年金制度改正とは?2024・2025年の変更点をわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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年金制度改正とは?2024・2025年の変更点をわかりやすく解説

「年金制度は何のために改正されるのか」

「年金制度改正で、2024年に施行される内容を知りたい」

経理担当者の中には、上記の悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

年金制度は、基本的に5年に1回のペースで改正されます。複数の制度に関する変更内容が公示されますが、順次施行されていくため、今現在対策が必要なものがわかりにくい状況です。

本記事では、年金制度改正とは何か2024年の変更点や2025年以降の制度改正の方向性についてわかりやすく解説します。

改正内容を具体的に把握していれば、自社が対応するべき内容もわかりやすいため、ぜひ最後までお読みください。

1. 年金制度改正とは

年金制度は、定期的に改正される決まりです。改正内容は、厚生労働省による財政検証結果をもとに、以下のような事項を踏まえて検討されます。

  • 経済の変化
  • 平均寿命の長期化
  • 家族構成やライフスタイルの変化

今後は、厚生労働省の「令和6年財政検証結果を踏まえた今後の年金制度改正の議論について」をもとに、改正点が検討される見込みです。

2. 年金制度改正の背景

年金制度の改正が必要となる背景には、以下3つのような現象が進んでも、高齢者の経済基盤を安定させる必要があることが挙げられます。

  • 現役世代の人口の急速な減少
  • 少子高齢化による人手不足の深刻化
  • 健康寿命の長期化による年金受給者の増加

さらに、共働き世帯の増加や60歳以上の高齢者による就業の継続など、多様化する働き方に合わせた年金制度にしなければなりません。

現状に合わせて年金制度が改正されなければ、高齢者の生活を社会全体で支えることは難しくなるでしょう。

3. 年金制度改正の内容

2024年から改正されるまたはされている年金制度は、以下の3つです。

  1. 被用者保険の適用対象となる企業規模の拡大
  2. 在職老齢年金制度の調整額の変更
  3. iDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出できる上限額の変更

3-1. 被用者保険の適用対象となる企業規模の拡大

2024年10月から、従業員が50人を超える事業者に対して、短時間労働者に対する被用者保険の適用が義務付けられます。

2024年9月現在の現行法では、従業員が99人以下の小中規模法人において、短時間での就業者には被用者保険加入の義務はありません。

新たに被用者保険の適用の対象となる要件は、以下のとおりです。

  • 月額の賃金が8.8万円以上(年収が106万円以上)
  • 1週間あたりの労働時間が20時間以上
  • 2ヵ月以上継続して就業する見込み

なお、学生は要件を満たしている場合でも、被用者保険の適用対象になりません。

参考:年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|厚生労働省

参考:年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要|厚生労働省

3-2. 在職老齢年金制度の調整額の変更

2024年4月より60歳以上で就労を継続しながら、年金を受給する在職老齢年金の調整額が50万円に変更されています。

2023年度までの調整額は、48万円と決まっていました。調整額が50万円に引き上げられたことにより、厚生年金の給付額が減額される高齢者が少なくなります。

就労による所得と年金の合計が調整額を超えた場合に減額されるのは、厚生年金で基礎年金は通常どおり給付される仕組みです。

3-3. iDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出できる上限額の変更

2024年12月より、企業型DCとDBなどほかの年金制度を組み合わせている場合の、iDeCOの拠出限度額が変わります

2024年9月現在と年金制度改正後の上限額の違いは、以下の表のとおりです。

加入している国民年金 企業型DCとDBなどほかの制度を併用
2024年9月現在の拠出の上限額 iDeCo分:1.2万円/月(企業型DCの掛金との合計で上限2.75万円/月)

・DBなどほかの制度分:2.75万円/月

2024年12月以降の拠出の上限額 iDeCo分:2万円/月(企業型DCおよびDBなどほかの制度との合計で上限5.5万円/月)

参考:企業型DC、iDeCoの拠出限度額にDB等の他制度ごとの掛金相当額を反映(2024年12月1日施行)|厚生労働省

参考:iDeCoの加入者、加入ご検討中の皆さまへ|厚生労働省

4. 年金制度改正による従業員へのメリット

年金制度改正の対象となる従業員へのメリットを以下の観点から解説します。

  1. 被用者保険の適用範囲の拡大によるメリット
  2. 在職老齢年金制度の調整額の変更によるメリット
  3. iDeCoの拠出できる上限額の変更によるメリット

4-1. 被用者保険の適用範囲の拡大によるメリット

適用範囲の拡大により、パートなど短時間での就労者が被用者保険に加入するメリットは、以下の6つです。

  • 年金の受給金額が増える
  • 保険料が事業主との折半になる
  • 傷病手当金や出産手当金の給付を受けられる
  • 障害を持った場合は、障害基礎年金と障害厚生年金の両方が給付される
  • 万が一、死亡した場合は、家族が遺族厚生年金を受け取れる
  • 扶養を外れるため年収160万円を超えないよう調整せずに働ける

これまでよりも年金による保証が手厚くなるほか、短時間でも扶養範囲を気にせずに働けるようになります。

参考:年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|厚生労働省

4-2. 在職老齢年金制度の調整額変更によるメリット

在職老齢年金制度の調整額の変更により、厚生年金を減額されない従業員が増えます。

2023年度まで労働による収入と厚生年金の合計が48万円を超える従業員は、年金の給付が減額されていました。

調整額の引き上げで、収入と厚生年金の合計が48〜50万円の60歳以上の従業員は、収入が減らないメリットが得られます

4-3. iDeCoの拠出できる上限額の変更によるメリット

iDeCoの掛金の拠出限度額の変更で従業員が得られるメリットと理由は、以下の表のとおりです。

メリット メリットになる理由
節税効果が大きくなる ・掛金の全額が所得から控除できる

・拠出額が増えれば控除額も大きくなるため、住民税と所得税を抑えられる

受け取り金額が増える可能性がある ・iDeCoの商品で運用するための元本が増える

・運用で得た利益は非課税のため、資産が純増する

定年退職する前も節税のメリットを大きくできる点は、従業員にとってiDeCoに加入する魅力といえるでしょう。

5. 年金制度改正法の施行で企業がしておくべき準備

年金制度改正法の施行に備えて、企業が準備するべき事項は、以下の3つです。

  1. 年金制度の改正内容の把握と対象の従業員への説明
  2. 各種届出の作成と提出
  3. 給与計算システムの改定準備

どのような対策が必要か、詳しく説明します。

5-1. 年金制度の改正内容の把握と対象の従業員への説明

まずは、厚生労働省のサイトや公布されている情報を隅々まで確認し、改正内容を把握しましょう。次に、改正は自社も対象になるのか、なる場合は対象者がいるか確認します。

年金制度改正内容については、施行後に何がどのように変わるのか、雇用主から従業員に説明が必要です。

5-2. 各種届出の作成と提出

年金制度改正で対象となる従業員がいる場合は、届出の提出などの対応が必要になります。2024年に改正される年金制度で必要な届出は、以下の表のとおりです。

届出が必要なケース 対応する内容
短時間労働者が新たに被用者保険に加入する場合 日本年金機構に被保険者資格取得届を提出
iDeCoの拠出上限額を変更する場合 取扱い金融機関に加入者掛金額変更届を提出

被保険者資格取得届は、日本年金機構のサイト「電子申請・電子媒体申請(事業主・社会保険事務担当の方)」で、電子申請できます。

電子申請を利用しない場合は、紙媒体で届出の提出が必要です。届出の雛型は、日本年金機構のサイト「従業員を採用したとき」から、ダウンロードします。

加入者掛金額変更届は、取扱い金融機関に直接問い合わせが必要です。

5-3. 給与計算システムの改定準備

年金制度の改正内容によっては、給与から控除する額が変更となる場合があります。改正の施行後に給与計算が正しくできない事態にならないよう、事前に給与計算システムの改定準備が必要です。

給与計算システムの改定については、間違いがないよう専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。

6. 年金制度改正の今後の方向性

今後の年金制度改正の内容は、厚生労働省による財政検証結果を踏まえて議論されます

2024年9月現在、すでに年金制度改正について議論されており、2025年に新たな年金制度改正法が公布される見込みです。

2025年以降の年金制度改正の方向性は、厚生労働省が以下のように公表しています。

  • 働き方に中立的な制度の構築
  • ライフスタイル等の多様化への対応
  • 平均寿命の延伸や基礎年金の調整期間の長期化を踏まえた、高齢期の経済基盤の安定、所得保障・再分配機能の強化
  • 業務運営改善関係・その他所要の事項への対応

引用:令和6(2024)年財政検証結果を踏まえた今後の年金制度改正の議論について|厚生労働省

7. 年金制度の改正内容を理解して万全に準備しよう!

年金制度は少子高齢化や多様化する働き方・ライフスタイルに対応するため、定期的に改正される決まりです。

事業者は、厚生労働省が公布する内容やサイトをチェックし、施行に備える必要があります。2024年度の年金制度改正において、事業者が準備するべき事項は、以下の3つです。

    1. 年金制度の改正内容の把握と対象の従業員への説明
    2. 各種届出の作成と提出
    3. 給与計算システムの改定準備

年金制度の改正は給与からの控除額の計算にも影響するため、変更点を正しく理解し、施行されるまでに体制を整えましょう

OHSUGI

OHSUGI

クラウド型勤怠管理システムジンジャーの営業、人事向けに採用ノウハウを発信するWebメディアの運営を経て、jinjerBlog編集部に参加。営業時代にお客様から伺った勤怠管理のお悩みや身につけた労務知識をもとに、勤怠・人事管理や給与計算業務に役立つ情報を発信しています。

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