法定内残業と法定外残業の違いは?具体例を交えて解説
更新日: 2024.10.31
公開日: 2021.11.15
OHSUGI
法定内残業とは、所定労働時間は超過するものの、法定労働時間の範囲内の労働です。
一方、法定外残業とは、所定労働時間・法定労働時間、どちらも超過した労働のことをいいます。
この記事では、人事担当者向けに、2つの残業の違いについて、具体例を交えながら解説します。
残業時間は労働基準法によって上限が設けられています。
しかし、法内残業やみなし残業・変形労働時間制などにおける残業時間の数え方など、残業の考え方は複雑であるため、どの部分が労働基準法における「時間外労働」に当てはまるのか分かりにくく、頭を悩ませている勤怠管理の担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは労働基準法で定める時間外労働(残業)の定義から法改正によって設けられた残業時間の上限、労働時間を正確に把握するための方法をまとめた資料を無料で配布しております。
自社の残業時間数や残業の計算・管理に問題がないか確認したい人は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 法定内残業と法定外残業の違いは?
残業には、割増賃金が必要ない「法定内残業」と、割増賃金の支払いが法律で義務付けられている「法定外残業」の2種類があります。違いについて詳しく説明していきます。
1-1. 法定内残業とは
法定内残業とは、所定労働時間は超えているものの、法定労働時間の範囲内の残業です。
法内残業、法定時間内残業、所定時間外労働などとも呼ばれます。具体的には、1日8時間、1週間40時間を超えない範囲で行われる残業を指します。このような労働は、企業としても管理がしやすく、一般的には従業員への負担も比較的軽いとされています。
①所定労働時間
会社が独自に定める労働時間のことです。
具体的には、就業規則や労働契約書などに記載されている始業から就業までの時間から、休憩時間を引いた時間です。
なお、所定労働時間は法定労働時間の範囲内である必要があります。法定労働時間は1日8時間、1週間40時間を基本とし、これを超える場合は残業として扱われます。この所定労働時間を管理することは、企業が法律を遵守し、従業員の労働環境を整えるために重要です。
また、所定労働時間を基に算出された労働時間が法定内残業と法定外残業にどのように分かれるかを理解することで、透明性のある労務管理が実現できます。
②法定労働時間
労働基準法第32条第1項に規定される労働時間の限度のことで「1日8時間、1週40時間」までとなります。[注1]
労働基準法上、法定労働時間の範囲内の労働については、割増賃金の支払い義務は発生しません。
そのため、法定内残業に対して、割増した残業代を支払うかは、会社ごとの判断に委ねられます。賃金計算の際は、事前に就業規則などを確認しましょう。
また、所定労働時間=法定労働時間とは限らない点にも留意しておく必要があります。
[注1]e-Gov法令検索|労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
1-2. 法定外残業とは
法定外残業とは「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超過した残業のことです。
法定外残業以外にも、法外残業や法定時間外労働などとも呼ばれています。
法定労働時間を超過した労働には、労働基準法上、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。なお、法定外残業をするには会社と従業員とで36協定を締結している必要があります。36協定を結んでいる場合であっても、原則認められる法定外残業時間は月45時間、年360時間です。
本章で解説した内容は、次の章で解説する具体例や残業時間の上限規制について考えるうえで重要な知識になります。そこで当サイトでは、残業管理に関する定義と法改正によって設けられた上限規制について解説した資料を無料で配布しております。残業管理に関して不安な点がある方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
2. フレックスタイム制における法定内残業は?
従業員が始業時間、終業時間を任意で設定できるフレックスタイム制であっても法定内残業、法定外残業は存在します。残業によってフレックスタイム制における実際の労働時間の合計が所定労働時間を超えてしまう可能性があります。しかし、法定労働時間内であれば法定内残業として扱われます。
フレックスタイム制を導入している残企業では、従業員は自分のライフスタイルや業務の進捗に応じて柔軟に働くことができるメリットがありますが、所定労働時間を超えて働く際のルールを明確にしておくことが重要です。
法定外残業が発生する場合、企業は労働者に対して法定の割増賃金を支払う必要があり、適切な勤怠管理が求められます。また、フレックスタイム制を活用することにより、適切な労働時間管理ができているか定期的に見直すことで、従業員の健康を守り、生産性を向上させることが可能です。
企業は法定内残業と法定外残業の違いを理解し、フレックスタイム制度を効果的に活用することが、持続可能な働き方を実現する上で役立ちます。
3. 法定内残業と法定外残業の具体例
実労働時間は同じでも、所定労働時間の違いにより、残業が発生するか否かが分かれます。
所定労働時間が6時間と8時間の場合を例に、法定内残業と法定外残業の違いを解説します。
3-1. 9:00~18:00勤務、所定労働時間6時間の場合
所定労働時間6時間、実労働時間8時間のケースでは、所定労働時間を超えた2時間が「法定内残業」となります。
残業はしているものの、法定労働時間の範囲内に収まるため、この場合、割増賃金の支払いは必要ありません。
なお、就業規則で個別に定めている場合は、そちらに従います。
09:00~12:00→所定労働時間(3時間)
12:00~13:00→休憩時間(1時間)
13:00~16:00→所定労働時間(3時間)
16:00~18:00→法定内残業(2時間)
3-2. 9:00~18:00勤務、所定労働時間8時間の場合
所定労働時間8時間、実労働時間8時間のケースでは、所定労働時間・法定労働時間、共に超過していません。
そのため、どちらの残業も発生しません。
09:00~12:00→所定労働時間(3時間)
12:00~13:00→休憩時間(1時間)
13:00~18:00→所定労働時間(5時間)
3-3. 9:00~19:00勤務、所定労働時間6時間の場合
実労働時間9時間のため、所定労働時間を超えた2時間と、法定労働時間を超えた1時間を、それぞれ、法定内残業・法定外残業として処理します。
このケースでは、法律上、法定外残業1時間に25%の割増賃金が必要です。
09:00~12:00→所定労働時間(3時間)
12:00~13:00→休憩時間(1時間)
13:00~16:00→所定労働時間(3時間)
16:00~18:00→法定内残業(2時間)
18:00~19:00→法定外残業(1時間)
3-4. 9:00~19:00勤務、所定労働時間8時間の場合
実労働時間9時間のうち、1時間を法定外残業として25%の割増賃金を支払います。
なお、所定労働時間が8時間のケースでは、法定内残業は発生しません。
09:00~12:00→所定労働時間(3時間)
12:00~13:00→休憩時間(1時間)
13:00~18:00→所定労働時間(5時間)
18:00~19:00→法定外残業(1時間)
4. 法定内残業と法定外残業の割増率
法定内残業は労働基準法上、割増賃金の支払いは必要ありません。
ただし、法定内残業でも、深夜労働の時間帯や法定休日の出勤がった場合は、別途割増手当が必要です。また、法定外残業と上記手当が重なった際は、割増賃金率を合計して処理します。時間外労働の割増について詳しくみていきましょう。
4-1. 法定内残業の割増率
法定内残業は労働基準法上、割増賃金の支払い義務はなく、所定労働時間を超過した分だけ、通常の賃金を支払えば問題ありません。
ただし、会社によっては就業規則や賃金規程で、独自に割増賃金の支払いを規定しているケースもありますので、実務の際は上記を確認しましょう。
なお、法定内残業と、深夜労働や法定休日労働が重複した場合は、その分の割増賃金の支払いは必要です。
4-2. 法定外残業の割増率
1日8時間、1週40時間を超える法定外残業には、法律上、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
また、深夜労働や法定休日労働と重複した際は、その分も合わせて割増賃金を支払います。
4-3. 月60時間を超える法定外残業の割増率
法定時間外残業が月60時間を超えた場合、超えた部分につき、50%以上の割増賃金が必要です。
例えば、当月の残業時間が75時間の場合は以下のようになります。
- 60時間分→25%の割増
- 15時間分→50%の割増
なお、中小企業は経過措置として、2023年3月末までは割増賃金率25%以上に据え置かれていました。しかし、2023年4月1日からは中小企業であっても、月60時間を超える法定外残業には50%以上の割増賃金が必要になっています。
4-4. 深夜労働(午後10時~翌日午前5時までの労働)の割増率
午後10時から翌日午前5時までの労働は、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
深夜労働の割増賃金は、シフト制で上記時間帯に働いたときだけでなく、残業が深夜から早朝に及んだときも該当します。
また、法定休日労働の割増賃金とも重複します。
4-5. 法定休日労働の割増率
労働基準法では法定休日を「毎週1日か、4週を通じて4日以上」と定めています。
法定休日の労働では35%の割増賃金が必要です。
なお残業時間としては計算されません。
ただし、深夜労働の時間帯には別途25%以上の割増賃金が必要です。
4-6. 法定外休日労働の割増率
会社が個別に定める「法定外休日」の労働は、基本的には残業として処理します。
ただし、週の労働時間が既に40時間を上回るなら、法定外残業となり、割増賃金の支払いも必要です。
なお、労働基準法の定める休日ではないため、35%以上の割増賃金の支払いは不要です。
4-7. 各種割増賃金が重複した場合の割増率
最後に、各種手当が重複した際の割増賃金率を紹介します。
・法定外残業+深夜労働→50%以上
・月60時間を超える法定外残業+深夜労働→75%以上
・法定休日労働+深夜労働→60%以上
5. 法定内残業と法定外残業の違いを理解し残業代を正確に計算しよう
残業するにあたって、法定内か法定外により、割増賃金の扱いが異なります。そのため、所定労働時間が短く、法定内残業が発生する場合は、処理方法を就業規則などで確認しましょう。
また、法定外残業では25%以上の割増賃金のほか、深夜・法定休日の割増が重複しないかも、十分に確認しましょう。
残業時間は労働基準法によって上限が設けられています。
しかし、法内残業やみなし残業・変形労働時間制などにおける残業時間の数え方など、残業の考え方は複雑であるため、どの部分が労働基準法における「時間外労働」に当てはまるのか分かりにくく、頭を悩ませている勤怠管理の担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは労働基準法で定める時間外労働(残業)の定義から法改正によって設けられた残業時間の上限、労働時間を正確に把握するための方法をまとめた資料を無料で配布しております。
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