時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説 | jinjerBlog

時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説

権利

時季変更権とは、従業員の年次有給休暇を別の時季に変更できる権利のことです。
ただし、有給休暇は基本的に、従業員の自由な取得が求められるため、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、時季変更権の行使が認められています。

この記事では、人事担当者向けに、時季変更権とは何か、行使するための条件、注意点を解説します。

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1.時季変更権とは、会社が従業員の年次有給休暇取請求日を変更できる権利のこと

有給休暇

時季変更権とは、会社が従業員の希望した年次有給休暇請求日(取得時季)を一定の条件下で、変更できる権利のことです。

通常、年次有給休暇は「労働者が希望する日に与えなくてはならない」と、労働基準法第39条5項により定められています。[注1]

しかしながら、同条文ただし書き以降に、「使用者は、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合、他の時季に有給休暇を与えることができる」としています。これが、時季変更権の根拠となります。

とはいえ、年次有給休暇は労働者の自由な請求が優先される権利であることに変わりはなく、時季変更権の行使は慎重に進める必要があります。
また、正当な行使であっても、従業員に時季変更の必要性を説明することが大切です。

[注1]厚生労働省.「労働基準法第39条(年次有給休暇)について」,(参照 2021-10-21)

2.時季変更権を行使するための条件

条件

時季変更権は、「事業の正常な運営を妨げる場合」のみ、行使できる権利です。

具体的には、

・事業所の規模
・業務内容
・当該従業員の担当する職務内容、性質
・職務の繁閑
・代替要員確保の難しさ
・有給休暇を同時季に指定した従業員の人数
・これまでの労働慣行

これらの条件から総合的に判断します。

では具体的に、上記に該当すると考えられるケースを解説します。

2-1.代替人員を確保できない場合

時季変更権を行使するためには、当該従業員の所属する課や係の中で「代替人員を確保するのが困難である」という事実が必要です。

例えば、当該従業員しかできない業務があり、なおかつその期日が目前に迫っている。そのような状態で、休暇希望日直前に長期の有給休暇取得を申し出された場合は、「事業の正常な運営を妨げる」ものと判断できるでしょう。

2-2.同時季に、有給休暇取得者が重なった場合

繁忙期の特定の日に、有給休暇取得者が重なった場合も、「事業の正常な運営を妨げる」ものとして判断されやすいです。

ただしこの場合も、予備人員を確保しないと業務が滞ること、なおかつ人員の確保ができないこと、業務の具体的な支障が明らかであること、などが求められます。

例えば運送業なら、夏季繁忙期中、欠員が出れば正常な業務の運営に支障を来たすことは明らかでしょう。
さらに、大型トラックの運転ができる代替従業員の確保は困難であることも明白です。
この場合、時季変更権の行使理由として該当すると考えられます。

2-3.研修など、本人の代わりを立てられない場合

有給休暇申請があった日に、当該従業員が参加しなくてはいけない研修や訓練があった際も、時季変更権を行使する正当な理由として判断されやすいです。

研修では、代替人員を立てても、「当該従業員の代わりに知識や技能を習得できる訳ではない」ためです。

ただし、欠席しても知識や技能の習得に不足が認められない研修では、時季変更権の行使理由として、認められない可能性があります。

2-4.長期間連続する有給休暇を取得した場合

従業員が1ヵ月など、長期かつ連続の年次有給休暇を申請すれば、代替人員の確保は困難です。そのため、事業の正常な運営を妨げるものとして判断されやすい傾向にあります。

特に、複数の業務を担当している従業員から、事前に十分な相談もなく、一方的に長期有給休暇の取得を申し出されれば、時季変更権の行使も止むを得ません。その際は、連続の有給休暇ではなく、前後2週間ずつに分けて取得させるなどの対処が可能となります。

3.時季変更権の行使における注意点

ポイント

年次有給休暇は労働者の権利であるため、基本的には自由な取得が優先されます。そのため、合理的な理由のない時季変更権の行使は認められないばかりでなく、リスクがともなう点にも注意しましょう。

3-1.繁忙期のみを理由とした、時季変更権の行使は認められない

「事業の正常な運営を妨げる場合」といっても、「繁忙期であるため」などの漠然とした理由では時季変更権の行使は認められません。

あくまでも、欠員がでれば業務が回らないこと、代替人員が確保できないこと、他の従業員と有給休暇の取得を調整したことなどの事実が必要となります。

なお、繁忙期を問わず忙しかったり、常時人手が不足したりしているケースでは、時季変更権は行使できません。
上記状態で時季変更権を認めれば、いつまでも従業員が有給休暇を取得できないためです。

3-2.退職時など、時季変更権を行使できないケースがある

時季変更権は、下記条件に当てはまる従業員に対しては行使できません。

・当該従業員の有給休暇が時効で消滅するとき。
・退職・解雇予定日が決まっており、予定日までの期間以上の有給休暇が残っているとき。
・会社の倒産などにより、時季変更権を行使すると年次有給休暇が消化できないとき。
・産後休業・育児休業の期間に重なる時季変更権の行使。
・年次有給休暇の計画的付与制度を利用したとき。

時季変更権は有給申請があった際、速やかに行使すること

時季変更権は、有給休暇取得の申請があった際、速やかに行使しなければいけません。
例えば、従業員から1ヵ月以上前に有給休暇の申請があったにもかかわらず、休暇直前に時季変更権を行使した場合、違法と判断される可能性があります。

3-3.時季変更権を行使する理由を明確にする

時季変更権を行使する際は、書面に簡潔に変更理由を書き、交付するだけでも問題ありません。
しかしながら、従業員の心情や、その後のモチベーション低下にも配慮し、なぜ変更が必要であるか、理解できるよう説明するほうがよいでしょう。
理由に納得できない場合、訴訟に発展する可能性も否めないため、十分な配慮が必要です。

3-4.時季変更権の乱用は罰則の恐れがある

時季変更権はあくまでも、業務に支障のある場合のみ行使できます。
そのため、時季変更権と称し、正当な理由なく年次有給休暇の取得を認めないときは、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金を科される恐れがあります。(労働基準法第119条、39条)

3-5.従業員が時季変更権を拒否した場合、無断欠勤として処理する

正当な理由のある時季変更権に対して従業員が従わず、当日欠勤した際は無断欠勤(無給)として処理できます。
ただし、時季変更に従わなかったことを理由として懲戒処分を下す際は、下記を考慮し、より慎重な対応が求められます。

・欠勤による業務への支障の程度。
・実際の欠勤日数。
・これまでの当該従業員の勤務態度や懲戒の有無。
・その他、過去の判例や社会の対応など。

特に、数日の欠勤に対して「降格」など重すぎる懲戒処分を下せば、無効となる可能性が高くるため慎重に判断しましょう。

4.時季変更権は、「事業の正常な運営を妨げる場合」のみ行使できる

仕事をする女性

年次有給休暇は従業員の自由な取得が優先されます。
そのため、企業が努力しても回避できないような、「事業の正常な運営を妨げる場合」のみ時季変更権は行使できます。

有給休暇の変更はトラブルにもつながりやすいため、行使する際は、従業員との話し合いにより進めるとよいでしょう。

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