給与辞令とは?昇給辞令との違いや書式・テンプレートを解説
更新日: 2026.6.2 公開日: 2024.12.23 jinjer Blog 編集部

給与辞令は給与改定による昇給や降給、昇給辞令は等級変動による昇給をおこなう際に交付する辞令です。交付の法的な義務はありませんが、従業員にとって給与額や支給条件、昇給・降給理由などを確認できる通知書であるため、交付するのが一般的です。
また、交付をすることで、給与に対する会社の姿勢や評価が伝わり、社員のモチベーション維持につながることもあるため、上手に活用しましょう。
本記事では、給与辞令と昇給辞令の違いや必要な理由、記載方法などについて解説します。
目次
「自社の給与計算の方法に不安がある」「労働時間の集計や残業代の計算があっているか確認したい」「社会保険や所得税・住民税などの計算方法があっているか心配」など、給与計算に関して不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 給与辞令(賃金変更通知書)とは


給与辞令とは、社員に対して給与額や支給条件を正式に通知する文書です。一般的には昇給、降給、または異動に伴う給与の変更時などに発行されます。
給与辞令の役割は給与の透明性を確保し、従業員との間で合意を形成するために発行するため、文書には一般的に以下の情報が含まれます。
- 基本給や各種手当などの具体的な支給額
- 支給開始日(改定がある場合)
- 賞与などの支給基準や条件
- そのほかの特記事項(特別手当の適用など)
1-1. 給与辞令を交付するタイミング
給与辞令や昇給辞令は、次のようなタイミングで交付するケースが多いです。
- 昇給や降給が決定したとき
- 異動や転勤が決まったとき
- 給与制度を変更するとき
交付期限に法的な定めはないため、自社で適切だと思われるタイミングでおこなっても問題ありません。
ただし、タイミングによっては、従業員と企業の間での認識の違いが生まれてしまうおそれがあります。誤解によるトラブルを防ぐために、変更後の給与を支払う1ヵ月前には通知しておくことが望ましいです。
1-2. 給与辞令の通知方法
給与辞令・昇給辞令の通知方法は、以下のように対象者本人が確実に内容を確認できる方法が適しています。
- 直接手渡し
- 電子メール
- 社内システム
- 郵送
なお、給与辞令・昇給辞令は機密性の高い個人情報です。ファイルにパスワードを設定する、社内システムでは閲覧制限をかけるなど、個人情報が漏洩しないよう注意しましょう。
また、給与辞令や昇給辞令はスケジュールに余裕を持ち、対象者のみが確実に確認できる方法で通知することが大切です。
2. 給与辞令と昇給辞令の違い


給与辞令と昇給辞令の違いは以下のとおりです。
| 給与辞令 | 昇給辞令 | |
| 発行目的 | 給与全般の変更を通知 | 昇給に関する通知 |
| 主な発行タイミング | 昇給・降給、異動、給与制度変更時 | 昇給決定時のみ |
| 記載内容 | 基本給、手当、賞与、支給条件 | 昇給額、改定後の基本給、適用日 |
給与辞令は、「賃金変更通知書」とも呼ばれる書類で、従業員に対して給与額や支給条件を通知する文書です。昇給や降給だけでなく、異動・転勤、給与制度変更など、給与に影響が生じるすべての場面で発行されます。発行する目的は、給与の透明性の確保と従業員との間に合意を形成するためです。
一方で昇給辞令は、昇給が決まった従業員に対して、昇給内容を伝えるための文書です。主に、人事評価や業績評価に基づいて昇給が決まった際に発行されます。
給与辞令は給与に関するあらゆる変更(昇給・降給・減給・賞与・支給条件の変更など)を通知する文書であるのに対し、昇給辞令は通知対象が昇給に限定される点が違いです。
3. 給与辞令や昇給辞令が必要な理由


給与辞令や昇給辞令の発行は、企業にとって義務ではないものの、以下の理由から推奨されています。
- 給与の透明性を確保するため
- 法的なリスクを回避するため
- 従業員のモチベーション維持のため
ここでは、これらの理由について詳しく解説していきます。
3-1. 給与の透明性を確保するため
給与辞令が必要な理由として、給与の透明性を確保することが挙げられます。給与辞令や昇給辞令は、従業員に給与額や条件を明示する手段です。
給与は従業員にとって非常に重要で、金額の根拠や変動理由が曖昧だと、誤解や不満が生じやすくなります。しかし、給与辞令・昇給辞令を発行することで、給与額や支給条件が明示されれば、従業員が内容を正しく理解できます。
例えば、昇給辞令を発行しないと「どのような基準で昇給額が決まっているのか不明だ」と不安を感じ、将来的な降給に対する疑念が生まれやすくなります。
このようなリスクを回避するには、給与の透明性を確保し、給与辞令や昇給辞令によって詳細を明示することが重要です。
3-2. 法的なリスクを回避するため
給与変更の際に適切に通知をおこなうことで、法的なリスクを回避し、従業員とのトラブルを未然に防ぐ効果があります。
給与は労働契約の一部であり、変更がある場合には、事前通知や合意が必要です。一方的な給与の変更は、従業員から「不当な扱い」と捉えられ、労働審判などの法的手段に発展する可能性もあります。
また、給与辞令や昇給辞令は、給与変更の説明・同意に関する証拠書類の一つです。辞令を作成することで、給与変更に伴うトラブルを防ぎ、従業員との信頼関係を維持できます。
3-3. 従業員のモチベーション維持のため
給与辞令・昇給辞令を発行することで、従業員のモチベーションを維持し、働きがいや成長意欲の向上につながります。
給与や昇給は、従業員にとって努力や成果が評価された証です。特に昇給辞令は、企業が従業員の成果をしっかりと評価していることを示し、感謝を直接伝える機会にもなります。
一方、昇給辞令がない場合、昇給があっても従業員が評価の根拠を理解できないため、昇給した自覚や評価された部分への理解が不足します。昇給に対する嬉しさはあるものの、モチベーション向上の効果は薄れてしまうでしょう。
給与辞令や昇給辞令は、給与が正当に評価に基づいていることを従業員に伝え、働く意欲を高める重要な手段です。特に昇給辞令はモチベーションの維持・向上のためにも、欠かせないものといえるでしょう。
4. 給与辞令・昇給辞令の記載項目


給与辞令・昇給辞令には決められた書式はありません。しかし、トラブル防止と透明性確保の観点から、以下の内容を網羅するようにしましょう。
| 記載項目 | 記載例 |
| 発令日 | 令和7年3月1日 |
| 対象者の氏名・所属部署・社員番号など | 山田 太郎(社員番号:12345) |
| 新しい給与の内訳 | 基本給:270,000円
役職手当:30,000円 通勤手当:10,000円 |
| 適用開始日 | 令和7年4月1日 |
| 変更理由(記載が必要な場合のみ) | 2024年度の人事評価に基づく昇給 |
| 担当者の署名・押印 | 人事部 部長 佐藤一郎(署名・押印) |
上記の項目を明確に記載することで、従業員が給与内容を理解しやすくなります。また、会社から従業員に対して、適切に通知したことの証拠にもなるため、必ず書面か電子文書によって交付するようにしましょう。
なお、昇給時の給与辞令に変更理由を明記することは一般的ではありませんが、後述する降給・減給時には、トラブル防止のため理由や根拠を記載することが強く推奨されます。
5. 給与辞令・昇給辞令のテンプレート


給与辞令と昇給辞令の一般的なテンプレートを紹介します。
- 給与辞令のテンプレート
- 昇給辞令のテンプレート
これはあくまでも参考のテンプレートであるため、自社で必要な項目がある場合は項目を付け加えてご活用ください。
5-1. 給与辞令のテンプレート
給与辞令を作成する際に使えるテンプレートを紹介します。
令和◯年◯月◯日(発令日)給与辞令
◯◯ ◯◯殿(受令者)
令和◯年◯月分給与より、下記のとおり月額給与を支給します。(適用開始日)
| 基本給 | ◯◯円 |
| 手当 | ◯◯円 |
| 手当 | ◯◯円 |
| 手当 | ◯◯円 |
(基本給や手当の額)
以上
株式会社◯◯◯◯
代表取締役(発令者)
5-2. 昇給辞令の書式・テンプレート
昇給辞令を作成する際に使えるテンプレートを紹介します。
令和◯年◯月◯日(発令日)昇給辞令
◯◯ ◯◯殿(受令者)
令和◯年◯月分給与より、下記のとおり月額給与を支給します。(昇給日)
| 基本給 | ◯◯円 |
| 手当 | ◯◯円 |
| 手当 | ◯◯円 |
| 手当 | ◯◯円 |
(基本給や手当の額)
以上
株式会社◯◯◯◯
代表取締役(発令者)
6. 降給・減給になる場合の給与辞令は注意が必要


勤務態度や成績、能力など、何らかの理由で降給や減給をおこなう場合は、給与辞令の記載内容に注意が必要です。また、従業員の合意も必要になるケースがあるため、慎重に対応しましょう。
6-1. 降給・減給は不利益変更に該当する
会社が従業員の不利益となる変更(減給・労働時間の延長・福利厚生の廃止など)をおこなうことは、「労働条件の不利益変更」に該当します。不利益変更に該当する変更を会社が一方的におこなうことは、労働契約法第9条によって禁止されています。
つまり、降給や減給も原則として従業員との間に合意がなければおこなってはいけません。
ただし、降給や減給については、就業規則に合理的な基準と根拠が定められており、かつ適正な人事評価などの手続きに基づいた変更であれば認められます。なお、懲戒処分としての減給をおこなう場合は、労働基準法による制限を遵守しなければなりません。
関連記事:就業規則の不利益変更とは?実施する際の5つの注意事項
6-2. 降給・減給時の給与辞令に必要な項目
降給・減給時の給与辞令は、昇給時の項目に加えて降給・減給時に至った根拠を記載するようにしましょう。
就業規則に則った変更であれば、その根拠となる部分を明記します。従業員の勤務態度や能力が原因で降給・減給になっている場合は、その理由の具体的かつ客観的な記載が必要です。
降給・減給になった理由を明記しておくことで、トラブルを防止できます。加えて、従業員の同意書も作成すればより強いトラブル防止策になるでしょう。
6-3. 個別の面談で同意を得る
降給・減給をおこなう際は、可能な限り個別の面談をおこない、同意を得て同意書を作成するようにしましょう。同意したという物的な証拠があれば、トラブルになった際も会社の正当性を示す根拠になるからです。
同意書を作成する際は、以下の項目を網羅するようにしましょう。
- 発令日
- 対象者の情報
- 降給・減給内容
- 適用開始日
- 変更の理由・根拠
- 署名・押印
- 記載内容に同意する旨
面談をすることで、降給・減給に対する不安やモチベーション低下を緩和することも可能です。トラブル防止と従業員のフォロー、双方の観点から丁寧な個別面談をおこなう時間を設けましょう。
7. 給与辞令は適切な内容で従業員に交付しよう


給与辞令や昇給辞令は、給与の変更を従業員に伝えるだけでなく、会社からの評価や期待を示す手段のひとつです。特に昇給辞令は、従業員の成果や努力を企業がしっかりと認識し、評価していることを伝える機会となります。
給与辞令や昇給辞令を適切なタイミングで交付すれば、従業員のモチベーションもアップするため、離職率の低下やパフォーマンスの向上につながるでしょう。
ただし、降給や減給の場合はモチベーションが下がりやすいです。「業績不振」や「新しい事業を展開するためのコスト削減」など理由を明確にすることが重要です。また、従業員の合意や就業規則による根拠の提示など、より慎重な対応が必要になることを覚えておきましょう。
給与は従業員の生活に直結し、モチベーションにも大きく関係します。給与辞令や昇給辞令を正しく活用して、従業員がやりがいを持って働ける環境を整備しましょう。



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