介護休業を取得できる条件とは?期間や注意点を解説
更新日: 2025.3.27
公開日: 2024.12.29
OHSUGI
「介護休業を取得するにはどのような条件が必要なの?」
「介護休業を申請しても、対象外になるケースがあるのか知りたい」
「介護休業の申請手続きの流れを教えてほしい」
こうした疑問をお持ちではないでしょうか。
介護休業は、家族を介護する必要がある従業員を支援するための制度です。ただし、すべての従業員が対象となるわけではなく、特定の条件に当てはまる場合には対象外となるケースもあります。
本記事では、介護休業を取得するための条件や対象者の範囲、申請手続きの流れ、そして対象外となるケースについて詳しく解説します。
最後まで読むことで、介護休業の制度を正しく理解し、申請に向けた準備や対応に役立つ情報を得られるでしょう。
1. 介護休業とは
まずは介護休業は言葉の通り介護のために休業する制度です。どのような制度なのか、詳しい内容と間違われやすい「介護休暇」との違いを確認しておきましょう。
1-1. 家族の介護を目的として取得できる休み
介護休業は、要介護状態の家族を介護するために雇用契約を維持したまま取得できる休みです。介護のために仕事を辞めてしまうと、収入が減って生活が苦しくなるケースも多々あります。そのような事態を招かないように、介護と仕事の両立を目的として制定されました。
雇用契約が維持されているため、介護をしながら仕事をしたり、一定期間休業した後に復帰したりするなど、キャリアを諦める必要もありません。
なお、介護休業は企業が独自におこなうものではなく、法律上の制度です。企業で介護休業を導入していない場合でも、法律に則って介護休業を取得することができます。
1-2. 介護休業と介護休暇の違い
介護休業と介護休暇は非常に似ているため混同されることが多いです。どのような違いがあるのか知っておきましょう。
項目 | 介護休業 | 介護休暇 |
取得期間 | 対象家族1人に対して通算93日まで(分割取得も可能) | 対象家族1人につき年5日(2人以上の場合は年10日) |
取得単位 | 原則として日単位 | 時間単位での取得も可能 |
申請期限 | 原則として2週間前まで | 当日の申請も可能 |
目的 | 長期的な介護に対応できる | 短期的な介護や突発的な対応ができる |
介護休業と介護休暇は、両方とも要介護状態の対象家族を介護する従業員が取得できる制度ですが、利用目的や取得方法に違いがあります。
介護休業は、長期的な介護に対応するための制度で、対象となる家族1人につき通算で最大93日まで取得可能です。最大3回まで分割して利用できるため、計画的に長期間の休暇を取得する際に適しています。
一方、介護休暇は短期的な介護や突発的な対応に利用される制度です。該当する対象家族1人につき年5日(2人以上の場合は年10日)取得でき、より柔軟に利用できます。
それぞれの違いを理解し、従業員が適切に制度を活用できるようサポートしましょう。
2. 【2025年施行】育児・介護休業法が改正された
2025年(令和7年)4月1日から、育児・介護休業法が改正され、段階的に施行されています。
男女ともにより柔軟に仕事と介護・育児を両立できるように見直されています。こちらでは介護休暇・介護休業に関連する改正点を解説していきます。
介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
介護休暇は無条件で取得できるものではなく、週の所定労働日数と継続雇用期間に条件が設けられていました。
改正前と改正後では除外される労働者の条件が緩和されています。
改正前 | 改正後 |
【除外される労働者】
①週の所定労働日数が2日以下 ②継続雇用期間が6ヶ月未満 |
【除外される労働者】
①週の所定労働日数が2日以下 |
改正後は週の所定労働日数のみが条件になっており、継続雇用期間は問わず介護休暇を取得できるようになりました。
介護離職防止のための雇用環境整備
介護休業や介護両立支援制度などの申請を円滑におこなえるように、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければならないと規定されました。
① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
以上の4つのうち複数の措置を講じることが望ましいとされており、企業側にも介護と仕事の両立をしやすい環境整備をすることが求められています。
介護離職防止のための個別の周知・意向確認
従業員から介護の必要が発生した旨の申し出を受けた場合、企業側は個別の周知と意向確認をすることが義務とされました。
介護休業に関連する制度や給付金の周知をするとともに、介護休業や介護両立支援制度などを利用する意思の確認を個別におこなわなければなりません。
また、家族の介護が必要になる前の段階でも、介護休業などの制度に関する情報を提供することも義務とされました。
企業側が積極的に介護休業などの情報を提供し、従業員の意思を確認することで介護休業制度を利用しやすくすることが目的です。
介護のためのテレワーク導入
介護を必要とする家族がいる労働者がテレワークを選択できるように、企業側はなんらかの措置をすることが努力義務とされました。
テレワークは業種や職種によっては難しいため、努力義務にとどめられています。
しかし、企業側が介護と仕事を両立しやすいように従業員をサポートすることがより強く求められており、何らかの措置をとることが望ましいとされています。
3. 介護休業を取得するための条件と対象者
対象となる従業員は、雇用期間が6ヵ月以上であれば、正社員や契約社員、アルバイトなど雇用形態は関係ありません。
また、介護休業を取得するには次の2つの条件を満たす必要があります。
- 要介護状態の対象家族がいること
- 対象家族を介護する必要があること
この2つの条件に付いて詳しく見ていきましょう。
3-1. 要介護状態の対象家族がいること
要介護状態の対象家族として認められるには、要介護状態区分と対象家族との関係がポイントです。
要介護状態区分で要介護2以上が必要
要介護状態とは、負傷や疾病、または身体・精神の障害のため、2週間以上の継続的な介護を必要とする状態を指します。
5段階に分かれている要介護状態区分では「要介護2以上」とされており、この基準を満たしていない場合は要介護状態としては認められません。
なお、要介護状態区分は市町村に設置される介護認定審査会で認定されます。この認定は新規の場合は6ヶ月、更新の場合は12ヶ月の有効期間があるため、介護休業の申し出があった場合は期間内の書類が必要です。
介護をする家族の範囲
要介護2以上の家族の場合でも、遠すぎる関係の場合は対象外になります。対象家族の範囲は次のとおりです。
- 配偶者(事実婚含む)
- 両親
- 子ども
- 配偶者の両親
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
上記以外の家族は、同居している場合でも認められません。
3-2. 対象家族を介護する必要があること
介護休業を取得するための2つ目の条件は、従業員自身が対象家族を介護する必要があることです。単に家族が要介護状態であるだけでなく、従業員自身が家族に対して日常的に介護を提供する必要がある場合に限られます。
介護には、身体介護や日常生活のサポート、通院の付き添いなどが含まれ、従業員が具体的に関与することが必要です。
4. 介護休業を取得できる期間
介護休業の取得期間は、対象家族1人につき通算で93日までと規定されています。
また、93日間は連続取得するほかに、分割取得も可能です。分割取得の場合、取得可能な回数は最大で3回までとなっており、40日、23日、30日など従業員の介護ニーズに合わせた柔軟な取得をすることができます。
対象家族が複数いる場合には、それぞれの対象家族ごとに93日の介護休業が認められます。
期間の数え方は、原則として労働者が介護休業を開始しようとする日から終了させようとする日までです。また、通算で数えるため土曜日や日曜日、祝日なども問わずにカウントされます。
5. 介護休業の対象外になるケース
介護休業の対象外になるケースは以下のとおりです。
- 入社して1年未満の従業員
- 申請後93日以内に雇用期間が終了予定の従業員
- 所定労働日数が週2日以下の従業員
加えて、有期契約労働者は「申し出の時点で介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに労働契約期間が満了し、契約の更新がされないことが明らかでない」という条件も加わります。
介護休業は長期的な介護支援を目的とした制度で、短期間の雇用契約や勤務日数の少ない従業員は制度の趣旨にそぐわないため、これらの条件に該当する従業員は対象外とされています。
これらの対象外になる条件を満たしていない場合は、パートやアルバイトなどの雇用形態を問わずに介護休業制度を利用することができます。
6. 介護休業の申請と手続きの流れ
介護休業の申請と手続きの流れは次のとおりです。
- 従業員から介護休業申請書を提出してもらう
- 介護休業の制度概要を通知する
- 業務の引き継ぎをする
- 介護休業を取得する
それぞれの流れを詳しく解説していきます。
6-1. 従業員から介護休業申請書を提出してもらう
まず、従業員に「介護休業申請書」を提出してもらいます。原則として休業開始予定の日の2週間前までに申し出なければいけません。
介護休業申請書には、次の項目を記載します。
- 申出の年月日
- 従業員の氏名
- 対象家族の氏名および従業員との続柄
- 要介護状態の対象家族
- 休業開始予定日および終了予定日
- 対象家族についてのこれまでの介護休業日数
また、要介護状態の確認のために、医師の診断書などの証明書類を従業員から提出してもらうことも可能です。
6-2. 介護休業の制度概要を通知する
従業員から申請後に、会社から「介護休業取扱通知書」を通じて介護休業の制度概要を正式に通知します。
従業員が休業中に受ける対応について明確にすることで、休業中や復職後のトラブルも事前に防げるでしょう。また、業務への影響を考慮し、休業の開始日を調整もできるため、従業員と話し合いながら最適な日程を設定可能です。
介護休業取扱通知書には、次の項目を記載します。
- 介護休業開始予定日および終了予定日
- 取得可能期間(対象家族1人に対して通算93日まで、上限3回まで分割取得可能)
- 休業中の給与・社会保険料の取り扱い
- 復職時の労働条件
- 休業中の連絡方法
6-3. 業務の引き継ぎをする
介護休業の開始前に、担当業務の引き継ぎをします。
引き継ぎ担当者を決定し、業務内容や進行中のプロジェクトの状況を共有することで、休業中の業務に滞りが生じないように準備しましょう。
また、休業中の連絡方法や緊急時の対応についても、上司や同僚と確認しておくことが大切です。引き継ぎ期間中は、後任者や同僚と密に連携し、質問や疑問点を解消しておくことで、スムーズな業務移行が可能となります。
6-4. 介護休業を取得する
すべての準備が整ったら、従業員は実際に介護休業を取得します。
介護休業中も、状況に応じて会社と連絡を取り合い、必要な情報を交換することが大切です。休業期間中に状況が変化した場合は、必要に応じて休業期間の変更などに対応しましょう。
7. 介護休業期間中の給与は会社規程による
介護休業に入る従業員が不安に感じることが多いのは収入に関連する部分です。生活に直結する部分であるため、自社での取り扱いや給付金について説明できるようにしておきましょう。
7-1. 法律による規定は設けられていない
介護休業期間中の給与支払いについては、各企業の規程や就業規則に委ねられています。法律で明確な規定が設けられていないためです。
多くの場合、介護休業中は無給とされていますが、企業によっては特別手当や独自の支援が設けられていることもあります。具体的な取り扱いについては、就業規則や労使協定で明文化しておくと、従業員が安心して利用できるでしょう。
介護休業の申し出があった場合は、休業中の給与がどのように変化するのか従業員に明確に伝える必要があります。就業規則や労使協定で定めている場合でも、確認の意味を込めて通達するとトラブルを防ぎやすくなります。
7-2. 介護休業給付金が受け取れる場合がある
基本的に介護休業中は給与が発生しませんが、一定の条件を満たす従業員は「介護休業給付金」が受けられる場合があります。介護休業給付金は介護休業中の収入を補うもので、休業開始時の賃金日額の67%が支給される制度です。
介護休業給付金の支給条件は次のとおりです。
- 雇用保険の被保険者である
- 介護休業を開始した日から遡って2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヵ月以上ある
条件を満たした場合は、ハローワークを通じて介護休業給付金の申請が可能になります。
ただし、介護休業給付金は介護休業が終わった後に申請をして初めて受け取れるものです。介護休業中には受け取れません。
参考:一回の介護|厚生労働省
参考:Q&A~介護休業給付~について紹介しています。|厚生労働省
8. 介護休業中の社会保険料は免除されない
介護休業中は、社会保険料の免除制度がありません。休業中に賃金が支払われない場合でも、従業員は健康保険料や厚生年金保険料を納め続ける必要があります。
無給であっても社会保険料は発生し続けるため、従業員にとっては経済的な負担が伴うでしょう。住民税も前年の収入をもとに計算されるため、休業期間中の場合も支払いが必要です。
なお、雇用保険料については、賃金が発生しない場合は支払い義務が生じませんが、社会保険料の支払いは避けられません。
「給与が発生しないから社会保険料も発生しない」と勘違いしていたり、天引きされる社会保険料の存在自体を忘れていたりすることがあります。そのような場合は急に支払いを求められて困惑する可能性が高いため、介護休業の申し出があった場合は社会保険料や住民税の支払いが発生することを伝えるようにしましょう。
9. 介護休業を取得するうえでの注意点
介護休業を取得するときに、事前に知っておきたい注意点を3つ紹介します。
- 介護休業とほかの給付との併用はできない
- 介護休業を理由に不利益な扱いはできない
- 介護休業給付金の受給タイミングに注意する
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
9-1. 介護休業とほかの給付との併用はできない
介護休業給付は、ほかの給付制度と併用ができません。
例えば、育児休業給付や産前・産後休業の給付金と同時に受け取ることは認められていないため、別の休業が発生した場合は、当初の介護休業が終了扱いとなります。
育児休業中に介護が必要となった場合は、育児休業を切り上げ、介護休業を新たに取得が必要です。
9-2. 介護休業を理由に不利益な扱いはできない
介護休業の取得を理由に、従業員に対して不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。
例えば、降格や減給、退職の強要などは育児・介護休業法に反する行為です。介護休業は従業員の権利として認められているため、従業員が安心して休業できる職場環境を提供するよう努める必要があります。
2025年4月からは介護休業を取りやすい環境づくりが強く企業に求められていきます。その点も理解して介護休業に対して柔軟な対応をしていきましょう。
9-3. 介護休業給付金の受給タイミングに注意する
介護休業中に受け取れると思われがちな介護休業給付金ですが、実際には休業が終了した後に申請する制度です。これは従業員側も勘違いしていることが多く、介護休業中の収入源として考えていることがあります。
介護休業中には給付金を受け取れないため、休業期間中の収入がない場合は経済的な計画を事前に立てておく必要があることを事前に伝えておきましょう。
また、介護休業給付金は介護休業終了日から2ヵ月後の月末までに申請が必要です。
10. 介護休業の対象者や範囲を理解して説明できるようにしておこう
本記事では、介護休業の取得条件や対象者の範囲、申請手続きの流れ、対象外になるケースを解説しました。
介護休業は家族のための重要な制度ですが、適用されないケースや、休業中の社会保険料負担、給付金の受給タイミングなど、注意点も多いです。
介護休業制度を正しく理解し、適切に利用することで、従業員の仕事と介護の両立を支援できます。従業員からの介護休業の申請に備え、スムーズな対応を目指しましょう。
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