介護保険料はいつから支払う?計算・納付方法や給与天引きのポイントも解説
更新日: 2026.2.27 公開日: 2024.7.4 jinjer Blog 編集部

介護保険料は、原則40歳に達した月から支払いが義務付けられる重要な社会保険料です。企業には、従業員の給与や賞与から適切に天引きし、期限内に納付する役割が求められます。
しかし、徴収開始のタイミングや計算方法は年齢や加入保険によって異なり、実務上の注意点も少なくありません。本記事では、介護保険料はいつから支払うのか、具体的な計算・納付方法、未納時のリスクなど、担当者が押さえておくべきポイントを解説します。
目次
労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 介護保険料はいつから支払う?


介護保険料は、介護保険制度に基づき、原則として40歳以上の人に支払いが義務付けられています。介護保険制度とは、高齢や疾病などにより介護が必要となった人を、社会全体で支えるための仕組みです。
介護保険制度の財源は、40歳以上の被保険者や会社が負担する介護保険料と、国や自治体が負担する公費によって構成されています。介護サービスにかかる費用の約5割は保険料、約5割は公費で賄われており、実際にサービスを利用する際には、利用者が原則として1~3割を自己負担する仕組みとなっています。
ここでは、介護保険料の支払い開始時期や介護保険の被保険者区分について解説します。
1-1. 介護保険料の支払い開始時期は「40歳の誕生日の前日が属する月から」
介護保険料の支払いは、満40歳に達したときから始まります。具体的には、介護保険の資格取得日が「40歳の誕生日の前日」と定められており、保険料は月単位で計算されるので、資格を取得した月分から介護保険料が発生します。
そのため、誕生日によって介護保険料の支払い開始月は次のように異なります。
| 誕生日 | 介護保険の資格取得日 | 支払い開始月 |
| 5月1日 | 4月30日 | 4月分から支払う |
| 5月2日 | 5月1日 | 5月分から支払う |
このように、月初(1日)生まれの場合は、資格取得日が前月となるので、前月分から介護保険料の支払いが始まる点に注意が必要です。
1-2. 介護保険の被保険者区分
介護保険制度では、年齢による介護リスクの違いに応じて、被保険者は「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の2種類に区分されています。なお、第2号被保険者は、65歳に到達すると自動的に第1号被保険者へ切り替わります。
| 第1号被保険者 | 第2号被保険者 | |
| 対象者 | 65歳以上の者 | 40歳以上65歳未満で、医療保険(国民健康保険・協会けんぽ・組合健保など)に加入している者 |
| 受給要件 | 要介護(要支援)状態の場合 | 要介護(要支援)状態が、老化に起因する疾病(特定疾病)による場合 |
| 保険料の支払い開始時期 | 65歳になった月 | 40歳になった月 |
| 保険料の支払い方法 | 原則、年金から徴収 | 医療保険料と一緒に徴収 |
介護保険は、原則として第1号被保険者である65歳以上の人が、疾病や事故など原因を問わず介護が必要となった場合に、1~3割の自己負担で介護サービスを利用できる制度です。
また、第2号被保険者である40歳以上65歳未満の人であっても、末期がんや関節リウマチなどの特定疾病が原因で要介護・要支援の認定を受けた場合には、介護サービスを利用できます。
そのため、従業員が65歳未満であっても介護保険サービスの対象となるケースがあることを踏まえ、該当の有無を事前に確認しておくことが大切です。
1-3. 介護保険料の支払いが不要なケースは?
40歳以上であっても、介護保険料を本人が負担しないケースがあります。まず、海外に居住している人や、身体障害者療護施設など、介護保険法で定める適用除外施設に入所している人は、原則として介護保険の被保険者とならないため、介護保険料を支払う必要はありません。
また、40~64歳の専業主婦(主夫)など、健康保険の被扶養者となっている人については、介護保険料を個別に納める必要はありません。介護保険にかかる費用は、扶養者が加入している医療保険制度全体で負担されています。なお、配偶者や子などを被扶養者とするためには、所定の手続きが必要です。
さらに、生活保護を受給している人については、40~64歳で医療保険に加入していない場合、介護保険の第2号被保険者とならないので、介護保険料の負担はありません。
一方、65歳以上になると、医療保険の加入の有無にかかわらず介護保険の第1号被保険者となります。そのため、生活保護受給者であっても介護保険の被保険者となりますが、介護保険料は生活保護費によって賄われるので、本人の実質的な負担は生じません。
参考:介護保険の適用除外制度について|御宿町
参考:海外に滞在する場合、介護保険料を支払う必要があるのか。|川崎市
参考:生活保護を受けていますが、介護保険料を支払わなければなりませんか。|小田原市
2. 介護保険料の計算方法


介護保険料の計算方法は、第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満)で変わってきます。また、加入する保険の種類や、住んでいる市区町村によっても変わるため注意が必要です。
2-1. 第1号被保険者(65歳以上)
第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料は、住んでいる市区町村で定める「基準額」に所得段階に応じた保険料率を乗じて算出されます。介護保険を利用する人口やサービスの種類によって費用に差が生まれ、基準額や所得段階、保険料率は市区町村でそれぞれ異なるので注意が必要です。
また、世帯の状況によっても保険料は変動します。例えば、世帯内に住民税非課税者がいる場合には、保険料が軽減されるケースがあります。具体的な金額や区分については、お住まいの市区町村のホームページを確認するか、介護保険担当窓口へ問い合わせるとよいでしょう。
参考として、東京都新宿区の第9期(令和6年度~令和8年度)における基準額は月額6,600円です。第10段階(本人の合計所得金額が500万円以上625万円未満)に該当する場合、年間の介護保険料は146,520円となり、月額では12,210円です。
関連記事:65歳以上から介護保険料はどう変わる?計算方法や制度をわかりやすく解説
2-2. 第2号被保険者(40歳以上65歳未満)
第2被保険者(40歳以上65歳未満)の場合は、加入する公的医療保険の種類によって算出方法が異なります。ここでは、健康保険(協会けんぽ)の加入者である会社員と国民健康保険の加入者である自営業に分けて解説します。
2-2-1. 会社員の場合
健康保険に加入している会社員の場合、介護保険料は「標準報酬月額」に介護保険料率を乗じて算出されます。標準報酬月額は、原則として毎年4月から6月に支払われた給与の平均額をもとに決定されます。
例えば、協会けんぽに加入しており、標準報酬月額が30万円の従業員の場合、令和7年度の介護保険料率1.59%(※令和8年度の介護保険料率は1.62%)を用いた介護保険料は次のとおりです。
標準報酬月額30万円 × 介護保険料率1.59% = 4,770円
算出された介護保険料は、健康保険料とあわせて納付します。なお、会社員の社会保険料は労使折半が原則であるため、実際に給与から控除されるのは、この金額の半額となる点に注意が必要です。
また、賞与を支給する場合には、税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に介護保険料率を掛けて、賞与にかかる介護保険料を計算します。なお、健康保険(介護保険)における標準賞与額には、年度累計573万円の上限が設けられています。
参考:協会けんぽの介護保険料率について|全国健康保険協会標準報酬月額・標準賞与額とは?|全国健康保険協会
参考:2026(令和8)年度政府予算案を踏まえた収支見込みについて(概要)|全国健康保険協会
関連記事:社会保険料は賞与(ボーナス)から控除される?保険料の計算方法や注意点を解説
2-2-2. 自営業の場合
自営業者など国民健康保険に加入している40~64歳の人は、介護保険料を国民健康保険料の「介護分」として納付します。介護分の保険料は、所得割・均等割・平等割・資産割を組み合わせて算出され、これらを合算した金額が負担額となります。
- 所得割:前年度の所得額に基づいて算定
- 均等割:被保険者1人ごとに算定
- 平等割:1世帯ごとに定額で算定
- 資産割:固定資産の評価額などに基づいて算定
具体的な算定方法や金額は自治体ごとに異なり、平等割や資産割を設けていない自治体もあります。
3. 介護保険料の給与からの徴収はいつから?


40~64歳の第2号被保険者に該当する従業員は、介護保険の資格を取得した月分から介護保険料の負担が発生します。企業はこの介護保険料を健康保険料とあわせて給与から天引き(特別徴収)するのが一般的です。ここでは、給与から徴収を開始するタイミングや実務上の注意点について解説します。
3-1. 前月分の保険料を控除する「翌月徴収」が原則
介護保険料は月単位で計算され、原則として「前月分の保険料を翌月に支給する給与から控除する(翌月徴収)」方式が採られています(健康保険法第167条)。
例えば、5月1日が誕生日の従業員は、資格取得日が4月30日となるため、4月分の介護保険料の負担が生じます。この4月分の保険料は、通常、5月支給分の給与から控除します。
一方、5月2日が誕生日の従業員の場合、資格取得日は5月1日となり、5月分の介護保険料を負担することになります。この場合、5月分の介護保険料は、6月に支給される給与から控除するのが一般的です。
3-2. 賞与にかかる保険料はいつ支払われたかで判断する
賞与についても介護保険料はかかり、支給時にはその賞与から介護保険料を控除できます(健康保険法第167条)。介護保険料を徴収するかどうかの判断は、賞与の算定期間ではなく、「どの月に支給されたか」を基準におこないます。
例えば、1月から6月までを算定期間とする賞与を7月10日に支給し、従業員が7月15日に40歳の誕生日を迎えて介護保険に加入するケースを考えてみましょう。この場合、介護保険の資格取得月は7月です。
賞与の算定期間は1月~6月であっても、実際の支給月が7月であるため、介護保険料の徴収対象となります。さらに、たとえ誕生日が賞与支給日の後であっても、同じ7月中に賞与の支給と介護保険の資格取得がおこなわれていることから、その賞与に対して介護保険料を支払う必要があります。
3-3. 給与明細に徴収した介護保険料の記載が不可欠
企業が給与や賞与から介護保険料を控除した場合には、その計算内容を明らかにした書類を作成し、控除額を従業員に通知する義務があります(健康保険法第167条)。そのため、介護保険料を徴収した際は、給与明細(賞与明細)においてその金額をわかりやすく記載することが重要です。
表示方法としては、「健康保険料(介護保険料を含む)」として一括表示する方法のほか、「介護保険料」を独立した項目として明示する方法が一般的です。いずれの場合であっても、従業員が自身の負担額や内訳を容易に確認できるよう配慮することが求められます。
3-4. 介護保険料の給与からの徴収はいつまで?
介護保険料の給与天引きは、原則として65歳になるまでおこなわれます。65歳に達すると、第2号被保険者から第1号被保険者に切り替わり、介護保険料は市区町村が賦課・徴収する方式に変更されるため、65歳に達した日の属する月(誕生日の前日が属する月)以降の介護保険料は給与から控除されません。
例えば、5月1日が誕生日で65歳になる従業員の場合、資格喪失月である4月分以降の介護保険料は給与から控除しません。5月2日が誕生日で65歳になる場合も同様に、資格喪失月である5月分以降の介護保険料は給与から控除せず、4月分までの控除で終了します。
4. 介護保険料を給与から徴収した後の納付方法


企業は、給与から天引きした介護保険料を、企業負担分とあわせて所定の期限までに納付する必要があります。ここでは、給与から徴収した介護保険料の納付方法について詳しく説明します。
4-1. 納付先は日本年金機構または組合健保
給与から徴収した介護保険料の納付先は、加入している医療保険制度によって異なります。
協会けんぽに加入している場合は、日本年金機構を通じて納付します。一方、健康保険組合に加入している場合は、各健康保険組合が納付先となります。介護保険料は健康保険料と一体で管理されているため、健康保険料とあわせて納付する仕組みです。
4-2. 納付手段は「窓口納付」「口座振替」「電子納付」など
介護保険料の納付方法には、次のような手段があります。
- 窓口納付:金融機関の窓口で納付書を使って支払う方法
- 口座振替:あらかじめ登録した口座から自動で引き落とされる方法
- 電子納付:インターネットバンキングや電子納付システムを利用して支払う方法
事務手続きの手間や納付忘れを防ぎたい場合は、口座振替や電子納付が便利です。一方で、領収証書を確実に受け取りたい場合は、窓口納付が適しています。
なお、加入している健康保険組合によっては納付方法が異なる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
4-3. 納付期限は納付対象月の翌月末日
介護保険料の納付期限は、原則として納付対象月の翌月末日です。例えば、4月分の給与から徴収した介護保険料は、5月末日までに納付する必要があります。
日本年金機構によると、毎月の納付額は届出内容に基づき、前月分を毎月10日頃に確定します。その後、20日頃に事業所宛てに「保険料納入告知書」が送付されます。なお、健康保険組合によってスケジュールが異なる場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
参考:納付期限|日本年金機構
5. 【企業側】介護保険料を適切に納付しなかった場合の主なリスク


介護保険料は、従業員の社会保障に直結する重要な費用です。企業がこれを適切に納付しない場合、さまざまなリスクが生じます。ここでは主なリスクとその影響について解説します。
5-1. 督促状の送付を受ける
介護保険料を期限までに納付せず未納の状態が続くと、日本年金機構や健康保険組合から督促状が送付されます。督促状は、納付義務の再確認と企業に対する正式な対応を求める通知です。
督促状を受け取った場合は、速やかに納付手続きをおこなうことが重要です。また、同じ事態を繰り返さないための再発防止策の実施も欠かせません。
5-2. 延滞金が発生する
督促状に記載された期限までに納付すれば、延滞金は発生しません。しかし、期限を過ぎて納付した場合は、納付期限の翌日から実際に納付した日の前日までの日数に応じて延滞金が加算されます。そのため、納付が遅れるほど企業の負担は大きくなります。
参考:納入告知書の納付期限までに納付ができませんでした。納付期限後の納付だと延滞金はかかりますか。|日本年金機構
5-3. 財産が差し押さえられる
督促状や電話による納付催促に応じず、介護保険料を支払わない場合、滞納処分の対象となる可能性があります。具体的には、納付指導や財産調査が実施され、場合によっては銀行口座や不動産などの差し押さえ、さらに財産の換価といった強制執行がおこなわれるリスクもあります。
5-4. 従業員や取引先からの信頼低下につながる
介護保険料の未納は、従業員の給与や社会保険の適正な管理に直接関わる重要な問題です。未納が発覚すると、従業員の年金や医療・介護サービスの給付に影響を及ぼす可能性があり、企業としての責任が問われます。その結果、企業の信用を損なうだけでなく、取引先や金融機関からの信頼低下、さらには社会的評価の低下といったリスクにもつながります。
このような問題を未然に防ぐためには、介護保険料の計算や納付の仕組みを正確に理解するとともに、給与計算や納付処理を適切に管理し、定期的な確認体制を整えることが重要です。正しい手続きを継続的におこなうことが、従業員の安心を守り、企業の信頼を維持するための基本となります。
関連記事:社会保険料を滞納する8つのリスクや支払えないときの対策を解説
6. 介護保険料を納めて従業員が正しく介護サービスが受けられるよう準備をしよう


介護保険料は、原則として、40歳以上の人に支払い義務が生じる制度です。社会保険に加入する会社員の場合、介護保険料は従業員と企業で折半して負担するため、企業も半額を支払う必要があります。
そのため、企業は支払い方法や金額を正確に把握し、従業員が安心して介護サービスを利用できるように準備しておくことが重要です。



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