健康保険法とは?企業の義務や法改正のポイントをわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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健康保険法とは?企業の義務や法改正のポイントをわかりやすく解説

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「健康保険法とは?」

「健康保険の法改正の変更点は?」

上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。

健康保険法は、従業員が病気やケガをした際に保険給付をおこなう健康保険制度です。企業には、一定の条件を満たす従業員を社会保険に加入させる義務が発生します。

本記事では、健康保険法の概要や目的をわかりやすく解説します。法令を遵守した経営を実現するため、企業の義務や法改正について理解を深めましょう。

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1. 健康保険法とは

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健康保険法の概要や目的、制定の背景は以下のとおりです。

  • 健康保険法の概要
  • 健康保険法の目的
  • 健康保険法の制定の背景

1-1. 健康保険法とは病気やケガに対する健康保険制度

健康保険法とは、業務中以外の病気やケガが発生した場合に、保険給付をおこなう健康保険制度のことです。対象者は従業員とその家族で、亡くなった場合や出産した場合にも適用されます。

健康保険法が適用される事業者は後ほど詳しく解説しますが、企業は一定の条件を満たす従業員を健康保険に加入させなければなりません。

医療費の一部を補償し、従業員が安心して医療機関にかかれる環境を提供することが求められます。

健康保険法にもとづく正しい管理と運営は、従業員の安心感を高めるだけではなく、企業の社会的責任を果たします。

1-2. 健康保険法の目的

健康保険法の目的は、従業員とその家族の生活の安定と福祉の向上を図ることです。日本の医療保険の基盤として重要な役割を担っています。

健康保険法は、高齢化や社会経済の情勢の変化など時代のニーズに対応しなければなりません。そのため、以下のような観点から制度の見直しや改善が定期的におこなわれています。

  • 保険制度の運営の効率化
  • 給付内容や費用負担の適正化
  • 医療の質の向上

企業は法改正に対応しながら、従業員の健康を重視した経営を心がけ、社会的責任を果たすことが求められます。

参考:健康保険法 | e-Gov 法令検索

1-3. 健康保険法の制定の背景

健康保険法は、1922年に制定され1927年に施行されました。かつての日本では、健康保険の加入は任意でおこなわれており、給付額も加入者一人ひとりで異なるものでした。

健康保険法が制定された背景には、以下のような社会的・経済的な理由があります。

  1. 第一次世界大戦をきっかけに好景気を迎え労働者数が増加
  2. 第一次世界大戦後の「戦後恐慌」により不況が深刻化
  3. 賃金引き上げや解雇反対を求める労働運動が激化
  4. 労使関係の対立緩和や、社会不安の沈静化を図るために政府が社会保険制度の導入を検討
  5. 1922年に制定・1927年に施行

1883年に世界初の社会保険制度を導入したドイツの成功例を参考に、日本でも健康保険法が制定されました。

参考:時代のニーズに対応した社会保障制度の発展を振り返る|厚生労働省

2. 健康保険法の適用事業所

ラウンジで二人が話し合う画像

健康保険法の適用事業所は、以下のとおりです。

  • 強制適用事業所
  • 任意適用事業所
  • 特定適用事務所

2-1. 強制適用事業所

強制適用事業所とは、健康保険法で加入が義務となっている事業所です。以下の事業所が強制適用事業所に該当します。

  • すべての法人事業所
  • 常時5人以上雇用している個人事業所(士業や法定16業種)

保険の加入は、事業所単位で適用されます。パートやアルバイトでも、労働時間・日数が通常の従業員の4分の3以上であれば、健康保険に加入させる義務が企業に発生します。

2-2. 任意適用事業所

任意適用事業所とは、強制適用事業所ではない事業所のことです。強制適用事業所に該当しない場合でも、以下の条件を満たすことで強制適用事業所として認められることがあります。

  • 従業員の2分の1以上が適用事業所となることに同意する
  • 厚生労働大臣(日本年金機構)の許諾を得る

適用事業所となった場合、基本的に事業所すべての従業員が社会保険の加入対象になります。なお、適用事業所を脱退したい場合は、被保険者の4分の3以上の同意と、厚生労働大臣の認可が必要です。

参考:適用事業所とは?全国健康保険協会

2-3. 特定適用事業事務所

特定適用事業所とは、適用事業所の中でも1年のうち6ヵ月以上にわたって厚生年金保険の被保険者が常時51人以上になることが見込まれる事業所のことを指します。「従業員の総数」としてカウントする対象は、以下の条件を満たしている従業員です。

  • フルタイムで勤務している従業員
  • 週および月の労働日数がフルタイムの従業員の4分の3以上の従業員

条件を満たしていれば、パートやアルバイトなどの短時間労働者も社会保険の加入対象に含まれます。そのため企業は、対象となる従業員を把握しておかなければなりません。

参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構

3. 健康保険法における企業の義務

手の上で人が輝くイメージ図

健康保険法において強制適用事業所に該当する企業は、状況に応じて必要な手続きをしなければなりません。以下のケースごとに、それぞれの義務を解説します。

    • 新たに適用事業所になった場合
    • 任意適用事業所の場合
    • 従業員の新規雇用や扶養家族に変更があった場合
    • 特定適用事業所の場合

3-1. 新たに適用事業所になった場合

新たに適用事業所になった場合、「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を、管轄の年金事務所に届出なければなりません。詳細は以下のとおりです。

項目 詳細
提出書類 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
添付書類 法人事業の場合:法人(商業)登記簿謄本の原本

国や地方公共団体の場合:法人番号指定通知書のコピー

強制適用事業所の場合:事業主の世帯全員の住民票の原本(個人番号の記載なし)

提出期限 適用事業所になった日から5日以内
提出先 事業所を管轄する年金事務所
提出方法 郵送・窓口持参・電子申請

適用事業所になってから提出期限が短いため、手続きを忘れないように注意しましょう。

参考:新規適用の手続き|日本年金機構

3-2. 任意適用事業所の場合

任意適用事業所の場合、「任意適用申請書」を企業の管轄の年金事務所に提出し、厚生労働大臣に認可してもらわなければなりません。詳細は以下のとおりです。

項目 詳細
提出書類 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
添付書類 ・任意適用同意書

・事業主の世帯全員の住民票の原本(コピー不可・個人番号の記載なし)

・事業主が納めた1年分の公租公課の領収書

提出期限 従業員の半数以上の同意後すみやかに
提出先 事業所を管轄する年金事務所
提出方法 郵送・窓口持参・電子申請

認可後は、強制適用事業所と同様に保険料を計算し、納付を適切におこなう義務が発生します。

参考:任意適用申請の手続き|日本年金機構

3-3. 従業員の新規雇用や扶養家族に変更があった場合

従業員の新規雇用や、その扶養家族に変更があった場合も日本年金機構への届け出が必要です。詳細は以下のとおりです。

提出が必要なケース 従業員を新規雇用した場合 被保険者の扶養家族に変更があった場合
提出書類 健康保険・厚生年金保険者資格取得届 健康保険被扶養者異動
提出期限 入社日から5日以内 事実発生から5日以内

それぞれ提出書類が異なるため注意しましょう。

3-4. 特定適用事業所の場合

特定適用事業所となった場合も、日本年金機構への届け出が必要です。対象となった事業所には、日本年金機構から「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」が届きます。詳細は以下のとおりです。

項目 詳細
提出書類 特定適用事業所該当届
添付書類 新たに被保険者資格を取得する短時間労働者がいる場合:被保険者資格取得届
提出期限 事実発生から5日以内
提出先 事業所を管轄する年金事務所
提出方法 郵送・窓口持参

なお、被保険者の総数が50人以下となった場合、「特定適用事業所不該当届」を提出すれば特定適用事業所から外されます。要件を満たさなくなった時点で提出可能ですが、被保険者の4分の3以上の同意が必要です。

4. 健康保険法の法改正

矢印の上を歩く人の図

健康保険法の法改正の内容や、注意点は以下のとおりです。

  • 社会保険加入の対象者の拡大
  • 法改正における企業の注意点

4-1. 社会保険加入の対象者の拡大

2024年10月より、社会保険の加入対象者が以下のように拡大されました。

社会保険の適用対象者
改正前 従業員数が常時101人以上の企業
改正後 従業員数が常時51人以上の企業

さらに、短時間労働者への適用も拡大されました。1週間の所定労働時間、もしくは1ヵ月の所定労働日数が通常の従業員の労働者の4分の3未満であっても、以下の条件に該当する従業員は適用対象者に該当します。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 所定内賃金が月額8万8,000円以上
  • 学生ではない

パートやアルバイトなど雇用形態にかかわらず、条件を満たしている場合は社会保険に加入させる義務が発生します。

参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構

4-2. 法改正における企業の注意点

法改正により社会保険加入の対象者が拡大したため、企業は新たな対象者を把握し、加入の手続きをおこなわなければなりません

正当な理由がなく、加入の手続きをおこなわなければ、ペナルティを課せられる可能性があるため注意が必要です。

とくに、パートやアルバイトの従業員の加入義務が強化されたことを忘れないようにしましょう。企業は、従業員の勤務時間や給与などの条件を正確に確認し、迅速に手続きを進めることが求められます。

さらに、社会保険制度は今後も法改正がおこなわれる可能性があるため、最新の情報を常に確認し、適切に対応することが大切です。

5. 健康保険法に則った経営を心がけよう

見上げる男の図

強制適用事業所の企業は、従業員を健康保険に加入させる義務があります。また、2024年の法改正により、社会保険加入対象者が大幅に拡大されました。

アルバイトやパートなどの短時間労働者も対象になる可能性があるため、企業は対象者を把握し、適切な手続きをおこなわなければなりません。

今後も法改正がおこなわれる可能性は十分に考えられるため、最新情報を確認し、健康保険法に則った経営を心がけましょう。

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OHSUGI

OHSUGI

クラウド型勤怠管理システムジンジャーの営業、人事向けに採用ノウハウを発信するWebメディアの運営を経て、jinjerBlog編集部に参加。営業時代にお客様から伺った勤怠管理のお悩みや身につけた労務知識をもとに、勤怠・人事管理や給与計算業務に役立つ情報を発信しています。

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