積立有給休暇とは?メリットや導入時のポイントを解説
更新日: 2024.11.19
公開日: 2024.11.19
OHSUGI
「積立有給休暇は普通の有給休暇と違うの?」
「自社に導入すべき制度かわからない」
上記の疑問をお持ちではないでしょうか。積立有給休暇は、従業員の多様な働き方を後押しするため、企業が独自に導入・運用する休暇制度です。
本記事では積立有給休暇とは何かについて、メリットやデメリット、導入する際にポイントとあわせて解説します。積立有給休暇により働きやすさを改善したい場合は、ぜひ参考にしてください。
働き方改革が始まり、法改正によって労働時間の客観的な管理や年次有給休暇の管理など、勤怠管理により正確さが求められることとなりました。
しかし、働き方改革とひとことで言っても「何から進めていけばいいのかわからない…」「そもそも、法改正にきちんと対応できているか心配…」とお悩みの人事担当者様も多いのではないでしょうか。
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目次
1. 積立有給休暇とは
積立有給休暇とは、期限切れとなった年次有給休暇を消滅させるのではなく、積み立てておく制度のことです。下記のようにもよばれます。
- 失効年休積立休暇
- 失効年次有給休暇積立制度
- 積立休暇
積立有給休暇は病気やけがで長期療養が必要な際や、介護や子育てのために休暇が必要な際に利用可能です。
ただし、法律で定められた公的な制度ではなく、企業が独自に実施する制度のため、企業によって制度の有無や積み立てられる日数、利用条件などが異なります。
2. 積立有給休暇と有給休暇の違い
積立有給休暇と通常の有給休暇の違いは、法的な制度であるかどうかです。有給休暇は労働基準法第39条で付与が義務付けられており、付与日数や有効期限、賃金の計算方法も定められています。
一方、積立有給休暇は法律で定められておらず、企業が任意で導入する制度であり、付与するかしないかは企業の自由です。
付与条件や運用方法も企業が独自のルールを設定できるため、制度の内容は企業により大きく異なることがあります。例えば、子どもの看病や学校行事のための利用のみ認める、積立は1年間のみ有効などです。
3. 積立有給休暇の2つのメリット
積立有給休暇には下記のメリットがあります。
- 離職の予防につながる
- 優秀な人材の獲得につながる
それぞれ詳しく解説します。
3-1. 離職の予防につながる
積立有給休暇には離職の予防につながるメリットがあります。有給休暇に加えて積立有給休暇も導入することで、従業員が介護や子どもの世話、体調不良などで欠勤する際の経済的な不安の緩和が可能です。
長期的な休暇も取得しやすくなるため、家庭やプライベートとの両立の困難を理由とした離職の予防も期待できます。
3-2. 優秀な人材の獲得につながる
積立有給休暇には、優秀な人材の獲得につながるメリットもあります。
求職者は業務内容や給与のほかに福利厚生もチェックしており、福利厚生が充実している企業ほど求職者にとって魅力的です。積立有給休暇は福利厚生に含まれ、とくにワークライフバランスを重視する求職者へのアピールとなります。
より多くの求職者の興味を引くことで、優秀な人材とのマッチングの可能性の向上が可能です。
4. 積立有給休暇の2つのデメリット
積立有給休暇には下記のデメリットがあります。
- 休暇の管理が複雑になる
- 特定の従業員に負担がかかるおそれがある
それぞれ詳しく解説します。
4-1. 休暇の管理が複雑になる
積立有給休暇には休暇の管理が複雑になるデメリットがあります。通常なら期限切れの有給休暇は消滅するだけですが、積立有給休暇に変更して積み立てていく過程が新たに必要です。
有給休暇と積立有給休暇の日数を別で管理し、それぞれの最新の利用状況を把握しなければいけません。社内システム上で自動的に管理できるかどうか、マニュアルで管理する場合はどのように管理するかなどの確認も発生します。
休暇の取得状況や残日数がわかりにくくなる可能性があるため、どのように管理すべきか考慮してから導入しましょう。
4-2. 特定の従業員に負担がかかるおそれがある
積立有給休暇を導入した結果、特定の従業員に負担がかかるおそれがあります。
法定の有給休暇と積立有給休暇を組み合わせれば、1ヵ月など長期間の連続休暇の取得が可能です。休暇を取る従業員が増加すること自体はよいことですが、不在の従業員の業務をほかの従業員が巻き取り、結果的に業務量過多になるリスクがあります。
特定の従業員への負担が増えないよう、業務の分散や効率化により社内環境を整えてから積立有給休暇を導入しましょう。
5. 積立有給休暇を導入する前に検討すべきこと
積立有給休暇を導入する前に、下記の点を検討しましょう。
- 対象従業員
- 取得単位・連続取得可能日数
- 有効期限
- 積立日数の上限
- 利用事由の制限
- 出勤率算定への影響
5-1. 対象従業員
積立有給休暇の利用対象者を検討しましょう。例えば、準社員も含めたすべての従業員を対象とするのか、正社員のなかでも5年目以上などの条件をつけるのかです。
対象者は企業が自由に設定してよいものの、対象外とする従業員が不公平に思わないよう注意する必要があります。積立有給休暇を導入する目的を明確にし、対象者を限定する理由をしっかり説明しましょう。
5-2. 取得単位・連続取得可能日数
積立有給休暇の取得単位や連続取得可能日数も事前に決めておきましょう。半日や時間単位での取得を許可するのか、全日のみの取得とするのかなどです。
また、連続使用可能日数を設定しておくと調整が必要な業務量を限定でき、分担がしやすくなるメリットがあります。ただし、療養や介護などによりどうしてもまとまった休暇が必要な際は制限を設けず連続取得できるなど、各自の事情に応じた柔軟性も考慮するとよいでしょう。
5-3. 有効期限
積立有給休暇の有効期限を検討しましょう。無期限でも構いません。ただし、無期限とすると有給休暇が過剰にたまる可能性があるため、無期限にする場合は積立日数の上限を設けることがおすすめです。
5-4. 積立日数の上限
積立日数の上限を決めましょう。年間積立日数と総積立日数それぞれの設定がおすすめです。
年間積立日数の上限とは、年間で何日分の積立有給休暇をためてよいかに該当します。年間の上限を決めると、計画的な消化の促進が可能です。
総積立日数の上限を設定すると、積立有給休暇が一定までたまったらそれ以上は追加されなくなります。入院する場合を想定して、40日から60日程度を上限とするとよいでしょう。
5-5. 利用事由の制限
利用事由の制限をするかどうかも検討しましょう。法定の有給休暇とは異なり、積立有給休暇は利用事由の制限が可能です。利用事由は企業によりさまざまですが、下記に制限するケースがよく見られます。
- 病気やけがによる療養
- 入院
- 介護
- 育児
- 自己啓発のための研修やセミナー
- ボランティア活動
もちろん利用事由の制限を設けないケースもあります。従業員のニーズに合わせて内容を調整するとよいでしょう。
5-6. 出勤率算定への影響
積立有給休暇の取得日を出勤率算定に含めるかどうかを検討しましょう。出勤率は次年度の有給休暇付与や賞与、退職金に関係します。
法定の有給休暇は出勤率算定に含まれますが、積立有給休暇の場合は含めなくても構いません。対象従業員や利用事由の制限などをふまえて検討するとよいでしょう。
6. 積立有給休暇を導入する際のポイント
積立有給休暇を導入する際は、下記のポイントに留意しましょう。
- 現場に合わせたルール化
- 制度の積極的な周知
6-1. 現場に合わせたルール化
現場の状況や意見を反映して積立有給休暇のルール化をおこないましょう。
現場をよく考慮して導入しなければ、積立有給休暇を導入しても取得しづらく制度自体が定着しません。また、積立有給休暇によって法定の年次有給休暇の取得が停滞する恐れもあります。
現場の従業員はどのような場合にどのような使い方ができる休暇を求めているのか、しっかりヒアリングしましょう。
6-2. 制度の積極的な周知
積立有給休暇の導入前後は積極的に取得方法や活用例を周知しましょう。メールや掲示板での通達のほか、説明会も開くと制度の理解を促進できます。
とくに管理職に向けて詳しい説明をおこない、各部署内で取得が進むようマネジメントしてもらいましょう。
7. 退職時の積立有給休暇の扱い
退職時に積立有給休暇を消化できるかどうかは、企業それぞれの判断が可能です。
法定の有給休暇は従業員の権利であり、原則退職に合わせた消化が認められています。一方、積立有給休暇は企業独自の制度のため、引き継ぎへの影響を考慮して退職時は消化ではなく買取のみとすることも可能です。
ただし、退職時の扱いをどのようにするかに関係なく、きちんとルール化して就業規則に明記しましょう。
8. 積立有給休暇を導入して多様な働き方を促進しよう
積立有給休暇は期限切れの法定の有給休暇を積み立てて利用できる制度です。運用方法は企業の判断で自由に決められるので、社内のニーズや状況に合わせて対象従業員や日数の上限、利用事由の制限などを決定しましょう。
休暇制度を充実させることで多様な働き方を促進し、優秀な人材の獲得や流出の防止に役立ててください。
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