休職中の給与はどうなる?受け取れる手当・制度も解説
更新日: 2024.12.29
公開日: 2024.12.29
OHSUGI
「休職中の社員の給与や賞与は、どうなるのだろうか?」
「休職中に社員が受け取れる手当や制度には何があるのだろうか?」
上記のような悩みを抱えている社内担当者は、多いのではないでしょうか。
近年、メンタルヘルスなどに伴い、休職する人は増加傾向にあります。自社の社員が休職した際に、適切な対応をおこなえるよう正しい知識を身につけておくことが重要です。
そこで本記事では、社員が休職した際の給与・賞与の取り扱いや、休職中の社員が受け取れる手当や制度について詳しく解説します。最後まで本記事をご覧いただくことで、社員が休職した際に適切な処理を迅速におこなえるようになるでしょう。
1. 休職中の給与と賞与はどうなる?
従業員が休職中の場合、給与や賞与(ボーナス)は発生しません。給与はあくまでも労働の対価であるためです。このことは、労働基準法の第二十四条(ノーワーク・ノーペイの原則)によって明記されています。
ただし、就業規則に定められている賞与の評価期間や一定の基準を満たしている場合は、賞与が発生します。その際は、自社の賞与の評価基準と照らし合わせて適切な賞与額の支払いを忘れずにおこないましょう。
2. 休職中の社員が給与の代わりに受けられる手当・制度
休職中の社員が、給与の代わりに受けられる手当・制度は以下の3つです。
- 傷病手当金
- 労災保険
- 障害年金
各手当・制度について順に解説します。
2-1. 傷病手当金
傷病手当金は、病気や怪我のために会社を休職せざるを得なくなった際に支給される制度です。会社を休んでから4日目以降に、最長1年6ヵ月の間、傷病手当金が支給されます。
傷病手当金の1日あたりの支給金額の計算方法は、以下のとおりです。
支給開始日以前12ヵ月間の平均給与額÷30日×2/3=1日あたりの金額
仮に休職前の月給の平均が20万円の場合、1日あたり約4,400円(20万円÷30日×2/3)が傷病手当金として支給されます。
2-2. 労災保険
労災保険は、業務中あるいは通勤中の事故などが原因の傷病に対して、必要な給付を受けられる制度です。労災保険にかかる費用は原則、事業主が負担する保険料によってまかなわれます。
また、労災保険はすべての労働者が受けられる制度です。そのため、アルバイトやパートタイマーの従業員も労災保険の対象になります。
参考:労災補償|厚生労働省
2-3. 障害年金
障害年金は、病気や怪我が原因で仕事や生活に影響を及ぼす場合に、給付を受けられる制度です。
また、障害年金は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2つにわけられます。障害基礎年金と障害厚生年金の詳細は、下記に示すとおりです。
障害基礎年金 | 国民年金の加入者で、20歳未満もしくは60歳以上65歳未満の人が、障害等級1級または2級に該当する際に支給される。 |
障害厚生年金 | 厚生年金の加入者で、障害等級1級・2級・3級に該当する際に支給される。 |
障害年金は高齢の方のみならず、現役世代の方も受けられる年金であるため、これを機に要点をしっかりと押さえておきましょう。
参考:障害年金|日本年金機構
3. 休職中の給与支給に関する注意点
休職中の給与支給に関する注意点として、社会保険料の支払い義務が挙げられます。例え社員が休職中であっても、社会保険料を支払わなくてはなりません。
社会保険料の金額は、社員が休職する前の一定期間における所得額をもとに、すでに決められているものであるためです。
また社員の休職中は、その社員自らに自己負担分の社会保険料を支払ってもらう必要があります。本来、社会保険料は毎月の給与から天引きされますが、休職中はその給与が発生しなくなるためです。
もし休職中に、社員が自ら社会保険料を支払うのが難しいときは、復帰後の給与と相殺する手段もあります。どの形が休職中の社員にとってベストなのか、話し合うことが大切です。
4. 従業員が休職期間に入るまでの流れ
従業員が休職期間に入るまでの流れは、以下のとおりです。
- 就業規則で休職できる期間や申請方法を確認する
- 必要書類を従業員から提出してもらう
- 休職中の連絡方法について従業員と相談する
各流れについて、以降で詳しく解説します。
4-1. 就業規則で休職できる期間や申請方法を確認する
始めに就業規則で休職できる期間や申請方法について確認しましょう。休職に関するルールや取り扱いは、法律などで定められているわけではありません。そのため、会社の就業規則に沿って休職してもらう必要があります。
就業規則で確認するポイントは、以下の5つです。
- 休職の申請方法
- 休職できる期間
- 休職中の給料の有無
- 社会保険料の取り扱いについて
- 復帰時期
従業員が休職している間の予期せぬトラブルを防ぐためにも、就業規則は必ず確認しましょう。
4-2. 必要書類を従業員から提出してもらう
次に休職するための必要書類を従業員から提出してもらいます。必要となるのは「診断書」と「休職届」の2点です。
診断書は従業員が病気や怪我で働けない状態を客観的に理解するために必要となり、受診している医療機関から発行されます。
休職届は従業員が働けなくなった際に、雇用関係は維持したまま、業務から離れることを申請するための書類です。休職届の具体的な記載項目としては、以下のものが挙げられます。
- 氏名
- 所属部署
- 申請年月日
- 休職理由
- 休職期間
- 休職中の連絡先
もし休職届がない場合は、テンプレートなどを参考にあらかじめ作成しておきましょう。
4-3. 傷病手当金の申請をしてもらう
最後に従業員から傷病手当金の申請をしてもらいましょう。
傷病手当金の申請は従業員自ら提出してもらうことも可能ですが、会社経由で提出するのが一般的です。
傷病手当金の申請をするために必要となる書類は「全国健康保険協会」のホームページよりダウンロードできます。
5. 従業員が休職中の注意点
従業員が休職中の注意点は以下の4つです。
- 連絡先を複数把握しておく
- メールやチャットで連絡する際は言葉遣いに気をつける
- 休職中の従業員の進捗確認を怠らない
- 万が一連絡を取れなかった際は証拠を残しておく
各注意点について順に解説します。
5-1. 連絡先を複数把握しておく
連絡先は念のため、複数把握しておきましょう。何かしらの理由で、教えてもらった連絡先が使えなくなる可能性がゼロとはいいきれないためです。
不足の事態に備えて、社員の家族や友人、療養先など複数の連絡先を把握しておくと安心できます。
5-2. メールやチャットで連絡する際は言葉遣いに気をつける
メールやチャットで連絡する際は、言葉遣いにも気をつけましょう。文章だけの場合、抑揚や声色が届かず、相手に冷たい印象を与えやすいためです。
病気や怪我で休んでいる従業員は、上司や同僚などに迷惑をかけているという後ろめたさを感じていることがあります。そんなとき、冷たい印象のメールやチャットが届くと、精神的な負担が増えてしまう可能性もあります。
必要に応じて、感嘆符や絵文字、柔らかい表現を用いるなど、言葉遣いに関しては十分に気をつけましょう。
5-3. 休職中の従業員の状況確認を怠らない
休職中の従業員の状況確認も怠らないようにしましょう。従業員の現在の状態を確認しておくことで、復職した際の適切な人員配置をおこないやすくなるためです。
また、従業員の状況を確認する際に、ヒアリングなどのメンタルケアをおこなうことで、早期復職の可能性も高まるでしょう。
5-4. 万が一連絡を取れなかった際は証拠を残しておく
万が一、休職中の従業員と連絡を取れなかった際は、会社側がきちんと対応している証拠を残すようにしましょう。具体的には、留守番電話やメールの活用が挙げられます。
従業員に万が一のことがあった際のトラブルを防ぐためにも、証拠を残しておくことが大切です。
6. 休職中の給与の取り扱いを理解して適切に処理しよう
これまでお伝えしてきたように、休職中の社員に給与は発生しません。ただし賞与については、就業規則に定められている賞与の評価期間や一定の基準を満たしている場合に限り、支払う必要があります。
また社員が休職中であっても、社会保険料を支払わなくてはなりません。そのため、社会保険料の支払いを忘れることがないよう注意が必要です。
自社の社員が休職した際は、本記事の内容をしっかりと理解したうえで、適切に処理をおこないましょう。
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