通夜当日からカウントすることもあります。
忌引き期間中に土日祝日などの休日がある場合には、休日中も休暇に含めることが多いです。例えば、月曜日から7日間の忌引き休暇を取得するケースでは、一般的には日曜日までが忌引き休暇で、翌週の月曜日から出社日となります。
忌引き休暇の日数の数え方についても、各企業によってまちまちです。なかには、休日を含めず取得可能なケースもあります。
6. 忌引き休暇の取得申請を受けた企業の対応
忌引き休暇の取得申請を受けた企業は、就業規則を確認のうえ、忌引き休暇の適用可否や、取得可能な休暇日数などを確認する必要があります。従業員が忌引き休暇を希望する場合には、以下のような項目を申請してもらうよう、事前に社内ルールづくりをしておきましょう。
- 故人が亡くなった日時
- 従業員と故人の続柄
- 希望する休暇開始日と休暇日数
- 葬儀の日程・場所・形式
- 連絡先
必要に応じ、死亡診断書や会葬礼状など、弔事があったことを証明できるものを後日提出してもらいます。各社の忌引き休暇規程に合わせ、必要な申請項目や書類を定めておきましょう。
弔電や供花を贈る場合には、申請の受理とともに手配を進めます。慶弔金制度を設けている企業であれば、あわせてその準備も必要です。
7. 忌引き休暇の4つの注意点
従業員が忌引き休暇を利用する場合には、企業側は以下の4点に注意が必要です。
- 忌引き休暇の適用範囲を明確化しておく
- 柔軟な対応を心がける
- 有給休暇との併用も考慮する
- 業務の引き継ぎや取引先への対応をおこなう
それぞれの具体的な内容は以下のとおりです。
7-1. 忌引き休暇の適用範囲を明確化しておく
まずは忌引き休暇の適用範囲について、あらかじめ明確化しておくよう徹底しましょう。
故人との続柄はもちろん、忌引き休暇が利用できる従業員種別を明確化しておかないと、後々のトラブルに発展する可能性があります。
例えば、正社員のみが忌引き休暇を取得可能で、パートやアルバイト、契約社員、派遣社員は利用できないなどの決まりを設けます。決定事項は、就業規則に忘れず記載しておきましょう。
7-2. 柔軟な対応を心がける
忌引き休暇を希望する従業員に対しては、なるべく柔軟な対応を心がけましょう。
危篤状態が続いていたようなケースを除き、訃報は突然訪れることも少なくありません。場合によっては、従業員の出社がままならないこともあるでしょう。
忌引き休暇の申請はひとまずメールで受理し、正式な手続きは後日おこなうような配慮が求められます。
十分な準備が取れないまま従業員が忌引き休暇を利用するケースについて、あらかじめ想定のうえ対策を立てておくことが大切です。
7-3. 有給休暇との併用も考慮する
忌引き休暇は、有給休暇との併用も考慮しておきましょう。
葬儀を遠方でおこなう場合には、移動に時間がかかり、忌引き休暇だけではまかなえない可能性もあります。また、与えられた忌引き休暇日数だけでは、従業員が不足を感じることもあるでしょう。
以上を勘案し、忌引き休暇と有給休暇を併用するケースにも対処が必要です。
場合によっては、忌引き休暇の対象外となる相手が亡くなった際にも、休暇の取得を希望する従業員が出てくる可能性があります。また、非正規雇用の社員であっても、家族に不幸があった際には休暇を希望するのが一般的です。
さまざまなケースにおいても、有給休暇の利用を考慮しておく必要があります。
7-4. 業務の引き継ぎや取引先への対応をおこなう
従業員が忌引き休暇を取得する際には、業務の引き継ぎや取引先への対応にも配慮しなければなりません。
仕掛中の業務内容や対応の優先度を把握し、代わりに対応する社員の割り振りを現場に指示する必要があります。とりわけ取引先や顧客とのアポへの対処には、十分な配慮が求められます。
このような不測の事態は、忌引き休暇のみならず、従業員自身の急病などの際にも発生するものです。個人に任せきりにせず、あらかじめチーム体制でカバーしあえる社内体制の整備が肝要です。
8. 忌引き休暇制度を整備し従業員をサポートしよう
忌引き休暇は、身内に不幸があった従業員に与えられる特別休暇制度です。日数や適用範囲など付与の条件は企業の采配次第で、有給・無給についても決まりはありません。
忌引き休暇を活用すれば、つらい状況にある従業員の一助となります。忌引き休暇制度を整備し、従業員をサポートしましょう。
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