給与辞令とは?昇給辞令との違いや書式・テンプレートを解説
更新日: 2024.12.23
公開日: 2024.12.23
OHSUGI
「給与辞令は何のためにあるの?」
「給与辞令と昇給辞令は何が違うの?」
上記の疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
給与辞令・昇給辞令は、従業員にとって給与額や支給条件、昇給・降給理由などを確認できる通知書です。給与に対する会社の姿勢や評価が伝わり、社員のモチベーション維持を図れるため、上手に活用しましょう。
本記事では、給与辞令と昇給辞令の違いや必要な理由、記載方法などについて解説します。そのまま使うことができる書式・テンプレートも紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
1. 給与辞令(賃金変更通知書)とは
給与辞令とは、社員に対して給与額や支給条件を正式に通知する文書です。一般的には昇給、降給、または異動に伴う給与の変更時などに発行されます。
給与辞令の役割は給与の透明性を確保し、従業員との間で合意を形成することです。一般的には以下の情報が含まれます。
- 基本給や各種手当などの具体的な支給額
- 支給開始日(改定がある場合)
- 賞与などの支給基準や条件
- その他の特記事項(特別手当の適用など)
給与辞令は、会社から従業員に直接手渡されるか、電子メールなどで配布することが一般的です。従業員にとっては給与条件の確認と、異議がある場合の申し立ての機会となります。
2. 給与辞令と昇給辞令の違い
給与辞令と昇給辞令の違いは以下のとおりです。
給与辞令 | 昇給辞令 | |
---|---|---|
発行目的 | 給与全般の変更を通知 | 昇給に関する通知 |
主な発行タイミング | 昇給・降給、異動、給与制度変更時 | 昇給決定時のみ |
記載内容 | 基本給、手当、賞与、支給条件 | 昇給額、改定後の基本給、適用日 |
給与辞令は、従業員に対して給与額や支給条件を通知する文書です。昇給や降給だけでなく、異動・転勤、給与制度変更など、給与に影響が生じるすべての場面で発行されます。
一方で昇給辞令は、昇給が決まった従業員に対して、昇給内容を伝えるための文書です。主に人事評価や業績評価に基づいて昇給が決まった際に発行されます。
給与辞令は給与に関するあらゆる変更を通知する文書であるのに対し、昇給辞令は通知対象が昇給に限定される点が特徴です。
3. 給与辞令や昇給辞令は義務?必要な理由を解説
給与辞令や昇給辞令の発行は、企業にとって義務ではないものの、以下の理由から推奨されています。
- 給与の透明性を確保するため
- 法的なリスクを回避するため
- 従業員のモチベーション維持のため
それぞれ、詳しく解説していきます。
3-1. 給与の透明性を確保するため
給与辞令が必要な理由として、給与の透明性を確保することが挙げられます。給与辞令や昇給辞令は、従業員に給与額や条件を明示する手段です。
給与は従業員にとって非常に重要で、金額の根拠や変動理由が曖昧だと、誤解や不満が生じやすくなります。給与辞令・昇給辞令を発行することで、給与額や支給条件が明示され、従業員が内容を正しく理解することが可能です。
例えば、昇給辞令を発行しないと「どのような基準で昇給額が決まっているのか不明だ」と不満を感じ、離職につながる可能性もあるでしょう。
給与の透明性を確保するためには、給与辞令や昇給辞令によって詳細を明示することが重要です。
3-2. 法的なリスクを回避するため
給与変更の際に適切に通知をおこなうことで、法的なリスクを回避し、従業員とのトラブルを未然に防ぐ効果があります。
給与は労働契約の一部であり、変更がある場合には事前通知や合意が必要です。一方的な給与の変更は、従業員から「不当な扱い」と捉えられ、労働審判などの法的手段に発展する可能性もあります。
また、給与辞令や昇給辞令は、給与変更の説明・同意に関する証拠書類の一つです。辞令を作成することで、給与変更に伴うトラブルを防ぎ、従業員との信頼関係を維持できます。
3-3. 従業員のモチベーション維持のため
給与辞令・昇給辞令を発行することで、従業員のモチベーションを維持し、働きがいや成長意欲の向上につながります。
給与や昇給は、従業員にとって努力や成果が評価された証です。特に昇給辞令は、企業が従業員の成果をしっかりと評価していることを示し、感謝を直接伝える機会にもなります。
一方、昇給辞令がない場合、昇給があっても従業員が評価の根拠を理解できないため、不満や不安が残り、モチベーションが下がることが考えられるでしょう。
給与辞令や昇給辞令は、給与が正当に評価に基づいていることを従業員に伝え、働く意欲を高める重要な手段です。特に昇給辞令はモチベーションの維持・向上のためにも、欠かせないものといえるでしょう。
4. 給与辞令・昇給辞令はいつ交付する?タイミング・通知方法
給与辞令や昇給辞令は、次のようなタイミングで交付するケースが多いです。
- 昇給や降給が決定したとき
- 異動や転勤が決まったとき
- 給与制度を変更するとき
交付期限に法的な定めはありません。ただし、従業員と企業の間でのトラブルを防止するためにも、変更後の給与を支払う1ヵ月前には通知しておくことが望ましいでしょう。
また、給与辞令・昇給辞令の通知方法は、以下のように対象者本人が確実に内容を確認できる方法が望ましいです。
- 直接手渡し
- 電子メール
- 社内システム
- 郵送
なお、給与辞令・昇給辞令は機密性の高い個人情報です。ファイルにパスワードを設定する、社内システムでは閲覧制限をかけるなど、個人情報が漏洩しないよう注意しましょう。
給与辞令や昇給辞令はスケジュールに余裕を持ち、対象者のみが確実に確認できる方法で通知することがポイントです。
5. 給与辞令・昇給辞令の記載項目
給与辞令・昇給辞令の一般的な記載項目は以下のとおりです。
記載項目 | 記載例 |
---|---|
発令日 | 令和6年4月1日 |
対象者の氏名・所属部署・社員番号など | 山田 太郎(社員番号:12345) |
新しい給与の内訳 | 基本給:270,000円
役職手当:30,000円 通勤手当:10,000円 |
適用開始日 | 令和6年4月1日 |
変更理由(記載が必要な場合のみ) | 2023年度の人事評価に基づく昇給 |
担当者の署名・押印 | 人事部 部長 佐藤一郎(署名・押印) |
上記の項目を明確に記載することで、従業員が給与内容を理解しやすくなります。
なお、給与辞令や昇給辞令に変更理由を明記することはほとんどありません。変更理由を記載するのは、特に説明が必要なケース(業績不振による一時的な減給や、給与制度変更など)に限られます。
6. 給与辞令・昇給辞令の書式・テンプレート
給与辞令と昇給辞令の一般的な書式・テンプレートを以下の流れで紹介します。
- 給与辞令の書式・テンプレート
- 昇給辞令の書式・テンプレート
6-1.給与辞令の書式・テンプレート
給与辞令を作成するときは、以下の書式・テンプレートを参考にしてください。
令和◯年◯月◯日(発令日)給与辞令
◯◯ ◯◯殿(受令者) 令和◯年◯月分給与より、下記のとおり月額給与を支給します。(適用開始日)
(基本給や手当の額) 以上 株式会社◯◯◯◯ 代表取締役(発令者) |
6-2.昇給辞令の書式・テンプレート
昇給辞令を作成するときは、以下の書式・テンプレートを参考にしてください。
令和◯年◯月◯日(発令日)昇給辞令
◯◯ ◯◯殿(受令者) 令和◯年◯月分給与より、下記のとおり月額給与を支給します。(昇給日)
(基本給や手当の額) 以上 株式会社◯◯◯◯ 代表取締役(発令者) |
7. 給与辞令・昇給辞令で従業員のモチベーションを高めよう
給与辞令や昇給辞令は、給与の変更を従業員に伝えるだけでなく、会社からの評価や期待を示す手段の一つです。特に昇給辞令は、従業員の成果や努力を企業がしっかりと認識し、評価していることを伝える機会となります。
給与辞令や昇給辞令を適切なタイミングで交付することで、従業員のモチベーションが向上し、離職率の低下やパフォーマンスの向上につながるでしょう。
給与辞令や昇給辞令を活用して、従業員がやりがいを持って働ける環境を整備しましょう。
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