職務とは?任務・職責との違いや具体例を詳しく紹介
更新日: 2024.11.20
公開日: 2023.5.29
OHSUGI
職務という言葉は「業務」や「任務」と比べると、耳にしたり使ったりする機会が少ない言葉です。しかし、職務経歴書や職務分掌、職務手当などの用語を見るとわかるように、個人の仕事内容を把握するためには必要不可欠な言葉です。そのため、担当者は類語との違いを正確に知り、情報を上手に整理することが求められます。
本記事では、職務の意味や従業員に理解させるメリット、職務の種類の具体例などを解説します。
人事評価は、従業員のモチベーションや生産性に直結するため、正しく制度化され運用されていることが欠かせません。労働人口の減少が問題視される昨今では、優秀な人材を採用し定着させること、従業員エンゲージメントを高めることが、企業の成長に繋がるためです。
しかしながら「工数がかかる割には、人事評価をうまく制度化できていない」「制度自体はあるけれど、評価結果を活かせていない」」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 職務とは?
職務とは、会社や団体などの組織の中で、1人の従業員が担う務めを指します。
例えば、よりよい人材を確保して会社の発展に貢献する、営業で取引先を増やして利益を上げるなど、会社をよりよくするために社員全員がそれぞれの立場で担うことが「職務」です。
業務との違いが曖昧になりやすいですが、業務は組織の中で取り組むべき仕事を指しています。採用面接や営業活動など、実働内容を指す言葉が該当し、業務を十分にこなさないと評価が下がります。
職務は実働内容ではなく、会社のために自分が果たすべき努めだと考えると少し分かりやすいかもしれません。
2. 職務と任務・職責・業務の違い
職務は業務と混同されやすい言葉ですが、任務や職責とも似た表現です。しかし、実際にはそれぞれの言葉には明確な違いがあります。任務と職責、業務の意味を正しく知って、職務と使い分けましょう。
ここでは、それぞれの言葉の意味を解説していきます。
2-1. 任務は任命されておこなう業務
職務と任務はとても似ている言葉ですが、任務は誰かから「命令」されておこなう業務を指します。例えば、上司から任命された場合や、突発的に第三者から命令された業務が任務に該当します。そのため、任務の内容は多岐に渡り、今まで担当したことのないような仕事でも、任命されれば遂行しなければいけません。
一方で職務は、個人の立場や職種によっておこなうべき仕事です。所属部署や立場によって、ある程度業務内容が固定されています。
2-2. 職責は業務に対する責任
職責は、請け負った業務に対する責任を指す言葉です。つまり、与えられた仕事や担当した業務において「果たすべき責任」が「職責」だと考えられるでしょう。
責任は管理職が負うもの、というイメージがあるかもしれませんが、どのような仕事であっても必ず責任が生じるため、全ての業務に職責が存在します。しかし、実際に職責という言葉を使うシーンは限られており、主に責任が重い立場の人が使う言葉になっています。例えば、社長や役職者、管理職、従業員でも責任が重く影響も大きい業務を担当する人が使うのが一般的です。
2-3. 業務はルーティンとなっている仕事
業務は、各部署が固有でおこなう仕事のことで、わかりやすく言うと「ルーティンとなっている仕事」です。つまり、特別な指示がない限り、毎日繰り返しおこなわなければならない仕事に対して、業務という言葉を使います。
例えば営業部であれば自社の商品やサービスを販売するための営業活動、運営部であれば担当店舗の売り上げ確認やアルバイトのサポートなどが業務となります。「業務」は「業務報告」や「業務管理」、「業務連絡」などさまざまなシーンで使われる単語なので、管理者や上司は職務との意味の違いをしっかり理解しておく必要があります。
3. 職務内容と事業内容の使い分け
職務内容と事業内容は、仕事の内容を説明するときや会社の事業説明をおこなう際など、さまざまなシーンで登場する言葉です。これらの言葉の意味を混同していると正確な情報が伝えられないため、正しく使い分ける必要があります。
ここでは、職務内容と事業内容の意味を解説していきます。
3-1. 職務内容は個人が担当している仕事
職務内容は、言葉のとおり職務の内容です。職務というのは、配属された部署において個人が担当している仕事の内容や務めを指す言葉です。そのため、職務内容を伝えたい場合は、自分が担当している仕事の内容を伝えるというのが正解になります。
人事担当者を例に挙げると、「人材確保を積極的におこなっています」や「新卒者の能力開発を重視しています」など、業務内容が会社へどのように貢献しているか、が職務内容ということになるのです。
3-2. 事業内容は会社全体の仕事
事業内容は、会社の事業の内容を指す言葉です。会社がどのような目的を持ち、どのような事業を展開しているのかに焦点が当てられています。複数の事業を展開している会社の場合は、事業内容も多岐に渡ります。
事業内容を詳しく正確に把握したい場合は、定款を確認しましょう。定款は、会社設立時に必ず定められている会社の憲法のような存在です。会社の所在地や商号などの基本情報に加え、事業内容や事業目的も明記されています。
4. 従業員が職務を理解するメリット
「職務」という言葉は、主に管理職や人事担当者が使うので、一見従業員には関係ないイメージがあるかもしれません。しかし、実際に職務をおこなうのは従業員なので、意味をわかっていない従業員に対しては丁寧に説明をして理解してもらう必要があります。
面倒と思うかもしれませんが、「職務」を理解してもらうことは会社にとってのメリットにつながります。ここでは、従業員が職務を理解するメリットを紹介します。
4-1. やるべき仕事が明確になり業務効率が上がる
従業員の中には、「業務さえおこなっていれば良い」という考え方をもっている人がいます。しかし、単に業務をこなすだけでは、本当にやらなければならない仕事をすすめることはできません。
職務は、一人ひとりの従業員に対するミッションなので、従業員が職務の意味を理解すれば、業務の先にある「やるべき仕事」を明確にすることができます。課せられている仕事を本人がしっかり理解できれば、業務の段取りなども自分で考えて実践するようになるので、業務効率が上がるというメリットが得られます。
4-2. 働きやすい職場環境が整う
従業員が、自分の「職務」を理解して職務内容を把握すると、「どの部署の協力が必要なのか」「どこの部署に依頼すればいいのか」などのフローを自分で組立てられるようになるので、他の従業員とのコミュニケーションが取りやすくなります。
職務というのは1人でできるものではなく、ほとんどの場合他部署の協力が必要になります。従業員が自分のミッションを正確に把握し、職務内容を他部署と共有できるようになれば職場の風通しもよくなるでしょう。
「あの人はどんな仕事をしているのかわからない」「勝手に1人で進めていて仕事内容が理解できない」という状況は、従業員同士の軋轢を生んでしまいます。しかし、職務内容がわかれば従業員同士で連携できるので、働きやすい職場環境を整えることができます。
4-3. 事業拡大のチャンスが生まれる
職務内容を理解して他部署との連携がスムーズになると、職務のパフォーマンスが上がります。無駄な作業をすることもなくなるので、時間や心に余裕ができることで従業員自身のレベルもどんどんアップします。
「やらされている」「こなせばいい」というようなネガティブなマインドではなく、自ら仕事を作り上げて行くポジティブなマインドを体得することで、新しいアイデアも生まれやすくなるでしょう。従業員がそれぞれに創造性を持って仕事に取り組めば、事業拡大のチャンスが生まれるというメリットがあります。
従業員の質が上がれば、管理職や役職だけでは思い付かないようなビジネスチャンスの提案も期待できるので、新たな分野への挑戦も可能です。
4-4. 従業員の満足度がアップする
今まで、漠然と業務をこなしていた従業員が、職務内容を理解してミッションに積極的に取り組むようになると、仕事の生産性が格段にアップします。部署によって生産性は異なるものの、多くの従業員が効率よく仕事をおこなえば経費削減につながりますし、営業利益のアップなどの効果も期待できるでしょう。
従業員の取り組みに対して、昇進や昇給、特別ボーナスなどの報酬を反映させれば、従業員の満足度が高くなるというメリットも得られます。
従業員の満足度が高くなると、不満や愚痴が出なくなるので会社の雰囲気も良くなりますし、離職率の低下や仕事へのモチベーションアップなど会社にとってのメリットにもつながります。
5. 職務の種類の具体例
一口に「職務」といっても、その内容は当たり前ですが業種や職種によって大きく異なります。しかし、どのように業務を分担すればいいのか、どこまでを業務範囲にすればいいのかわからないという担当者もいるかもしれません。
そこで、ここでは職務の分け方や表現に迷った際に使える、職務の種類ごとの具体例を業種別に紹介していきます。
5-1. 管理職
部長や課長をはじめとした管理職は、部下や売上の管理とマネジメントを中心とした業務を担います。業務が多いため、職務も多岐に渡りますが一般的な管理職の職務としては、以下のものが挙げられます。
- 人材の育成
- 業務管理
- 部下の管理や指導
- 目標の管理
- スケジュールの管理
- 会社の方針や経営理念の浸透
5-2. 事務職
事務職は書類の管理や作成、データ入力や来客の対応などをおこなう業種です。会社や配置された部署の業務によって業務内容は異なります。営業事務であれば営業の補佐をおこない、経理事務であれば経理業務、医療事務ならレセプトの作成など、専門的な業務もおこなうケースも多いです。
そのため、事務職の職務は簡単にはまとめられませんが、一般的な事務職である場合は以下のような職務が考えられます。
- 書類作成
- 書類のファイリング・整理
- 伝票の処理
- データ入力
- 電話・メール対応
- 来客対応
5-3. 販売職
物品を販売する販売職は、スーパーやコンビニエンスストアをはじめさまざまな業種に存在します。販売だけでなく接客も同時におこなうことになるため、職務は販売と接客に関連するものが中心です。また、キャリアアップして立場が上がると、販売や接客以外の業務を担当するケースもあります。
- 物品の販売
- 接客
- レジ打ち
- 商品の品出し
- 在庫管理・発注
- 店舗内のレイアウト
- 清掃
- シフト管理
- 売上管理
- 店長や本部への報告業務
5-4. サービス職
美容室や娯楽施設のスタッフ、介護や医療業務など、無形のサービスを提供する職業がサービス職です。販売職と同様に業種が多岐にわたるため、職務も店舗や施設によって大きく異なります。
一例を紹介しますが、職務を把握したり説明したりしたい場合は、主な業務や業種独自の内容を伝えるようにしましょう。
- 接客・飲食物の提供(宿泊業や飲食サービス業)
- 学習やスポーツの指導(教育や学習支援業)
- 不動産の売買や管理(不動産業)
- 利用者の看護や生活支援(医療・福祉業)
- 運転・貨物の運輸(運輸業・郵便業)
5-5. 専門・技術職
専門・技術職は、その分野における高い専門知識や技術が求められる業種です。いわゆるスペシャリストが働いている現場が該当し、医師や看護師、弁護士、記者、美術家、写真家などさまざまな業種があります。
専門・技術職の職務はその分野を代表するものや、独自のものになることがほとんどです。また、その分野の中でさらに細分化されていることも多いため、職務はサービス業以上に多岐にわたります。
医師であれば専門としている診療科を伝えたり、弁護士であれば得意とする案件、美術家や写真家なら作風を伝えたりするなど、専門的で独自の表現が職務にも現れるでしょう。
5-6. 生産・労務作業職
工場や建設現場をはじめとした、生産の現場で働く職が生産・労務作業職です。製鉄や鋳造の作業員や機械の組み立て、修理をする人員、現場設備の監視員などが該当します。生産・労務作業職も業種によって職務は異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。
- 生産設備の制御
- 現場の監督と監視
- 原材料の加工
- 機械の組み立てや修理
- 製品の製造
- 完成品の検品作業
5-7. 運輸・通信従事者
運輸・通信従事者は、電車やバス、航空機や船舶の運転従事者や通信機の操作や関連作業に従事する人を指します。職務は担当する業務によって異なりますが、一般的には以下のような内容です。
- 鉄道・自動車・船舶などの運転
- 建設機械の運転や操作
- 駅・空港・港内での案内
- オペレーションコントロール
5-8. 農林漁業作業者
農林漁場作業者は、農業や畜産、林業や水産動植物の採取や養殖などに従事する人たちや関連する業務に従事する人たちを指します。さまざまな職務が存在するため、あくまでも一例になりますが以下のような職務が挙げられます。
- 農産物の栽培や収穫
- 家畜や家禽の飼育
- 樹木の伐採や搬出
- 水産動植物の採取や養殖
- 造園作業
- 船舶の運転や航行管理
6. 職務は業種によって大きな違いがある
職務は業務よりも概念的な意味を持つ言葉で、組織内で個人が担う務めを指します。仕事の名称そのものではなく、何をしているかを表現する言葉です。そのため、業種によって職務の具体例は大きく異なります。また、同じ業種でも配属された部署によって職務も大きく異なるため、職務の種類をすべて把握するというのは難しいでしょう。
実際のところ、仕事をするうえで職務という言葉を使ったり、聞いたりする機会は多くありません。しかし、人事担当者は業務や任務、職責などの言葉と混同しないように使い分け、個人や会社の仕事を正確に伝えられるようにしておきましょう。
人事評価は、従業員のモチベーションや生産性に直結するため、正しく制度化され運用されていることが欠かせません。労働人口の減少が問題視される昨今では、優秀な人材を採用し定着させること、従業員エンゲージメントを高めることが、企業の成長に繋がるためです。
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