領収書はPDFでも有効?PDFでの発行方法やメリット、原本の保存について解説
更新日: 2024.10.7
公開日: 2024.3.18
jinjer Blog 編集部
電子帳簿保存法の改正やDX化の推進により、領収書の管理を紙媒体からPDFなどにデータ化したり、電子領収書を発行したりすることに興味をもっている経理担当者の方も多いでしょう。当記事では、領収書をPDF化するにあたってのメリットやデメリット、注意点などについてわかりやすく解説します。領収書発行や保管の業務効率化をしたいと考えている方は、領収書をPDFで作成する方法や扱い方も確認しましょう。
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経費精算業務は領収書と請求内容の突き合わせや、使用用途の確認など、確認作業が多い業務です。そのため「めんどう…もっと楽にできないかな?」「効率化できるのでは?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
当サイトでは、経費精算業務の負担を減らすための方法として、領収書を電子化する方法を紹介する資料を用意しています。電子帳簿保存法の改正点についても紹介しているので、業務を効率化する方法と法対応の2つをまとめて理解することが可能ですので、ぜひこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
1. 領収書(レシート)とは
領収書とは、受取者が支払者から代金を受け取ったことを証明するために、発行する書類のことです。
また、領収書は、代金の過払いを未然に防止したり、金銭の支払いを証明したりする役割があります。領収書は、経費計上や確定申告、税務調査において使用する大切な証拠書類となるため、きちんと保管しておくことが大切です。保管期間や義務については、法人や個人事業主などによって異なります。
さらに、領収書には、決められたフォーマットがありません。そのため、税法上で定められている次の項目があれば、正式な領収書として認められます。
- 宛名
- 発行事業者名
- 金額
- 但し書き
- 日付
※ インボイス制度に対応する場合は上記以外にも記載しなければならない項目があります
1-1. 領収書とレシートの違い
上述したとおり、領収書は取引内容を証明するための書類です。その目的はレシートと同様のため、「どちらも同じでは?」と考える人も多いでしょう。領収書とレシートは多くの面で類似していますが、重要な違いも存在します。
まず、領収書は企業間での正式な取引証明書として発行されることが多く、支払った金額の詳細や支払者、支払い先の情報が記載されています。一方、レシートは一般的に小売店での取引において、購入者に対して発行されるもので、商品の詳細や消費税額が含まれています。
法律上、宛名がなければ経費として計上できないため、原則として「領収書の提出」を求められることが多いです。ただし、小売業などの一部の業種においては、発行作業の効率化を目的にレシートでも経費計上することが認められています。
ですが、トラブルを避ける意味でも、経理規程において領収書の提出を義務付けている企業も少なくありません。
2. 領収書はPDF化しても有効
ペーパーレス化や業務の効率化、自動化の一環として、領収書や請求書などの紙書類をデータ化したいと考えている企業も少なくないでしょう。
結論から述べると、PDFなどのデータ化された領収書及びレシートも法的に有効です。ただし、PDFデータで領収書を扱う場合、見読性をきちんと確保しなければなりません。なお、見読性とは、端的に表現すると、記録が要求されたときに表示させたり、書面に出力させたりできることを指します。
たとえば、PDFデータの画質が粗く、詳細がわからない場合、見読性の観点から正式な領収書と認めてもらえないこともあるため、注意する必要があります。また、帳票との紐づけができていないと、電子帳簿保存法の要件を満たしているとは言えません。利便性を考えても、複数の関連する帳票類と連携できるようにしておくと良いでしょう。
3. 領収書をPDFで作成する方法
ここでは、領収書やレシートをPDF化する方法について詳しく紹介します。
3-1. PDFの領収書を発行する方法
PDFの領収書を発行する方法として、主に以下の2つが上げられます。
- テンプレートを使用する
- 領収書発行のアプリ使用する
それぞれ詳しく解説します。
テンプレートを使用する
領収書には、明確なフォーマットがあるわけではないため、インターネット上にあるようなテンプレートを利用することができます。
社内で今まで使用してきたテンプレートをスキャナ保存して電子データのテンプレートとして活用しても良いでしょう。
領収書作成のアプリやWebサービスを使用する
領収書作成専用のアプリやWebサービスを利用することで、効率的にPDF領収書を発行できます。基礎的な機能のみを備えたシンプルなものもあれば、売上管理や会計システムなどの複数サービスと連携できるものもあります。自社にあったシステムを選ぶようにしましょう。
3-2. 紙の領収書をPDF化する方法
紙で受領した領収書をPDF化するためには、「スキャンして保存する」もしくは「写真データを読み込む」のいずれかの方法を用いる場合が多いです。
それぞれ詳しく解説します。
スキャンして保存する
紙媒体の領収書をPDF化するには、スキャナーを利用するのが手段の1つです。
スキャナーで作成されるデジタルデータは、一般的に文字データではなく、写真や図などの画像データです。
スキャナ保存した後で、発行者や金額などを入力する必要があります。
スマホで写真を撮影して経費精算アプリなどで読み込む
スキャナ保存以外に、スマホのカメラ機能などを用いて撮影した画像データを領収書データとして保存することが可能です。
また、OCR機能付きアプリを用いて撮影や読み込みをおこなえば、領収書の発行者や日付などの情報を文字データとして、読み取ることができます。
無料のアプリもありますが、質問やサポートを受けられる有料システムを契約したほうが導入コストが安くすむこともあります。
4. 領収書のPDF化におけるメリット
ここでは、領収書をPDF化するメリットについて詳しく紹介します。
4-1. 郵送コストや収入印紙の削減につながる
PDFのような電子データであれば、メールやチャットで送付できるため郵送費を削減することができます。
また、通常5万円以上の取引でもちいる領収書には印紙税法の定めにより収入印紙の貼付けが必要になります。しかし、PDFのような電子データは「書類」ではないためこの収入印紙の貼付けが不要になります。
そのため印刷費用や封筒といったコストのみならず、収入印紙のコストも削減することができます。
このように、領収書をPDF化すると紙の領収書で必要になる費用を大幅に削減できる可能性があります。
4-2. データの管理がしやすい
紙媒体で領収書を管理していると、特定の書類を探し出すのに、手間がかかることも少なくありません。たとえば、紙媒体で日付順に領収書を管理している場合、特定の会社の領収書をすべて探さなければならないときは、多くの労力が必要となります。
一方で領収書がPDF化されていれば、発行者や日付、金額などをもとに、データ検索できるため、簡単に見つけたい領収書を探し出すことが可能です。
また、紙媒体の場合は、時間経過で書類が劣化してしまうというデメリットがあります。PDFデータであれば、文字や書類自体が劣化する恐れはありません。
このように、PDF化された領収書は、紙媒体の書類のように劣化することはなく、管理がしやすいというメリットがあります。
4-3. 柔軟な働き方が実現できる
領収書を電子化すれば、場所を問わず領収書を作成・保管できます。
経理部門をはじめとしたバックオフィスの担当者は社内書類を管理するため、テレワークは難しいという企業も少なくありません。
クラウドシステムを導入すれば、オフィスにいなくてもアクセスできるようになるでしょう。
そのため、経理部門でもテレワークなど柔軟な働き方が実現できます。
4-4. 業務効率化につながる
領収書をPDFデータにすれば、業務をデジタル化できるため、業務効率の向上が期待できます。
たとえば、紙媒体の領収書に誤りがあった場合、申請した従業員に直接差し戻しをおこない、再度提出してもらわければなりません。そのため、経費処理に時間がかかってしまうことが少なくありません。
一方、PDFのようなデータでやり取りをおこなえば、領収書に誤りがあったとしても、簡単に申請した従業員に差し戻しをおこなうことが可能です。
また、データであれば、メールなどで領収書のやり取りができるため、取引先企業との連携もスピーディにおこなうことができます。
4-5. 高いセキュリティを構築できる
PDFデータでは、文書を開くためのパスワードや、データ権限の設定をおこなうことができます。そのため、情報漏洩や改ざんなどのリスクを減らすことが可能です。
また、電子帳簿保存法の要件を満たしていれば、ExcelやWordの形式のデータを正式な領収書として使用することもできます。ただし、これらの形式のデータは、一般的に上書きできるため、PDFデータと比較すると、改ざんしやすい傾向にあります。
このように、PDF化した領収書を利用すれば、機密性の観点からも、高いセキュリティを構築することが可能です。
5. 領収書のPDF化におけるデメリット
ここでは、領収書をPDF化するデメリットについて詳しく紹介します。
電子データで保存するため際の課題についても適切に理解したうえで、電子保存を導入するかどうかを検討しましょう。
5-1. システムの導入費用の発生
領収書をPDF化するには、システムを構築するにあたって、初期導入費用が大きくかかることも少なくありません。
たとえば、PDF化するためのソフトウェアや、安全に領収書を管理するためのシステムなどを初期費用で用意しなければなりません。また、初期費用に加え、システムの運用・保守などランニング費用もかかるのが一般的です。
ただし、きちんとシステムを構築できれば、印紙税や郵送費などのコストを削減できます。そのため、導入する前に費用対効果を明確にするのが大切といえます。
5-2. 電子化に伴う教育が必要
電子管理を導入するには、まず従業員に領収書データの作成方法やルールなどを教育する必要がああります。たとえば、パソコン操作が苦手な従業員が多い場合には、教育コストが上乗せしてしまう可能性もあります。
また、適切なデータ管理をおこなうために、電子操作に詳しい従業員を新しく雇用する必要が生じることもあるため、自社の環境をきちんと把握することが大切です。
5-3. 取引先から断られる可能性がある
領収書をPDFで発行する場合、受領者側もPDFなどの電子データで保存しなければなりません。
データを取引先や取引年月に合わせて一覧で表示させる必要があるなど、管理方法の決まりもあるため、電子データでの公布を断られる可能性もあります。
事前に確認し、断られた場合は紙の領収書で交付する必要があるでしょう。
押印を求められた場合
日本企業にはハンコ文化が深く根付いています。
そのため、紙の領収書に社印を押印して発行する企業が多いでしょう。
そのため、電子データになっても社印が押印されていて当然のものと考える企業も少なくありません。
厳密には押印されていなくても領収書として効力を発揮しますが、押印した領収書を発行したい場合は、押印後のデータをスキャンしたり、対応したシステムを利用するなどで対応できます。
ExcelやWordなどに印鑑データで取り込んで配置することも可能です。
6. PDFで発行・保存した領収書の保管方法
PDFで発行・保存した領収書や、は紙の領収書と同じように保管して問題ないのでしょうか。
保管方法の違いについて詳しく解説します。
6-1. 電子帳簿保存法の要件を満たす必要がある
電子帳簿保存法の要件を満たしていれば、PDFデータでも正式な領収書として扱うことができます。
そのため、電子帳簿保存法の要件を満たしている領収書発行システムを使用すれば、発行者は正式に電子データで管理できるため、紙媒体での原本の保管は必要ありません。
ただし、受領者側は必ず電子データで保存しなければならないので注意しましょう。
PDFで発行・交付する場合は、取引先も電子保存できる環境が整っているかどうかを事前に確認しておくことでトラブルを防げます。
6-2. 領収書の保管期間は紙もPDFデータも変わらない
PDFデータであっても、紙の領収書と同様に税法上の保管期間を遵守する必要があります。
具体的には、領収書はその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保管しなければなりません。
また、赤字決算の場合は10年間に延長されるなど、どの領収書もすべて7年とは限らないため、注意しましょう。
電子データの保管を適切におこなわなければ、保管期間の途中で誤って処分してしまったり、紛失してしまったりするリスクがあります。
PDFデータの領収書は検索性が高く、手軽にバックアップが取れるため、紙の領収書に比べて管理が容易です。しかし、データの損失リスクに対する対策も必要になります。法的要件を満たす形で安全に保管しましょう。
7. 領収書をPDFで扱う際の注意点
ここでは、領収書をPDFで扱ううえでの注意点について詳しく紹介します。
7-1. ファイル名やPDFにするやり方を社内周知する
領収書をPDFなどの電子データで保存する条件の一つに、取引先企業名や金額、期間などの項目で絞り込み検索できることがあります。
しかし、ファイル名や電子保存する方法がバラバラの場合、適切に保存要件を満たせない可能性があります。
経理担当者がひとつひとつの領収書を確認して取引データと関連付けていくことは難しいでしょう。
そのため、ファイルの命名規則やPDFファイルにする方法を決めて社内に周知徹底する必要があります。
ルールを細かく定めていくには工数がかかるため、経費精算システムなどを用いて、使い方を周知すれば自動で反映されるようにすることをおすすめします。
システムの担当者から同業他社の導入事例や活用方法を聞くことで、スムーズに導入することができるでしょう。
7-2. 電子データで発行・受領した領収書は印刷して保存できない
電子帳簿保存法の改正により、電子データで受領した領収書は電子保存しなければならない、と決められています。
今までは宥恕措置により、やむを得ない事情がある場合は電子データの印刷保存も認められていました。しかし、その宥恕措置も2023年12月31日に廃止されています。
そのため、2024年1月よりどのような理由があろうとも、電子データを印刷して原本の代わりとして保存することは認められません。
電子データで受領する前に、どのように保存する必要があるのかを正しく把握しておきましょう。
7-3. 過去分の書類を電子化する場合は税務署長の許可が必要
領収書類を電子化するにあたり、今まで紙媒体で保管してきた書類もまとめて電子化したいと考えることもあるでしょう。
しかし、電子帳簿保存法において、領収書の電子化は速やかにおこなうことを義務付けています。
そのため、紙媒体で作成・受領した領収書を電子化する場合は、受け取ってから最長で2ヶ月と7日以内におこなわなければなりません。。それよりも以前の書類は「過去分重要書類」となり、税務署長に申請し、許可をもらう必要があるので、注意しましょう。
8. 領収書をPDF化する際は、正しい知識と注意点を理解しよう
PDF化された領収書は法的に有効であり、電子帳簿保存法の要件を満たしていれば、領収書の受取者と発行者の双方ともに原本の管理は不要です。
また、領収書をPDF化すると、データ検索などによる業務の効率化や、印紙税や郵送費などコストの削減が期待できます。一方、きちんとしたシステムを構築しないと、コストが思っていた以上にかかってしまったり、セキュリティ上のトラブルが発生したりすることもあります。
さらに、領収書をPDFで管理するうえで、事前の申請や取引先企業の同意が必要など、あらかじめ確認しておくべきことは数多くあります。領収書のPDF化を導入しようと考えている方は、正確な知識を身に付けて、適切に管理できる仕組みを構築しましょう。
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