DXで経理業務を効率化!導入事例や注意点について解説
公開日: 2025.8.7 jinjer Blog 編集部
経理DXとは、経理部門でおこなわれている業務をDX化することです。
DXとは「Digital Transformation」の略称で、直訳すると「デジタルによる変化・変容」という意味になります。
経済産業省では、DXは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義していますが、経理業務においては、データやデジタル技術を活用することで、日々の煩雑な経理業務を効率化し、労働生産性を高めることを意味しています。(※1)
たとえば、これまで紙媒体で作成・整理、保管していた請求書や納品書などの帳簿書類をデジタル化して電子データとして管理したり、給与計算システムや勤怠管理システムなどのシステムと連携したりすることが、経理DXの代表的な例です。
申請書のチェック、差し戻しの連絡、会計ソフトへの手入力…。毎月発生するこれらの定型業務に、貴重な時間を奪われていないでしょうか。
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1. 中小企業の経理業務こそDX化すべき理由


少子高齢化の影響もあり、人材不足に悩まれている企業は少なくありません。なかでも、採用に多くのコストを割けられない中小企業は人材確保に苦労しています。
また、経理は専門性を必要とする職種のため、スキルの高い従業員に仕事が集中し、業務が属人化しやすいです。このような人手不足や専門知識の必要性から経理担当者の業務負担はますます大きくなり、経理の職種を希望する人が減っているという実状もあります。
限られた人材で、スムーズに経理業務をおこなうには、IT技術を上手く導入してDXを推進し、業務を効率化する必要があります。
今後は電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入により、経理業務はこれまで以上に煩雑化する可能性があります。
たとえば、電子帳簿保存法の改正によって、紙と電子データそれぞれの帳簿を適切に管理する必要があります。また、インボイス制度の導入により、適格請求書とそうでない請求書を区分して管理しなければなりません。このような新しい制度の導入に対応するためには、人材の育成・確保だけでは困難であり、DXの推進が不可欠です。
以上のように、経理担当者の人材不足・負担軽減や、電子帳簿保存法・インボイス制度への対応のために、社会全体として経理DXが必要とされています。また、経産省の報告書によれば、DXが進む企業と企業全体の平均とでは、DXの推進の度合いには大きな差があるようです。
とくに中小企業では、「DXをよく知らない」「自社に必要なのかわからない」という理由でDX化が停滞しているケースが多く、中小企業の経理業務こそ、率先してDX化することが必要といえます。
参考:デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会WG1 全体報告書|経済産業省
2. 経理DXを推進するメリット


経理DXを推進することでどのような効果が得られるのでしょうか。ここでは、経理DXを推進するメリットについて詳しく紹介します。
2-1. 経理業務を効率化できる
経理業務をDX化すると、給与計算や資産管理、決算業務などをある程度自動化することができます。勤怠管理システムなどのシステムとデータ連携すれば、給与計算と勤怠管理それぞれのシステムでデータを二度入力する手間もなくなり、業務効率が飛躍的に向上します。
経理業務を効率化すれば、少ない人材で業務を回せるため、空いている人材を他に回すことで企業全体としての人手不足問題の解消にもつながります。
2-2. コストの削減
経理DXによってペーパーレス化が進むと、紙媒体の書類の作成と管理が不要になるため、用紙代や印刷代、保管に使うオフィス家具代などのコストを削減することができます。
また、業務効率化によって経理担当者の負担が軽減すれば残業時間も減るため、時間外労働によるコストの低減にもつながります。
2-3. 属人化の問題解消
経理は数ある職種のなかでも属人化が進みやすい部署であるといえます。担当者が休職、あるいは退職して知識やスキルが引き継がれないと、業務に支障をきたしてしまう可能性があります。
とくに中小企業では、経理担当が数人しかいないという場合も多いでしょう。業務のブラックボックス化によって引継ぎの遅滞や不正リスクが生じやすい点が大きな課題となっています。
経理DXによって経理業務が扱うデータや情報を可視化すれば、従業員同士の情報共有がスムーズになり、円滑な引継ぎや不正防止に貢献します。
2-4. 優秀な人材の確保
業務で紙の書類を利用しているなど、リモートワークに対応できていないと、基本的に経理担当者はオフィスに出社して業務をおこなわければなりません。押印のためだけに出社するという状況があると、従業員の不満につながるかもしれません。
そこで、ITツールを導入してDXを推進し、ペーパーレス化やテレワークを進めることで、働きやすい環境を作り出すことが可能です。また、ペーパーレス化はコスト削減だけでなく、環境保全にもつながります。このような「働きやすい」「社会貢献性の高い」企業は、就職・転職希望者から目にとまり、優秀な人材を確保しやすくなります。
2-5. 働き方改革の推進
近年では、育児や介護との両立など、働き方のニーズは多様化しています。そこで、個々の事情に応じて働き方を選択できる社会を目指すために、政府は働き方改革を推進しています。たとえば、時間外労働の上限や年次有給休暇の時季、勤務間のインターバルなどが見直されています。
ITツールを導入してテレワークを推進すれば、時間・場所を問わず働けるようになり、従業員の満足度は向上します。また、ルーチンワークをシステムで自動化できれば、残業時間を削減し、ワークライフバランスの実現につなげることが可能です。このように、経理DXを推進することで、経理担当者の働き方を大きく変えることができます。
3. DXで効率化できる経理業務の3事例


ここでは、経理DXを推進することによって業務効率の向上が期待できる主な業務を3つ紹介します。
3-1. 給与計算業務
経理では、従業員の勤怠データをもとに毎月の給与を計算しますが、勤務時間や時間外労働、基本給や手当給、各種控除額などは従業員ごとに異なるため、一人ひとりの条件に合わせて給与計算をおこなうのはかなりの手間と時間がかかります。
経理DXの一環として、勤怠管理システムと給与計算システムを連携させれば、勤怠データが自動的に給与計算システムに反映されるため、入力や計算の手間を省くことができます。あらかじめ従業員ごとに給与計算のルールを設定しておけば、集計や計算の手間もかかりません。
給与計算ソフトは種類が非常に多く、搭載しているシステムや価格はさまざまです。本記事ではたくさんの給与計算ソフトのなかから、クラウド型・パッケージ型・オンプレミス型から選ぶ際のポイントについて解説しています。 給与計算ソフトの選び方についても触れていますので、給与計算ソフトの導入を検討中の企業様はぜひご覧ください。
3-2. 請求書に関する業務
従来の経理業務では、請求書は紙媒体で発行するのが一般的で、捺印や発送業務が必要不可欠でした。
請求書を含む帳簿書類を電子データ化すれば、請求書を紙媒体で発行する手間とコストを削減できるのはもちろん、捺印や発送業務も不要になるため、「請求業務のために出社する」などの必要がなくなり、テレワークの推進にもつながります。
3-3. 決算業務
決算期になると、経理はこれまで帳簿で管理してきた取引を総括し、損益計算書や貸借対照表などを作成する決算業務をおこないます。
従来の方法では大量の書類をもとに決算書を作成する必要があったため、決算期の残業が常態化している企業も少なくありませんでした。
決算書の作成に対応した会計ソフトを導入すれば、領収書やレシートの自動読み取り、仕分けの自動化などにより、短時間で簡単に決算書を作成できるので、決算期にありがちな長時間労働の問題も解消できます。
4. 経理部門でDXを推進する際の注意点・ポイント


ここでは、経理部門でDXを推進するにあたり、注意したいポイントを詳しく紹介します。
4-1. まずは課題を洗い出すことから始める
経理DXをどのようなかたちで実現するかは、企業の業種やニーズによって異なります。そのため、まずは自社の経理部門が抱えている課題を洗い出し、どの部分をデジタル化すべきか、どのようなITツールを導入するのが最適かなどをじっくり検討しましょう。
4-2. 経理DXツールを導入する
経理DXを推進するには、自社の課題にあったITツールを導入することが不可欠です。経理DXに役立つツールには、下記のようなものがあります。
- 会計ソフト
- 請求書管理システム
- ワークフローシステム
- 経費精算システム
- 給与前払いシステム
- 受発注システム
- 電子契約サービス
ただし、ITツールを導入するにはそれなりの費用や手間がかかります。また、従業員がシステムに慣れるまで時間もかかります。
そのため、料金や機能、サポートなどを考慮して、自社に最適なツールを導入するようにしましょう。ITツールの導入経験があまりない場合は、使用感を確かめるために無料体験期間のあるものを利用してみるのもおすすめです。
4-3. 関係部署や取引先への周知をおこなう
経理業務は他部署や、取引のある外部企業とも関わりのある仕事です。何の前触れもなく、いきなり帳簿書類を電子化して関係部署や取引先に送りつけると、無用な混乱を招く原因になるので注意が必要です。
そのため、電子契約サービスや請求書管理システムなどのITツールを導入・運用する際は、関係する部署や取引先にあらかじめ周知し、承諾を得たうえで実施することが大切です。
5. 経理DXを進めれば、業務の効率向上やコスト削減につながる


経理部門のDX化を推進すると、これまで手作業でおこなっていた作業がデジタル化され、業務効率を大幅に向上させることができます。
経理はミスの許されない業務が多く、かつスピードも求められます。ぜひ経理DXを推進し、業務の効率化や経費削減に取り組んでみるとよいでしょう。



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